待て、それ以上近付くな! 俺の性癖が歪む!   作:POTROT

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怪鳥と自称凡人娘

 モモフレンズ、なるコンテンツがある。

 動物を模した個性的で可愛らしいキャラ達が売りの、ファンシーキャラクターブランド。

 まぁ言ってしまえば、キヴォトス版サン◯オである。

 

 モモフレンズは現在、キヴォトスの生徒達の中でまずまずの人気を誇っており、知らない人も多いが、どっちかと言うと知ってる人の方が多い、と言うレベルの知名度がある。

 かなりの種類と量のグッズが作られていたり、各地でイベントが開催されたりと、着々とその知名度を広めていっているので、生徒全員にその名前が知れ渡る日も近いだろう。

 やはり女子高生達に、可愛いキャラクターと言うのはよく刺さるようだ。

 

 だが、そんな可愛いキャラクター達の中で、賛否両論をかなり分けるキャラが一匹いる。

 それこそが『ペロロ』と言う、鳥を模したキャラだ。

 このキャラの賛否を両論に分ける点は、ひとえにその見た目である。

 白を基調とした黄色い嘴に脚、トサカと、その辺は良いのだが、グルンと上を向き、焦点の合っていない目と、だらんと出された舌が、どうにも受ける人と無理な人で二極化するらしい。

 ちなみにその割合で言うと大体1:9程度。下手をすればもっと低い可能性もある。

 そんなだから全体的に見ればあまり……どころか、断トツで人気のないキャラではあるのだが、受けた人にはとことん受けるようで、熱狂的なファン、もとい狂信者が一定数存在する。

 

 彼女らはペロロのグッズを片っ端から買い漁り、ライブがあればたとえ授業があろうとテストがあろうと現場へ急行し、入手が難しい限定グッズは後ろめたい方法を使ってでも手に入れる。

 そして、周囲にいかにペロロが素晴らしいのかと布教活動に勤しむのだ。

 

「見てください先生! このペロロ様、現在は20個しか存在が確認されていない超プレミア品なんですよ!」

 

 そして、本日の当番こと、トリニティ総合学園の阿慈谷ヒフミも、そんな狂信者の一人である。

 彼女が嬉々としてこちらに差し出すのは、どう言うわけか本と一体化したペロロ。

 本の見開きいっぱいにペロロの顔が張り付き、そこから翼とトサカ、足が生えている。

 ふむ、なんて言えば良いのだろうか……………少なくとも、欲しいかと問われればノータイムで否を叩きつけるレベルの代物だ。

 

 だが、ここで思ったままを言ってはならない。

 俺は先生として、かなりこの子に信頼されていると言う自覚がある。

 そんな俺が彼女の存在意義とも言える『ペロロ様』に対して酷評を下すなど、彼女の存在意義を否定するに等しい。

 俺の言葉で、彼女を深く傷つける事になるのだ。

 

 流石にそれは先生としてまずい……と言うのもあるが、普通に俺と言う人間の感性として嫌だ。

 あとそうなると、ナギサと補習授業部に目の敵にされてトリニティでの俺の居場所が死ぬって言うのもある。

 故に、俺は言葉を選ぶのだ。

 

「あ〜……あれか? 本屋か図書館あたりとのコラボ品か?」

「はい! D.U.の書店とのコラボ品なのですが、モモフレンズができてすぐのものと言うのと、先着百名限定の品というのもあり、その大多数がどこにあるのか、そもそも残っているのかすら確認されていない状態でして、この20個目も、つい先週にオークションにかけられた事でようやく存在が明らかになったんです!」

「成程なぁ……」

 

 MTG(マジックザギャザリング)*1のパワー9(ナイン)*2とかポケカの『ポケモンイラストレーター』*3みたいなもんか?

 

「……いや待て。ってことは、いくらかかったんだ、それは?」

「はい! 200万円くらいでした!!」

「…………」

 

 思わず頭を抱えてしまう。

 200万。プレミアのついたコレクション品としてはまぁ、まだ良心的と言える価格だろう。

 だが、ヒフミはまだ稼ぐ手段も限られる学生である。

 流石のキヴォトス、その中の三大学園と呼ばれるトリニティの生徒とは言え、そんな金額が払えるだけの経済力はあるのだろうか?

 

「……金は、どうなんだ」

「あ……えっと、その……」

 

 俺が聞くと、ヒフミが目を逸らしてもじもじとしだす。

 俺はこの時点で大体を察した。

 

「……た、足りはしたんですけど……その……実は……」

「実は……?」

「いえ、その……少し前にですね、急に補習授業部の部費が跳ね上がりまして……」

「…………ああ……」

 

 俺はこの時点で全てを察した。

 まず、補習授業部と言うのは彼女の所属する部活であり、その目的は文字通り補習。

 しかしそれは表向きであり、本来の目的は裏切者の退学。

 エデン条約の締結を目前とし、疑心暗鬼に陥った桐藤ナギサが(シャーレ)をも巻き込んで作り上げた、切り捨てるべくして作られた組織、いわばトカゲの尻尾なのだ。

 

 で、まぁそこから色々あって退学は免れたわけだが、なんとこのナギサと言う生徒、実はヒフミにかなりご執心であったようで、そんなヒフミを補習授業部に無理矢理入部させた事を気に病んでいたらしく、とある生徒がそこをストレートでぶん殴ってしまった結果、見事に脳破壊。

 以来、ヒフミに対してだいぶ拗らせてしまったのだ。

 

 補習授業部の部費が跳ね上がったのは、つまりそう言う事なのだろう。

 しかし、しかしである。

 

「でも、その……補習授業部の部費って、シャーレから殆ど出てたじゃないですか……」

「まぁ、そうだなぁ」

 

