ゲ ヘ ナ ク ソ ボ ケ ク ロ モ ッ プ 作:フルフロ
きっかけは何だっただろうか。
始まりは柴関ラーメンの大将からの連絡だった。店先にゲヘナの風紀委員会が部隊を展開し、ラーメンを食べに来ていた便利屋68に対して投降する呼び掛けをしていると。
それを聞いた私と連絡のつかなかったホシノを除くアビドス対策委員のメンバーで柴関ラーメンに急行してみれば、大規模な部隊を引き連れたゲヘナ風紀委員会の面々がいた。よく見ればチナツもいる辺り全員とは言わないものの、相当数の生徒を連れてきているのだろう。
対して便利屋68はと言うと、そこまで狼狽えているわけでも無く冷静に状況を俯瞰視していた。どうやら何処かのタイミングでぶつかることを考えていたらしく、風紀委員長のヒナさえ居なければ勝ちの目はあるらしい。
双方共に戦闘に踏み切る理由がある為、いつぶつかり始めてもおかしくなく且つ両陣営がゲヘナ学園の生徒だったこともあり、確認ついでにカリンに連絡を取ったのだが。
風紀委員会の行政官の言葉で状況が変わってしまった。
「はぁ……やはり野蛮なテロリストはカリンさんの目の毒になりますね。早急に対処しなくては」
「……はぁ?」
瞬間、アルが物凄い剣幕で聞き返した。思わず身震いする程の圧に、普段と違う様子のアルにびっくりした様な便利屋の面々
「アルちゃんアイツぶっ殺すよ」
「……アコ。死にたいならハッキリ言いなよ。叩き潰してあげるからさ」
「や、やっちゃって良いんですよね!? 私達からカリンさんを奪うなら死んでも文句は言えませんよね!」
いや違うかな。全員キレてるだけだったよ。
というか本当に不味い状況だ。まずもってここはアビドス自治区であり、例えゲヘナ学園とあれども他校の自治区内で無許可での本格的な戦闘行為は立派な違反行為、らしい。
まだキヴォトスに来てから日が浅いが、アヤネ達の言っていることが事実なら理由は何であれ、この場での戦闘行為は止めなくてはならない。
ただ……。
「風紀委員総員戦闘準備。目障りな害獣を駆除します」
「全員構えなさい。ここで風紀委員会を潰すわよ」
どう見ても今から介入しても止まりそうにないのが現状だ。その為のヘルプを頼んだのだが。お願いだから頼むカリンみっともないけど急いで連絡つけてくれ!
「先生、どうすんのよ! 早く止めないとこいつら戦争し始めるわよ!?」
「ちょっと待ってねセリカ。もう少しで……」
「……アコ? こんなところで何やってるの?」
「えっ? ヒ、ヒナ委員長!?」
「私も居るよー」
すると風紀委員会の間を掻き分ける様に、ゲヘナの風紀委員長が姿を表した。更にはその背中からカリンが手を上げてアピールをしている。
「ど、どうしてヒナ委員長がここに?」
「カリンと買い物をしていたのだけれど、何処かの誰かが問題行動を起こしてるって連絡が来たのよ。電話でも良かったけど、直接顔を見たかったから来たわけ」
「私に合わせてたら遅くなっちゃうから背負って貰ってたんだよね」
「カリンはもう少し食べて体を鍛えたほうがいい」
「おうおう私より強くて身長のデカいヒナちゃんパイセンは知らないかもだけど、これでも鍛えた結果なんだぞ?」
「……そうね。貴方はそのままで良いわ」
ヒナとカリンの掛け合いを他所にアコはどうやら気絶している様……え、気絶?
「チナツ? えっと、その子は大丈夫そうなの?」
「問題ありませんよ先生。恐らくカリンとヒナ委員長に迷惑をかけた自責の念で気絶したものかと」
「だから言ったのに……委員長が『便利屋、美食研、温泉開発部は暫く放置して良い』って前から通達されてたじゃん」
「放置って?」
「ご存知の通り、ゲヘナ学園の殆どの生徒はカリンに心酔している……と言えば良いですかね。なので先程あげた集団も同じくそうなんです」
「何かやらかす度に『カリンに嫌われるぞ』って脅し続けたら自粛とまではいかないけど、多少理性的になったって云うか、そんな感じ」
成る程、つまりは皆んなカリンから嫌われたく無いが故にゲヘナ学園の犯罪率が低下しているって事か。
……宗教か何かなの?
