とは言っても皆さん、誰が来るかはスマートファルコンの2011年日テレ盃並にわかるかと思います。
「いやぁ〜海桐花ちゃん!残念だったねぇ〜!」
「……」
表彰式まで見終わった良吾は馬券を発券機に入れて払い戻された札を扇子の様に仰ぎニヤニヤ笑いながら後ろを振り返った。
まず単勝と複勝の1万円がそれぞれ4万円と1.5万円に、
3連単と3連複も94450円と27300円になり合計176,750円の払い戻しを受け取っていた。
一方の海桐花の本命は5着となり掲示板は確保する事が出来たのだったが1着とは7馬身程も離されており完敗というほかなく、つぎ込んだ500万円は全てJ○A銀行に預ける羽目になったのだった。
そして2人は競馬場を後にして最寄りの駅までの道、通称オケラ街道を歩いて帰路に着いたのだった。
「いや〜やっぱり鞍上が上手かったわ!
3角で焦ってゴーサイン出さずに我慢したからこそ最後差し切れたな!」
「……」
良吾は馬券が当たった高揚感もあっていつも以上に饒舌に喋っていたが、海桐花はレースが終わってからずっと顔を伏せており表情もよめず反応も皆無であった。
「そういえば、海桐花ちゃん!帰りの電車賃は残してあるよね?
まさか人生経験の豊富な海桐花ちゃんがそんなミスする訳ないよね!」
ピクッ
そう良吾が言った途端、初めて海桐花の反応があった。
「ゑ…マジで?
海桐花ちゃん、やっちゃった?」
コクリ
物言わぬ反応ではあったがそれだけで十分であった。
このギャンブル中毒のロリババアは帰りの交通費さえも全額スッてしまったのだった。
「因みに自宅って…」
良吾が恐る恐る聞くと
「多摩川じゃ…」
蚊の鳴くような声でようやく海桐花が答えた。
「多摩川ぁ!?」
ここ、千葉にある競馬場から42km
車で1時間、電車で1時間半、徒歩なら9時間はゆうにかかる距離である。
「良吾!
頼む!!此方に金を貸してくれ!!
1000円!!1000円で良いのじゃ!!」
「散々っぱら帰りはハイヤーで帰るとか俺が外れても1銭も貸さないとか言ってたクセに現金だな!!」
恥も外聞もなく泣き叫ぶ海桐花に良吾は呆れ返った。
「頼む!このままでは此方は歩いて帰らねばならぬ!!
こんないたいけなか弱い少女を12月の寒空の下を何時間も歩かせて其方は良心が痛まぬのか!?」
「思わねぇよ!
何がいたいけでか弱いだ!!
お前70過ぎで元魔防隊の総組長だろ!?
人類最強が何言ってやがる!
帰りの電車賃まで全額注ぎ込んだお前が悪い!!」
「そんな事言わんでくれ〜!!
其方の好みの女との飲みの場を設けてやるから!!」
「たった1000円借りる為に他人をダシに使うな!!」
「ええ、その通りですよ?お母様」
「ミ゛ッ」
良吾と海桐花が言い争っていると突然第三者の声がした。
声質は落ち着いてはいるものの隠し切れない怒気を含んでおり、その声を聞いた途端に海桐花は変な悲鳴をあげて油の切れた機械の様にギギギッと音がしそうな動きで声の主の方向を見た。
良吾も声の主を見た途端、
「!!?」
そこに女神がいた。
濡羽の様な艶やかな黒髪に女性としては高い身長、
ぽってりとした赤い唇は色気が満載で少し垂れた目を吊り上げて怒った顔をしているが、それもまた良い!!
そして何よりリブ生地のセーターを押し上げる胸のボリュームとバギーパンツですら隠し切れないヒップの豊満さは筆舌に尽くしがたかった。
まさに良吾の理想の女性像を体現したかの様な姿に良吾は一瞬で目を奪われた。
しかしそんな女神は凄じい怒気を放っており、自身に向けられていないと分かっていても声を出す事が憚られる程であった。
最もバキバキDTの良吾からしてみれば突然現れた自分の好みドストライクの女性に声をかけるなど無理難題も良いところなのだが。
「ふ、風舞希…」
そんな女性を見て海桐花は完全にヘビに睨まれたカエルと化していた。
「お母様、この様な場所で一体何を…?」
風舞希と呼ばれた女性は海桐花を凄まじ目で睨みつけながら言った。
「そ、それはじゃな!此方の昔ながらの友人と旧交を温めておったのじゃよ!此方も年じゃし、いつポックリ逝くかわからぬしのう!」
冷や汗をかき、顔を青白くしながら海桐花が何とか答える。
しかし2人のやりとりに良吾は驚愕した。
「え!?お母様って!
海桐花、この人の母親なのか!?」
良吾の驚きの言葉に風舞希は向き直った。
「ご紹介が遅れました
私、そちらの東海桐花の娘で現在魔防隊9番組組長をしております東風舞希と申します
以後お見知り置きを」
「じ、自分は龍海良吾と申します!
お母様の海桐花さんとは仲良くさせていただいています!!」
「龍海良吾さんですか、良きお名前ですね
この度は母がご迷惑をおかけしました」
嫋やかで淑女然とした自己紹介に良吾は声を上擦らせて答えたがそんな良吾にも風舞希は侮蔑や嘲笑をせずに腰から上半身を折って頭を下げたのだった。
「そ、そんな!頭をあげて下さい!
自分もそこまで…いや、結構?迷惑はかけられましたがそれなりに楽しかったので気にしてないです!!」
「クスッ。まぁお上手ですね」
良吾の言葉に微笑んだ風舞希であったがその表情は衝撃であった。
天女の微笑みとは正にこの事。
これまで女性からはいい様に使われ恋愛対象として見られなかった30年余の人生を送ってきた男には刺激が強すぎた様で
「キュウ…」
良吾が変な声を出して気を失ってしまったのだった。
「「危ない!」」
薄れる意識の中で良吾が最後に覚えていたのは2人の焦った様な声とフワフワした触り心地の良い物に顔を挟まれる感触、そして形容し難い素晴らしい香りであった。
マイネルグロンくん、ありがとう
そしてやっと出せました。