極力、描写に当たって違和感の少ないキャラの技としたつもりではございますが、苦手な方もいらっしゃるかと思いますので、予めご了承の上でお読みいただけますと幸いです。
チェーン店故の手頃な価格で楽しめる焼肉店を後にしたボーボボ達とカミキは、満腹感に浸りつつ帰路についていた。
「すいません、皆さん。
僕までご馳走になってしまって...。」
「ガキのくせに何遠慮してんだよ!
こういう時は大人しく奢られとけ!」
「どうしても気になるってんなら、もっと凄え役者になって、俺達に良い店紹介してくれよ!」
ボーボボ達と旧知の仲であるアイと違い、客観的に見れば仕事上の付き合いに過ぎない自分の分まで奢らせてしまった事にカミキが恐縮するも、そんな彼の肩に手を回した天の助とボーボボが、彼が気負わぬ様言葉を続ける。
無邪気に戯れ合っているが故に、カミキの身動きが取れなくなった時であった。
「まあヒカルちゃんがどうしてもって言うなら、アイに熱い愛撫と抱擁をぉォォー!」
アイの格好をした首領パッチがカミキの顔面にしがみ付き、強引に接吻を迫る。
その気色悪い光景は、さながらパニックホラー映画のクリーチャーであった。
「...! す、すいません、パチさん、そういうのはちょっと...。」
「フェイスハガーか、テメーは‼︎」
嫌がるカミキを見かねたボーボボがクリーチャーを引き剥がし、地面へと叩き付ける。
その様を見ていたアイと天の助も心配した様子だ。
「大丈夫か? ちょっと顔色悪いぞ?」
「まあ、食べた直後にこんなキモいのが来たら気分も悪くなるよねー。」
地面に伏せられたバカを執拗に踏み躙りながら語るアイの様子に、カミキは苦笑いを浮かべる。
自身の名を騙られてあの様な事をされては堪らないだろうし、全く持って首領パッチに同情は出来ないが、とはいえここまで無慈悲な振る舞いが出来るのは彼らの間に有る気安さ故だろう。
そんなアイ達の良くも悪くも遠慮の無い関係に、カミキが羨ましさを感じた時であった。
ボーボボが彼について、ワークショップの時から気になっていた事を尋ねる。
「ヒカルよ、もし勘違いだったら悪いんだが、時折表情が固くなるよな。
さっきみたいな、迫られた時とか特にだ...。」
そう語るボーボボにも、はっきりとした確証は無い。
違和感を感じた場面も、誰かが演技指導の際に彼の方に顔を寄せて話を聞こうとする際に一瞬という程度だった。
先の首領パッチの奇行にしても、いきなりあんな事をされて驚かない方が珍しいであろう。
むしろ杞憂に終わるならそれで良い_そんな思いで発せられた言葉であったが。
「なんで...、どうして分かったんですか?
今迄、バレた事無かったのに...。」
まるで時間が止まってしまったかの様に表情を硬くするカミキ。
彼の中に有る暗い記憶から来るものを、周囲に気取られぬ様生きてきただけに、その衝撃は大きい。
そんな彼の疑問に、アイが自身の見解を語る。
「私と同じだからじゃない?
自分も他人も騙す、嘘吐きの目。」
彼女の言葉にカミキが目を見開くのと同時に、ボーボボが名刺を取り出しつつ語り始める。
「俺達は普段、この施設で厄介になっててな。
アイとも、そこで会ったんだ。」
「あっ、今は私の事は気にしなくていいからね。
昔の身の上話しても、面白くないだろうから。」
ボーボボから受け取った名刺に書かれた『児童養護施設』という文字と、その施設で出会ったという話にアイの過去を類推するも、直後に飛び出した彼女のあっけらかんとした態度にカミキは面食らう。
ただ、一方でこれらの情報を繋ぎ合わせる事で、彼女がその過去に反して前向きに生きている様に見える事実に納得出来る部分も有った。
恐らく、彼女の周囲にこの賑やかな者達の存在が有った事が大きいのだろう_と。
そうカミキが納得したところで、ボーボボがカミキの内に秘めたものを感じ取った理由を語り出す。
「話を戻すが、そういう施設にいるとな、当然色んな子供が入ってくる訳だ。
で、施設に入ってくる子供がどんな境遇かってのは、何となく想像付くよな。
そういう子供は、大抵同じ目や表情をするんだよ。
大人に気を遣って、周囲を警戒するのが当たり前になっちまった、アイ風に言えば『嘘吐きの目』だ。
まあ、アイやヒカル程のはそうそう見ないがな。」
言われ、納得した様子のカミキ。
未だ幼い彼でも、児童養護施設というものがどんな施設で、そこに入所する子供がどんな状態なのかは容易に想像が付く。
悲しいかな、自身の周囲の環境を考えれば、決して他人事ではないが故に。
流石に自身の抱える秘密を見破られた訳ではないだろうが、少なくとも『何か複雑な事情が有る人』として接される事は確実であろう。
そんな微妙な関係でいる位なら、いっそ自分から遠ざけてしまえば、綺麗な思い出として残せるのでは_そんな考えから、カミキが露悪的に語り出す。
「凄いですね...。
仰る通り、僕にも色々抱えてるものが有るんです。
何も無い自分の中身を埋めようとして、一緒に笑ってくれる人を見付けたくて...。
いつの間にか、自分の中の感情も分からなくなってて...。
この数日間、皆さんと過ごした時間だけは、本当に楽しかったって思いたいんです。
...皆さんは、こんな僕と話してて楽しかったですか?」
絞り出す様に語ったカミキは、顔を伏せ肩を震わせる。
こんな発言をしては、もう元の関係には戻れないだろう_と。
「楽しかったに決まってるじゃん。
じゃなきゃ、ご飯に誘わないよ。」
「何も無いとか言うけどよ、演技出来んじゃねぇかよ!
