元総組長と俺と競馬と   作:対ゴドルフィン特効兵器

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坂路調教を全くしない出資馬にやきもきしてます。


エンドマークに向けて

「なんでなんじゃあ…なんでたった数日で530万も無くなったんじゃあ…」

 

「そ、そりゃお前の買い方と予想がダメだったからだろ…

そもそも複勝にしておけば1.2倍付いてたんだから120万になったのになんで単複同額を買うのかねぇ?」

レース後の表彰式を見終えて泣き言を言う海桐花と共に良吾は東邸へと歩を進めていた。

内心は緊張と不安で心臓が張り裂けそうだったが、海桐花の泣き言に付き合っているうちに少しずつ緊張もほぐれていくことを感じていた。

 

「そもそもなんでお前単勝をあんなに注ぎ込むんだよ?

確かに回収率はいいかもしれんが、ワイドや複勝転がしてコツコツ貯める事も考えろよ」

 

「そんなチマチマした事やってられるか!

此方はこう見えても暮れのグランプリでこれはビックリの単勝100万を取った女じゃぞ!!

高々1.2倍の複勝を取ったところで満足出来ぬわ!」

 

「あぁ…そうか。そういう事か…」

その一言で良吾は全てを察した。

海桐花の言うレースはブービー人気の馬がまさかの大激走を見せて圧倒的人気であった史上最強ステイヤー等を差し切って優勝した記録にも記憶にも残るレースであった。

その際のオッズが137.9倍であった事から海桐花はその際に1.3億円もの払戻しを受けた計算になるのだが、おそらくその際に出た脳内麻薬が海桐花の全てを狂わせた事を理解したのだった。

しかもタチの悪い事に海桐花には地位も金もある。

いくら注ぎ込んでもさして痛手にならない事も彼女をギャンブル中毒に陥らせた要因でもあったのだった。

 

「なんじゃ其方?何時もに比べて口数が少ないでは無いか

あれか?今から風舞希に告る故緊張しておるのか?

全く…これじゃからDTは…」

 

「ど、DTは関係ないだろ!?

そもそもお前が今日も帰りの電車賃までスったのが原因じゃねぇか!」

 

「それはそうじゃが…

あれ程一昨日は1000円も貸さぬと言うておったのに…

どういう風の吹き回しじゃ?」

 

「そ、それは…」

海桐花の言葉に良吾は言葉を詰まらせた。

海桐花の事であるから帰りの電車賃まで使い込むであろう事は想定していた。

ならば海桐花を送る建前で再度東邸を訪れようと言うのが良吾の考えであった。

しかしそんな浅はかな考えは海桐花に看破されていた。

いや、寧ろ看破されない方が無理な話である。

 

 

何せこの男、払い戻しを受け取ってから

「海桐花、そういえばお前帰りの電車賃はあるのか?」

 

「今日もスカピンじゃあ…

この短期間に迎えを寄越させたら風舞希に殺されてしまいかねん…」

 

「ったく仕方ねぇな!

お前に背中押された恩もあるし、家まで送ってやるよ!

風舞希さんにも俺から話つけてやるから!」

 

「なんと!良吾よ、良いのか!?」

 

「勿論だとも!この年末にトータル30万プラスになったんだ!

これくらい安いもんよ!!」

 

「良吾…其方の様な友を持って此方は果報者じゃあ…」

 

 

という出来レースの様な会話が繰り広げられていたのだった。

これでは何かを企んでいると思われても仕方ない。

しかしその様な茶番でさえ今の良吾からしたらありがたい事は言うまでも無いだろう。

 

 

そうこう話していると一昨日見た長大な塀と立派な門構えの東邸前に2人は立っていた。

「さて良吾よ、覚悟は良いか?」

 

「…あぁ…」

良吾は緊張した面持ちで答えた。

その顔は緊張のあまり青白くなっており普段の良吾を知らない人からすれば余程体調が悪いのか、良からぬことを企む犯罪者とも見えなくも無い程であった。

 

「安心せい!

断られても別に死にはせんわい!

それにもし死んだとしても骨は拾ってやる!」

 

「海桐花…ありがとよ」

海桐花のあっけらかんとした言葉に若干顔の色も戻り引き攣っているとはいえ笑顔も見せられる程にはなっていた。

 

「では…

おぉい!!海桐花ちゃんが帰ったぞ!門を開けい!!」

先日の様に海桐花が叫ぶとその声に呼応するかの様に門がギギィ…と軋みながら開け放たれた。

 

「お帰りなさいませ、海桐花様」

 

「うむ、出迎えご苦労様!」

先日の様に武装した使用人達の姿は見られなかった。

初老の女性の使用人1人だけが立っており海桐花と良吾を出迎えたのだった。

 

「あら?この方は…」

 

「龍海良吾です。

先日はご無礼致しました」

 

「これはこれは…

先日は醜いものをお見せしました

私東家に使えて40年になります西田と申します

以後お見知り置きを…」

良吾の挨拶に西田と名乗った使用人も微笑みながら頭を下げる。

若干の緊張の色は見せつつも紳士的に頭を下げる良吾に対して悪い印象を抱いた様子は無く良吾は少し安心した。

 

「その者は前も言うた通り此方の友人じゃ。

先日のことで風舞希と話がしたいとの事じゃが、彼奴は何処におる?」

 

「風舞希様は執務室にてお仕事をなさっていますが…如何いたしましょう?」

 

「ふむ、時間的にそろそろ終わるころじゃろうしな…

では我らから向かうとするか。

すまぬが我らだけで話がしたい故、人払いをしてもらえるか?」

 

「かしこまりました」

 

「では良吾、行くぞ」

 

「わかった…」

そういうと良吾は西田に軽く頭を下げて海桐花の後を追った。

 

結果は丁と出るか半と出るか。

言いようのない不安に駆られながらも良吾は海桐花に続いて風舞希の元に向かったのだった。




今週末は中京競馬場で死んできます。
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