青いリンゴが実る時   作:百瀬ハト

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天邪鬼な大蛇

ジャローダ…ガラル地方から遥か遠く、イッシュ地方のポケモントレーナー初心者の冒険スタートのために用意されるポケモンの一匹、草タイプの『ツタージャ』の最終進化系。

立場的には俺のゴリランダー同様の言わば『相棒』と呼べるポケモンだ。

オッサンの手持ちには水タイプ(ダイケンキ)、口ぶりからして炎タイプ(エンブオー)も居るらしいが見るだけで分かる…このジャローダこそがオッサンの()()だ。

 

「さて…かかっておいで、未成熟(青リンゴ)ちゃん?」

 

「絶対カジッチュより素早く行動できるだろうってのに…とことん舐めやがって。

お言葉通り行ってやろうじゃん…いけ!とびつく攻撃!」

 

「ッ…チュゥァ!」

 

一度溜めてからジャローダの顔面目掛けて技名通り飛び付く。

威力は低いが草タイプの弱点である虫タイプの攻撃、かつ…。

 

「ほとんどのポケモンならびっくりして素早さが下がる…!」

 

「そうだね、素早さが下がるね。

()()()()()()()()()は。」

 

オッサンがニヤけた…?

 

「でも、ボクのジャローダは生粋の()()()()()()なんだよね。

お返しだよ、スケイルショット!」

 

「マズい、避けろ!」

 

胴体に生えた鱗を飛ばして攻撃するドラゴンタイプの攻撃…!

見た目以上の素早い身のこなしから放たれた鱗を避けるようカジッチュに指示をする…が。

 

「チ…。」

 

カジッチュの体は動かず、至近距離から放たれた鱗は全身に刺さり直撃、激しく飛ばされた後に弱々しく声を上げている。

一方でジャローダは今しがた飛ばしたはずの鱗が瞬時に生え変わっており新しい鱗が金属の鎧のように輝きを放っている。

 

「スケイルショットは自身の鱗を脱ぎ飛ばすことで防御を捨てて攻撃、そして素早さの上昇を同時に行う技。

でもボクのジャローダは特性のあまのじゃくで(よろい)を着込んで機動力は下がる代わりに逆に守りを固めるのさ。」

 

「訳わかんねぇよ…つか、さっきのオッサンの挑発もただの攻撃を誘った行動じゃ無かっただろ?」

 

「お、良く分かったねぇ。

ボクが挑発をしてる間にジャローダに指示をしたのはへびにらみ、これで君のカジッチュにはまひ状態になって貰ったよん。」

 

俺は「はぁ…。」とため息を一つ放つ。

スケイルショットを放つたびに防御が上がり続けて要塞のようになるジャローダに加えて未だ無傷のダイケンキ…まひ状態のカジッチュと消耗したゴリランダーでは…。

 

「勝てないな、悪いオッサン降参だ。」

 

「そうだね、お互いこれ以上ポケモンを傷つけ合う必要はないだろうしね。」

 

「お疲れ様。」と俺のカジッチュにキズぐすりを吹きかけるオッサンに俺は問いかける。

 

「で?オッサンの目的は?」

 

「オッサンじゃなくてシアノって呼んでほしいなぁ。

あ、『イケてるナイスガイ』でも…。」

 

「…イケてるナイスガイのシアノのオッサン、アンタは多分…ただのファン精神で選手控室(ここ)に乗り込んできた訳じゃないだろ?

そうじゃなきゃわざわざ()()()目的で一般客立入禁止の場所にスタッフをボコボコにしてくる訳ないからな。」

 

「ハッハハハ…鋭いねぇ。

何を隠そうボクはね…。」

 

オッサンが帽子を外して何かを言おうとした…その時。

 

「コッチだ!コッチに侵入者が居るぞ!」

 

大会のスタッフが大挙して控室…それとそこから繋がる廊下を取り囲んだ。

 

「あらら…これじゃまるでボクが悪い人みたいじゃない。」

 

「不法侵入は普通に悪い事だからな…?

一回学校にでも行って学び直せば?ナイスガイ。」

 

「そうだね!じゃあ()()()()()()()。」

 

「へ?」

 

オッサンは誰のか分からない荷物をにじり寄って来ていたスタッフの先頭に投げつけ、怯ませると手持ち(プレミアボール)から黒い翼を持ち、頭部には一束の毛を残して素肌が晒されその毛と腰に獣の骨を着飾った大型の鳥ポケモン『バルジーナ』を繰り出し、俺の腕を掴んで乗り込んだ。

 

「オタクの選手、ちょっとお借りするね〜。」

 

そう言い残すと俺を掴んだまま()()()()()に向けてバルジーナは高速で飛び立ち、俺たちはバトルコートを横切ってシュートシティの上空まで飛び上がった。

 