今日のも凄かったぜ!」
「素人の俺らでも凄えって思える位だろ?
ヒカルなりに滅茶苦茶頑張ってきたって事じゃねぇか。」
帰ってきた言葉に、最早カミキは何も言えない。
彼らは今日一日だけで、どれだけ自分を驚かす気なのだろうか。
「ヒカルよ、もし自分で話さなくても抱えてるモンを共有出来るとしたらどうする?」
続けて届いたボーボボの言葉に驚きつつ、カミキは逡巡する。
もし、そんな魔法の様な所業が可能なら、或いは自分の気持ちも大分楽になるかもしれない。
とはいえ、それは必然的に自身の問題に巻き込む事になるが。
(ボーボボさん達なら、本当に何とかしてくれるかな...。)
そんな一縷の望みを託したカミキの首肯を認め、ボーボボが動き出す。
「安心しな。 そういうのが得意な奴を知ってるんだ。
首領パッチ、奴に連絡を取ろう。」
「おう! 場所は俺らの部屋で良いよな。」
「んじゃ、ちょっと酒とつまみでも買ってくか。
ヒカルもお菓子ならちょっとは喰えるだろ?
天の助と時間潰しててくれや!」
知り合いであろう人物に連絡を取る首領パッチと共に、ボーボボとアイが離れていく。
二人で取り残され、何をすれば良いのかとカミキが天の助を見遣ると。
「うし! そういう事だから、ちょいとドライブといくか!
チェンジ! ところてんバイク!」
そんな掛け声と共に体を自転車の様な形に変形させる天の助。
呆気に取られるカミキに乗るよう促すと、彼が漕がずとも走り出す。
「ハハハ! 凄いですねこれ!」
「だろ? 初回だからサービスしとくぜ。」
これまで感じた事の無い感動を味わうカミキに、気軽に楽しむよう語る天の助。
彼が夜風に涼んでいると、天の助から声が掛かる。
「ヒカルよ、不幸対決する訳じゃないが、皆色んなもんを抱えて生きてんだ。
勿論、程度の差は人それぞれだけどな。
俺なんて昔、1円の価値も無いって言われたんだぜ。」
笑いながら語る天の助の言葉をカミキは黙って聞いている。
無価値同然という衝撃の発言も勿論だが、それを笑いながら話す彼の考えに興味を抱いたのだ。
「なんて事は無いさ。
俺にも、今のヒカルと同じでアイツらがいてくれたんだよ。
誰かに必要とされたいって思うのは、皆当たり前に思う事だからな。
まあ、面と向かってこんな事アイツらに言えないけどな、ハハハ!」
そんな、嘗ての自身の有り様を肯定する発言にカミキの視界がぼやける。
声を押し殺し震える少年の様子に、セルフオーディオとでも言うように天の助がバラード曲を歌い始める。
こんな状況にもスマートに対応出来るのが大人なのだと示す為に。
「すいません、天さん...。
うるさいんで、黙っててもらえますか?」
「⁉︎」
都内某所のマンションの一室。
この部屋は、普段ボーボボ達とアイが共同生活を送っている。
本来なら既に戸籍上の親子である壱護達と共に暮らす予定なのだが、アイの事務所加入からなまじB小町が順調に成長していった事も相まって、彼らが新居に引っ越すタイミングを取れずにいたのだ。
ビュティ達と共に暮らすという案も有ったが、二人の間を邪魔しては流石に気まずいとのアイ本人の弁も有り、信頼できる相手としてボーボボ達に白羽の矢が立った格好となる。
そんな彼らの居住地にて、天の助とカミキがボーボボ達に合流すると、先程の食事の際にはいなかった男性が首領パッチと戯れている光景が広がっていた。
男性の名は破天荒。
ボーボボ達と共に戦った猛者であるが、ハジケ組の一人として首領パッチを尊敬している事から、普段のクールな雰囲気が嘘の様な振る舞いをしてしまう、端的に言って『危ない人』である。
「おっ、坊主がおやびん達が言ってた奴か。」
そんな光景に引いた様子のカミキの姿を認めた破天荒が、一転してクールな面持ちで手招きをする。
