筆者はラップの経験など皆無ですので、違和感を感じる部分も有るかと思いますが、素人が作った物として暖かい目で見ていただけますと幸いです。
妊娠35週目を迎えたアイの腹部は、その胎内の赤子の順調な成長を示すかの様に、大きく丸みを帯びたものとなっていた。
宣言通りの吾郎を始めとした病院のサポートに加え、基本的に都内に留まらざるを得ないヒカルや苺プロの面々に代わり、宮崎で暮らすポコミが度々見舞いに訪れる等心理面で頼りになる存在が有ったおかげか、経過観察も順調そのものという状況であった。
この週を乗り越えれば、正産期_所謂いつ産気づいてもおかしくない時期に入る頃合いであり、吾郎も彼女の初検診の際に懸念した早産が起きぬ様細心の注意を払っていた。
入院中のアイの身分を厳重に隠す為、偽名を使うだけでなく、壱護と吾郎がプライベートの携帯を利用して連絡を取り合う程の力の入れようが功を奏してか、現状は彼女の妊娠の事実が明るみになった様子は無い。
院内の他の患者から見ても、アイの外見年齢から『訳あり』である事は察せられたものの、目立った問題行動の無い彼女に対して余計な詮索をしようとする者もおらず、順調に行けばこのまま出産迄秘密を隠し通せる見込みとなっていた。
吾郎にとっても壱護達にとっても、もう少しの踏ん張りどころ_彼らがアイの見舞いに訪れたのはそんな時期であったのだ。
あてがわれたベッドにて休むアイの病室には、彼女と縁の深い者達が訪れていた。
頭部に『ラッパー』の文字を刻んだ首領パッチ_
彼の頭部を棒で叩き続けるボーボボ_
そんな彼らの横で、亀のぬいぐるみで一杯になったバケツを片手に佇む天の助_
自身の病室の扉を開けて、彼らが見舞いに来た事をアイが喜んだのも束の間、三人が徐に先の状態となると。
「YO そこの連れ行く爺ちゃん♪ 婆ちゃん♪」
「アンタらが積み上げたネクサス大切 晩節♪」
「時代の動向♪ 二人で同行♪」
「この亀社会乗り越えたアンタら
その意志継いでくオレのフューチャー フィーチャー♪」
「これって相乗?向上?亀参上♪EYAー♪」
「この不純の中もがいてる信条 ど根性♪」
「持たされず 満たされず 亀助け人生♪」
「さあ打ち上がるなら今♪
勝ち進むなら今♪」
「これって強情?最上?亀参上♪EYAー♪」
その歌詞?を合図に、天の助がバケツの中から、ぬいぐるみをまるで紙吹雪とでも言う様にアイの頭上に降り注いでいく。
幸いぬいぐるみは手の平サイズである為、頭に当たったとて痛みは無いのだが、彼女は入院以来久しく忘れていた感覚に襲われていた。
この意味不明な彼らの行動を、自分はどう処理すれば良いのだろう_と。
「ちょっと、あなた達!
妊婦の病室で何して...、ホントに何してんの⁉︎」
騒ぎを聞きつけた吾郎が、病室へとやって来たのはそんな時であった。
彼らの来訪自体は、事前に壱護から伝えられており、破茶滅茶な言動が目立つものの決して悪い人間ではないと聞かされていた。
吾郎がアイに彼らの来訪の情報を報せた際にも、非常に嬉しそうな反応を見せており、彼女が施設にいた頃から世話になっていた相手という情報も重なり、完全に油断してしまっていたのだ。
「何って、安産祈願だけど?」
「安産祈願⁉︎ これが⁉︎」
代表して発言したボーボボの返答に、益々混乱する吾郎。
一応、横目でアイの様子を確認するものの、どうやら彼女もこの状況を理解するのに苦戦しているらしい。
とはいえ、彼もインテリの性なのか、こんな意味不明な状況をなんとか自力で理解しようとしてしまい、病室の中をくまなく観察する。
先の安産祈願という言い分と、この病室に広がる光景の中に、因果関係が有る筈だ_と。
そして彼は、ある一点に着目した。
天の助がばら撒き、ベッドの上や傍に散らばっている亀のぬいぐるみだ。
(亀はとても長生きする動物として知られているし、『長寿の象徴』と考えれば理解出来なくもない...、か?)
