完璧で究極のチョコ職人は、大海賊時代でチョコを売り始めます 作:ちいさな魔女
朝の靄が掛かる海。一隻の海列車が汽笛を上げながら進んでいた。列車の壁は凍り付いているお陰で、小さな氷柱が光を反射して輝いていた。
???「世界を巡りに巡り〜♪いよいよ来たよ、憧れの島へ♪」
一人の少女が凍っている壁を登り終えると、列車の屋根に立つ。
???「長い旅路を終えて〜♪始まるよ〜私の夢〜♪」
天辺に立ち、少女は歌いながら靄の先に見える港駅を見る。
???「よぉし、上陸だよぉ!!」
紫がかった黒髪ロングヘアーが、少女が腕を真上に上げた事で前後に揺れる。風で緩やかに揺れていた茶色の長髪は、少女が激しく動いた事で髪も大きく揺れた。紫の瞳が見つめる先に、少女は自らの夢を重ねる。
少女の瞳に星が宿る。より輝いたように見えた。空の太陽より眩く、夜空の天の川よりも美しく、しかし月よりも優しい輝きを放つ星の目を宿した彼女は、列車の開いた窓から飛び乗って客席に入る。
アイ「長い旅路服は汚れちゃった♪色落ちしちゃった赤いスーツ♪端がボロボロなスカート♪ブーツは水を吸っていて冷たいな♪」
アイは客室内を歩き、車掌から赤のスーツを受け取り、早着替えで袖を通す。白のスカートとその中に履いた短パンに張り付いた雪を払うと、足に突然水が掛かった。掃除をしていた女性が水を床に蒔いていたが、それがアイの足に掛かったのだ。
掃除婦「あら、ごめんなさい」
アイ「大丈夫大丈夫、だよぉ!」
掃除婦「あらぁ!まあ!」
掃除婦はアイに手を握られた後、まるで踊るように回らされる。アイは客室の手すりに掴まった後に駅に飛び降りる。すると、客室からアイを呼ぶ声がした。緑色の煙を上げる窓から声がする。
???「先に行っててくれアイ!私も後で追い付く!」
アイ「うん!タキオン!」
アイと呼ばれた少女は車掌が投げた杖を手にした後、列車は駅に到達して止まる。
彼女の名は、ウォンカ・D・アイ。世界中を旅するチョコレート職人であり、悪魔の実を食べた能力者でもあったのだ。
アイ「帽子は決して忘れない♪赤は可愛くて大好き♪だから何時でも赤の帽子とスーツは手放さない♪」
列車の機関室から運転手が顔を出した。
運転手「アイ!何時も手伝ってくれたお礼だ!頑張って世界一のショコラティエになれよ!!タキオンもな!!」
船長が袋を投げる。アイは片手でキャッチして受け取ると、船長に手を振ってお礼をした。袋の中には、沢山のベリーが入っている。
アイ「ありがとうおじさーん!!頑張るねー!」
アイはウインクをする。船長は笑いながら手を振った。
運転手「ホントに良い子達だ………頑張れよ」
運転手のその顔は、まるで子供の旅立ちを見送る親のようであった。
アイ「イヤッホー!」
アイはそのまま港町に向かって走る。
アイ「世界を旅してやや6年!タキオンと共に旅して来て正解だった!嫌になる事もたくさんあったけど、此処で私のチョコを色んな人達に食べてもらうんだ!」
その軽快は足取りは速く、しかし人の波を巧みなステップで潜り抜けていく。背中に背負う木箱のような箱を背負いながら、アイはその足で町へ入る。
アイ「さあ着いた!此処が『偉大なる航路』の前半の海で有名なお菓子の国!『スイートガレリア』だね!」
アイ「ん?」
アイは突然自分の靴が、誰かに拭かれる感覚を感じた。下を向くと、少年が自分の靴を拭いていた。
アイ「ありがとう拭いてくれて。でも次は、きちんと断りを入れてから拭くんだよ」
少年「こんなに!?ありがとうお姉さん!」
少年はアイから受け取ったベリーの多さに驚いた。少年はよく見ると、服もボロボロだ。恐らく生活が厳しいのだろう。
アイ「ねぇ、この辺りでお店を開きたいんだけど、何処か良い場所とか無い?」
少年「それなら、街の奥にある中央通りに一軒だけあるんだよ。その店は何年も前に潰れちゃってね」
