推しのボ   作:モドラナイッチ

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奥義:41嘘だ

 交通事故や高所から落ちた時等身の危険を感じた時に、目に映る映像がゆっくりに見えるという話が有る。

 『タキサイキア現象』と呼ばれるそれは、『感情によって時間の進み方に変動が生じる現象』とされ、感情が喚起された状態では時間に対しての視覚情報の処理能力の向上や感覚的な経過時間に変化が生じる事が2016年に千葉大学の研究室にて証明されている。

 長らく錯覚だと言われていた現象に対する偉大な証明であり、ここから転じてアスリートが極限の集中状態となった所謂『ゾーン』と呼ばれる状態の解明の一助にもなると言われている。

 

 

 現在、アイの視覚には今まさに自身の腹部に迫らんとする鋭利な刃物の映像がスローモーションの様に見えていた。

 先の例を参考にするなら、見知らぬ人間によって刃物で襲われるという状況に強い危機感と恐怖を感じ、瞬間的に映像の処理能力が向上していると言える。

 ここで重要なのは、感覚的にゆっくりに見えているからと言って、実際に物理的な時間の流れが遅くなった訳でも、感じた本人が素早く動ける様になった訳でもないという点だ。

 アスリートの『ゾーン』にしても、あくまでも鋭敏になった感覚に呼応出来るだけの磨き抜かれた技術と身体能力が有ればこそであり、都合良く倍以上の能力を手にする等という事は有り得ないのである。

 そして残念ながら、アイにはこの差し迫った状況を覆すだけの能力は備わっていなかった。

 

 

 

 おかしい_自身の体にいつまで経っても刃物が突き刺さらない事にそう感じざるを得ないアイ。

 タキサイキア現象の名前は知らずとも、アイにも同様のエピソードを聞いた覚えは有るし、映画やドラマの演出でも目にしてきた光景だ。

 自分の感覚が錯覚であろうとそうでなかろうと、彼我の物理的な距離を考えれば自分が男の持つ刃物によって貫かれるのは、避けられぬ未来の筈であった。

 にも関わらず、いつまで経っても腹部に痛みは訪れないし、刃物が自分へと進んでくる事もない。

 何も刺されたいという訳ではないのだが、この状況は明らかに異常である。

 或いは、今のこの思考は夢の様なもので現実の自分は当然の様に血を流しているのだろうか。

 

「離れて‼︎ 早く‼︎」

 

 背後から聞こえてきた息子の声によって我に帰り、彼を庇いつつ男から距離を取るアイ。

 自身に傷が無いのは錯覚でも何でもなく、何故か刃物を持つ男の動きが時間が止まってしまったかの様に固定されてしまっているからであった。

 

「ママー、どうしたの? 大丈夫?」

 

「ルビー、来ちゃダメ‼︎」

 

 

 

 この状況に困惑しているのは、男_貝原も同じであった。

 目の前にいたアイに刃物を突き立てる_たったそれだけの事が出来ず、彼女からは距離を取られ、自身の体は何かに縛られたかの様に指一本とて動かす事が出来ない。

 

(ふざけんなよ、クソ‼︎ 今更ビビったってのかよ!)

 

 彼は今の状況を、自分自身の凶行に恐怖した故と考えた。

 だからこそ、自分への苛立ちを抑える事が出来ない。

 誓った筈だった。

 目の前にいる自分達ファンを裏切った大嘘吐きの女への復讐を。

 例え、彼女を探す手掛かりとなる情報を提供してきた者に利用されていると分かっていても、自分は止まる訳にはいかないのだ。

 

『だってよ...、推しの幸せを願うのが...、ファンだろ...。』

 

(ここでビビったら、あの日やった事は一体何だったんだよ!)

