元総組長と俺と競馬と   作:対ゴドルフィン特効兵器

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インフルエンザ罹患により無念の現地参戦断念です。


Execution

チ〜ん…

東邸を飛び出した良吾はそのまま家に帰宅して1日抜け殻の様になっていた。

 

体調不良を心配した上司に早い年末年始の休みをもらった為、比較的長期の休みがになったのだが気は休まることはなかった。

風舞希に自身の思いだけを一方的に伝えるだけ伝えて怒らせた挙句そのまま飛び出して来たのだからもう終わったと思ってしまうのも当然であった。

そもそも風舞希には子供が3人もおり、急に良吾が父親といって出て来たとしても受け入れられるはずがない。

 

海桐花に背中を押されたとはいえ中々の自己中っぷりに良吾は抜け殻になったり頭を抱えて悶絶したりと自身の行動を猛省しながら最悪の年末を過ごしていたのだった。

しかもここでふと良吾は気づいてしまった。

 

自分も風舞希も相手の連絡先を知らないと……

 

「あ゛ぁ〜…俺は何てダメなヤツなんだぁ〜…」

再度東邸に行けば良いのであろうが、あれだけの所業をした手前自分から何も知らない様な顔をして行く程の厚かましさは良吾にはなかった。

肝心な所でポカをしてしまい良吾の心のHPはマイナスになってしまっていたのだった。

 

とはいえ独り暮らしをしている以上最低限の事は自身でしなければいけない。傷んだ心と体に鞭打ってコンビニにでも食事を買いに行くかとコートを着て準備をしていた時であった。

 

カサリ

 

ポケットに何かが入っていような感触があった。

レシートか外れ馬券かと思って見てみると、

 

そこには綺麗な字で電話番号と"東風舞希"と名前が書かれた紙が入っていたのだった。

 

「!!!」

その瞬間、良吾は自身の体温が2℃程上がったのを感じた。

 

昨日の言い合いの時にこれを渡される事は絶対に無い。

ならば初めて東邸に行った時に入れられたのであろうが、あんなにも格好悪い所ばかり見せていた自分に何故風舞希が自身の連絡先を記した紙をポケットに入れたのかその意図が全くわからなかった。

 

とはいえ風舞希自身から連絡先を渡されたという事実に変わりはない上に、全く脈無しの相手に連絡先を渡す事も考えにくい。

しかしそれを全て台無しにする様な所業をした今の良吾にはこの連絡先に電話をかける勇気は無かった。

 

とりあえず風舞希の連絡先を入力しておこうとスマホを手に取った時だった。

 

ピリリリリ!

 

呼び出し音が鳴り、画面には

『絶対的超絶美少女海桐花ちゃん』

の文字が表示されていた。

 

「…(イラッ)」

海桐花の事だから無視したら余計に面倒なことになる。

そう思った良吾は応答ボタンを押したが、次から海桐花からの連絡の呼び出し音は往年のマフィア映画のテーマ曲かダー○・ベ○ダーのテーマ曲にしてやろうと決心したのだった。

 

『おぉ!良吾か?

其方生きておるか?』

 

「とりあえずは生きてるぞ〜

でも死にそうなくらい人生と自分のダメさに呆れ返ってるぞ〜

あとなんだ、『超絶美少女海桐花ちゃん』ってのは?

後で『ギャン中BBA海桐花ちゃん』に変えておくからな〜」

いつも通り腹の立つ程能天気な海桐花の声は傷心中の良吾をイラつかせるには十分であった。

 

『貴様ァ!これほどの美少女をギャン中ババア呼ばわりか!?

その様なヤツには風舞希からの重要な言伝を教えぬぞ!!」

その一言で良吾は霧がかかった様な状態から覚醒した。

 

「大変失礼致しました!絶世の美少女海桐花様!!

絶世のブ男の龍海良吾めをお許しください!!」

海桐花に風舞希の件を質に取られては何も出来ない。

一瞬で手のひら返しをした良吾を誰が責められようか。

 

『最初からそう言うておけ!