アイ「そっかぁ!ありがとう!」
アイは少年にお礼を言った後、町の奥に向かって走り出す。
???「リンリンの所から逃げ出してもう7年♪これまでにいろんな島を巡ったな♪」
アイの背後から走って来たのは、馬のような耳を頭に生やし、馬のような尻尾を腰に生やす、長い白衣を身に纏った少女だ。
アイ「遅かったよタキオン!」
タキオン「おっとこりゃすまないね。薬の調合に時間をかけてしまっていたのさ♪だが心配無いさ♪これから私達は夢を叶えに行くのさ♪そうだろ?アイ♪」
アイ「勿論!私達姉妹の作るチョコを、世界中に売るからね!」
アイはタキオンと呼んだその少女と共に歩く。
タキオンと呼ばれた少女の名は、ウォンカ・D・タキオン。アイの双子の姉であり、アイと共に世界を旅するマッドサイエンティストだ。白衣が風に揺れており、馬のような耳がピクピクと動き、尻尾が左右に揺れる。
スイートガレリア。この島は、新世界に存在するトットランドと呼ばれる四皇ビッグ・マムの支配する島に次いで、最もお菓子産業に力を入れている『偉大なる航路』前半の海に存在する島だ。この島で特に作られているのは、チョコレートだ。
アイとタキオン。この二人は容姿こそ違うが、実は双子の姉妹である。タキオンが姉で、アイが妹なのだ。しかし、容姿があまりにも違う。この世に産まれた時、それぞれが色濃く受け継いだ血がそれぞれ違うからだ。タキオンはミンク族の父親の血を色濃く受け継いだ結果、人の姿をしながらミンク族の獣耳と尻尾を得た。しかしアイは容姿こそ完璧だが、ミンク族の耳と尻尾を持たない為、人間の母の血を色濃く受け継いだようだ。
容姿が違うのも、突然変異を起こした遺伝子が成せる技と言えるだろう。
そして、アイとタキオンは中央通りにやって来た。二人の目の前には、看板も見本も無い建物が建っていた。どうやら閉店して暫く建った店のようだ。
アイ「此処では努力と才能次第で店を持てる♪いつか此処が私達の店になるんだ♪」
タキオン「だが私達だけでは思うようにいかない♪それにお金だって掛かるだろう♪」
アイ「でも帽子一杯の夢を持ってる♪溢れ出して来るよ沢山の夢♪必ずお店を建てよう♪私とタキオンの魔法のお店♪」
アイはその場で踊りだす。その時、世界がダンスホールのようにピンク色に染まる。ミラーボールが回って光を反射して、容器なダンスホールとしてその場を盛り上げる。アイが踊るとタキオンも踊り出し、周囲の人々も踊り始めた。
しかしそれは、アイがイメージした夢の景色に過ぎない。実際はアイとタキオンが踊っているだけだ。
しかし、周囲の人々はアイとタキオンの踊りを見て、自分達が踊り出す光景を幻視した。
アイ「いつか此処に店を建てて、お金を稼ぐんだ。お金が溜まったらウォーターセブンで船を造って、世界中に私のチョコを届けよう!」
タキオン「ああっ。でなきゃ、命懸けでリンリンの下から逃げ出した意味が無いからな」
アイ「……うん!夢のチョコレートを作るからね!」
二人が空き家を見つめながら話し合う。すると、一人の海兵が二人の肩を叩く。
アイ&タキオン「ん?」
海兵「すみませんが、もし夢を見たのであれば、罰金を払う法があります」
海兵がそう言った後、空き家の隣にある掲示板を指差した。二人が指さされた看板を見ると、掲示板に貼られている紙の中で最も大きい紙に、こう書かれていた。
『夢は禁止。見たら罰金』
アイ「えっ?何で………」
タキオン「それは無いだろう?」
海兵「そうは言われましても…………国王が決めた事ですので」
海兵も申し訳無さそうな顔をする。どうやら彼もそんな事はしたくないようだ。
アイ「………うん、それなら仕方ないか。はい」
アイは海兵にベリーを支払った。
海兵「……どうも」
海兵にお金を支払った後、アイとタキオンはその場を後にした。海兵も申し訳無さそうに二人を眺めていた。