半ば無理矢理自身を納得させた吾郎は、病院に務める医師としての責務を果たさんとする。
彼らが真にアイの事を見舞うつもりで、先の行動を取っていたと仮定すれば、少なくともその意志は尊重するべきだ。
心身共に不安定になりやすい妊婦、加えてアイの場合、諸々の事情から素性を隠して過ごさねばならない為、彼女が信頼する相手の来訪が与える影響は、他人が思う以上に大きいだろう。
とはいえ、ここは当然ながら病院であり、入院している患者_それこそアイと同じ妊婦が他にもたくさんいるのだ。
「お三方とも、星野さんのお見舞いにいらっしゃるのは結構ですが、他の患者様もいらっしゃいますから、節度を守ってお願いします。」
「おじさん、私からもお願い。
せっかく来てくれたのに、これじゃ何も話さないで追い出されちゃうよ?」
「そりゃ流石にマズイな。
先生も悪かったな、アイの事面倒見てくれてたの先生なんだろ?」
自身の言葉とそれに続いたアイの説得に素直に応じ、謝罪する様子を見て毒気を抜かれてしまう吾郎。
壱護から聞かされた彼らの人物評に、成程と納得してしまう。
実際、アイと彼らの付き合いは彼女が施設にいた頃からという話だが、となれば彼らも平時は首都圏にいると考えて間違いないだろう。
つまり彼らも態々見舞いの為に、宮崎迄やって来たという事である。
いくら幼少期からの付き合いが有るとはいえ、言ってみれば施設で面倒を見た子供の内の一人に過ぎない彼女の為に、これだけの行動を起こすのだから、その親密さが窺える。
そして同時に思うのだ。
入院生活が始まって以降より深く知る事となった、彼女の良くも悪くもさっぱりとした性格は、多分に彼らの影響を受けているのだろう_と。
「それでは、失礼します。
星野さん、もし何か異変を感じたら_」
「ナースコールでしょ。
おじさん達もいるから、大丈夫だって!
呼んだらすぐ来てくれるんでしょ?」
ここ数ヶ月、口癖の様に自身に言っていた言葉を、先回りされて言われてしまい、苦笑しながら病室を後にする吾郎を見送るアイ達。
二人の間に確かな信頼関係が築かれているのを感じ取り、ボーボボ達も表情を柔らかくする。
「先生とも上手くやれてるみたいだな。
一応、社長からも話は聞いてたんだが、やっぱ心配だったんだよ。」
「えー、私そんなに信用無い?
これでも、それなりに上手くやれる自信有ったんだけど。」
ボーボボの言葉にアイは若干不服そうだ。
彼女とて、今更自分の感性が普通でない事を否定するつもりは無いが、今回の件において秘密を守り通す事の重要さは理解している。
最初の時点で吾郎を当てにしたのも、自身の友人達と交流の有る彼なら、事情を察し協力してくれるだろうという期待が有ったからだ。
事実として、吾郎はファンとしては複雑な感情を抱えつつも、秘密を守りサポートをしてくれている。
いくら医療従事者に守秘義務が有るとはいえ、己の感情を胸にしまいプロフェッショナルとしての振る舞いに徹するというのは、言う程単純な話ではあるまい。
「そりゃあ、先生も仕事だからな。
社長と連絡取り合ってるって話は聞いてたし、アイが信用してるのは分かってたんだけどよ。
正直、あんなに仲良くやれてて驚いてるんだ。」
そのボーボボの言葉に、アイも彼が不安視していた部分を理解した。
これだけ長い入院生活となれば、壱護やポコミといった自身と吾郎との間に立つ存在がいないタイミングは山の様にやってくるのだ。
自他共に認める程に、他人に対してそう簡単に心を許さない人間が、妊婦と主治医として上手く関係性を構築出来るのか。
そう心配される原因が、これまでの自分の振る舞いである以上、反論のしようが無い。
まして吾郎から見れば、彼女は応援しているアイドルなのだ。
