「a1、これより、対象の処理を開始します」
今日はとある政治パーティーに潜り込んだ諜報部隊の処理が任務だった。任務自体はそこまで困難なものではなかったし、DAを支援してくれている政府関係者の協力もあり、スムーズに事は進んでいった。
「それでもダンスとマナーだけはしっくりこないよねー」
「それが任務なんですから我慢してください。それに挨拶とかだってよくできていたじゃないですか」
「フキがいてくれてたから取り繕えただけだよー」
「それでも、表面上はできてるんですからいいじゃないですか」
「それはそうだけどさー……」
「はいはい、後はダンスですから頑張ってくださいよ!」
「知らないおっさんと踊るとか無理だしー」
「そんなの知りませんよ……いつもの任務になれば冷血な先輩はどこ行ったんですか」
「いや、任務は終わったじゃん?誘い込んで一瞬で叩く。今頃スタッフに変装した人たちが後片付けしてるし……気が抜けるよねー。後、なんでか私モテてるし」
「ああ、挨拶の時からやたらと声かけられてましたもんね」
「一条ってさ、なんか名の知れた名家らしいんだよね。私には関係ないけどさ」
「人違いってだけであんなに声かけられますかね?」
「知らないよ。少なくとも私と踊りたいって人が多いのは面倒くさいよ」
いかに私の顔が美人だとしてもその程度なら珍しくもないのが政界というものだ。素人が着飾って、付け焼刃の作法を振り回してもよく観察すればバレてしまう。そんな場所で明らかに新顔の人間に人が集まるのは不自然だ。それに名目上、私たちは協力者の娘の付き添いとしてここに来ている。本来ならその子のそばにいなければならないが、その役は他のリコリスが担っているので問題はない。
「まあ、とりあえず踊ってきたらいいじゃないですか。やれて数曲なんですから頑張ってくださいよ」
「はーい……」
とりあえず、近くにいたできるだけ年が近そうな男性を選んで踊り出す。すると相手の男性が話しかけてきた。
「しかし、一条家の令嬢とこうして踊れるのは光栄ですね」
「さっきも言いましたが、私は一条家の人間ではございませんが。人違いはやめていただけますでしょうか」
「そうでしょうか。マナー等もそれなりにできていられるようですし、私の勘ではあなたは秘された類の方だとお見受けしますが」
「しょせん付け焼刃ですよ。あなた方の様にしっかりと身に着いたものではございません」
「フム……それでは話題を変えましょうか。あなたはここ10年で社交界に似た顔の子どもが増えていることをご存じですか?」
「いえ。子どもなんてどれも似たようなものではありませんか?気にするほどのものではないと思いますが……」
「そうではないのです。顔の特徴や体格といったところがあまりにも似た子供が増えているんですよ。おそらくは何か……夢のような話ですがクローンや遺伝子操作など行っている組織でもあるのではないかと噂になっているのですよ」
「それはずいぶんと眉唾なお話ですがそれがどうかされたのですか?」
「いえ、その子供たちの特徴なのですがね、あなたにも似通った部分が多いものですて、気になったのですよ」
「あら、私は今年で22歳ですのよ。子供と言うには大きくなってしまっていますのに」
「そうですね。ダンス中の与太話とでもお思いください。それでは失礼」
曲が終わると同時に男性は去っていった。
「ダンス中に変な話するとは相手の選択間違ったかなあ……」