推しのボ   作:モドラナイッチ

47 / 90
 全員分見せ場作ろうとした結果、滅茶苦茶時間が掛かってしまいました...。
 素人が無茶するもんじゃないですね。


 本話にて、オナラ真拳に対して筆者の独自の解釈で描いたシーンがございますので、予めご了承いただけますと幸いです。


奥義:47B小町

 ボーボボ達と姫川の間に、戦いが始まる前の独特の緊張感が流れる。

 一見すると、圧倒的な数の利が有るボーボボ達が有利に見えるが、姫川の背後にヒカル達がいる現状では、実質三人を人質にされている状態だ。

 互いの一挙手一投足を監視する様な状況に、非戦闘員であるアイ達も固唾を飲んで見守るが。

 

「まずはボーボボ組の切込隊長である田楽マンが相手だー‼︎‼︎」

 

「あれー⁉︎

 俺、いつからそんな役目にー‼︎⁉︎」

 

 ボーボボによって放り投げられ、無防備な状態で姫川との距離を縮めていく田楽マン。

 しかし、潜ってきた修羅場の数が違うだけあってか、この様な状況においても彼の頭脳は冷静さを保つ。

 

(いや、寧ろこれはチャンス!)

 

 打算を駆使して生きてきた彼は、いついかなる状況でも『選択肢が最も多くなる道』を選ぶ。

 あらゆる選択を迫られる場面において、リスクとリターンの関係は否応無く付いて回るものだ。

 そしてここで厄介なのが、往々にして片方の選択肢を選べばもう片方の選択肢を取る事が出来る可能性は失われてしまうという事である。

 例えば彼にとっての大きな決断であれば、『敵であったボーボボに味方する事に決めた』となるが、それは同時に『帝国内での将来』のほぼ全てを切り捨てたという事だ。

 現実はゲームの様に『一旦セーブ』などと言う真似は出来ないからこそ、人は大きな決断に際して迷い苦しむのである。

 

 しかし、彼は違う。

 敵が強大と見るやすぐさま寝返り、一方でボーボボが勝利すれば何事も無かったかの様に合流する。

 この様な立ち回りを繰り返していれば、必然信頼を得る事など不可能であり、事実としてボーボボ達からの期待値も低いのが実情だ。

 一方で、それが功を奏して敵からの警戒感を削ぎ、かつてのハイドレート戦における大立ち回りに繋がるケースも有る為、存外バカに出来ない力を秘めているのも事実。

 『田楽マンはそういう奴だから』と思わせれば、彼にとっては重畳だ。

 全ての事が済み次第、勝った方に与すればいいのである。

 

 翻って、今の状況における彼の思考を考察するとどうなるだろう。

 現実として姫川の力量が不透明である以上、一対一で勝てると断言は出来ない。

 では一度姫川側に付いた場合はどうか。

 単純にダメージを負うリスクを減らせる事は勿論、姫川にとっても怪しい存在とは言えど数的不利を少しでも軽減したい気持ちは有るだろう。

 仮に姫川が勝てばそれで良し。

 ボーボボ達が優勢なら、ヒカル達を救出し再度寝返る選択も取れる。

 そしてそうした振る舞いも、ボーボボ達から見れば『いつもの事』だろう。

 

(どっち付かずで大いに結構、最後に勝てばそれでいい‼︎)

 

「姫川さーん、僕と一緒にでんが_」

 

 彼の打算に満ちた愛嬌たっぷりの台詞は、姫川の鋭利な爪が彼の脳天に突き刺さった事で中断された。

 床へと投げ捨てられた彼の身を案じる声は、一つとして出てこない。

 

 

 

「姫川、戦う前に一つだけ聞かせろ。

 何がお前をそうさせる。

 上原と息子と三人で人生をやり直す選択だって取れたんじゃねぇのか...?」

 

 田楽マンの一幕等無かった様にボーボボが切り出した言葉は、姫川の動機_その狂気の根源を探ろうとする問いであった。

 彼女は自身を含めた四人をその手で殺し、それによって自分は愛する相手と共にいられると語った。

 それはつまり、歪んでしまったとしても自身の夫と息子の事を大切な者だと考えているという事だ。

 特に夫である上原が、彼にとっては複雑な関係の息子を受け入れ、家族として歩もうとしている現状、彼女次第で幾らでも平和な未来を掴み取る事は出来た筈である。

 異形と化して尚、その端正な顔立ちが崩れていない姫川がその問いに一度目を閉じると、静かに言葉を紡ぎ始めた。

 

