元総組長と俺と競馬と   作:対ゴドルフィン特効兵器

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誤字脱字報告ありがとうございます^_^


思いはひとつ、

「う〜ん…?」

 

「お、気付いたかの?」

目を覚ました良吾の目に真っ先に入ってきたのは海桐花であった。

 

「海桐花、ここは?」

 

「風舞希が寄越した迎えの車じゃ

其方、急に倒れたのじゃから心配したぞ」

 

「すまん、心配かけたな」

そこでようやく良吾は起き上がり周囲を見渡した。

身長180cmを超える自身が寝転んでもまだ余裕のある座席が車の前から後ろまで続いているだけでなく車内の内装は非常に豪華でおそらくこれはリムジンなのであろうと良吾は想像した。

 

「んで?お前、その頭の容態はなんなんだ?」

海桐花の頭には大きなタンコブが出来ていたのだが、そんな事などお首にも出さずに話しかける彼女に良吾は問いかけた。

 

「これか…これはじゃな、その…」

 

「良吾さん、目が覚めましたか?」

海桐花が話しにくそうにすると同時に再び良吾の前に風舞希が助手席から現れた。

天井の低い車内を前屈みになって歩いてくる彼女に再度良吾の心臓は凄じい速さで全身に血液を送り出した。

 

「は、はい!ご心配をおかけしました!もう大丈夫です!!」

 

「そうですか、それなら良かったのですが…

本日は母がご迷惑をおかけしましたのでお詫びと言ってはなんですが、我が家にご招待しようと思っているのですが如何でしょうか?」

 

「お、お気遣いはありがたいのですが…

こんな見ず知らずの初対面のゴリラを自宅に招くなんで良いのですか?」

 

「貴方がお休みになっている間、母とお話しをしたのですが信用に足る人物と判断しました。それに母の古くからのご友人であり恩人をこのまま手ぶらでお返ししては東家の名に傷が付きます」

良吾の自身を卑下した答えに風舞希は微笑みを以って答えた。

 

「そ、そういう事でしたらお邪魔させていただきます」

 

「かしこまりました

では到着まで今しばらくゆっくりとお過ごしください」

そういうと風舞希は再度助手席へと戻っていった。

彼女を見送ると同時に

 

「ハァ〜……」

良吾は深いため息を吐いた。

 

「なんじゃ辛気臭いのう

其方は良いではないか!金が4倍にもなったのじゃから!

此方は全額スッたのじゃぞ?」

 

「いや、そうじゃねぇよ…てか改めてその頭のコブはどうしたんだよ?」

 

「これか?まぁ簡単に言えば、風舞希に怒られて拳骨を喰らったのじゃよ。彼奴め、暮れのグランプリさえ好きに買わせてくれぬとは…此方はそんな心の狭い娘に育てた覚えはないぞ!」

 

「そもそも500万を全額スッたにも関わらず迎えに来て拳骨一つである程度許すのだから十二分に心は広いだろ…」

プンスコと頰を膨らませる海桐花に良吾は答えたが何時ものキレが無い。

 

その事に海桐花も違和感を覚え良吾に問いただした。

「のう良吾よ、

此方は短い付き合いじゃがこれまで女日照りじゃった事は其方の口から何度も聞いたし、女子の好みも聞いた。

そこで思ったのじゃが、お主もしや風舞希にホの字なのではないか?」

 

「コクリ……」

今度は良吾が首肯で以て答える番であった。

 

「やはりか…」

良吾の顔はアルコールが入ったかのように真っ赤であった。

競馬場を後にする際に良吾に散々揶揄われていた為に好きあらば反撃してやろうと思っていたにも関わらず、強面の大男がみせる純情な側面に海桐花は思わず茶化す事を忘れてしまった。

 

「でもあんな良い女性とお付き合いなんて烏滸がましいし、

第一俺みたいな筋肉達磨があんな人と釣り合う訳無いし…」

大男が年甲斐もなく色恋沙汰でウジウジと悩む姿を見て多少ゲンナリしつつも海桐花の頭はフル回転していた。

海桐花の至上命題は競馬で勝つ事ではなく、東家の繁栄と魔防隊内で確固たる地位を築く事である。

その目的の為に手を汚した事も一度や二度ではない。

東の繁栄、それ即ち強い子を残す事である。

まさに競馬の様な話であるが子供達同士を戦わせて勝ったものが家を継ぐ事で強い東家を造り上げ、魔防隊内で確固たる地位を築いてきたのだった。

そしてそんな時に現れたのが良吾である。

筋骨隆々、日本人離れした肩幅に強靭なワイヤーを編み込んだかの様な四肢の筋肉は実用性に富んだ造りをしている。

一体ここまでの身体を造るのにどれほどの鍛錬を重ねたのか興味すら湧いてきていた。

その為海桐花は今の良吾に恐ろしく効く、劇薬とも言うべき一言を口にした。

 

「そういえば風舞希の好みは強き男らしいのう」

 

「!?」

 

「風舞希は魔防隊9番組組長にして次期総組長の座を狙える程の実力じゃ

その様な者の伴侶が弱くて良いはずがない!」

 

「で、でも風舞希さんの気持ちは…」

海桐花の一言は良吾を動かすに十分であったが、30年にもわたる自己肯定感の低さが最後の抵抗をしていた。

その抵抗を排除すべく海桐花は最後の一押しを放った。

 

「彼奴の初対面での表情を見るに決して悪くは思っておらぬな

むしろかなりの好印象を持っておったぞ?

それに此方も其方が息子になることは吝かでもないしの」

 

そう言った途端、良吾の目の色と全身から溢れるオーラが変わった。

「海桐花、ダメ元で頑張るわ…」

 

「うむ!そうせいそうせい!!

男子三日会わざれば刮目して見よと言うが正にこの事よ!

心ゆくまで励むが良いぞ!!」

散々良吾を煽った海桐花であったが、良吾の変わり様を見て豪快な笑顔を浮かべた。

しかしその笑顔は彼女をよく知る者からすれば新しい玩具を見つけた時の様な一面も孕んでいたのだった。

 




全人類、2011年ドバイWCを見て涙せよ
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