 

 あの日、宮崎で初めてこの手を血に染めてから脳裏にこびり付いて離れない、自身が殺めた男の言葉。

 ここでアイを殺せば、それを拭い去る事が出来ると信じここまで来たというのに。

 

 

 

「妄執に囚われし愚かなる迷い子よ。

 幻想と現の狭間に置き去りし己が情動の根源を、今一度取り戻すのだ。」

 

 それはその場にいる全員、それこそリビングにいるルビーにも聞こえるよく通る声だった。

 決して叫んでいる訳ではないのが分かるのだが、不思議と心地良く鼓膜を叩く所謂美声というものなのだろう。

 

(アイの男...、いやあの反応は違うみたいだが、だとしたら一体...。)

 

 声の正体を当初はアイの交際相手であると考えた貝原だが、他ならぬ彼女の反応がその可能性を否定していた。

 それ故にその正体に益々疑問符が浮かぶ。

 声は明らかにこの空間、少なくともアイ達が住むマンションの一室のどこかから聞こえてきていた。

 それも彼女やその子供の反応からして、自分にだけ聞こえている幻聴という訳でもないのだろう。

 更に先の謎の声の台詞から察するに、恐らくはそれが何かしらの力を使って自分の身動きを封じている可能性が高い。

 

(まさか...、神なんてのがいるってのか...?)

 

 そして貝原はある存在の可能性_超常の存在に思い至る。

 金縛りの様な状態の自分、耳というより直接脳内に響く様な美声、そしてアイ達だけでなく自分の事すら救おうと言う様なある種傲慢な物言い。

 人智を超えた存在に彼が戦慄し、同時に母と兄が心配になったルビーがドアから顔を覗かせた時であった。

 ゆっくりと、彼とアイ達との間に有るトイレのドアが開かれる。

 

 

 自宅のトイレの中から現れた者の頭部を見て、ルビーは戦慄する。

 あんな代物を一体どこの誰が生み出したのか_と。

 自分や兄_羞恥心がどうこうの前に、自分達の体の容量を考えれば有り得ない。

 ナイフを持つ謎の男_初めて我が家を訪れたあの男がどうやって我が家のトイレに行けると言うのだろう。

 父やボーボボ達_ボーボボ達は今日は他のB小町のメンバーの送迎に向かっているし、父とポコミはマンションの外にいる筈だ。

 つまり、残された答えは一つしか無い。

 

「嘘だよ...、ママが...。」

 

 

 トイレから現れた異様な存在に、益々アイに対してのイメージが歪んでいく貝原。

 何も彼とて『アイドルはトイレに行かない』等と妄言を吐くつもりは無いが、かと言って目の前の存在をそのまま受け入れるには『アイ』という存在は彼にとって眩し過ぎた。

 他の可能性を探ろうにも、子供があんなモノを出せるとは思えないし、仮に事務所関係者が出したとしてもそんなモノを放置しておくのは非常識極まり無いだろう。

 彼がどれだけ他の可能性を探したくとも、答えは一つしか有り得ないのだ。

 

「嘘だろ...、アイが...。」

 

 

 この時、期せずして二人の思考が一致してしまったのは、それだけアイに対する憧憬と熱意を持った生粋の『アイオタク』だったからなのだろう。

 だからこそ、二人にとってはいつまでもキレイな『アイ』でいて欲しいのだ。

 受け入れ難い現実を必死で否定するかの様に、二人の叫びが響き渡る。

 

「こんなデカいウンコするなんて、嘘だああぁぁぁぁ‼︎」

 

「...ちょっ、ハァ⁉︎ 私じゃないよ‼︎

 いくら何でも私がこんなデカいウンコする訳無いじゃん‼︎」

 

「ウンコ、ウンコ言うなよ二人共!

 全くはしたないなぁ!」

 

 

「くっ...、おい、このクソ野郎!

 『これ』もテメェの仕業か!」

 

 自分達の間に佇むスカジャンを着た謎のウンコの存在から立ち直った貝原が、悪態をつきつつ自身の体が動かせない原因について問い詰める。

 アイ達も口にこそ出さないが、突如現れた謎のウンコの正体が気になっている様子だ。

 

「ウンコではない、我が名はソフトン。

 バビロン神様に導かれし者だ。

 星野アイ、ボーボボの要請により君を助けに来た。」

 

「おじさんが⁉︎

 で、でも、今トイレから出てきましたよね...。

 一体どうやって...?」

 

