元総組長と俺と競馬と   作:対ゴドルフィン特効兵器

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体100%
精神100%
喉40%
くらいの回復状況です。


アラシのごとく

「シッ!!」

 

「クッ!?」

魔都にある7番組の寮に併設されている道場では2人のうら若き女性が組み手を行なっていた。

方や白銀に輝く髪を靡かせる女性は流れる様な動きで的確に打撃を放ち、相手からの攻撃を受け流して自身に有利な体制に持っていく。

方や濡羽色の艶やかな髪を後ろで結んだ少女は僅かに動きがぎこちないものの必死に相手からの攻撃をいなし、隙を見て攻撃をする。

その光景は組み手というより舞踊や神前に奉納する舞の様にも見え、もしここに観客が居たとしても2人の美しさと組み手の激しさに一言も発せない程の気合いと迫力であった。

 

激しい攻防であったが次第に銀髪の女性優位となっていき、黒髪の少女は遂には完全に組み伏せられてしまった事で稽古は終わりを迎えたのだった。

 

「ハァハァ…組長、ありがとうございました」

息を荒げながら少女が礼を言うが、もう一方の女性は涼しい顔で答える。

 

「礼には及ばないさ。私も何度か危ないところがあった。日万凛、成長しているな!」

 

「あ、ありがとうございます!!」

日万凛と呼ばれた少女はその言葉に顔を輝かせた。

 

彼女の名は東日万凛。

姓と名前の字数の示す通り東家の直系であると共に東風舞希の3女である。

7番隊の副組長で優秀な姉が多い分、彼女も期待されたが肝心な時に結果を出せなかった為に実家では落ちこぼれと言われいじめられてきた為、強くなる事で周囲を見返そうと組長である羽前京香との稽古に励んでいたのだった。

 

「もう今年も終わってしまうが、1番思い出深いのは日万凛が日を追うごとに強くなった事だな!

私も鼻が高いぞ!!」

 

「く、組長…!

ありがとうございます!」

京香の言葉に日万凛は頬を赤く染めながら礼を言った。彼女を目標にしてきた日万凛にとって最も嬉しい言葉を本人から言われるという栄誉に浴したのだった。

 

「さて、では汗でも流すか。

日万凛、風呂に入ろう。

1年頑張った褒美に私が背中を流してやる」

 

「そ、そんな…

お背中を流すのは私の方です!

いつも組長にはお世話になっていますし…」

 

「言っただろう?1年頑張った褒美だと。

私がやらなければお前への褒美にならないぞ?」

 

「そ、それはそうですが…」

 

「良いから今日は流させろ!良いな?」

そういうと京香は話を強制的に打ち切り浴室に向かって歩き出した。

 

「は、はいぃ…」

日万凛もその後を急いで追ったが、脳内ではもう明日死んでも良い…と思っていたのだった。

 

 

 

 

「そういえば日万凛は正月は実家に顔を出さないのか?

いくら軋轢があるとは言え節目には挨拶はしっかりしておくものだぞ?」

背中を流し、湯船に浸かりながら京花は日万凛に尋ねた。

 

それまで京香に背中を流され、共に湯船に使って蕩けた顔をしていた日万凛の表情がビシリと固まった。

「あんな家には絶対に戻りません!!

私は年末だろうと正月だろうとここで訓練をして強くなるんです!!」

 

「偶には休む事も訓練の内だぞ?

お前はこの所頑張り過ぎだ。一度実家でゆっくりしてくるのも…」

 

「必要無いです!あんなロクな思い出しか無い魔窟に帰るなんて天地がひっくり返ってもあり得ません!!」

 

「そ、そうか。

嫌な事を思い出させて済まなかったな…」

日万凛の剣幕に京香は押されて推し黙り、少し重い空気が2人の間に流れそのまま浴室を後にした。

 

 

その後居室でゆっくりしていると、

「ごめんください」

何処か聞いた事のある声がした。

 

「は〜い」

隊舎の玄関に行くとそこには日万凛の見知った顔があった。

 

「日万凛お嬢様、お久しぶりでございます」

 

「西田さん!何でここに!?

