ビル屋上での狙撃戦の後、定期的な身体検査ということで私はDAの本店に呼び出されていた。
「はい、終わりましたよ」
「ん、いつもありがとうございます。」
「毎月すまんな」
「そう思うなら私を本店配属にしてくださいよー!私だってここの料理食べて暮らしたいですよー!」
「ほんとお前ってやつは……前に東京で暮らしたいと言ったのはお前じゃないか」
「あれはリコリコがあったからで、今はもうないじゃないですか」
「お前もあそこに行きたかったのか?」
「フキ程じゃないですけどねー。私だって先生と話したいことくらいありますよー」
楠木指令が私を手元に置きたい理由の1つは忠実な手駒が欲しいから。だDAは、政府との絶妙な関係にある。そのため政治闘争とは切っても切り離せない。そのため、楠木指令は私のような突出した技能はないが優秀な人員を集め、子飼いにしている。時にはファーストに手が届くような人材さえ、敢えてサードに留まらせ、他組織からマークされないようにしている。
しかし、楠木指令が私を手元に置きながら微妙に距離を置いているのには別の理由があると私は踏んでいる。この身体検査だってその1つだ。麻酔で眠らされているので詳しくは分からないがこのような検査を定期的に行っているリコリスを私は他に1人しか知らない。その1人だって卓越した才能を持ちながら身体機能に問題があった人物だ。いや、あいつは頭にも問題があったな。
話がずれたが、この検査は特別だ。月に1度東京から本部に呼び出され、検査を受ける。正直に言えば調子がよくない時期で任務は勘弁したい時期なのと、終わればスッキリするのもあってありがたいことだがはっきり言って気味が悪い。人の経血とかを採取して喜ぶ人間がいるのだろうか。昔あったとされる、使用済み下着の販売まがいのことをしているわけでもあるまいに。
そのうえで私が真実を知っているだろうと思っている人物は3人いる。1人は楠木指令。当の本人が知らないはずはないだろう。次にミカ先生。あの人は私にとって大事な先生だが彼が他の人と私のことについて話しているのを聞いたことがある。すぐにバレてしまいしっかりとお叱りを受けてしまったが。
そしてその時先生と話していた男。彼の目的は私ではなかったようだが、偶然私のことを知り、そのことについて話していたようだ。その時の会話で覚えているのはどうやら彼にとって私は求めた人物ではないこと。しかし、極めて稀な存在ではあること。以上のふたつだった。
ぶっちゃけた話をすれば、先生の知り合いといえど赤の他人から勝手に品定めされてがっかりされるのは気持ちが悪い。しかし、こんなことになるのであればもう少し静かに話を盗み聞いておけばよかったと思っている。
「なーにが稀な存在だよ。千束やフキの方がよっぽど稀だわ」
私は自らを特別な存在だと思ったことは1度もない。確かに周りと比べれば私も優秀ではあるだろうががんばっても精々セカンドの上位レベルだ。あの化け物どもと銃撃戦などやりたくもない。
「リコリコに顔出せば多少は何かわかると思ってたんだけどなあ」
その手がかりを私は知ることなくリコリコは閉店もとい休業中。今の私にとってあそこは手がかりがあったかもしれない場所になってしまった。
「あいつらに会いたければ頑張って仕事をこなすんだな。とりあえず今月はセカンドとして活動しろ」
「で、来月になったらサードに降格ですか。いつものことながらもう少し何とかなりませんかね」
「知らない土地で使い捨てられても構わないならそう言え」
「はいはい、私が生きていられるのは楠木指令のおかげです」
「フッ、いつも通りお前もクソガキだよ」