元総組長と俺と競馬と   作:対ゴドルフィン特効兵器

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何年のグランプリでしょう?
なおモデルにしたレースの時系列は全く考慮しないのでご了承ください。
例えば逆襲の末脚の後に最強の大王が降臨する様な感じです。


夢への旅路

「んでどのレースから買うんだよ?

まだ昼過ぎだしメインレースまではまだまだあるぞ?」

 

「何を言うておるのじゃ?

グランプリの日はメインレース一本のみに絞るに決まっておろうが。

そんな祭りに水を差す様な無粋な真似はせぬぞ」

 

「あぁ…そうですか…」

 

「じゃがちと腹が減ったの。良吾、奢ってやるからモツ煮とビールを買うてこい。此方の分は七味たっぷりでな」

 

「ったく…しゃあねぇなぁ…

話せば話す程このロリババアはギャン中な事ばかり口にしてきて胸焼けしていた良吾はこれ幸いとばかりに買い出しに行く事にした。

グランプリの日で昼過ぎということもあってか凄じい人で良吾が海桐花と自分の分のモツ煮とビールを買えた頃には30分以上も経っていた。

 

「お〜い、海桐花。買ってきたぞ〜」

元いた場所に戻ってきた良吾が見たものは

 

「うぅむ…今日のトラックバイアス的には真ん中から内目が有利か…内枠に有力な差し馬がおるが3歳牝馬ではのぅ…。有力な逃げ馬は外枠で逃げ争いでペースが速まる事も予想されるが…かと言って肝心の差しが届くかと言われればこのコースでそこまで実績の無い馬ではこれまた難しい上に310mの直線では追込みは届きにくいし…」

漫画の様な瓶底メガネをしながら額にタオルを巻き、頭をガリガリと掻き毟りながら競馬新聞を広げて赤鉛筆を所在なさげに走らせるJSの姿(ロリババア)だった。

 

「…おい、海桐花。買ってきたぞ」

 

「むっ、良吾か。遅かったのう」

そう言って顔を上げた海桐花の顔は30分前とは比べものならならない程萎れていた。

500万を賭けるともなればここまで追い込まれるのも仕方ないかもしれないが、流石に見た目JSの女がして良い格好ではなかった。

 

「煮詰まってんな〜ちっとは食ってリフレッシュしろ」

 

「おお!モツ煮とビール!!これが無くてはグランプリは始まらん!!

早速いただくとするか!!」

そういうと海桐花は良吾から渡された割り箸を咥えて割ってハフハフとモツ煮を美味そうに頬張り、キンキンに冷えたビールで流し込んだ。

 

「っくぅ〜!!美味い!やはり予想にはこれが欠かせんのぅ!!」

 

「まぁ否定はしないが、もうちょっと他の目を気にしろよ

JSに飲酒させたとなればこっちに被害が及ぶんだからな?」

これまで海桐花に振り回されっぱなしだった良吾も嫌味を交えながら答えたが事実、予想で熱くなった頭に冷えたビールが染み渡り冷却される様な感覚に厳つい表情は緩んでいた。

 

「なんじゃ!其方も此方と同じ様な表情ではないか!

なんだかんだ言うても皆同じじゃな!!」

 

「うっせぇよ。大体見た目JSが競馬新聞広げて赤鉛筆持ちながら頭掻き毟るかよ。俺は70超えの婆さんって知ってるが、何も知らない人からしたら恐怖ですらあるぞ」

 

「むぅ…其方、此方の娘より辛辣じゃな…」

 

「娘が居るのかよ。娘さんもこんなギャン中のロリババアが母親じゃ大変だな」

 

「そういう良吾こそどうなのじゃ?其方こそ、あらさーと言っても良い歳ではないか。妻や子は居らぬのか?」

 

「グフッ…」

海桐花の何気ない一言に良吾の心は抉られた。

この男、趣味と風貌、体格の所為でこれまで女性と付き合ったという経験は皆無だった。

そもそも女性優位の社会に於いて男性が女性を選ぶという事が極々少なくなっており、何もかもが女性受けしない良吾はこれまで華のない人生を歩んできていたのだった。

 

「おっ?おっ?なんじゃその反応は?

さては妻や子どころか彼女さえ居らぬのか!?

そらその顔では女子が寄りつかぬのも無理ないのう!!

