ゲ ヘ ナ ク ソ ボ ケ ク ロ モ ッ プ 作:フルフロ
「……んぉ」
麗らかな日差しの元、温もりに包まれながら食事をしてた私はポケーッとした声を思わず出してしまった。どうやら友人にも聞こえてたらしく食事の手が止まった。
「何かあったの?」
「ん? いやコレコレ」
そう言ってスマホの画面をみせる。そこには『連邦生徒会による新組織発足!?』とクロノスからのネット記事が写っている。
「そう言えば、情報部からそんな話が上がってたわね」
「ここんところ結構忙しいじゃん。だからその対策なのかなって」
「……だとしても、ゲヘナの無秩序は今に始まった事じゃないし」
「そうだねぇ」
そう言いながら食堂の片隅に目を向ける。そこにはすごく迷惑そうな目をした給食部を脇に見ていられない戦いが繰り広げられていた。
「だから何度も言っているだろうが風紀委員め! カリンはこの後午後からイブキと共に遊ぶ予定が入っているんだとな!!!」
「知りませんよそんな事! この後カリンさんは委員長と一緒にショッピングに出掛けるんですから!!!」
片や生徒会長、片や風紀委員会行政官。割と二人ともいい立場だと思うんだけど、側から見たら犬の喧嘩にしか見えない。
「あれ止めなくていいの?」
「……アコは無視していい」
「マコトちゃんパイセンは?」
「……あっちはあっちで誰かが止めるでしょう」
「争いはなんとやらっていうけど何時も争ってて飽きないのかな」
「まあ、放っておいていいでしょ。それより」
目の前にカレーの乗ったスプーンが来る。と言うか
「そもそも、なんで私ヒナちゃんパイセンの膝でカレー食べてるの?」
「……?」
いやそんな首傾げられても、こっちが頭にはてなマークなんだけれども。
「この間一緒に食事を取るって言ったでしょう」
「隣同士で座って自分で食べるものだと思ってたんだけど」
「私が食べさせたいだけよ」
「さいですか」
あーん、と口に運ばれたカレーを頬張る。口が小さいからどうしても少しずつになるし、普通のスプーンサイズでもデカいのだ。多分昔はもっと大口で食べてたと思うんだが、いかんせん記憶が曖昧だ。
さて、食事もそろそろ終わる頃だし、なんだったらしばらくすれば午後の授業も始まるところだ。
「じゃあそろそろ私クラス戻るね」
「……ちょっと待って」
そう言って後ろから抱きつきながら髪に顔を埋めて深呼吸をしだすヒナ。……なんで深呼吸してんの?
「……ん、ありがとうカリン。とりあえずはこれで頑張れそうね」
「何がとりあえずなのかはさておいて、どういたしまして」
そのままアコを連れて帰っていくヒナを他所にマコトが一仕事終わらせたような顔で近づいてきた。
「全くあの横乳めが……。カリンは我々ゲヘナの、ひいては万魔殿のものだと言うのに困った奴だ」
「マコトちゃんパイセン。おっはー」
「キキキッ、ああおはようカリン! ではイブキの元に向かうとしよ「イブキと遊ぶのは明日の予定じゃなかったっけ」う……何ィ!?」
「だから言ったじゃないですか……」
とマコトの後ろからイロハが溜息をつきながらやってきた。ってことは忘れてたか勘違いしてたって事か。
「イブキが楽しみにしてたのは事実ですけど、今日は巡回任務が入ってるからどのみち無理でしたよ」
「ぐっ……、いいや! 今日の巡回は中止だ! イブキと遊ぶ以上に重要なことなどあるか? いいや無い!!」
「……はぁ」
「イロハちゃんパイセンも大変そうだね」
「まあ、慣れたと言ってしまうとそれまでですが……」
そう言いながら後ろに回ったイロハが私を抱きしめながら、ヒナのように深呼吸し始めた。……???