程度の差は有れど、ファンとしては綺麗なイメージを抱いているであろうし、極論言葉遣いや仕草の一つで幻滅される可能性も十分あり得る。
実際、先の自身の『呼べばすぐに来てくれる』という言葉も、ポコミの存在を下敷きにした信用だけで出る言葉ではないだろう。
自分の意志で吾郎を信じ、担当医師として頼りにしている証左である。
「ポコっちがいてくれたのは大きいよ。
そもそも、せんせと初めて会ったのも、二人でライブに来てくれた時だったからね。」
アイが吾郎と出会った経緯を語った事で、ボーボボ達も彼らの関係がスムーズに構築された理由を察する。
彼女自身が語った通り、二人の間を取り持つポコミの存在が影響しているのも有るだろうが、やはり吾郎の側がファンとして関心を持っているという前提は大きかろう。
お互いにとっての鉄板の話題が有るというのは、親交を深める上で無視出来ない要素だ。
「そう考えると、担当があの先生で良かったな。
アイからしたら仕事の話してるだけでも、相手が興味持ってくれてるなら楽だろ?」
自身がばら撒いたぬいぐるみを片付けつつ、天の助が二人の会話を類推する。
何しろ彼はかつて延々とスーパーで売れ残り、邪魔者扱いされていた経験が有る故に、自分の話に興味を示して貰えない事の辛さが痛い程分かるのだ。
その点、今回のアイは相手が最初から自分の話に興味を持っているであろうし、ポコミという共通の知り合いがいる事を考えると、アイドルとしての彼女に過度な期待を抱いていない可能性もあり得るだろう。
「そうだね。
それに、さりなちゃんの話も出来たし...。」
いくらか悲哀の感情が見えるアイから出た名前の持ち主を、ボーボボ達も思い出す。
B小町のデビューライブの際に、ポコミと共に宮崎から訪れていた少女であった筈だ。
それこそ、先程彼女が語った吾郎と出会う切っ掛けとなった全国ツアーライブの前に亡くなったと記憶していた。
当時の彼女が、それまで見た事が無い程_それこそ実の母が自分を施設に残し失踪したと知った時よりも狼狽し憔悴していた為、ボーボボ達にとっても印象に残っている。
「せんせに聞いたんだけどね、さりなちゃん、4歳の時に病気が見つかって、それからずっとこの病院に入院してたんだって。
ポコっちと会う迄は、偶に家の人が来るくらいで、基本的にはずっと一人だったらしいんだ...。
まあ、病院だし同年代の子なんてそうそういないだろうから、そりゃそうだって感じなんだけどさ...。
だからかな。
せんせがこの病院で働いてるって分かって、ここで診察受けようってなった時、何か私達の間に縁が有るのかなって思ってさ。」
それは彼女が宮崎を訪れた際にも感じた事。
この宮崎という地は、自身の友人達を結び付け、自分と二人を繋げ、そして将来的に自分の主治医となる人物が自分のファンとなる切っ掛けまで作っている。
挙句、自身が予想外の妊娠をしたタイミングで、その主治医が働いていたのが研修医時代と同じ場所と来た。
偶然と言って片付けてしまうには、些か状況が整い過ぎている様に思えるのだ。
元々宮崎の地にいた三人の繋がりが出来るのはまだしも、吾郎曰く転勤が多いのだと言う医師という職業を考えると、『偶々吾郎が宮崎で働いているタイミング』で『偶々自分が妊娠し、出産する』という今の状況は、確かにアイでなくとも何かしらの縁を感じてしまう。
まるでさりなが逝ったこの地が、自分達を再び結び付けようとしている様だ_と。
若干の不安を覗かせるアイの頭を撫で、ボーボボが彼女を落ち着かせるべく声を掛ける。
ネガティヴに考え過ぎる必要は無いのだ_と。
「確かに、さりなちゃんが入院した事から考え始めたら、少しおっかなく思っちまうよな。
だからよ、こう考えれば良いんじゃねぇか?