久しぶりね!元気だった?」

東家の事は嫌っている日万凛だったが、昔から世話を焼いてくれた西田に対しては蟠り等は無く、寧ろ泣いている際に慰められたり飴をこっそり貰ったりと実の祖母の様に慕っているのだった。

 

「え?お客さん?」

 

「どうもこんにちは!」

 

「どうも、お久しぶりです」

日万凛の声に同じく居室で寛いでいた駿河朱々と大川村寧、それに京香も玄関に出てきた。

 

「はい、こんにちは。皆さん元気が良いですね。

おかげさまで元気にやらせていただいてますよ」

続々と出てきた7番隊の隊員達に西田は自身の子や孫程の少女達ににこやかに挨拶をする。

この柔らかな人間性こそが西田が東家で重宝される所以であった。

徹底的な実力主義の東家に於いてやっかみや嫉妬から来るトラブルを西田は持ち前の人当たりの良さと年の功で解決してきた。

というより先代の海桐花がチャランポランであるが故に身につけざるを得なかったスキルであるが、風舞希に代替わりした今でもその力は東家内でも必要不可欠であった。

 

「西田さん、今日はどの様なご用事で?」

挨拶もそこそこに京香が切り出した。

 

京香に促され西田が口を開いたが、その言葉は日万凛が最も唾棄するものであった。

「日万凛お嬢様、お寛ぎの所申し訳ございませんが正装にて東邸にお戻りいただけませんか?」

 

その言葉に日万凛は先程までの親しげな雰囲気から一変して目を吊り上げて西田を睨みつけた。

「私はあそこには戻らない!絶対にね!!

いくら西田さんに言われてもこれだけは絶対無理!!

私の事を見て見ぬふりをしていた風舞希が居るところになんかに戻るわけないでしょ!?」

 

取りつく島もない日万凛の剣幕に西田は嘆息した。彼女とて日万凛の気持ちがわからないでも無い。むしろ何があったのか痛いほど知っている身である。

一族の人間から出来損ないと馬鹿にされ、いじめられ、傷つけられていた日万凛が戻りたがらないのは当然であろう。

その恨みは母である風舞希の事を名前呼びする所からも見て取れる。

 

「そうですか…残念ですね。

実は風舞希様がご婚約をされまして…

日万凛様からすると義理の父となるお方との顔合わせをとの事なのですが…」

 

「「「「はぁぁぁああぁぁ!!!?????」」」」

西田の言葉に7番組隊舎が震えた。

隊長の京香さえも何時もの凛々しさは何処はやら、口をあんぐりと開けてしまっていた。

 

「え!風舞希さんってあの9番組の隊長でひまりんのお母さんだよね!?

そんな人が婚約ってどういう事!?」

 

「お母さんに婚約者…という事は日万凛さんのお父さん…?」

 

「寧、この場合はお義父さんだ。日万凛とは直接の血縁関係は無いからな」

各々混乱しているが、西田は構わずに続ける。

「顔合わせは今宵東邸にて行います。

参加不参加の判断はお嬢様にお任せしますが、長年の経験と勘から申し上げますと参加された方が今後に活きてくると思われます。

それでは私はこれにて。この後は6番隊にも行きますので」

そういうと西田は急いでその場を後にしたのだった。

後に残された7番組の面々は未だに混乱が収まっていなかった。

 

「ひまりん、どうするの…?

お母さんに婚約者って、一体…」

 

「日万凛さん、大丈夫ですか?」

 

「日万凛…」

全員が日万凛な事を心配そうに見つめる。

当の本人はしばらくすると口を開いた。

 

「隊長、申し訳ないですが数日お休みをいただきますね」

顔を伏せながら日万凛は言った。

表情は見えないが声は怒りに震えており、周囲に凄じい圧を放っていた。

「あと申し訳ないのですが、間違って人を2人くらい殺してしまうかもしれませんので、その場合は私が今日付けで魔防隊を除隊していたって事にしておいて下さい」

 

そう言うと日万凛は準備をする為に自室へと戻って行った。

後には日万凛の怒りの圧に震えるながら抱き合う朱々と寧に腕を組んで考え事をする京香が残されていたのだった。




94年宝塚記念
アラシが来るぞ!アラシが来るぞ阪神競馬場!!(来ない)
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