あれか?其方、バキバキ…」

これまで散々に言われていた海桐花の反撃が始まった。

 

「あぁ!DTだよ!!畜生!!もう魔法使いまっしぐらだよ!!」

反撃どころか初撃で何もかもが決まった。

「顔が怖いだの、汗臭そうだの、趣味が悪いだの皆んな好き勝手言いやがって!アイツらなんなんだ!?何も知らないクセに!!」

 

「イメージが悪かったんじゃな…」

 

「悪かった!?俺のDT卒業はいつになるんだ!?少なくともファッション誌に載っていた香水を付けて匂いには気を遣っているんだぞ?」

 

「DT卒業もせずにこんなところに居ってよいのかのう…」

 

「俺さ、こんな体格だからありとあらゆる力仕事に繰り出されるんだ…

そしてありがとうと言われて終わる…

チヤホヤされたかったんだ…女にモテる同級生達みたいに…

俺はこのまま一生バキバキDTだよ!!!」

どこぞのバラエティ声優の様な酷い事を叫びながら良吾は泣き崩れた。

 

かたやモツ煮とビールをかっ喰らい予想に頭を悩ませるJS

かたや吹っ切れたのかDTを連呼して泣き崩れる巨漢

この組み合わせは同じく馬券を買おうとしている人達を遠ざけるには十分だった。

 

「だ、大丈夫じゃよ…!良吾の優しさは此方がよう知っておる!

今は出会いが無いだけでそのうち良い伴侶に恵まれるわ!!」

 

「ほんとう?」

 

「あぁ本当じゃ!

だからそう泣くでない!!

それまでに金を貯める為にも今は予想に注力するのじゃ!!」

 

「うん…」

海桐花のギャン中ならではの慰めているとは思えない慰め方ではあったが心を破壊された良吾にはそれでもありがたかったらしい。

185cmの大男が155cmのJSに抱き起こされてグスグスと鼻を啜りながら塗り絵を進めたのだった。

 

 

 

そして、

 

 

 

「「出来た…!!」」

ほぼ2人同時に顔を上げた。

 

「ふむ、書けたか。

因みに買い目はどうするのじゃ?」

海桐花の問いに良吾は先程までの涙は何処へやら、自信満々に話し始めた。

 

「俺は2001年に香港のレースを買った善戦マンが大好きだったから、まずは9番のコイツの子供が頭だな!西日本でのレースが多いが、ここでの2歳G1を勝って重賞でも好走しているからコース適正もある!そんで紐に3歳二冠牝馬の夢をみたいから2番とコースとの相性が良い7番、天才と外国人ジョッキーは買えの法則で1と8と16、それからパドックでよく見えた6番を買うぞ!

買い方は9番の単複1万と、9が頭固定の1.2.6.7.8.16の3連単と3連複の流しを各500円ずつで合計42500円だ!」

普段ならあまり買わない額ではあるが、暮れのグランプリという祭りの空気と海桐花の馬券を当てることに注力しろの言葉が良吾の背を押した結果であった。

 

「ふむ…グランプリとはいえ4万円とはみみっちいのう!

此方はこれじゃ!!」

そういうと海桐花はどこから出したのか日曜15時から○ジ系でやっている番組で使っているかの様なフリップを取り出した。

 

「此方は4番の馬に単複それぞれ250万じゃあ!!!!!!」

 

「ちょっと待て!!!このギャンブル馬鹿!!!!」

あまりの頭の悪さに良吾は絶叫した。

 

「4番って馬鹿な事言ってんじゃねぇよ!!

単勝33.2倍の12番人気に500万とか頭沸いてんのか!?

それに単勝100万とか言ってたのが5倍になった上に3連単や3連複買ってねぇもかよ!?」

 

「何を買おうが此方の勝手じゃ!

コイツは芦毛の怪物と同級で此方が大好きじゃった弾丸シュートの末脚の孫じゃぞ!それに屋根は未だG1勝ちは無くとも次代を担う天才と目されておる!伝説の先駆けが今日このグランプリなのじゃ!!

その晴れの日に3連単や3連複で予防線を張るなど此方には出来ぬ!!」

ギャンブル中毒ここに極まれり。

手を握って力説する海桐花ではあるが、伝説の始まりを見たいという気持ちは良吾も分からないでも無い。

競馬とはブラットスポーツ。

両親や祖父母、はたまたそのまた上の曽祖父母から能力を受け継ぎやすく、脈々と受け継がれた遺伝子の集大成が今日の大一番である暮れのグランプリでありG1なのである。

もしあの時、この牝馬にこの馬を付けなかったらこの馬は居ない等というバタフライエフェクトが満載の危うくも魅力的な側面が良吾が競馬が好きなもう一つの理由でもあった。

 

「ったく…分かったよ…

その代わり、スカピンになっても電車賃貸さねぇからな?」

良吾はそう言うと海桐花のマークシートを預かった。

海桐花の言う通り所詮は海桐花の金である。

彼女がこれを30倍にしようが全部スろうが自身には関係ない。

それにここから翻意を促してもどうにもならない事を短い間に学習したのだった。

 

「うむ!分かっておる!!

帰りはハイヤーで帰るのじゃ!!

1億もあればなんとでもなるわ!!

良吾こそ少しくれと言うても1銭も貸さぬからの!?」

 

「当たったら半分くれるんじゃねぇのかよ」

 

「はて?そんな事言うたかのう?」

 

「おい…」

 

「冗談じゃて」

軽口を叩きながら良吾と海桐花は窓口へと足を進める。

 

 

その先が天国か地獄か

その結果は神のみぞ知る…




良吾の買い方は当時連れて行ってくれた伯父の買い方です。
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