元総組長と俺と競馬と   作:対ゴドルフィン特効兵器

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モチベーションはありますが時間と体調、体力が…


その名は

「まさかここまで早く準備されるとは…」

良吾はバタバタと忙しなく動く使用人達を見ながら呟いた。

風舞希の鶴の一声で始められた祝いの席の準備だったが、西田が風舞希の娘達に声をかける為に魔都に向かったもののその他の使用人達はこれぞ阿吽の呼吸と言うほどの連携プレイを見せていた。

料理の準備から大広間のセッティング、中には床の間に飾るのであろう花を活けている者さえ居るがその全員が凄じい速さで動き回っており、3時間もしないうちに会場の8割方の準備が出来つつあったのだった。

 

「あらあら、皆張り切っているわね。

こんな事私が初めに結婚した時でもここまでじゃ無かったのに」

 

「やはり皆さんに祝われると言うのは嬉しいものですね」

動き回る使用人達を見ながら風舞希が呟いた。

彼女としても祝いの席の準備をする事で嬉しさを表現しているのであろう使用人達を見て何か感じるものがあるのであろう。

口調は冷静だが声のトーンが明らかに高くなっており、その様子に良吾も相合を崩したのだった。

 

「うむ!何と言っても良吾は此方のお眼鏡に適った漢の中の漢じゃ!

其方であれば風舞希な事の東家を任せられる!!」

そんな2人を見ながら海桐花が腕を組みながらドヤ顔を披露していた。

彼女も彼女で良吾と風舞希と共にお茶を啜りながら時々使用人達が迷った時には的確な指示を飛ばしており、流石は現東家当主にして元魔防隊総組長と言うに相応しい立ち居振る舞いであった。

 

「お前もホントにこの一面だけだったら超有能なのにな〜…

何で2日連続でスってガミって530万もパァにするかね…」

普段ギャンブル中毒な一面しか見てこなかった良吾が呟いたが、その言葉を聞き逃す風舞希と海桐花では無かった。

かたや微笑みつつも凄じい怒りのオーラを発し、かたや先程までの赫赫とした現当主の威厳は何処へやら、顔を一瞬で青ざめさせガタガタと震え出したのだった。

 

「母様?530万ってなんですか?

どうしてたった数日で負けが30万円も増えているんですか?」

背後に阿修羅を背負いながら風舞希が海桐花を詰問する。

娘の静かな怒気に海桐花はただただガクガクと震える事しか出来なかった。

 

「母様?私は聞いているんですよ?

質問には答えるのが親の務めでは無いですか?」

微笑みながら怒る風舞希に隣にいる良吾ですら肝を冷やしていた。

人はここまで絶対零度の笑みと声を発せられるのかと肝心すると共に、改めて海桐花のスった額の大きさを認識しながら風舞希な事は絶対に怒らせてはいけないと固く誓ったのだった。

 

「お母様、どうしたのですか?そんなに怒って…」

しかしそんな絶対零度の空間が1人の女性が来た事で一瞬で瓦解した。

良吾が声の主の方をみるとそこには風舞希に似た漆黒の髪を背中まで伸ばし、キリッとした眼鏡をかけたいかにも仕事が出来そうなクールビューティと言う言葉が似合う女性が立っていた。

 

「麻衣亜…どうかしたの?」

風舞希は海桐花への怒気を少し収めて麻衣亜と呼んだ女性の方を振り返った。

 

「いえ、せっかくですしお母様が好きになった男性を一眼見ておこうかと思いまして」

そういうと彼女は良吾の方に向き直った。

「初めまして。私、魔防隊9番組副組長の東麻衣亜です。

貴方の思い女の東風舞希の長女ですので、義理の娘になりますね。

以後お見知り置きを」

 

「ご、ご丁寧にありがとうございます。自分は龍海良吾といいます。

貴女のお母様の風舞希さんには…その…良くしていただいています…」

顔を赤くしてしどろもどろに返答する良吾を表情を変えずに見つめていたのだった。

 

「良吾さん、良くしてもらっているでは麻衣亜もわからないですよ?

ちゃんと貴方の口から言わないと…ね?」

そんな2人をみて風舞希がウインクをしながら茶々を入れる。

そもそも麻衣亜本人が自分のことを義理の娘と紹介したのだから2人の関係性を把握しているにも関わらずこの所業。

風舞希自身としては良吾の口からはっきり言って欲しいからなのであろうが、良吾の顔がますます赤くなる。

 

「じ、自分と風舞希さんは、けっ、結婚を前提にお付き合いさせていただいています!」

 

「その通りです」

「なるほど、私も改めて理解しました」

言い切った事で風舞希も満足したのか良吾に微笑みかけ、麻衣亜は麻衣亜で眉を動かさずに値踏みするかな様な視線を良吾に向けていたのだった。

 

「そ、そもそも麻衣亜さんでしたっけ?