 そう、補習授業部は元々、桐藤ナギサが裏切者を処分するためだけに作られた部活。

 部費は勿論出ていたものの、それは最低限のものであった。

 そこで、カフェとかコンビニの経営で無駄に金が余り余っている俺が、ここぞとばかりに金を出しているわけである。

 

 ちなみに、かなりの額を出しているが、俺の総資金は減るどころかどんどん増えている。

 カルバノグ2章が終わったあたりでD.U.のカイザー系列を全部追い出して、シャーレが不良生徒達の働き口にしたのは良いが、そこで生まれた金の使い所を全く考えていなかった。

 給金upはやんわり断られたし、アビドスに送るのは向こうから却下されたし、なんかもうSRT学園とか復活させちゃおうかな、なんて最近は考えている。

 実行するとしても、だいぶ先の話になるだろうが。

 

「……で、ですね……使い道の無かったお金をどうするか、って話になってまして……」

「使ったのかね」

「はい……その、どうせ使い所も無いからって……」

 

 ……ぬ、ぬぅむ……どうなんだ……これは……?

 有効活用と捉えるべきか……横領と捉える考えるべきか……

 ……いやまぁ、ナギサもヒフミに使ってもらえたんなら本望か……

 

「……うん、それに関して俺は何も言わんし咎めん。好きに使え」

「あっ、はい、わかりました……ええと、本当に良いんでしょうか?」

「構わん。なんか言われるようだったら俺に連絡を寄越せ。どうにかする」

「わ、わかりました……」

 

 こくこくと頷くヒフミ。

 

「さて、そんじゃあ仕事だ。今日もこんなに書類がある。さっさと片付けて……あ?」

 

 書類の山から一番上のものを持ってこようとしたつもりが、バサリと数枚の紙が束になって持ち上がった。

 何やらホチキス止めされているらしい。

 どれどれとその表紙を読んでみると……

 

『連邦捜査部S.C.H.A.L.E ×モモフレンズ コラボ提案書』

 

 ……あぁ、成程ね。成程成程。

 まぁ、ついに来たかって話だな。

 ウチってばキヴォトス全土の生徒達から大人気だからな。

 ……ただねぇ……うん……タイミングがちょっと悪過ぎるかなぁ……

 

「受けましょう!!」

 

 ほらね。

 

「絶対に受けましょう先生! これはきっとモモフレンズのみならず、シャーレにとってもプラスになりますよ! シャーレの影響力を更に広める事にもきっと繋がりがありますし、提携している企業の────」

 

 ガタリと椅子から立ち上がり、こちらに身を乗り出して熱弁するヒフミ。

 これはいけない。とてもいけない。

 俺は後ろに下がりつつ、いつものを唱える。

 

「落ち着けヒフミ。それ以上は俺の性癖が歪む」

「ですのできっとこの提案は……はい?」

 

 すると、先程までの興奮が嘘だったかのようにヒフミが鎮静化した。

 

「よし、落ち着いたな。それじゃあ席に戻れ。しっかりと提案は受けてやるから、一先ずは仕事を……」

「いっ、いやいやいや!? なっ、なんですか!? せせせ、性癖!?」

「まぁ気にするな」

「気になりますよ!?」

 

 再び興奮し、こちらへと大きく身を乗り出すヒフミ。

 

「……いや、お前って滅茶苦茶可愛いじゃん?」

「え? ……い、いえ、そんな事は……」

「あるから。滅茶苦茶可愛いから」

「え、ええと……」

「いい? お前は可愛い。本当に可愛い。天使に見えるレベルには可愛い。だからあんまり近づかれると俺の理性がヤバいの。ok? ドゥーユーアンダスタン?」

 

 実際ヒフミは滅茶苦茶可愛い。

 ペロロの5億倍くらいは可愛い。

 まぁ、どっちかって言うと癒される系の可愛さだが、今の俺にとっては何にせよ猛毒だ。

 

「…………え、えっと……その…………」

「ほい、わかったらさっさと仕事に戻る!」

「は、はひぃ……」

 

 顔を真っ赤にして困惑するヒフミを座らせ、仕事を再開する。

 うむ、ヒフミはいい子だな!

 

うぅ、ど、どうしましょう……こんなに嬉しそうにしてたら、ハナコちゃん達に根掘り葉掘り……

 

 ……なんか ハナコがどうたらこうたら言ってるけど、まぁ気にせんでええやろ!

 うむ、やっぱりヒフミはいい子だな!!

*1
世界初のトレーディングカードゲーム

*2
最初期に刷られたあまりにも強力すぎたカード。5000万以上の値が付くことも

*3
世界に39枚しかない幻のカード。7億円で取引されたことも




 いやぁ……ヒフミって良い子ですよねぇ……(今まで書いてきたのを見ながら)
 ……え? ハナコ? どうしようね?(圧倒的エミュ難易度)
 ……まぁ、未来の俺が何とかしてくれるやろ!!
 
 ※カイザーを追い出した手段についてですが、ウチのクソガキ先生は『偶然ヘルメット団&不良集団+ワカモがD.U.内のカイザーに襲撃をかける→制圧のためにシャーレが強権を発動→制圧中に偶然真っ黒な証拠が出て来る→責任を追及する』を繰り返しまくりました。勿論カイザー側も抵抗しましたし、民衆も流石に気付いていましたが、カイザーが元から真っ黒な事は先生のおかげで周知の事実だったので、誰もカイザーを味方しませんでした。

 最終的にカイザーはシャーレに暗殺、戦争の両方を仕掛けようとしましたが、双方共にガチギレした各学園生徒にボッコボコに阻止されたので撤退を余儀なくされました。
 で、そこをシャーレが接収、常駐組をトップとして、不良集団の受け入れ所が出来ました。
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