アイの妊娠を察知した天国にいるさりなちゃんが、自分の想いが届く場所である宮崎で無事に出産出来る様に護ってくれてるんだってな。
しかも、自分が信頼してる先生にアイを任せられる様にだ。
この状況が、彼女が精一杯頑張って整えてくれたものだとしたら、アイも最後迄気を抜かずに、子供を産んでやらないとな!」
「そっか...。 うん、そうだよね。
私も、最後まで油断しない様にしないとね!」
表情に明るさが戻るアイ。
もし本当にボーボボの言う通りだとすれば、彼女が一番のファンの期待を裏切る訳にはいかないのだ。
「せんせ、おつかれさま。
でも、呼んだらすぐ来てよ?」
「おう、家はすぐ近くだしな。」
出産予定日を迎えたアイが、いよいよという段階迄自身をサポートしてきた吾郎に、労いの言葉を掛ける。
お互いに砕けた口調で話す様子からも、二人の信頼関係が窺える。
吾郎が病室の外に出れば、そこには壱護、ボーボボ達三人、そしてもう間も無く父親になろうとしており、アイと同じか或いはそれ以上に不安な表情のヒカルの姿が有った。
「先生、ここまで本当にありがとうございます!
本当に、何とお礼を申し上げればいいか。」
言いつつ頭を下げる壱護としては、正に言葉通り吾郎に感謝してもしきれない気持ちである。
単純にアイを献身的にサポートしてくれた事も勿論だが、彼女の秘密を守り極秘出産を遂行する為には、医師側の協力が必要不可欠であった。
流石に、入院から出産迄の長期間、アイの専属として近くに人を置く余裕は苺プロには無く、見舞い予定者の相互確認等どうしても現地にいる者の力を借りる必要が有ったのだ。
ヒカルもまた、いよいよというところ迄差し迫った状況に、吾郎に向け下げた頭を上げられない様子だ。
「先生...、本当にアイの事をここまで支えていただいて...。
担当して下さったのが先生で、本当に良かったです。」
その言葉に表情を綻ばせる吾郎。
医師としての冥利に尽きる一言に一瞬気が緩みかけるも、すぐに気持ちを入れ直す。
まだ全て終わった訳ではないのだ。
「お二人とも、お気持ちはありがたいですが、本番は寧ろここからです。
長丁場になる可能性も有りますので、今は星野さんの近くにいてあげて下さい。
先程のお言葉は、お子さんが無事に産まれた時に改めてお聞かせいただければ。」
吾郎の言葉に現状を理解した二人は、再度頭を下げるとアイの病室へと入っていく。
二人を見送り小さく頷くと、吾郎が一度自宅へ戻る為にこの場を離れようとした時であった。
ボーボボから彼に声が掛けられる。
「先生、俺達からも礼を言わせてくれ。
コイツは、俺達からの気持ちだと思って受け取って欲しい。」
「これは...、布製マスクですか?」
ボーボボから渡された紙袋を確認すれば、中には二枚の布製マスクが入っている。
成程、確かに有って困る品ではないし、値段を考えれば渡された側もそこまで気負う事なく受け取れるだろう。
しかも、予備の分も用意している辺りに細やかな気遣いが感じられる。
思っていた以上に気が利く人物だと、吾郎が彼らへの評価を改めつつマスクを手に取ると。
「ナイスメガネ...。」
マスクの表面に印刷された文字列を読み上げ、困惑する吾郎。
受け取った品は、ありがたい日用品から余程な事が無い限り一生使わないであろう物になってしまった。
「先生にピッタリだと思ってよ。
『ザ・眼鏡が似合うイケメン』って感じだぜ。」
サムズアップしつつ語られた褒め言葉に曖昧な返事をしつつ、会釈をしその場を去る吾郎。
彼らから悪意を感じ取れないだけに、取り敢えず気持ちだけでも受け取っておこうと、謎のマスクを懐へとしまいつつ病院の外へと出る。
空を見上げれば、綺麗な星空が広がっていた。
まさに、さりなが亡くなった日と同じ様な景色に、彼女に向け捧げた言葉を思い出し、心の中で彼女へと語り掛ける。
(さりなちゃん、もし見ていたら、君も彼女に力を貸してあげて欲しい。)