本題じゃが、風舞希が其方と会って話したいそうじゃ。

明日にでも屋敷に来れるか?」

 

「あ、明日?行けない事は無いが…」

 

『そうか!では昨日と同じ時間に待っておるぞ!』

プチッ

ツー…ツー…ツー…

伝える事だけ伝えて切れた電話を良吾は呆然と眺めた。

 

「明日…明日かぁ…

急だなぁ…もう少し心の準備ってのがあるだろうよ…てかアイツ(海桐花)に俺の番号教えたっけかな?」

再度海桐花に電話をして断ろうにも風舞希の顔がチラついてしまう。もしここで自分が延期や中止を言ったら風舞希の顔や決意を潰しかねない。

仕方なく良吾は明日の再度の東邸への訪問に備えて手土産を買いに行くとともに海桐花からの電話の通知音をゴッド○ァーザーのテーマに変えたのだった。

 

 

 

 

翌日、良吾は手土産を持ってジャケットを羽織り三度東邸を訪れていたが顔色は優れなかった。

「行きたくねぇなぁ…」

ため息を吐きながら東邸の門を見上げる。

あれだけの啖呵を切った手前風舞希からの答えを聞かない訳にはいかないが、おそらく回答は決まり切っている上に本人からの心証も最悪とあってはまさに現在の良吾は死刑を待つ囚人になった様な気持ちであった。

 

一応正装として失礼の無いようにジャケットを着ては来たものの、緊張とストレスで年の瀬にも関わらず中のシャツと手のひらは汗で湿っていた。

しかしここまで来て帰る訳には行かない。

そう決心して良吾は門を叩いた。

「失礼します!!

龍海良吾です!!

風舞希さんのお招きにより参上しました!!」

 

ガゴン!

ギギィ…!!

その言葉に反応するかのように巨大な門が開け放たれる。

そしてそこには、

「おぉ!来たか!

待ってあったぞ良吾よ!!」

満面の笑みの海桐花が腕を組んで立っていた。

 

「来ない訳には行かないだろ…

刑を執行するなら早くしてくれって気持ちだ…」

 

「そうも良くない方に考えるな!その様に悪い方向ばかりに考えるのはお主の悪い癖じゃぞ!」

今にも吐きそうな程に顔を青くした良吾に海桐花は背中をバシバシと叩きながら答える。

 

「悪い方向にも考えるだろ…

もういっその事ここで電気椅子に座りたい位だ…」

 

「まぁまぁ。お主の気持ちも分らいでも無いがそれはちと待て。

とりあえず風舞希の所に案内してやるからの。ついて来い」

そう言うと海桐花は踵を返して屋敷の方に歩いていく。

良吾も慌てて後を追うが一歩一歩踏み出す度に胃の中に鉛の粒を流し込まれるかの様な錯覚を覚えた。

 

しばらく屋敷内を歩くと先日の執務室前で海桐花が足を止めた。

「さて、では後は若い者2人に任せるとするかの。

良吾よ気張れよ?」

 

「ぉぅ…」

ニヤリと笑ってサムズアップする海桐花に良吾はそう答えるだけで精一杯だった。完全に良吾の錯覚であるが執務室からは邪悪なオーラが流れ出ており、ドアを開けた瞬間に刺し殺されるのでは無いかと思う程であった。

 

「風舞希〜!客人を連れてきたぞ!」

そんな良吾の事など一切考慮せず海桐花は扉をガンガンと叩いた。

 

「ちょっ、心の準備を…」

いきなりのことに焦った良吾であったが、そんな事など関係なく扉が開かれたのだった。

 

そして

「母様、ありがとうございます

良吾さんも御足労誠にありがとうございます」

良吾が1番会いたくもあり、1番会いたく無かった人物(風舞希)が微笑みを浮かべながら出てきたのだった。




色々不幸が重なり山城状態です。
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