「もしかして私って変な匂いする?」
「いい匂いですよ。それに抱き締めると温かいので……」
「もしかして子供扱いされてる? 私イブキより身長大きいけど?」
「イブキは先日の健康診断で128cmになりましたよ」
「……勝負は次回まで預けておこうか」
「安心しろカリン! お前のその黄金比のような体であれば身長など瑣末な問題だ!」
「私より身長大きいマコトちゃんパイセン嫌い」
「——————……」
「……あー、駄目ですね。燃え尽きてます」
そのまま真っ白に燃え尽きたマコトを置いてクラスに戻る。結構ギリギリだったな……。
⭐︎⭐︎⭐︎
ここ最近の治安の悪さが悪化したのかゲヘナにも不良生徒が流れてきているらしく、その調査や対応でヒナもマコトも忙しそうだった(マコトに関しては真偽不明)のでD.Uに遊びに来ていた。
ここはヴァルキューレの管轄内な為、比較的治安のいいところだ。まあ銃撃が一切発生しないわけじゃないけれど。
そんなこんなで暇潰しがてらショッピングでもしようと思っていたのだが、やっぱりこの辺りも残念ながら治安悪化の影響があったようだ。
無人ビルの周辺で屯していた不良生徒に拘束されて巡航戦車の中に拉致された後、元ゲヘナ生徒だと言う子とお茶を飲んでいた。
「いやおかしくない?」
「ん? なんかあったの?」
「いやこいつが急に変じゃねーかってよ」
不良生徒達は特に疑問に思ってないらしいが、なんで私この子達とお茶捌いてるの。
「偏見だけどこう言う時って強請ったりするんじゃないの?」
「けどお前ゲヘナのカリンだろ?」
どうやら不良生徒にまで私の名前が広がっているらしい。ちょっと怖いけど、現状は特に何かするわけではなさそう。
「そうだけど、会ったことあったっけ」
「ねえけど、ゲヘナの制服着てるちびっ子なんて万魔殿かカリンしか居ねーじゃん」
「そーそー、あたしら元ゲヘナだから分かったんよね」
「他にも候補はいるけどそいつらに会ったら真っ先に逃げてるしな」
「前から思ってたんだけど、何でゲヘナ学園のみんなって……生暖かいの? 何もしてない筈だけど」
「生って……まあ、何でって言われてもなぁ。何でだ?」
「知らないけど、なんか甘やかしたい感じ? ていうか構ってあげたい的な?」
「そんなんだよな。理由とか聞かれても知らねって感じ」
「ほーん。そんなもんなのか」
「まあまあその辺はいいじゃんどうでも。それよかこっちにお菓子あるし食べる?」
「くれ」
「じゃあちょっと貰う」
そんなこんなでしばらくお茶会に興じていると何やら外が騒がしくなってきた。
「どうした?」
「なんか前の方の連中撃たれてる。てかあれ風紀委員じゃない?」
「えっ? ヒナちゃんパイセンいるの?」
覗き窓から見てみるとヒナは居なかったが赤いタイツが見えた。多分チナツだとは思うけど、確か連邦生徒会にどうとかってヒナが言ってた気がするんだけど。何でこんなところに?
「マジ? ウチらやべーじゃん。ていうか指示出した奴も戻って来ねーし逃げたほうがいいんじゃね?」
「えーっ、無理だよ」
「んでだよウチ風紀委員とやり合うのはごめんだぞ」
「だってもう撃たれてるし」
言った直後、装甲を削り取るような強烈な音と衝撃が戦車に走った。咄嗟にお茶は掴んだけどお菓子は散らばっちゃった。と言うかこの状況もしかして自分もマズいのでは?
「おい! ウチらは最悪このままトンズラするけどカリンがここにいるのはマズいだろ! 如何にか停戦指示しろって!」
「無理だってー! あれミレニアムとトリニティの連中も混ざってるし、そもそもあたしらの話聞いてくれると思う!?」
「だったら白旗でも何でも振っとけ!」
「そんなものあったらとっくに「ハンカチで良ければあるよ」よっしゃ来た!」
私の差し出したハンカチがハッチの隙間からヒラヒラ振られると、暫くして銃撃音が止み始めた。どうやら交戦の意図が無いことに気づいてくれたみたい。
「ほら、今のうちにさっさと行きな。こっちはこのまま逃げるから」
「じゃーねー、また会ったらパフェでも食べにいこっか!」
「おけおけ、約束ね」
そのまま滑り落ちるように戦車から降りるといそいそと戦車が撤退していった。というか名前書き忘れちゃったけどまた会えるのかな?
すると、戦車から降りてきた私に気づいたチナツが駆け寄ってきた。
「カリンさん! 無事でしたか!? 怪我の有無は……」
「平気平気ー。お茶飲んでただけだよチナツ」
「それならいいのですが」
私たちが話してると何人かの子達がやって来た。その後ろにいるのは何とも珍しい人だった。このキヴォトスにおいてヘイローを持ってない人は早々いない、てか見たことないレベルか。
まあ何となく前の自分もヘイローは無かったような気がするから、もしかしたら自分と同じところから来たのかも?
「初めまして、でいいかな」
「そっすね。ああ自己紹介ですかね」
「御影カリンです。よろしくお願いしますね」
それが割と長いこと付き合いの生まれる、先生との初めての出会いだった。
主人公
元ブルアカユーザーにして現身長127cmのゲヘナ学園1年生。ゲヘナ箱推しだったが蘇った時に記憶がぶっ飛んでいる為、何となくゲヘナが好きくらいになっている。ゲヘナとは別に気になる生徒が何人かいる模様。
ゲヘナ学園
主人公に脳を焼かれた被害者の会。ゲーム内の好感度が軒並み高かった為、主人公に対して並々ならぬ愛情があり、その勢いはプレイアブルキャラに留まらない。(一部を除き)上から下まで主人公第一主義な為、結果的に原作より関係は多少マシになっている。