推しのボ   作:モドラナイッチ

3 / 90
祝!連載3回突破記念
キャラクター人気投票結果発表‼︎
第1位:星野アイ 5071票 「みんなアリガトー」
第2位:星野アイ 3072票 「ふーん」
第3位:星野アイ 1802票 「ファンに感謝」
第4位:星野アイ _721票 「くっ、アイに負けるなんて...」
第5位:星野アイ _514票 「順当な結果、かな」

あなたのお気に入りのキャラは何位でしたか?
沢山の投票、誠にありがとうございます!


奥義:3君が居たい場所

「ファクント・カルパッツォ・フォンテッキ・ルイジ・ルイジ...

 チャナティップ‼︎」

 

「オーソレミーヨー・オーソレミーヨー‼︎」

 

 謎の掛け声を呪文の様に呟き続ける首領パッチと、軟体を活かした妙なダンスを踊る天の助、そして彼らの前に菩薩像の様に鎮座するボーボボ。

 授業を終え、施設へと戻ったアイが目にしたのは、いつもの三人によって繰り広げられるいつも通り意味不明な光景であった。

 施設に入所して一年が経過した今となっては、アイも他の子供達と同様にその光景を自然なものとして受け入れてしまっていた。

 

「ビュティさんこんにちは。

 おじさん達、今日は何してるんですか?」

 

「あっ、アイちゃんお帰りなさい!

 なんか、今日の晩御飯を決めてるみたいだよ。」

 

 アイは、既にこの場におり事の詳細を把握しているであろうビュティに説明を求めるも、彼女からの返答により考察を放棄する。

 彼女なりにボーボボ達の言動を観察し、ある程度の傾向を把握してきていた故に。

 彼らの行動には、『一見すると不可解だが、きちんと目的が理解できるもの』と『目的と手段の因果関係が著しく剥離しているもの』が有り、今回の場合は後者であると考えたのだ。

 前者であれば、例えばアイの入所初日における昼食時の行動が挙げられる。

 そして、彼女は後者の場合、彼らの行動の意味を理解する事は不可能であると経験で理解していた。

 

「ごめんね、毎日うるさいでしょ。

 帰ってきても落ち着かないよね...。」

 

「賑やかなのは間違いないですね。

 でも、おじさん達と居て笑える事が多いのも事実ですよ。」

 

 アイは施設に入るまでの経験も影響してか、周囲の顔色を窺い空気を乱さないように振る舞う癖がある。

 その反動故か、自身の表情や発言が心からのものかが分からなくなっているのだが。

 それでもアイは、彼らの言動で笑う時は自然に出たものであると考えていた。

 彼らの明るさに救われた事、入所時よりも居心地の良さを感じているのは事実なのだから。

 そんな彼女の発言を受け、ビュティが温かい笑顔を送り、アイが照れ隠しに目線をボーボボへと向けた時であった。

 

「三つ星イタリアンレストラン『peli del naso』シェフ 

 チャナティップ鈴木です。」

 

「おっしゃあぁぁ! 今日はイタリアンだー!」

 

「パスタ食うぞ、パスタ!」

 

 アフロの中からシェフが現れ、彼らが歓喜の雄叫びを上げる。

 今晩のメニューが決定したようだ。

 

 

 シェフが厨房に入って少しの後、ボーボボに用が有ると言う訪問者が現れた。

 その来訪者の外見はといえば、沢庵の様な体にコートと帽子を着用している。

 地方のゆるキャラが、探偵の様な姿をしている様にも見えるその姿を見たボーボボが、来客の正体を認めその目的を確かめる。

 

「よう、つけもの。施設に来るなんて、急ぎの報告か?」

 

「ええ、依頼にあった例の星野って子の母親の事で...。」

 

「...その様子じゃ、余り良い報せじゃ無さそうだな。

 聞かせてもらおうか。」

 

 男の名はつけもの。

 かつてはビビビービ・ビービビの下にスパイとして潜入し、ボーボボへ貴重な情報を送る任務に就いていた。

 現在は探偵業を営んでおり、今回の様に情報面でボーボボ達に協力しているが、未だに仲間としては認められていない。

 基本的に彼から情報を受け取る場合、メールや施設外でのやり取りが多く、彼がこうして直接施設を訪れるという事は滅多に無い。

 逆説的に、彼が通例を破る行動に出ているという事は、今回持ち寄った情報が余程重要なものであるか、もしくは緊急性の高いものと考えていいだろう。

 自身が最近気に掛けている少女の近親者についての調査結果に嫌な予感を抱きつつ、つけものの言葉を促す。

 

 

(イタリア料理ってどんな感じだろ。全然イメージ湧かないなぁ。)

 

 今晩のメニューについてアイが想像を膨らませていると、ドアをノックする音が耳に届く。

 

「アイ、少しいいか。話が有るんだ。」

 

 尋ね人であるボーボボの提案により、近所の公園に向かう二人。

 施設を出る前に、ビュティがこちらを心配そうに見つめていた事からも、余り気分の良い話では無い事は察せられる。

 公園に着くと、アイにとっては見知らぬ人物が二人を待っていた。

 彼女とその人物_つけものが互いに会釈をするのを見届け、ボーボボがつけものを紹介しつつ話を切り出す。

 

