完璧で究極のチョコ職人は、大海賊時代でチョコを売り始めます   作:ちいさな魔女

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アイとチョコレート工場のはじまり:その4

アイ「それにしても………この部屋は何?掃除してないの?」

 

ショコラータ「掃除はあまりされない。寮に泊められてる人達にやらさせてるの。トイレだって黒ずんでるし、洗面台も汚いまま」

 

アイはトイレの扉を開けた。トイレはかび臭い匂いがあり、便器の中も黒ずんでいる。流し台も茶色に染まっており、不衛生な状態なのが目に見えて分かる。

 

アイ「うわぁ………契約書にサインするんじゃなかった。タキオンにも申し訳ない事しちゃったよ」

 

ショコラータ「もしかして、タキオンって人は契約書に名前、書いてないの?」

 

アイ「私が書いたよ」

 

ショコラータ「でも泊まったんでしょ?」

 

アイ「うん。部屋別々になったけど……」

 

ショコラータ「じゃあその時点で契約したも同然だよ。例え本人が契約書に直接サインしてなくても、本人が後から了承するような形になれば、契約完了とみなされる。アイとタキオンの場合なら、アイがタキオンの名前を書いた後にタキオンも泊まる事を了承したからこうなった。それだよ」

 

アイ「うう…………」

 

罪悪感がこみ上げてきた。

 

ショコラータ「それで、借金はどれくらい?」

 

アイはベッドに座った後に答えた。

 

アイ「500万ベリー。タキオンと合わせて1000万」

 

ショコラータ「ならまだ良いよ。私は5000万ベリー」

 

アイ「えっ!?貴女は確か、孤児なんだよね?」

 

ショコラータ「そう。スクラビットさんは私を育ててくれたけど、その分しっかりと請求された」

 

アイ「ヒドっ!!」

 

ショコラータ「しょうがないよ。貧乏人はガメつい人達に虐げられる。この大海賊時代じゃ、尚更だよ。強くて悪い海賊や、大金持ちの権力者、腐った海軍に、私達みたいな貧乏人が出来る事は何も無い」

 

アイ「………そうかな。私はそれを理由に、諦めたくないんだ」

 

アイは背中に背負っていた木箱を机に置いた。

 

アイ「虐げる人も悪いけど、奴等に負けて心を折れたら永遠に勝てないまま。私は負けたままは嫌。何度負けても私は立ち上がって、前を見るよ」

 

そう言ったアイは、木箱のスイッチを押した。

 

ショコラータ「……何をするの?」

 

アイ「チョコレートを作るんだよ」

 

アイは服のボタンを外すと、コートを横に広げた。コートの裏側には、無数の瓶がぶら下がっており、瓶一つ一つに違った材料が入っていた。

 

ショコラータ「わぁ!どうしたのそれ?」

 

アイ「世界中で集めたお菓子の材料。さあリクエストはある?ビター、ブラック、ミルク、ホワイト、ストロベリー、抹茶、アーモンド、大抵のチョコは作れるよ。勿論、チョコ以外のお菓子もね」

 

ショコラータ「分かんない。だって食べた事無いもん」

 

アイ「そうなの?じゃあ初めてのチョコを作ってあげる。私のポータブルキッチンでね」

 

アイの木箱は変形して、軈て一つの調理場へと姿を変えた。どれも小さなサイズの調理道具だった。調理コンロ、鍋、フライ返し、ホイッパー、包丁、めん棒、洗面台等、料理に欠かせない施設や道具が揃っている。

 

アイは消毒液で手を消毒した後、手袋を両手に填めて調理を開始する。

 

アイ「………よし、アレが良いね!その名も、『ひとすじの光』。材料は空島で採取した良質な雷雲と、夏島で採れた『太陽の雫』。此れを食べれば暗闇の中に希望の光が見えるよ。本当なら雷雲のようなチョコだけど、サービスしてあげる!『ひとすじの光のケーキ』!私のチョコケーキを食べられるよ!」

 

アイがコートから取り出したのは、2つの瓶。一つは稲妻の走る雲が入った瓶で、もう一つは金色に輝く実が入った瓶だ。いずれも液体で満たされている。

 

アイは瓶を開けた後に、ボウルに2つの液体を混ぜた。片手から手品で取り出したカカオ豆を包丁で瞬時に切り、バラバラにした。

 

砂糖を混ぜて、ボウルで液体と共に混ぜ合わせ、鍋で煮込んで行く。

 

あまりにも手際の良い作業に、ショコラータは視線がアイに釘付けになる。

 

ショコラータ「ずっとチョコ職人を目指してたの?」

 

アイ「ううん。小さい頃、私はチョコは嫌いだった。あまり話したくないけど、ママに無理矢理作らされてた。失敗したらいつも私を打ってた」

 

アイはチョコのスポンジケーキを完成させた。そして、チョコはホイップクリームでケーキをデコレーションしていく。一瞬だが、アイの目に宿る星が黒く染まったように見えたショコラータ。

 

アイ「当時の私にとって、チョコは私を愛してないママを思わせる嫌な食べ物。でも、それが変わったのはタキオンと逃げ出してからだった」

 

ショコラータ「何があったの?」

 

アイ「物乞いをしてたら、ある人がチョコを渡してくれた。タキオンも私も、チョコは食べたくなかった。でもその人は言ったんだ。『チョコは嫌いにならないでくれ。無理矢理作らされたかもしれないが、君のチョコには世界を変える力がある。これからは君の手で、世界中の人達に魔法のチョコを作るんだ』って」

 

アイはボウルでかき混ぜた後に、型に流し込んで形を作っていく。冷蔵庫に入れて冷やした。

 

アイ「それで、渡されたチョコを食べたよ。丸いチョコボール一個だけだったけど、その美味しさに私は惹かれた。それからだよ。チョコを愛し、世界中に私のチョコを届けたいと思ったのは」

 

ショコラータ「そうだったんだ………」

 

そして、皿にケーキを添えたアイ。

 

アイ「ほら、出来たよ」

 

アイはショコラータにチョコケーキを渡す。皿に乗ったチョコケーキ。雷の形をしたビスケットも添えられており、雷雲のような水色のチョコケーキ。

 

ショコラータ「頂きます……」

 

ショコラータはケーキを掴むと、そのまま口に運んだ。

 

ハムッムシャムシャ

 

アイ「……どう?」

 

ショコラータ「………美味しい。でも、こんなに美味しいと、チョコの無い日々が辛くなりそう」

 

アイ「毎日でも食べられるよ。私がチョコを作ってあげる。さあ、タキオンの元に行ってみて」

 

ショコラータ「………ありがとう!」

 

こうして、生まれて初めてのチョコを味わったショコラータは、アイに促される形でタキオンの部屋に向かった。




今回は短いです。
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