「便利屋。私達はこれで引くから貴方達も撤退しなさい、お互い争うのは不本意でしょう? ……少なくとも今は」
「……そうね。カリンに免じてここは引いてあげる」
「それじゃあ、風紀委員は全員撤収。アコは帰ったら少なくとも反省文は覚悟しておいて……逃げないでよ?」
「ヒィ!?」
指示を出し終えたヒナはこちらに気がつくとバツの悪そうな顔で近づいてきた。
「貴方達は……アビドスの」
「そうですよー⭐︎」
「ん」
「……ここまで大事にするつもりはなかったの。ごめんなさい」
「いえ、此方としても戦闘を止めてくださったので!」
「……まあそうよね。いきなりぶっ放して柴関ラーメンを吹き飛ばしでもしてたら別だったけど」
「アコには私からきつく言っておく。それと……」
そのままこちらに顔を向け
「貴方が先生ね。いつもカリンから話は聞いているわ」
「初めまして、シャーレの先生だよ。ちなみにどんなこと話しているか聞いても?」
「その……ゲームの女の子に恋してるって」
「待って待って、それは誤解だってカリンに伝えた筈なんだけど!?」
「でもこの前仕事疲れたからもうやりたく無いってタブレットにお悩み相談してたよ?」
「先生?」
「うっわぁ……」
「ま、まあまあ。趣味はその、自由って言いますし。そう云ったものが恋愛対象でもおかしくは……ないんじゃないですか?」
おかしいなぁ。何でこんなに心が痛いのかな?
「ご、ごめんなさい。違ったのね」
「大丈夫だよ……出来れば、他にも勘違いしている子がいたら説明してもらえると本当に助かる」
「そうさせてもらうわ。じゃあ私もこれで失礼する」
「じゃーねーセンセー。また遊びに行くね」
「ちゃんと誤解は解いてきてね……」
その後、昼寝から帰ってきたらしいホシノと合流して一度アビドス高校に戻ることにした。しかし、戻ってきたホシノから告げられた事実がまた新しい問題の始まりだった。
⭐︎⭐︎⭐︎
「はぁ……」
「アルちゃんそろそろ元気出したらー?」
「わかってるわよ……はぁ」
「だ、大丈夫でしょうか?」
「暫くすれば元に戻るはず」
ここ数日、実りのある仕事が無く安値で食べられる食事を探していたのだが、まさかの風紀委員会との遭遇。そのまま戦闘になるかと思ったが、風紀委員長のヒナの一言で撤退して、あまつさえカリンと話す機会すら無かった。
日頃からアウトローを目指しているアルとしては、相手に言われたからと簡単に撤退してしまった事、そして何よりカリンと話せなかったことが重りの様にのしかかっていた。
「……はぁ。カリンに会いたい」
「私にあってどうするん?」
「それは……撫でたり、抱きしめたり、一緒に食事したり……」
「今からご飯食べに行く?」
「そのお金が無いのよ……ん?」
そこで、隣から聞こえる聞き覚えのある声に目を向けると、ムツキの膝ににカリンがちょこんと座っていた。
「アルちゃんおっそい。やっと気がついたの?」
「カリン!?」
「やっほー」
「落ち込んでで気がついてなかったけど、さっきから来てたよ」
「カリンさん、どうぞお茶です……」
そんな自分を置いてカリンに絡んでいる社員にとうとうアルが叫んだのだった。
「き、来てるなら早く言いなさいよぉー!!」
天雨アコ
ヒナ委員長最推しにして主人公LOVE勢筆頭。万魔殿とゲヘナテロリスト群にカリンを意地でも渡したく無い。が、当の本人が気にせずふらっと立ち寄る為度々脳が破壊される。
便利屋68
社長筆頭に全員がカリンを何とか便利屋に入れようと画策している。よく絡みに行くのはムツキだが、何だかんだで一緒にいる時間が長いのがハルカだったりする。それをみて密かに母親になれないか悩んでいる奴がいるとか。