 ウンコもといソフトンの言葉によって、彼がボーボボ達の仲間である事が判明し安心するアイだが、今度は彼が出現した場所が気になる所だ。

 人間と同じ様な四肢に対してその頭部が余りにもミスマッチではあるものの、少なくともこれまでの会話からは非常に理性的かつ紳士的な態度が伺える。

 男の動きを封じているのも彼だとすれば、或いはテレポート等の超能力の類いが使えるのかと想像するが。

 

「君達に危機が迫った時に備え、秘密裏にこのトイレをバビロン界へと通じる門とさせて貰った。」

 

「家のトイレに何してくれてんの、このウンコさん⁉︎

 っていうかバビロン界って何⁉︎」

 

 自宅のトイレが異界への門とされてしまっていた事実に驚愕するアイ。

 事実として彼は命の恩人であり、ここ数日の使用時にも違和感は無かった事からあくまで彼の不思議な能力ありきのものなのだろうが、自分の知らない所で自宅に妙な仕掛けが施されているとあっては彼女の反応も致し方ないものだろう。

 

「む、儀式の最中にその少年と何度か鉢合わせたから、説明しておいた筈だが...。」

 

「えっ、アクアが⁉︎」

 

 意外な所で水を向けられた息子に驚きの表情を浮かべるアイ。

 親バカの様にも思えるが、正直自分よりも余程知的だと感じる彼がソフトンの存在に気付かなかったとは思えなかった故に。

 一方のアクアもここ数日の記憶を遡り、ある違和感に気付いた様だが。

 

 月曜日

『あ、ウンコだ。』 『む、この部屋の住人か、邪魔をしている。』

 火曜日

『今日もウンコだ。』 『む、また君か。』

 水曜日

『まだある...。』 『大きな音は出さないから安心してくれ。』

 木曜日

『まったく、誰のか知らないがよく漏らすな...。』 『この紋章には触れない様にしてくれ。』

 金曜日

『...。』 『...。』

 土曜日

『この本も読み終わっちゃったか...。』 『俺のでよければ貸そう。』

 日曜日

『あ、ウンコさん本当に持ってきてくれたんですか?』 『秘密を守ってくれている礼だ。』

 

 

「くっ、何故気付かなかったんだ!」

 

「いや気付いてるじゃん‼︎

 っていうか、最後の方普通に話してるじゃん‼︎」

 

 ソフトンの存在に気付かなかった己の失態を悔やむアクア。

 ここで違った対応を取れていれば、彼と事前に連携を取る事は勿論だが、今回の様に家族を危険に晒すリスクを軽減出来ただろう。

 結果的に誰も傷を負わずに済んでいるからこうして振り返る事が出来ているものの、ソフトンの機転が無かった未来等想像するだに恐ろしい。

 何やら母が自身の回想にツッコんでいるが、気付いていないったら気付いていないのだ。

 

 

「さて、今一度貴様に問おう。

 彼女は貴様にとって、己が情熱と信念を向けるだけの存在であった筈だ。

 自らの手でそれを壊する事が、貴様の真なる望みなのか?」

 

「そ、そんなの...、分かりきった事だろうが!

 俺達ファンを裏切って、アイドルのくせに子供なんて作ってるその女に復讐してやるんだよ!」

 

 ソフトンからの問いに、ナイフを持つ手を震わせながら叫ぶ貝原。

 先にこちらを裏切り、傷付けたのは彼女なのだ_と。

 

「成程...、つまり貴様は彼女をその手で殺してやりたい程愛していると。」

 

「な、何でそうなんだよ!」

 

「俺はバビロン神様の導きによって、これまで様々な『愛』の形を見てきた。

 その中には、常軌を逸する思考回路によって相手を害し、自分自身の中だけで相手との関係を完結させ封じ込めようとする者もいた。

 貴様もまた、自身が目を背けたい彼女の生身の部分を否定し、理想の存在のままでいて欲しいのだろう?」

 

 その言葉に図星を突かれた故か、はたまた彼の超然とした物言いが癪に触ったのか、今度は手だけでなく全身を震わせている貝原。

 そういった例を見てきたのなら、自分が今どんな気持ちでこの場にいるのかも、この状況に対する苛立たしさも理解出来る筈だ。

 

「そこまで分かってんだったら、何で邪魔すんだよ⁉︎

 さっきから動けねえのもテメェのせいだろ!」

 

「何を言っている?」

 

 

 

「貴様の拘束等、とっくに解いているぞ。」

 

 ソフトンが放ったたったの一言に、目が点になる貝原。

 現に自身の体はその意思に反して全く動かず、錆びついた機械の様にぎこちなく震えるばかりだ。

 或いはこちらの動揺を誘っているのかと考えた所で、彼はある違和感に気付く。

 

(...あれ、そういえば俺の手っていつから震えて?)

