待て、それ以上近付くな! 俺の性癖が歪む!   作:POTROT

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間話 ホテルでのひととき

 シロコの背中が見える。

 

 恐怖に転じたシロコの、マズルフラッシュが見える。

 

 プレナパテスがウィンドウを操作するのが見える。

 

 辛い。ただひたすらに辛い。

 

 朦朧とする意識の中、漠然とした痛みと苦しみが絶えず襲って来る。

 

 呼吸はもはやまともに出来ていない。

 

 聴覚は既に機能を失った。

 

 膝がガクガクと笑っている。

 

 視界は滲んでいて、真っ赤だ。

 

 口と鼻からは血がゴボゴボと湧き出る。

 

 もう体に力が入らない。

 

 奇跡はもう使った。

 

 ああ、畜生め。

 

 限界だ。

 

 死ぬ。

 

 きっと死ぬ。

 

 あと数分、いや、恐らく数分もないだろう。

 

 もう、終わりか。

 

 やはり、俺には無理だったらしい。

 

 すまん、みんな。

 

 俺は─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────いや、まだだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 まだ、俺は立っている。

 

 まだ、シロコは俺を信じている。

 

 まだ、アイツらは勝利を諦めていない。

 

 まだ────

 

 

 

 

 

         

 

 

 

    奇跡は残っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 握り締めたカードを天に掲げる。

 眩く、暖かい光が辺りを照らす。

 奇跡が起こる。代償を以て、奇跡はこの舟に舞い降りる。

 

「!」

「っ、させない!」

「こちらの、セリフ……ッ!」

 

 プレナパテスが体を大きく揺らし、動揺を露わにする。

 恐怖に反転したシロコが疾駆し、掲げられたカードを狙い撃つ。

 しかし、射線に割り込んだシロコがそれを拒む。

 

「くっ……!」

 

 全身を強かに打つ恐怖を孕んだ銃弾に、シロコは苦痛の声を漏らして跪く。

 だが、シロコの稼いだ一瞬は、確かに奇跡の発動を間に合わせた。

 

 光が強まる。

 代償は既に払われた。

 奇跡は、ここに成る。

 

 

「──────ッッッ!!!?」

 

 

 ありうべからざる事が起きる。

 出現した。顕現した。

 そこにあるはずのないものが。あっていいはずのないものが。

 

 

 ────馬鹿な。

 

 誰かが嘯く。

 

 ────あり得ぬ。

 

 誰かが嘯く。

 

 ────理解できぬ。

 

 誰かが嘯く。

 

 ────貴様は、一体何なのだ?

 

 誰かが問う。

 

「知るかッ、ボケェ……ッ!!」

 

 当然ながら、そんな事は知った事ではない。

 強いて言うのなら、俺は俺だ。俺は俺以外の何者でもない。

 だからこそ、俺の奇跡はきっと『こう』なのだ。

 

 体が修復されてゆく。

 思考が回る。視界がクリアになる。足の震えが止まる。体に力がみなぎる。

 

「……ん。先生、行くよ」

『先生! もう大丈夫ですね! やってしまいましょう!!』

 

 淡い光に包まれたシロコが並び立つ。

 タブレットから頼りになる秘書の声が聞こえる。

 

「当然……!」

 

 ナノマシンの調子もすこぶる好調だ。

 もはや、負ける気がしない。

 

「行くぞォッ!! プレナァッ、パァテスゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!」

 

 地面を蹴る。

 奥に佇むデスマスクの男。それを囲う薄紫色の防壁へと肉薄し、拳を掲げ────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう」

 

 見慣れない天井が目に映る。

 むっくりと起き上がってみれば、隣のベッドにはいつも通りの表情で座っているシロコ。

 ただ違うのは、普段着ているアビドスの制服ではなく、緩い私服姿だと言うことか。

 