情緒不安定なのでは_と内心、カミキに心配されてしまっているが、本人は全く気にしない様子でここに来た目的を果たそうとしていた。
「さて、話は一通り聞いてるから、俺が今からやる事を説明するぞ。
これから俺の力を使って、坊主の記憶を読み取っていく。
坊主は深呼吸して、リラックスしてりゃ良い。」
破天荒の言葉に、素直に目を閉じて心を落ち着かせる。
そんな様子を見ていたアイが、先程の破天荒の豹変振りから心配する声をボーボボに掛けるが、一応実力は本物とのフォローも有り、全員が静観していると。
「カギ真拳奥義『心情解錠』‼︎」
掛け声と共に、カミキの胸に手にした鍵を突き刺すと、ドアの鍵を開ける様に回す破天荒。
この技によって、彼の内に秘めた闇を暴こうとしていた。
本来、敵の情報を抜き取ったりと諜報目的で使用される為、必然的に被使用者の抵抗によって情報が不鮮明になる事が有る等使い勝手の悪い技なのだが、今回の様に相手が協力的な場合はより正確に情報を抜き出す事が出来る。
「! こりゃ、また随分ととんでもないモンが出てきやがったな...。」
技を終え、カミキを休ませた破天荒の表情は険しいものだ。
ボーボボ達が理由を問おうとするも、アイを見つつ言い淀む破天荒。
その様子に、カミキをベットに連れて行くと言ってアイが席を外すと、漸く自身が見た情報を語り始める。
「気が利く嬢ちゃんだな。
今から話す事をあの子に話すかは任せるが、余りオススメは出来ねぇな。」
彼によって語られた内容を吟味したボーボボ達は、アイを呼び確認を行う。
彼の秘密を知ってしまったら、後戻りは出来ない_と。
「アイ、アイツの秘密はそう簡単に話せる事じゃ無い、かなりデリケートな問題だ。
後は俺達に任せて引き返す選択肢も有るが、どうする?」
「おじさん達がそこまで言うって事は、ホントは聞かない方が良いんだよね。
...それでも私は知りたい、ヒカルに何があって、何に苦しんでるのか分からないと、本当の意味で一緒に頑張れないから。」
この日の芝居で使った台詞を話しつつ語るアイの表情は確固たる覚悟を持ったものだ。
自分が誰によって救われ、誰のおかげで強くなったのか_それを雄弁に語っている。
そんな彼女の覚悟を認め、ボーボボから語られた内容は、想像を絶する内容であった。
家庭環境の影響によって精神的に不安定になった所を、大人につけ込まれ受けた性被害。
表面上、普通にしていられるのが不思議な程の内容であった。
「とりあえずは、その姫川って奴をどうにかしないとだよな...。」
「ですがおやびん、無闇に動くのは危険ですよ。
下手すりゃ、更に坊主が危険な目に...。」
カミキを苦しめる下手人について対策を講じようとする首領パッチを、破天荒が諌める。
カミキの記憶を直接見た手前、何とかしてやりたい気持ちは強いが、自身の技が映像記録として残せない等、現状で講じる手段が少ない事を理解している事による冷静な判断であった。
現実的に、一般人である自分達が手を出そうと思うと、超法規的な手段で犯行現場を抑えるしかないのが実情だ。
アイを通して告発したとて、むしろ業界の闇として揉み消されるのが関の山であるし、そもそも情報の出所について突っ込まれると考えると、益々カミキの身に危険が及ぶであろう。
一同が頭を悩ませていると、アイがとある人物の存在を思い出した。
「何とかしてくれそうな人、いるじゃん!」
破天荒のキャラクター性を文字に起こすと、正直ボーボボ達よりも余程イカれたキャラクターに見えてしまいます。
あれがコミカルなギャグ描写として成立してるのを見ると、絵の存在って大きいと思わされます。
登場したオリジナル技に関しては、『LOCK』の様に封じ込める技を使えるなら、逆も出来るんじゃね?的なノリで考えたものです。