無事に出産が終われば、アイとの関係も『アイドルと一ファン』へと戻る。
入院してからの期間に、良くも悪くも彼女の素の部分を多く見てきたが、それも含めて『推し』と思える様になった今なら間違いなく言える。
「彼女の幸せを、心の底から応援_」
「あんた、星野アイの担当医?」
そんな言葉を掛けてきた男を見遣り、警戒心を抱く吾郎。
男は素顔を見られぬ様にフードを深く被っており、年齢等も窺えない。
何より、偽名を使って入院しているアイがこの病院にいる事を把握しており、公表されていない彼女の苗字まで知っている事から、吾郎はある可能性に思い至る。
(ストーカーか...? よりにもよって、こんなタイミングで...。)
「その星野さんって人が病院にいるかは分からないが、仮にいたとしても患者の情報を部外者に口外出来ない決まりなんだ。
その人の関係者なのか?」
自身の言葉に口を噤む相手の様子を見て、自身の予想が正しいものだとの考えを強くする吾郎。
こうなれば、余計な事は話さず警察へと連絡するべきだろう。
彼が、そう方針を固めた時であった。
「黄色いアフロの男、オレンジ色のトゲトゲ、ゼリーみたいな体のやつ...。」
男の言葉に目を細める吾郎。
言うまでもなくボーボボ達の特徴だが、彼らの事も把握している様だ。
すると彼の反応を見た男が、笑みを深くする。
「その反応、そいつらを見た事が有るみたいだなぁ。
って事は、あの女もここにいるんだろ!」
瞬間、自身の失態を呪う吾郎。
確かに、彼らを知っているのなら、仮に吾郎自身は把握していなかったとしても、アイが病院にいるという情報に、より確信を得られるだろう。
そもそも、自分に声を掛けてきた際の男の台詞からしても、自分が彼女と関わっていた事も既に把握されている可能性が高い。
これならば、一度病院へと引き返し、警察に安全を確保して貰う方が良いかもしれない_そう考えた彼が、目線を男へと向けたまま後退りを始めた時であった。
「くっ、なんだ⁉︎」
自身の顔面に向かって飛来する物体を認め思わず手で庇うと、その左手には相手の左手と繋がった線が絡み付いていた。
「悪いが、デュエルアンカーを使わせて貰った。
俺を倒さなきゃ、向こうには行けないぜ!」
瞬間、男の目的を察し、腑が煮えくり帰る吾郎。
人の道を外れた行為を平然と行う男を糾弾する。
「こんな事をしてまで彼女の出産を邪魔したいのか...。
人の幸せを何だと思っている!」
「幸せだと...?
先にこっちを裏切ったのは、あの女じゃねぇか!
あんたみたいな先生様には分かんねえだろうがな、こっちはデビューしてすぐの頃から応援してきたんだ!
だってのに、裏で男作ってその上ガキだと⁉︎
そんなの『はいそうですか』なんて受け入れられる訳ねぇだろうが!」
男のその言い分に、吾郎は自身の心が急速に冷えていくのを自覚する。
最早、この男には何を言っても通じないのだろうと理解した。
ならば取るべき手段は一つ、実力で捩じ伏せるのみである。
眼鏡の位置を整えると、目の前の愚か者の妄執を叩き潰すべく、宣言する。
「その身勝手さ、済度し難いな。
邪魔するというなら結構だ、押し通らせてもらう!」
「ハッ、難しい言葉使ってインテリ気取りかよ!
やれるもんならやってみろや!」
既に袂は分かたれた。
言葉で解決出来る段階はとうに過ぎ去っているのだ。
約束と執念、互いが互いの胸に抱くものをぶつけ合う闘いの始まりを、二人が同時に宣言する。
「キバハゲデュエル‼︎」
本話を書くに当たり、原作の亀ラップのシーンを何度も読み直して、頭がおかしくなりそうでした。
ポコミ
「お願い、死なないでせんせ!
せんせが今ここで倒れたら、アイちやさりなちゃんとの約束はどうなっちゃうの?
ライフはまだ残ってる!
こいつをぶっ飛ばせば、アイちの出産にも間に合うんだから!
次回『吾郎死す』 デュエルスタンバイ!」