「あ〜あ…メッチャ会場ざわついてたじゃん…。

どうすんだよ誘拐犯のオッサン。」

 

「う〜ん…このまま飛んで行っても良いけど…バルジーナが疲れちゃうからなぁ…。

とりあえず乗ろうか()()()。」

 

「…。」

 

話聞かねぇしホントに誘拐犯じゃん…。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

「皆様、本日はマクロコスモス・エアライン、()()()()()()をご利用くださいまして誠にありがとうございます。

この便の機長は〜。」

 

数時間後、俺とシアノのオッサンは飛行機のエコノミークラスの一席に座っている。

オッサンからは行き先も伝えられなかったが、どうやらイッシュ地方に向かうらしい。

 

「ほぼほぼ星の真裏じゃん…。」

 

「ごめんねぇ、ビジネスクラスでも良かったんだけどボクってこの狭い席で食べるエコノミーの機内食が大好きなの。」

 

「いや、別に構わないけど…そろそろ教えてくれない?

アンタがわざわざ敗北者(おれ)を誘拐まがいの方法で連れ出した理由。」

 

「あ、CA(おねー)さんボクワインね白い方。こっちの子には完熟オレンのジュースを…。」

 

「聞けよ!あと、オレンジュースじゃなくてコーヒー!」

 

CAから飲み物を受け取りながらオッサンは口を尖らせ「せっかちだなぁ…。」と呟いた後に続けた。

 

「ゴリランダー、エルフーン、カジッチュ、モロバレル、ユキノオー、パンプジン。

パンプジンは極めて大きな個体で…これはバトルに直接関係は無いけどカジッチュは色違いだ。」

 

俺の手持ちのポケモン…?

 

「ルンパッパとかナットレイとかドレディア…他にも使ってるポケモンはいるけどこの子達がトーナメントに挑んだメンバーで間違いないね?

ガラルリーグ準決勝トーナメントのベスト4、ターフタウン出身のセチアくん。」

 

「そうだけど…それがなんだよ?」

 

「キミの戦いを予選から見せて貰ったけど、エルフーンの『おいかぜ』やパンプジンの『トリックルーム』、ゴリランダーとルンパッパには『ねこだまし』、恐らくモロバレルには『いかりのこな』を覚えさせている。当たってるかな?」

 

「な…?」

 

俺の手持ち、技を覚えてるだけじゃなく使ってない技まで言い当てた?

 

「図星って顔だねぇ。

これらの技は1VS()1のシングルバトルより2VS()2…()()()()()()の方が役に立つ技だ。

キミ、実は得意なのはダブルバトルだろう?その証拠にガラルのジムチャレンジのラストであるナックルシティジム、ガラルで唯一ダブルバトルで行われるジムチャレンジでは『苦手なドラゴンタイプを相手に草タイプのポケモンのみを使用したにも関わらず、一体のポケモンも戦闘不能にせずに余裕を残して通過した。』とジムチャレンジに密着した記事に書いてある。

このジムをここまで圧倒してクリアしたのはキミ含めて二人しか居ないらしいねぇ…凄い凄い。」

 

「そりゃどうも…で?目的は?」

 

「実はボクねぇ、イッシュ地方のブルーベリー学園って学校の校長先生なんだ。

ボクは今、その学校へのスカウトのためにあらゆる地方を飛び回ってガラル地方に来たってワケ。」

 

「じゃあ尚更一位の優勝者をスカウトしなよ。

そっちの方が学校の株だって上がるだろ。」

 

「いや、大会を見ていてキミが最適だと思ったんだよねボクは。

何せボクの学校(ブルーベリー学園)はバトル特化かつ()()()()()()()()だからね。」

 

「!?」

 

2VS2(ダブルバトル)専攻?どこの地方のリーグでも採用されてるのは1VS1(シングルバトル)、そんな学校聞いた事ない…でも…。

 

「興味出てきた…って顔だね。

だからボクは戦い方がダブルバトルに向いてるセチアくん、キミをスカウトしたってワケ。

それに、そもそもの話もし優勝者の子がチャンピオンを倒しちゃったらそこからは忙しくて学校どころじゃなくなちゃうでしょ?」

 

それもそうか…優勝者があのチャンピオンに勝てるかは知らないけど。

 

「さて、ここまで聞いて行ってみる気はないかい?ボクのブルーベリー学園に。」

 

「誘拐までして退路絶っておいて何言ってるんだよ…。

コレからよろしく、()()。」

 

俺の返事に校長(オッサン)は笑顔で答えた。

 

 

 

「あ、誘拐で思い出したけど…イッシュに着いたらキミの親御さんへの許可取りとガラルリーグへの事情説明お願いしても良いかな?

流石に学校の校長先生が他地方の子を誘拐してたって話になったら無職になっちゃうよボク。」

 

「…良いけど、間違ってはいなくない?」

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