「...あれはまだ清十郎と付き合う前、私がまだ女優として売れる前の話よ。」

 

 その言葉にアイ達も固唾を飲んで聞き入る。

 人をこうも歪ませる程の、芸能界に潜む闇の一端が垣間見れるのか_と。

 

「隙を見せたな、このバカがぁぁ‼︎‼︎」

 

「ごはぁ‼︎」

 

(ええーー⁉︎)

 

 3バカの繰り出したドロップキックによって姫川が吹き飛ばされる。

 更に隙をついたヘッポコ丸達によってヒカル達三人も救出された為、決して悪い事ではないのだが、流石に彼らの行動にはアイ達も驚きを隠せない。

 

「えっ、あの、敵だからいいですけど、今のって普通は相手の話を聞く流れなんじゃ...。」

 

 無論これはドラマでも漫画でもなく実際に人の命が掛かった戦いである為、手段を選ぶ必要等無いのだが、それはそれとして余りに無頼な彼らの振る舞いに、先程の姫川への質問は何だったのかと高峯が問い掛けると。

 

「アイツの昔話に尺使われたら、俺らが目立たねぇだろうが‼︎‼︎」

 

 

 

「くっ、やってくれるじゃない...。」

 

「これから打ち上げが控えてるんでな...。

 畳み掛けていくぜ!

 社長、今こそ『あれ』を使うぞ‼︎」

 

 怨嗟の声を上げる姫川に追撃せんと、ボーボボが壱護に声を掛ける。

 その言葉を受け彼がミヤコへと目配せをすると、二人は懐から謎のグローブを取り出し、グローブを嵌めた右手をボーボボの背中へと押し当てた。

 

「苺プロ社長の名において、承認!」

 

 その言葉を発した直後、ボーボボのアフロが開き、中から七つのエネルギー体が宙へと浮かび、技の名を叫ぶ。

 

「これが俺達とB小町の絆が生み出す究極奥義‼︎

 『B(ボーボボ)小町』だ‼︎‼︎」

 

 

「あれって、私達がライブの時に着けてる髪飾りと同じ...。」

 

「コイツは、俺達がB小町の七人の力を借りる事で超強力な技が使えるとっておきの奥義‼︎

 テメェが散々邪魔してきた分、皆の力を借りてお返ししてやるぜ‼︎」

 

「ふん、下らない...。

 ただのアイドルに何の力が有るのかしら?」

 

 宙に浮かんだそれは、B小町が着用する動物を模した髪飾りと同じデザインのエネルギーであった。

 しかし、技の概要を聞いた姫川は冷笑を返す。

 確かに、この技がボーボボ達の能力を向上させるのは厄介だが、そもそもB小町は何の特殊な能力も持たない一般人に過ぎない。

 これではその上昇の幅もたかが知れていると考えるのも自然であろう。

 

「下らないかどうか、自分で確かめてみな‼︎

 行くぜ、皆‼︎」

 

「うっしゃあ‼︎

 まずは俺達ハジケ組の出番だ、行くぜ破天荒‼︎」

 

「はい、おやびん‼︎」

 

 いの一番に前へと出たのは、首領パッチと破天荒。

 彼らの動きに呼応する様に、宙に浮かぶペンギンとハムスター_久常と有坂の力が解き放たれる。

 すると、額に『歌姫』の二文字が刻まれ、まるで昭和の歌姫然とした装いの首領パッチと、ロックミュージシャンの様な格好でバターを握った破天荒が現れた。

 

「おやびんの歌声、この世界に響かせるぜ。」

 

「カロチン、カロチン、カロチン摂取♪」

 

「何あの歌⁉︎

 私の力からあんなのが出てくんの⁉︎」

 

「破天荒さんもあれ何⁉︎

 もしかしてギタリスト気取りなの⁉︎」

 

 まるでギターを演奏する様にバターへと指を走らせる破天荒と、意味不明な曲を歌う首領パッチの姿に、恐らくは自分達の『歌唱力』と『楽器演奏』という特技から来る力なのだと有坂と久常が反応を示すが、当然彼らの振る舞いに対する困惑を隠せない様子だ。

 『超強力な技』等と言いながら拍子抜けする程何も起きない状況に、姫川も隙だらけの二人に襲い掛かるが。

 

「何がしたいのか分からないけど、その隙を見逃してあげる程_ゴハァ‼︎」

 

 襲い掛かろうとする彼女に、横から巨大な緑黄色野菜の数々が突撃していく。

 演奏終了とばかりに破天荒によって放り投げられたバターが、壁に激突した姫川の頭上へと落下した。

 