こんなゴツいのが急に義父ですって出て来て良いんですか!?

当事者が言うのもおかしいけど、俺ならグレる自信があるくらいの衝撃だと思いますが…」

麻衣亜の視線に耐えられなくなった良吾が核心をついたが彼女はいたって冷静であった。

「確かに最初話を聞いた時は驚きましたが私も自立していますし、何よりお母様がここ最近嬉しそうに悩んでいる姿を間近で見ていた身としては反対する事は出来ませんわ。

それに成人した当人同士が合意して、お祖母様も認められたのでしたら良いのでは無いでしょうか?」

 

「あ。そ、そうですか…」

麻衣亜のドライな考え方に良吾はこれまでの不安な気持ちのアテが外れてしまった。3姉妹とは聞いていたが、彼女達との関係性をどうするのか。その一点が良吾の事を悩ませていただけに最初にこの反応をされる事はある1番想定していなかったのだった。

 

「それでは私はこれにて一度失礼致しますわ。

丁度妹も戻ってきたみたいですし」

 

「妹?」

麻衣亜が誰も居ない虚空を見ながら言った一言に釣られて良吾も目線を向ける。

するとそれまで何も無かった所に突然ブラックホールの様な黒い渦の様な物が出現したのだった。

 

「こんばんは」

 

「私様が2番目であったか!まぁそれはそうじゃろ!

日万凛に私様が何事であっても負けた事など無いのじゃからな!!」

そして中から2人の魔防隊の制服を着た女性が現れた。

虚空から突然人が現れた事に良吾は驚いたが、隣にいる風舞希がなんの反応も示さないことを見てこれが彼女達の日常なのだと無理矢理納得することにしたのだった。

 

1人は金と銀の2色のショートカットに右耳だけにピアスを付けた成人しているであろう女性で、少し垂れ目がちな目は良吾このことを値踏みするかの様に見つめ、顔には常に微笑みをたたえておりそれが彼女の大人としての余裕と魅力を際立たせていた。

 

もう1人は黒い髪をツインテールにした少女であった。

吊り目がちな顔には自信からくるのであろう不適な笑みを浮かべており、第一声の高飛車な態度と喋り方も相まって何処となく海桐花と同じ臭いを良吾は感じていた。

 

「風舞希さん、この度はおめでとうございます。

こちらの方が例の…?」

ショートカットの女性が菓子折りを風舞希に渡しながら良吾に目を向けた。

 

「初めまして、龍海良吾です。

東風舞希さんとは将来を見据えたお付き合いをさせていただいてます」

2回目ということもあり良吾はそれほど口に出す事を恥ずかしがる事なく挨拶を済ませた。

そんな良吾を見て風舞希は頬を少し染めながら嬉しそうに微笑んでいた。

 

そんな2人を見て天花も微笑みながら返す。

「魔防隊6番組組長の出雲天花です。

この度はおめでとうございます」

 

「ありがとうございます。

出雲さん、此方の方がもしや?」

良吾のが傍の少女の事を話題にすると大人達の会話に蚊帳の外となっていた少女が口を開いた。

 

「東八千穂じゃ!

全く…この天才の私様を置いて話を続けるとはとんだ無礼者じゃな!?」

 

「こら、八千穂。そんな事言っちゃダメだよ?

今日の主役は良吾さんと風舞希さんなんだからね?

それにきちんと挨拶が出来てこそ大人なんだよ?」

 

「むぅ…わ、わかったのじゃ…

こ、この度はおめでとうございます…

これで良いのか?」

 

「うん、上出来だよ」

高飛車な言葉使いに初めは良い印象を抱かなかった良吾であったが、天花に注意されて素直に従った八千穂に対する悪印象は薄れていた。

何より彼女の親玉の様なギャンブル中毒のロリババアに比べたら八千穂の憎まれ口も可愛いものである。

 

「八千穂ちゃんだっけ?

お祝いしてくれてありがとうね」

そう言うと良吾は八千穂の頭に手を置いた。風舞希の娘というだけあって彼女にそっくりな黒い艶やかな髪の手触りをしていたのだが頭を撫でられる本人は不満そうであった。

 

「ちょっ!

私様の頭を無遠慮に撫でるとは…こら辞めぬか!!」

だが185cmの良吾と155cmの八千穂では彼女の頭の位置が良吾の手を置くのにちょうど良い位置にあるうえに体格差も相まって良吾の手から逃れることは出来ずそのまま周囲の生温かい視線の中、八千穂は良吾に頭を撫で続けられたのだった。




中途半端ですが一旦区切ります。
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