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夜、アイとタキオンは寒い公園の中でベンチに座っていた。
アイ「ふぅ………やっぱり寒いや」
タキオン「お金だって、もう安い宿で泊まれるか怪しい位に減ってしまったね」
此処までアイとタキオンは、稼いで来たお金をほぼ失っていた。というのも、海列車でかなり使った。材料の購入、お腹を空かせた道端の人達にお金をせがまれ、泣く泣くお金を提供した。そうする内に、お金は1000ベリーのみとなってしまったのだ。
アイ「うん。たった1枚の札で……ひゃ!」
アイは残った1枚のお札を取り出す。その時、風が吹いて二人に冷気が襲い掛かる。そして、アイの握り締めたお札が全て風に吹き飛ばされた。
そのまま1枚のお札は風に飛ばされて、そのまま空の彼方へ消えてしまった。
アイ「…………はぁ。仕方ないか」
アイは帽子を取ると、その中に手を突っ込んだ。
アイ「才能と努力次第で誰でもお店は出来るけど、何にするにしてもお金が掛かるなんて…………まあ、明日にはお菓子を売って稼ぐしかないね」
タキオン「野宿なんて久々だな。私と君で、リンリンの所を抜け出してから、色々としてきたな」
物乞い、野宿、身売り等、色々してお金を稼いで来た。その内に悪魔の実を食べて不思議な力を得た。ビッグ・マムの元に居た時、修行を付けられて覇気を覚えてたのも、不本意とはいえ感謝している。
そして、帽子の中からランタンを取り出したアイ。ランタンを開けて中の蝋燭に息を吹き掛ける。すると、先程まで付いてなかったランタンに火が灯される。
ランタンを閉じた後、ベンチに置いた後に背負った木箱を手前の地面に置いたアイ。そして、帽子から2つのコップとポットを取り出すと、ポットの中身をコップに注いだ。温かいココアの甘く温かい香りが辺りに漂う。
アイ「はい。タキオン」
タキオン「ありがとう。お休み前の1杯だね」
そして、自分のコップにも1杯注ぐアイ。2人分のココアを注いだ後、コップを手にして飲み始めた。すると、タキオンが懐から取り出した毛布を自分には被せ、そしてアイを包み込むように毛布を被せた。互いに寄り添い合う形になる。
アイ「………ありがとうタキオン。何時も側に居てくれて」
タキオン「なに、妹が寒がってるんだ。これくらいは当然だよ」
二人はココアを飲みながら、お互いに寄り添う。人肌同士が触れ合い、毛布に加えてココアも飲んだ。此れなら寒い夜も凌げそうだ。
???「なんだ?お前達此処で野宿するつもりか?」
その時だった。二人に話し掛ける、一人の中年男性が現れた。髪はボサボサで、何日も風呂に入ってないせいか匂いもキツそうだ。
アイ「……一晩だけね。明日には今頃お金持ちになって船を買うんだ」
???「明日にはカチコチに凍っちまうよ。船買う前にお陀仏だ。いくら抱きしめ合って温めても保たないぜ」
タキオン「……じゃあ、君が宿を提供してくれるのかい?」
そう言ったタキオンは、男の言葉が現実である事を理解した。コップの中身のココアが、まるで冷凍室に入れたかのように凍り始めたのだ。折角の温かいココアが台無しだ。アイも同じだが、帽子から取り出したフォークを凍ったココアに突き刺し、回してくり抜いた後に凍ったココアを食べ始める。タキオンもフォークを貸してもらい、凍ったココアをくり抜いて食べる。
???「勿論さ。俺はブリーチャー。宿なら案内してやるよ」
アイ「本当!?ありがとう!」
タキオン「助かるよ」
ブリーチャー「良いって事よ!フフッ」
こうして、ブリーチャーと名乗る男に案内されるウォンカ姉妹。この時にブリーチャーが悪い笑みを浮かべていたが、二人は気付かなかった。