 そう、俺たちはいつぞやに約束したホテルに来ていた。

 アビドス自治区の程近く、砂嵐の影響をそこまで受けていない場所にある、結構大きめな高級ホテルで、設備とサービスを楽しみつつ休暇を満喫していた。

 ……まぁ、正直な話。設備もサービスも、質としてはシャーレの方が上ではあるのだが、こう言うのは場の雰囲気とかそう言うのも大事と言うわけで、しっかり楽しませてもらった。

 

「よく寝れた?」

「…………ああ、実によく寝れた……夢見はちょいと悪かったがな」

 

 ……しかし、最終決戦の夢、か。久々に見たな。前はほぼ毎日のように見ていたが。

 今日いきなりこの夢を見たのは、寝床が急に変わったからか、それともワカモが居ないからか……まぁ、別に悪夢と言うわけでも無し。特に問題は無いだろう。

 

「どんな夢だったの?」

「……最終決戦だよ。俺とお前で戦ったアレだ」

「ん……勿論、覚えてる」

 

 コクリ、と頷くシロコ。

 心なしか、しみじみとした表情をしているように見える。

 

「先生と私で戦った。そして先生と私で勝った。だから、今がある」

「そうだなぁ……」

 

 そうだ。俺とシロコで勝った。

 だからこそ、今がある。だからこそ、皆が生きている。

 

「……俺、やり遂げたんだよなぁ……」

 

 そんな呟きが口から漏れ出す。

 

 半ば絶望していた。

 無理だと心の中でずっと思っていた。

 どう足掻いてもあそこで終わる。そんな確信がずっと付き纏っていた。

 

 だが、やり遂げた。

 あの地獄を踏み越えた。

 あの最終決戦を突破した。

 そして、託された。『先生』として。

 

「……まぁ、何にせよめでたしめでたしって事だ。……いやまだ終わっちゃいねぇんだが」

 

 カルバノグとかまだ終わってないし。

 クロノスとかオデュッセイアとかハイランダーとかワイルドハントとか、絶対に何かあるだろうところとまだそんなに関わってないし。あと百鬼夜行なんかも絶対なんかあるし。

 七囚人とかデカグラマトンとかも絶対なんかある。

 俺には特殊な知恵があるからわかるんだ。

 

「ん、そうだね。でも今は平和」

「……それもそうだな……っと」

 

 ガバッとベッドから上体を起こし、時計を一瞥。

 

「3時半……ふぅむ……」

 

 中々に微妙な時間だなぁ……よし、こう言う時は。

 

「よし、ゲーセン行こうぜ。すぐ下に見えるやつ」

「ん、折角だから勝負しよう。もちろん負けたら罰ゲーム」

「ほう」

 

 今日のために用意したパーカーを羽織り、カードキーをポケットに突っ込む。

 前の世界で友達と一緒にゲーセンへ通い詰めた俺は、ゲームは上手い方だ。

 格ゲー、音ゲー、クレーンゲーム、メダルゲーム。どれも高水準であると自覚している。

 そんな俺に罰ゲームを申し出るとは、いい度胸だと褒めてやろう。

 

「良いだろう、その発言を後悔させてやる!!」

 

 俺は勢い良く扉を開け放つ。

 さぁ、景気良くボコボコにしてやろう。

 

 

 

 

 ※何の面白みもなく普通に勝ちました。

  罰ゲームは『指定したクレーンゲーム10台クリアするまで帰れまテン』にしました。




 残念だったな! ウチのシロコはシロコでも健全なシロコだよ!!
 だからと言って狙ってないわけじゃないが、しっかり『ここで無理矢理襲ったら嫌われるだろうし、初めては先生からがいいな』って思える良識がある子なんだよ!!
 決して!! 決して!! 後先考えず襲う肉食獣ではなァい!!(鋼の意志)

 ……あ、あと評価くれ。(唐突な催促)

白亜の予告状やっていい?

  • やっていい。
  • やるな。
  • そんな事より百花繚乱やれ。
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