 

 

「なら次は俺達とこ屁組の番だ‼︎」

 

 続いて天の助とヘッポコ丸が前に出れば、今度はパンダと猫_新野と渡辺の力が反応を示す。

 先程の首領パッチ達の活躍から、発現の仕方はどうであれ強大な力を秘めている事は事実であり、新野達も自らの力がどの様に変わるのか期待を寄せるが。

 

「喝っ! 喝っ!」

 

(何か変な戦い繰り広げてるー‼︎)

 

 新野の力を受けた天の助は、『ぬ』と書かれた数珠や札を手に『ね』の形をした怨霊の様なものとの謎の戦いを始めていた。

 さながら陰陽師の様な彼の姿に困惑する一同に、ボーボボから先の首領パッチ達の分も含めた注釈が入れられる。

 

「この七つのエネルギーは、皆の魂に秘められた力を解放したものだ。

 今の天の助で言えば、新野のアイドルに対する強い気持ちがアイツの『ぬ』に対する執着と結び付いたって事だろう。」

 

「それであんな怨霊みたいなのと戦ってんですか⁉︎

 私の魂、怖すぎでしょ⁉︎」

 

「...だとすると、ヘッポコ丸さんは一体どんな姿に?」

 

 ボーボボによる説明にショックを受けた様子の新野の横で、自分の力を受けたヘッポコ丸にどの様な変化が起きたのかが気になる渡辺。

 ここまでの三人は、その内容は兎も角として自身の特技や強く関心を持つもの、或いはそれに対する気持ち自体が原動力になっていると見える。

 では、その観点で見れば自分の力の原動力は『ダンス』になる可能性が高いが、ヘッポコ丸がそれを得意とするイメージもダンスが強力な技に発展するイメージも無いのが実情だ。

 果たしてヘッポコ丸がその身に纏っていたのは、彼女にとっては見覚えのある沢山の猫の模様があしらわれたパジャマであった。

 

「ちょっとーー‼︎

 あれ、私が買ったけどサイズが合わなくて着てなかったパジャマじゃないですかー⁉︎

 どう考えてもハズレでしょ、あんなの⁉︎」

 

「いや、ハズレどころか寧ろ大当たりさ。」

 

 それは過去に彼女がセール中の商品として買ったはいいものの、彼女には大き過ぎた故に着ないまま放置していた代物であった。

 そんなものがこの場で登場したとあっては、恥ずかしさは勿論の事だが、とても戦闘の役には立たないものだと感じてしまうのも無理は無かろう。

 しかし、あのパジャマについて何故かボーボボ達にも知識が有る様で、自身あり気な様子でヘッポコ丸を見守る。

 

「この伝説の鎧『ニャンニャンアーマー』が有れば、あの技を使う事が出来る!」

 

(ニャンニャンアーマー⁉︎ ただのパジャマじゃないの⁉︎)

 

 ニャンニャンアーマー_猫の精霊『ガルピ』に守護された地上最強の防御力を誇る伝説の鎧である。

 かつて同じ鎧をハイドレートが使用、彼の使う『足の裏真拳』と共にボーボボ達を大いに苦しめた。

 

 そんな鎧をヘッポコ丸が纏う意味_それは偏に彼の『オナラ真拳』の強力さに有る。

 『オナラ真拳』はその名の通りオナラを駆使して戦う技なのだが、その性質は正に自由自在。

 定形を持たないオナラを操る都合上、使用者の調節次第で様々な状況に対応出来る非常に強力な真拳なのだ。

 しかし、この強力な真拳にはある致命的な欠陥が存在する。

 『使用者が常に自分の力によって危険に晒される』という欠陥が。

 『オナラを使う』という性質から体内は常に暴発の危険と隣り合わせ、技を発動する時でさえ臀部の角度を少しでも誤れば自分自身にその力が跳ね返ってくる可能性が有る。

 それ故にかつての彼の様に未熟な使用者には封印を施す事で、自身のコントロール可能な範囲のみに技を使用させる事としていた。

 ではそんな彼が、『最強の鎧』を身に付けたらどうなるか。

 長年の鍛練によって技量は十分、発射口の周囲を防御してしまえば威力の調整すら必要が無くなるのだ。

 怨敵に強大な力を叩き込むべく、ヘッポコ丸は天の助へと声を掛ける。

 

「天の助、頼む。」

 

