その後良吾は海桐花の奢りという事で腹一杯に食事を楽しんだ。
この2日間飲まず食わずで過ごしていた為凄じい食欲であったが、バイキングだった為に食べた量の割に金額が嵩まなかった点は海桐花には幸いしたのだった。
そして腹も満たされた所で良吾と海桐花はいよいよ今年最後のG1の予想に移っていたのだった。
「うぅむ…今日のトラックバイアスは外枠が有利か…とはいえ交流G1故地方馬は切っていいとして、何を頭にすべきか…おそらく10番の馬が逃げるのはほぼ確実として2、3番手は中央馬で実績もある13と14番じゃろうし…」
一昨日と同じ様に海桐花はブツブツと呟きながら競馬新聞と睨めっこをしていたが、対照的に良吾は静かだった。
というのも良吾が愛してやまない馬が出走しており、その馬の応援馬券件本面馬券のみを買う事を決意していたのだった。
なお、その馬は競馬の祭典にも出走しておりその際に掲示板にて
返し馬キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
めちゃ落ち着いてる。王者の雰囲気。カス○ードの時みたいだ!!
よし、発走じゃーーーーー!!!!!!!
伝説の幕開けじゃーーーーーーーーっっ!!!!!
ファンファーレキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
よし!好スタート!見て!これがGI馬の好スタート!!
絶好の先行策!!
内で溜めてるぞ~、ワクワク。
さぁ、弾けるがいい!お見せっ!お前の末脚を!!
!!!!!!
等と応援されていた馬であった。
ただし不安がない事もない。
ここ2戦は馬券に絡めていない事が懸念材料であった。
しかし鞍上は昨年地方競馬から移籍して来たジョッキーでこの競馬場を主に戦っていただけに地の利はあると考えていたのだった。
「よし!買い目が決まったぞ!!良吾、お主はどうじゃ?」
「俺も決まったぞ」
「では互いに発表するかの!良吾から見せい!」
「俺は本命と応援を両方兼ねて2番人気の14番だな。
鞍上は元々ここで乗っていて中央に移籍したジョッキーだし、何よりこの競馬場との相性も悪くない!
来年も良いことがあると信じて一昨日買った17万を全部コイツの単勝に注ぎ込むぞ!!!」
「ふん、そんな買い方をして此方のようにスカピンになっても知らぬぞ!
此方は天才鞍上の13番に単複それぞれ50万で確実に増やすのじゃ!」
確実とは何かなのか。
馬鹿は海桐花の方だった。
「おい馬鹿やめろ!!!
一昨日500万溶かしてまた100万溶かす気か!?」
海桐花のあまりの学習能力の無さに良吾は声を荒げた。
「そもそも一昨日500万溶かしたのに、100万も賭けるとか頭逝ってるのか!?
それこそ風舞希さんに見つかったらタンコブどころじゃ済まされねぇぞ!?」
良吾の悲鳴にも似た声にも海桐花は不敵な笑みを崩すことは無かった。
「ふっ良吾よ、其方は勘違いしておるぞ?
バレねば犯罪じゃないのじゃよ」
「最悪だコイツ!遂にやっちゃダメな事まで…!!」
「何を勘違いしとるんじゃ!?
この100万は此方のポケットマネーじゃし、今日は馬券をスマホで買うのじゃよ。
風舞希の奴、スマホの使い方は疎いからのう。これなら馬券を買った事もバレぬわ!!」
(コイツ…何かしやがったらこの事、風舞希さんにバラしてやる…)
腹の立つドヤ顔でサムズアップしてくる海桐花を見て良吾は心に誓ったのだった。
その後各々馬券を購入して2人はコースが見える客席に足を運んだ。
「さて!真の意味での今年1年の締めくくりじゃ!!