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ブリーチャーに案内された二人は、橋を通った先にある一軒の宿に到着した。
ブリーチャー「ミセス・スクラビット!おい俺だ!」
すると、ポストが横に開いて女性が顔を覗かせる。
???「なんだいブリーチャー!アンタ何処ほっつき歩いてたんだい!」
ミセス・スクラビットと呼ばれたその女性は、ポスト口から覗く限り男と同じ位の歳だろうか。
ブリーチャー「良いもん連れて来たぞ」
スクラビット「なんだい?もしかして……お客かい?」
スクラビットが期待を込めた声を上げる。まるで獲物を狙う狼のように、目が鋭くなっている。
ブリーチャー「おっ?良く分かったな。その通りだ!」
ブリーチャーがポスト口から横に身体をずらし、アイとタキオンの姿をスクラビットに見せた。
スクラビット「おやぁ!!良くやったじゃないか!!」
すると、扉が開いてスクラビットが姿を現す。小太りであるが年相応のようだ。
スクラビット「ようこそ!スクラビットとブリーチャーの宿兼クリーニング店へ!」
タキオン「クリーニング店?宿じゃないのかい?」
スクラビット「確かに宿だけど、此処はクリーニングも営んでるんだよ。ショコラータ!!」
スクラビットが声を上げて、誰かの名前を呼んだ。
すると、一人の少女が姿を現す。
ショコラータ「はい……スクラビットさん」
スクラビット「お客さんだよ。飲み物をお出ししな!」
ショコラータ「はい」
波打つ茶髪が特徴の少女だ。しかし、元気が無さそうだ。アイはスクラビットと向き合う形でカウンターに立つ。
アイ「あの子は?」
スクラビット「気にしなくて良いよ。あの子、ウチに捨てられた子なんだよ。で、アタシが今まで育てて来たって訳」
アイ「そうなんだ。でも、なんか元気無さそうだよ?」
スクラビット「そうなんだよねぇ。今までアタシが育ててやったってのに、人を疑う癖が強いんだよ。
アイ「えっ。何それ」
その間に、タキオンはショコラータが歩き去った様子を見た。
タキオン(あの子は何やら私達を見た時、何か慌てていた様子だったな。私達に来たら困る事でもあるのか?それにクリーニング店でもあるというのに、この三人だけで経営出来るとは思えんが………此処に来たのは間違いか)
タキオンはそんな考えに至る。ブリーチャーについて来たのは間違いと悟る。タキオンはすぐにアイを連れて宿を出ようとするが、此処で思わぬ出来事に襲われる。
アイ「よし!契約完了!」
スクラビット「はい2名様ご案内〜!」
タキオン「ってお前何してんだー!!」
タキオンが叫ぶ。スクラビットが判子を契約書に押した後にベルを鳴らす。
アイ「私とタキオンの名前書いたよ」
タキオン「何故書いた!?何故書いたんだお前ぇ!?」
アイ「スクラビットさん良い人だよ。宿代は一人につき一泊500ベリーだって。私達二人で1000ベリーだね。支払いは明日の夜までで良いんだって」
タキオン「いや………もう少し考えてからでも!」
アイ「良いじゃーん。明日になったらスイートガレリアで稼げば良いんだから」
タキオン「………コイツと別室でお願いするよ」
アイ「何でぇ!?」
スクラビット「それじゃあ案内するよ。コッチだよ」
こうしてタキオンは不安を抱えたまま、アイと共にお部屋へ案内される。しかし、その時に階段を通る二人だが、その時の外の壁に記された文字に気づかなかった。
『スクラビットとブリーチャーの宿。一泊の宿で、一生の宿に』
そう描かれている事に、二人は気付かなかった。
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此れは、世界一のチョコ職人を目指す少女、ウォンカ・D・アイが、双子の姉であるタキオンと一緒に、大海賊時代を生きる物語である。
因みに序盤の曲は、私が独自に考えた即興のオリジナルソングです。