青いリンゴが実る時   作:百瀬ハト

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白い男、白いボール

「頼んだ、エルフーン!」「ダイケンキ、おねがーい。」

 

俺がプレミアボールを投げ、中から綿の体毛を背負った小さな妖精のようなポケモンが飛び出ると同時にオッサンの傍らのポケモンが前に出る。

この(ガラル)地方には居ない水タイプのポケモンだ。

 

「ありゃ…草タイプかー水タイプでは相性不利、出し負けしちゃったかな?」

 

「…やっぱり、アンタ俺の試合なんか見ちゃ居なかったろ!

エルフーン!追い風!」

 

室内にも関わらず俺とエルフーンの後ろから強い風が吹き始める、この風に乗れさえすればオッサンのポケモンより素早く行動することだって容易…。

 

「シザークロス!」

「ガァアァァ!」

 

風をもろともせずにダイケンキが足の甲殻の一部を引き抜き、刀のように構えると後ろ足二本で立ち上がり海獣型とは思えぬ跳躍を見せエルフーンを十字に切り裂く。

直撃を喰らったエルフーンは激しく上方に吹き飛び、天井に激突した後にフワフワと着地をしたが苦悶の表情を浮かべている。

 

「試合を見ていない?それは心外だなぁ、僕は君を負かした彼よりも…その彼を負かした優勝者よりも…会場の誰よりも君を見ていたさ。

だからこそ先発で出てきた水タイプ油断してくれただろう?()()()()()()()()()()()()()()()()()()?あ、まだスペシャリストの()()()かな?」

 

「な…⁉︎」

 

「そして、僕の大人気ない挑発にも乗って虫タイプ(じゃくてん)への意識も疎かになっちゃってるってワケ。

まぁ、フェアリータイプも入ってるエルフーンには効果抜群とまではいかなかったみたいだけど。」

 

薄ら笑いをしながら後ろを向いて追い風で飛んだ帽子を拾い上げると往年のコメディアンの如く一回転させながら被り直す。

余裕とでも言いたげに俺の事語りやがって…。

 

「どいつもこいつも俺のポケモンを格下とでも言うように…バカにすんのも良い加減しやがれ!

エルフーン!ムーンフォー」「アクアジェット。」

 

俺が指示を出す前にダイケンキが水を纏いながらエルフーンに高速で突撃を繰り出す。

効果はいまひとつの筈だが既にシザークロスの直撃を受けていたエルフーンは反撃を繰り出す力もなく戦闘不能(ひんし)状態になってしまった。

 

「エルフーン!ごめんな…。

頼む!ゴリランダー!」

 

「ウッホォォオォ!」

 

後ろで見ていたゴリラ型のポケモンが前に出ると背中に背負っていた小さな木製のドラムを手前に置き、両手にスティックを構え吠える。

するとゴリランダーを中心とした数メートルに草が生い茂り控室に青葉が舞い上がる。俺の相棒(パートナー)の特性、グラスメイカーが発動した。

 

「行け!グラススライダー!」

 

吠えた直後、置いたドラムの真横から草の上を目にも止まらぬ速さで滑ってダイケンキに接近、その勢いのままに顔面にラリアットを叩き込む…!

 

…が。

 

「ホ?」

 

草の上を滑っていたゴリランダーのスピードは相手の直前で急減速、そのまま前のめりに転倒して失敗。

俺とゴリランダーが顔を上げるとダイケンキの立っていた位置に海獣型のポケモンは居らず、代わりに稲妻のような白い縞模様が全身に走ったウマのポケモン『ゼブライカ』がこちらを見据えながらも足元に際限なく生える草を勢いよく食んでいた。

 

「草タイプのスペシャリスト…その候補生のポケモンの前に水タイプをいつまでも晒しておくわけにはいかないよね?危ないから交換させてもらったよ。

僕のゼブライカ、いっつもお腹ペコペコだから草があったら食べちゃうの。だから草タイプの技は効かないよん。モチロン、草の上を滑る技もね。

そして…。」

 

「まずい!ゴリランダー!下がれ!」

 

「遅いよ!ニトロチャージ!」

 

地に伏せているゴリランダーに向けてゼブライカが激しい突進を繰り出す、その足元は地面との摩擦で火が着きその熱と火炎ごとゴリランダーへ襲いかかり巨体を空中へと跳ね上げた。

 

「食べた(グラスフィールド)のおかげでゼブライカの力も増したかな?痛かったでしょ?」

 

「…っるっさいなあ!ゴリランダー!はたきおとすだ!」

 

「!」

 

「ホォオオオアァァ!」

 

空中で体勢を立て直したゴリランダーは落下しながら鋭い掌底をゼブライカへ叩き込む。

パチン!と言う大きな破裂音にも似た音が響きゼブライカは身動ぎをした。

 

「おぉ〜!流石相棒ポケモンだねぇ、効果抜群の技を貰っても耐えるタフさ。

でも、今のニトロチャージで素早さ(ギア)は一つ上がった、このままスピード対決するかい?

ゴリランダーの耐久に負けず劣らず、僕のゼブライカの素早さには自信があるよ?エルフーンが用意してくれた追い風を受けた君のポケモンとどっちが速いかなぁ?」

 

見え見えの挑発…いや、この飄々としたオッサンが挑発してるのか何も考えず忠告してるのか分からない。

 

「…やっすい挑発なんかに乗ってやらねぇよ。

戻れ、ゴリランダー。」

 

ゼブライカの火力と速度が増したニトロチャージ…その攻撃を受けられる俺の手持ちのポケモンは…。

 

「行ってくれ!カジッチュ!」

 

俺のプレミアボールから飛び出したのは一個の小さな緑色のリンゴ、その中に棲み着いた一匹の(むし)ポケモン。

1000を超えるポケットモンスター、その中でも強大と言われるドラゴンポケモンでも最小クラスのポケモンだ。

 

そのカジッチュのすぐ隣、それこそ数十cmの位置。

天を衝くような轟音と雷鳴が疾ってその位置にオッサンのゼブライカが()()()()()

 

「あちゃ〜…外しちゃったかぁ。」

 

「今の技は…。」

 

「サンダーダイブ、僕のゼブライカの必殺技。

…だったんだけど威力が高い分、外すと勢いよく地面と激突しちゃうんだよねぇ。

まさかこんなに小さい子を出されるとは思わなかったなぁ、失敗失敗。

戻っておいで〜。」

 

カジッチュの横で伸びて倒れていたゼブライカを自身のプレミアボールに収め、労うようにボールに笑顔を投げかけるオッサン。

そのまま持ち替えたボールから飛び出してきたのは…。

 

「ボクの手持ちには炎タイプ(エンブオー)飛行タイプ(バルジーナ)も居るけど…。

()()()草タイプのスペシャリストが相手なら()りたいよね?」

 

巨大ながらも気品とそれに伴う威圧感を放つ黄緑色の草蛇ポケモン。

 

「ジャローダ!」

 

3mを超える巨体が小さな林檎(カジッチュ)を睨みを効かせていた。

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