 

 そう、震えているのだ。

 先程迄は正に金縛りの如く微動だにしなかった自身の体が、間違いなく動いている。

 

(ふざけんなよ...、これじゃまるで...。)

 

「怖いのだろう、彼女を傷付ける事が。」

 

 自身の思考を先読みしたかの様なソフトンの物言いに驚愕し、少しずつ距離を詰める彼に必死に抵抗しようとするも、相変わらず貝原の体は言う事を聞かないままだ。

 それはまるで、絶対的強者を前にしてただ捕食されるのを待つ獲物の様である。

 

「当然だな、こんなもので人を刺せば良くて大怪我、場所によっては致命傷も免れんだろう。

 そして貴様は、その結果がどういう事かを理解しているのだ。

 生身の彼女を否定すれば、貴様の理想の彼女をも否定する事になるのだと。」

 

「あ...、ああ...。」

 

 自身の手からナイフを抜き取ったソフトンの言葉に、最早まともな返答すら出来なくなってしまう貝原。

 彼女を殺せば、アイドルとしての『アイ』は二度と見れなくなる_彼が目を背けてきたのは、そんな子供でも分かる様な当たり前の事なのだ。

 そんな彼のこめかみへと指を当てたソフトンが、歪んでしまった彼の想いを正さんと技を発動する。

 

「バビロン真拳奥義『アンダルシアの情熱の踊り子』。

 自らの真なる想いを取り戻すのだ。」

 

 ソフトンの繰り出した奥義によって、貝原の脳裏にかつての記憶が蘇っていく。

 初めてB小町を、アイを目にした時の感情。

 どうしようもなく彼女に惹かれていく自分。

 ファン同士で自身の推しについて語り合った日々。

 

 彼は漸く思い出す事が出来たのだ。

 自身がどういった形で彼女へと向き合っていたのかを。

 

「うわああぁぁぁぁ‼︎」

 

 

 

 ポコミが男の後を追ってアイ達の部屋の階層へと辿り着いた時、彼女は心臓が止まる様な感覚を覚えた。

 自身の目的地となる部屋のドアが開いていたのだ。

 

(違う、まだ全部決まった訳じゃない‼︎)

 

 自身を叱咤し部屋へと走り出すポコミ。

 まずは自分の目で確かめるべきだ。

 仮に男がアイ達を襲っていたとしても、まだ間に合う筈である。

 仮に彼女達が傷を負わされていたとしても、自身の力を使えば最悪でも応急処置位は出来るだろう。

 全てが駄目になってしまうその瞬間迄、思考を止める訳にはいかないのだ。

 

「アイち!」

 

 友人の名を叫びつつ彼女が部屋の中を覗き込むと_

 

「俺は...、何て事を...。」

 

「自らの罪と向き合い、償うのだ。

 君はまだ、十分やり直す事が出来る。」

 

「...。」

 

 かつての仲間_ソフトンが、嗚咽を漏らす例の男に声を掛けていた。

 恐らくは彼が事態を収束させたのだろうが、気になるのは二人の様子を厳しい目で見つめるアイの方である。

 無論、自身のストーカーを目の前にすれば大半の人間は不快感を抱くであろうし、一見すればその反応も違和感の無いものと言えよう。

 彼女から感じる感情が、恐怖と言うよりは怒りに近いものである事は、『ストーカーを前にしている』という状況を考えれば意外ではあるが、一方でポコミの方もその感情に同意する所ではある。

 男が吾郎殺害の犯人である事も考えれば、この日のライブの邪魔をされた事も加わり相応の怒りをぶつけたくなる存在だ。

 