「全く、世話が焼けるぜ。

 阿無菩薩明亦提皆空触是色識尽法蓮喝ーーつ‼︎‼︎」

 

「な、何よこれは⁉︎ 体が動かない⁉︎」

 

 天の助の謎の呪文によって動きを封じられた姫川に狙いを定めるヘッポコ丸。

 放たれるのは、かつて過ちを犯した時から封印していた『真空のオナラ』。

 

「オナラ真拳奥義『閏年』‼︎‼︎」

 

「グハァ‼︎ こ、これがオナラ⁉︎ 何て威力なの⁉︎」

 

 

 

「凄い‼︎ 破茶滅茶だけど皆の力で間違いなく敵にダメージを与えてる‼︎」

 

(確かにそうなんだけど、何か嬉しくない...。)

 

 ここまでの流れから、予想以上に有利な展開となっている事実をビュティが喜ぶ。

 自分達の力と称され、意味不明な展開が連続している四人としては複雑な心境の様だが、早々にヒカル達を救出した事と併せ、上々の展開と言えるだろう。

 

「では、次は俺が行こう。」

 

 悠然と前に出たソフトンに反応したのはカエル_松井の力だ。

 しかしこれまでの四人と異なり、彼の外見に変化は訪れない。

 何も彼女とて自分の番でも衝撃の展開を期待している訳ではないのだが、流石に何の変化も見られないのでは不安を感じてしまう。

 ボーボボはこの技を『自分達とB小町の絆が生み出す奥義』と語ったが、ソフトンとメンバーが初めて顔を合わせたのはアイの事件の後である為、他の面々と比較しても交流の期間が圧倒的に短く、それ故に彼との共鳴が上手くいっていないのかと考えたのだが。

 

 様子を見ていた姫川の方も、技が不発に終わったと考えたのか一度体勢を整えようとし、そこで違和感を覚える。

 まるで自分を囲む様に、聞き覚えの無い声がいくつも聞こえてくるのだ。

 原因を探ろうにも、先の四人と違いソフトンは技を出すそぶりすら見せていない。

 如何に強靭な肉体を得たとしても、精神に干渉されては対応が難しい故に、彼女もソフトンの一挙手一投足を注視し始める。

 既に手遅れであるとも知らずに。

 

「この幻聴で混乱させようって狙いかしら?

 だとしたら当てが外れたわね!

 そっちの狙いが分かってるなら、無視すればいいだけよ!」

 

「幻聴か...。

 理解出来ないのなら、確かにそう考えた方が幸せなのかもしれないな。」

 

 相変わらず傲慢さを感じさせるソフトンの言葉を姫川が訝しんだ時には、既に彼女は囲まれていた。

 

「...ッ⁉︎ 何、何なのこれは⁉︎」

 

「バビロン神様はどんな者に対しても教えを授けて下さるお方だ。

 彼女の力を借りた今、あらゆる言語でその教えをお届け下さる。

 貴様が理解出来る迄な。」

 

 自身の周囲を囲む様に顕現した数多くのバビロン神_その異様な光景に言葉を失う姫川。

 先程迄はぼんやりとしていた声も今の彼女にははっきりと聞こえる様になっていた。

 

『汝に至福の時来たらん事を願ふ。』

 

『I hope that a time of bliss comes to you.』

 

『Espero que llegue el momento de la felicidad para ti.』

 

『मुझे आशा है कि आपके लिए आनंद का समय आएगा।』

 

 聞き馴染みの有るものから、全く聞いた事が無いもの迄、ありとあらゆる言語によってバビロン神は語り掛ける。

 相手が自らの愚かさを理解する迄、何度でも。

 

「イヤアァァァ‼︎ これを止めてえぇぇぇ‼︎」

 

 突如として苦しみ出した姫川に驚く松井達。

 ソフトンが彼女に言葉を掛けたと思った次の瞬間には、彼女が苦悶の表情を浮かべている為理解が追いつかない。

 

「外人にいきなり外国語で話し掛けられて気まずくなる時有るだろ?