来年のレースに向けて弾みをつけたいのう!!」
当然のように良吾の肩の上に陣取った海桐花ははしゃぎながら良吾の頭をペシペシと叩いきながらはしゃいでいた。
しかしそれと反比例するかの様に良吾は静かに1つの事を心に決めていたのだった。
(このレース、勝ったら風舞希さんに先日の無礼を詫びて思いを伝えよう)
と。
競馬で勝って思い人に告白するなど正直なところ意味が分からないが当の良吾は大真面目だった。
そもそも良吾が馬券を購入した馬、
元々両前脚が外側に向いている外向を抱えており一時は厩舎に引き取られる事すら危ぶまれていた。
しかしデビューしてからはダートで圧勝続きであった為に満を持して芝の、それも競馬の祭典に出走したのだがしんがり負けを喫してしまった。
掲示板では熱狂的なファンが応援していたものの、その際に出た『!!!!!!』が彼の代名詞になってしまった程だった。
そんな彼はその後も強敵達と戦い続け、時に栄冠を勝ち取り、時には辛酸を舐め、最近は惨敗が続くといった紆余曲折がある馬生を良吾は自身に重ねていたのだった。
小さい頃は体も大きく皆に頼りにされていたが反面その風貌を怖がられる方が圧倒的に多かったのだ。
しかも成長するに従っていつの間にか頼られるのではなく力を利用されて灰色の青春を送り、理想の女性に出会ったと思えば自身の早とちりで夢を諦めかけてしまった。
しかし今日のメインレースで彼が勝てば、負け続きの自分ももう少し頑張れる…
そう思っていたのだった。
そして、
ファンファーレが師走の空に鳴り響きいよいよ発走となった。
順調に枠入りが進み、
ガコン!!
レースが始まった。
序盤は海桐花が予想した通り10番の馬が好スタートから先頭に立ち後続の13頭を引き連れてスローペースで逃げていく。
その後ろを良吾の本命の馬がピタリとマークし、その後ろに一頭置いて海桐花の本命の馬が続く。
異変が起こったのは向こう正面に入った所でだった。
2コーナーを曲がってしばらくした時にスローペースを嫌った中段にいた馬達が先頭集団に並びかけてきたのだ。
そうはさせまいとそこから先頭集団のペースが一気に上がり、それまで13秒台だったのが12秒台前半まで上がったのだった。
しかしペースが乱れても良吾の本命馬は動じなかった。
ペースこそ上がれども自身の位置取りを無闇に上げることをせずに淡々と走り続ける。
それに対して海桐花の本面馬は後ろから押し上げて来た馬に連れられる様にポジションを上げてしまったのだった。
そして最終コーナー。
先頭は4番と10番の馬が並走していた。
途中でペースが乱れたものの方や名手、方や地方の雄。
それぞれ気力を振り絞って必死の叩き合いを演じていた。
しかしその勢いも残り200m程で完全に失われてしまったのだった。
それに反して良吾と海桐花のそれぞれの本命馬は余力十分に直線を向いていた。
残り200mを切って先行馬の横を突いて海桐花の本面馬が先頭に躍り出るがそれと同時に良吾の本命馬もそうはさせまいと鞍上の鞭に答えて伸びて来る!
「そのまま持ってこい!!天才!!持ってこいやぁ!!」
「差せ!!!意地を見せろ!!!!!!」
そこからは2人とも喉が潰れんばかりの大声を張り上げて応援していた。
そして
そのまま2頭が鼻面を合わせてゴールに飛び込んだ。
「「どっちだ(じゃ)!!??」」
2人ともターフビジョンに映し出された最後のゴール板の映像を食い入る様に見守っていた。
結果は、
良吾の本面馬が僅かに海桐花の本面馬をハナ差抑えて勝利していたのだった。
「なんでじゃあ!!?なんで2日続けて負けるんじゃあ!!!」
単勝50万をスり、複勝の50万が60万にはなったものの-40万という結果に海桐花は思わず絶叫し涙を流していた。
「…これは俺も覚悟を決めないとな…」
一方の良吾の方は85,000円の単勝が246,500円になり、同額の複勝が102,000円になった喜びよりも風舞希に思いを伝えるという人生の岐路を前に覚悟を決めていたのだった。
地方のファンファーレを文字起こしにするのは無理がありました(T ^ T)
週末は忙しいので更新は週明けまでお待ちくださいm(__)m