「アイちもアクア君もルビーちゃんも怪我は無いよね...?」

 

「あっ、ポコっち...。

 私達は大丈夫だよ、ウン...じゃなくてソフトンさんが助けてくれたから...。」

 

 アイからの返事に覇気が無いのは気になる所ではあるが、一先ずソフトンとの情報共有を優先するポコミ。

 

「ソフトンさん、ありがとうございます。

 その、せんせの事もこの人が...?」

 

「本人の話からすると、そうなのだろうな。

 この者は何者かに自身の想いを捻じ曲げられ、利用されていたのだ。」

 

 ソフトンが本人から聞いた話によれば、彼は一介の大学生であるらしくあくまでも一ファンに過ぎない存在であったとの事だ。

 話を聞いた彼女も、吾郎の事を考えやるせない気持ちにはなるものの、いくら相手がソフトンとはいえ簡単に制圧されてしまった事実からも、彼にそこまで大きな能力や権力が無い事は認めざるを得なかった。

 示唆される黒幕の存在然り、詳しい調査は警察へと任せ、今はアイ達の無事を素直に喜ぼうと気持ちを切り替える。

 

「そうだ、ルビーちゃん、パパに連絡してあげて!

 物凄く心配してる筈だから!

 ...えっと、それでアイちは何故にちょっと不機嫌?

 案外、ドーム公演楽しみにしてたとか?」

 

 ルビーにヒカルへの連絡を指示しつつ、恐る恐る今の感情の理由を問うポコミに対して、アイは少しずつ自身の感じたものを吐露する。

 

「私、この人の裏で手を引いてる人の事、凄く嫌だなって思ったの...。

 私も大概嘘吐きだからさ、分かるんだよ...。

 心にもない事を言ったりやったりするのって、慣れてないと凄く疲れるんだ...。

 他人を唆してそんな事をさせるのって、凄く狡くて汚い事だと思う...。」

 

 同時に彼女は思う。

 この様な外道と言える手段を取ってでも自分を殺したいと考える者の、その意志の根源にもソフトンが語った所のある種の『愛』が関係しているのだろうか_と。

 

 

 

「ソフトンさん、今日は本当にありがとうございました!」

 

 貝原が警察へと引き渡され、事態が一応の収束を見た事もあり、アイが改めてソフトンへと頭を下げる。

 子供達には合流したヒカルが、壱護を含めた関係者への連絡はポコミが対応している事もあり、彼女としては今の内に命の恩人に礼を言っておきたい所であった。

 

「気にする事はない。

 君には日頃より妹が世話になっているからな。」

 

 彼の言葉にアイは顔を顰めるのを必死に堪える。

 命の恩人相手に失礼な事は百も承知であるが、あの頭をしている人物と血縁関係にある人物が自身の周囲にいるとはとても思えないのが正直な所だ。

 

「えっと...、ごめんなさい。

 私、ソフトンさんの事何も聞いてなくって...。

 その妹さんって一体?」

 

「む、そうだったか...。

 俺の方は我が妹、ビュティから君の話を聞いていたんだがな。

 おっと、ボーボボから連絡の様だ、一旦失礼する。」

 

「アイち、お待たせー。

 しょうがないけど、今日の公演は中止、社長が今からこっちに来るって...、うわ何その表情⁉︎」

 

 ソフトンと入れ替わる形で声を掛けたポコミが見た彼女の表情は、先程とは別の意味で厳しそうなものであった。

 それはまるで、全ての感情が宇宙の彼方へと吹き飛ばされたかの様な表情である。

 

「...ねぇポコっち。

 お姉ちゃんとソフトンさんが兄妹って、本当なの...?」

 

「えっ、そうだよ。

 アハッ、そういえば話した事無かったっけ。」

 

 さも当然だと言わんばかりの彼女の口調に、アイは必死に二人の接点を探し、そしてエラーを起こした。

 

「お姉ちゃんのお兄さんがウンコ頭なんて...。

 そんなの嘘だああぁぁぁぁ‼︎」




 ソフトンの口調が難しいです...。
 ちなみに彼の頭はちゃんと原作通り茶色です。
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