 それと同じ様なもんだ。」

 

「英語聞かされて理解出来ないからあんなに苦しんでんですか⁉︎

 途端にショボく思えてきたんですけど、ちゃんと効いてるんですよね⁉︎」

 

 ボーボボの大雑把な説明により、自身の『語学力』が力の源となっている松井ではあったが、残念ながら彼の説明だけではソフトンの活躍を理解する事は出来なかった。

 

 

 

「あっ、今度は私のが光り出した!」

 

 自身の犬のマークが反応を示した事を確認した高峯が、その効果に期待を膨らませていく。

 渡辺の時の様に、見た目とは裏腹にボーボボ達からは高い評価を受ける道具が出現する事例を考えれば、自分の番においても有効打を期待するのも無理はないだろう。

 一歩前に出た魚雷ガールの手の上に現れたそれを目にする迄は。

 

「何でバウリンガルなんだー‼︎」

 

 犬の鳴き声を翻訳する機械が、こんな場面で現れた事実に頭を抱える高峯。

 一応ビュティ達も、先のニャンニャンアーマーの様な隠された機能が有るかもしれないと彼女を励ますが。

 

「これは翻訳機? これで何をすればいいギョラ?」

 

(ですよねー...。)

 

 流石の魚雷ガールと言えども、いきなり謎の翻訳機を渡されただけでは行動指針が掴めない様子だ。

 この状況に高峯が申し訳なさを感じる中、ものは試しと魚雷ガールが翻訳機に向け声を当てる。

 

「ギョライギョライギョライギョライ。」

 

「何それ⁉︎

 今更そんな事言うキャラじゃないでしょ⁉︎」

 

「うわっ、何か急に震え始めた...。

 『飢えた狼 出動』って出てますけど、これってどういう...?」

 

 画面に表示された文字列に疑問を感じた高峯の言葉は、突如として発生したとてつもない振動によって中断される。

 

「高峯さんの力を借りたお陰で、この奥義が使えるギョラ。

 極悪斬血真拳超奥義『重巡洋艦 足柄』がね。」

 

 魚雷ガールが手を翳した先、彼女達の頭上にはかつての帝国海軍の軍艦『足柄』を模した巨大なエネルギー体が、人間サイズの敵に向けるには過剰な火力を姫川へと向けていた。

 彼女がその手を振り翳し、その暴力は無感情に姫川へと降り注ぐ。

 

(いやこれ奥義とかってレベルじゃねー‼︎)

 

(魚雷さんが何かバリアみたいなの部屋一面に張ってたけど、あれ無かったらどうなってんのよ⁉︎)

 

 

 

「ぐうぅ...、魚雷ガール...、何度も何度も邪魔をして...!」

 

 魚雷ガールに怨嗟の声を上げる姫川だが、流石に先の強烈な一撃の影響もあってか体勢を整える事が叶わない。

 そして次に前に出た者達は、その隙を見逃す程優しくはなかった。

 うさぎの_彼女のマークが輝けば、彼女と共に並び立つ人間は一人しかいない。

 

「行こう、ポコっち!

 今夜限りの『沈没ガールズ』復活ライブだよ!」

 

「アハッ、二人でトドメといっちゃおうか‼︎

 ラブリーマジカル真拳超奥義『want you to smile』‼︎」

 

「ここで出た、『沈没ガールズ』‼︎

 あの二人まだ諦めてなかったの⁉︎」

 

 曲が始まってからの二人は、味方が引く程暴れ回った。

 曲頭にいきなりバイクで姫川をはね飛ばし、酒瓶を彼女に叩き付けたかと思えば、無理矢理カレーを彼女の口へと詰め込んでいく。

 

「苦しい時に、側にいてくれるのは何時もキミだよね♪

 だから二人で叫ぼう『マジカルワード』♪」

 

 散々っぱら歌詞の内容に沿って暴れ回った二人が歌う曲もサビへと突入する様で、聴いていた一同も一層二人へと注目する。

 ツッコミが追いつかないという諦観を感じさせる者達が複数人いるが、二人にはどこ吹く風の様だ。

 

「皆で一緒に、『ザギバスゲゲル』♪」

 

 彼女達曰くの『マジカルワード』によって火だるまとなった姫川をバックに曲は終了した。

 姫川に大きなダメージを与えた事を含め、二人は確かな手応えを感じた様子である。

 

「ふふん、どんなもんよ!

 社長、B小町の後は私達沈没ガールズが事務所を引っ張ればオッケーじゃない?」

 

「オッケーな所なんてお前らの見た目位だよ!