「アイ、こいつはつけもの。

 実は、前からお前のお母さんについて調べて貰っていたんだ。」

 

 その言葉にアイは目を見開く。

 思い出される辛い記憶と共に、母が今どうしているのかという疑念が湧き、ボーボボに先を促す。

 

「落ち着いて聞いてくれ。

 お母さんは既に刑務所から出ているそうだ...。」

 

 その言葉と母が自分を迎えに来ていないという事実。

 そこから導き出される答えが分からぬ程、アイは愚かではない。

 

「そっかぁ...、そうなんだね...。」

 

 力無くベンチに座り、項垂れるアイ。

 数刻前の楽しい気分からの落差が、余計に心を暗く寒くしていく。

 ボーボボとつけものが掛ける言葉を見つけられないでいると、アイの方から口を開いた。

 

「ねぇ、おじさん...。

 私って、お母さんにとって何だったのかな?

 何が駄目だったのかな...?」

 

 縋るような眼差しでボーボボへと問うアイ。

 その悲痛な面持ちは、まるで自分に全ての責任が有るかの様に『駄目な所は直すから』とでも言いたげである。

 

「...さぁな、俺はお母さんじゃないし、何か事情があるのか、何でこうなっちまったのかも分からん。」

 

 彼から返ってきたのは、当然とも言える回答だ。

 そもそも、彼に聞いて自身が納得出来る答えが返ってくれば苦労は無いだろう。

 実際問題、母の行方が分からぬ以上、その真意を確かめる術は無く、自身が実の親に捨てられたという現実は覆せないのだ。

 かつての実家での辛い経験が頭に過りながらも尚、彼女の心の中には意外な程に裏切られたという感情が渦巻く。

 自分の存在そのものに疑問を抱いた彼女の表情は、一気に暗いものへと変わっていくが。

 

「一つだけ確かなのは、こんなに可愛くていい子で待ってた子供を放って、何処かに行っちまう大馬鹿野郎だって事だ。」

 

「...でも、私自分で言ってる事が本音なのかも分からない子だよ?

 ...もしかしたらお母さんも、そんな私が気持ち悪かったのかな...。」

 

 ボーボボがアイを肯定する言葉を投げかけるも、彼女もまた自身が抱える悩みを今回の件と結び付け、更なる負の思考を開始してしまう。

 なまじ自身を客観視し、周囲の『普通』とのズレが大きい人間である自覚が有る故に。

 本音を見せず、作り笑いで固められた嘘の塊の様な存在等、確かに身内と考えたくはないだろう。

 

「やっぱり、お母さんは私の事なんか愛してなかったのかな...。」

 

「...それでもアイは、ずっと自分の居場所の為に頑張ってきたんだろ?」

 

 アイの絶望の言葉を聞いて尚、ボーボボは彼女の為に言葉を続ける。

 

「作り笑いでも、ぎこちなくても、笑顔でいるのはその場の雰囲気や周りとの関係を壊したくないからじゃないのか?

 自分が居たい場所を守る為に、アイはずっと頑張ってきたんだろ。」

 

 そんな、自身ですら気付かなかった考えにアイは目を見張った。

 こんな状況になって尚、自身を肯定する言葉を続ける彼の姿を、信じられないものを見る様に見つめる。

 

「確かに、アイのやり方はお前くらいの歳の子からすると、普通じゃないかもな。

 それこそ、お母さんもそういう所を見て怖いって感じちまったのかもしれん...。

 だがよ、お母さんとは上手くいかなかったが、それで全部終わったわけじゃないだろ。

 俺達もいるし、ビュティとヘッポコ丸の世話になったっていいじゃねえか。」

 

「で、でもパチおじさん達もビュティさん達も迷惑じゃないかな?」

 

 ここまで言われても相手の言葉を信じられない自身に嫌気がさすが、さりとてアイとしても肉親以上に信頼出来る相手がいるのかという疑問を抱かざるを得ない。

 これまでの間、ボーボボ達が親身になって接してくれた事実は認める所だが、では彼らも施設の仕事が関係無くなればどうだろうか。

 彼らにとって星野アイという人物は、あくまでも施設内で面倒を見ている子供の内の一人に過ぎないのだ。

 それ以上を、それこそ家族の様な感情を求めるのは分不相応_そんな思いから出てきた問いに対し、ボーボボは全く違う方向へと視線を向けつつ笑みを浮かべる。

 

「あれがそう見えるか?」

 

 その問いに、アイがボーボボの視線の先に目を向ければ、二人を迎えに来たいつもの面々。

 どうやら夕食の準備が整ったようである。

 彼女の頭が手の温もりに包まれると、悩むのは中止とばかりに声が掛かった。

 

「まぁ、これからの事は飯食ってから考えればいいだろ!

 帰っていっぱい食うぞ!」

 

 その言葉に、下唇を噛み締め震えながら首を縦に振るアイ。

 一行はアイの居場所へと歩き始めた。

 

 

 

 

「ただしつけもの、テメーはダメだ。」




まさか、感想や高評価、お気に入り登録をいただけるとは思わず、感謝感激です。
改めて、『推しの子』・『ボーボボ』両作の素晴らしさを実感すると共に、自分がどれだけ無茶なものに手を出してしまったのかを痛感しております。
拙文ではございますが、今後ともどうぞよろしくお願い致します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。