 ボツだ、ボツ‼︎」

 

「⁉︎」

 

 

 

「ぐうぅぅ...。」

 

 度重なる大技を喰らい続けた故か肩で息をする姫川だが、それでも尚標的とした三人に対する歪んだ感情は衰えている様には見えない。

 拭えない狂気をその瞳に宿した彼女にボーボボが声を掛ける。

 

「姫川よ...、これがお前が『下らない』と言ったB小町の力だ。」

 

「今のが⁉︎

 1ミリもB小町に掠ってなかったよ‼︎‼︎」

 

 ビュティのツッコミは別にしても、姫川も彼の言葉に素直に頷く訳にはいかなかった。

 容姿の美醜でその人物の評価を残酷に判定する『芸能界』という魔境においては、彼女達ですらその基軸から逃れる事は出来ないのだ_と。

 

「その子達だって、所詮は『見た目』と『若さ』ありきでしょうが‼︎

 一体どれだけの人間が、曲を真剣に聴いてるの⁉︎

 見えない所で努力してたって、『芸能人だから当たり前』としか思われない‼︎

 私がヒカルを求めた事と、ファンがその子達に求める事、一体何が違うって言うの‼︎」

 

 彼女の呪詛の言葉にB小町の面々は顔を顰める。

 大人達の残酷な評価。

 ファンを自称する者達の身勝手な欲望。

 『アイドルだから当然だ』と、彼女達はその不条理を受け止めてきたのだ。

 ただただ、『この世界』で生き残っていく為に。

 

 しかし、ボーボボはその言葉を否定する。

 姫川とB小町_理不尽の中でもがき続けた両者の間には決定的な差が有るのだ_と。

 

「確かに勝手な事を言ってくる奴ってのは、山の様にいるんだろうな...。

 だがな、アイツらに有ってお前に無いもの、それを忘れちまった時点でお前の負けは決まってたんだよ。

 今からそれが何なのか、教えてやるぜ‼︎

 行くぞ、アクア、ルビー‼︎」

 

 その掛け声に従い、アクアとルビーがボーボボと共にオーラを纏い、姫川を空高くへと突き上げて行く。

 

「アイツらを応援する事‼︎

 それが俺達ファンに力を与えてくれる‼︎」

 

「デビュー当時等、歌唱力は稚拙と言う他なかった‼︎

 そんな彼女達を推し続ける理由が有る事は、貴様にも分かる筈だ‼︎」

 

「アイちゃん達が『売れる』って思った理由?

 あの子が『最強で無敵』な訳?」

 

「そんなものは決まっている‼︎」

 

 元の場所へと向かっていく三人が、自分達の想いごと姫川を叩き付けんと叫んだ。

 

「見た目だーーー‼︎‼︎」

 

(えぇーーっ⁉︎ どっちだよ‼︎‼︎)

 

「今のって流れ的に『ファンとの絆』とか、『ふとした所に見える素の部分』とかじゃないの⁉︎」

 

「いやいやビュティさん。

 ファンがどれだけいい方向に汲み取ったって、それは所詮『妄想』なんですよ。」

 

「正直、ママってアイドルになってなかったらどうなってたんだろって心配になる事多いから。」

 

「⁉︎」

 

 

 

「くっ、うぅぅ...。

 さっさと殺しなさい...。

 最早私に、生きてる意味なんて有りはしないわ...。」

 

 善滅丸の効果が切れ、元の姿へと戻った姫川が自分を殺す様促す。

 世界の全てに絶望した様な目の彼女に、その狂気に晒されてきたアイが言葉を掛ける。

 

「姫川さん、私達だってあなたと一緒だよ...。

 何かが少しズレただけで、私達の誰かだってあなたの様になってしまうかもしれない。

 だから私は、あなたに罪を背負って生きてほしいと思う...。」

 

「情けを掛けるって言うの...?」

 

 アイは語る。

 姫川の姿は、自分達にとってもあり得たかもしれない未来なのだ_と。

 彼女を殺した所で、吾郎は帰ってはこないしドーム公演がやり直せる訳でもない。

 そんな彼女を今も心配している上原と大輝少年の事を思えば、全員が未来に向かって歩む道を模索するべきだ_と。

 それでも尚、その言葉を素直に受け止める事が出来ない彼女の姿を見て、二人の人物が前に出た。

 

「姫川さん...。

 憎しみは憎しみを生み、それはまた多くの悲しみを生むのです。」

 

「あなたもきっと、この芸能界の闇に蝕まれた一人の犠牲者なんだよ...。」

 

「生きて下さい。

 あなたの帰りを待つ、二人の家族の為にも。」

 

「くっ...、私の負けよ...。」

 

「愛梨!」 「お母さん!」

 

「見てみなよ...、丁度朝日が昇ってきてる!

 これにて、一件落着だね。」

 

 

 何故か天の助とルビーが締めた。




 調子に乗ってたら長くなり過ぎたので、一旦ここで切らせていただきます。
 次回のエピローグで、アイ編最終回の予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。