待て、それ以上近付くな! 俺の性癖が歪む! 作:POTROT
唐突だが、俺は食事にしっかりと気を遣うタイプの人間だ。
元の世界に居た時からスポーツマンとして人一倍食事には気を遣っていた俺だが、一度俺が過労で倒れてからは、より一層食事に、ひいては健康に気をつけている。
また倒れて多くの生徒に心配をかけたりするのも良くないし、後は単純に俺が不摂生で病気にでもなったりでもしたら、それこそキヴォトス崩壊の危機だからな。うん。
まぁ、キヴォトス崩壊云々はどうでもいいとして。
そんな食事に気を遣っている俺であるが、普段は昼をコンビニ惣菜で済ませている。
いやふざけんな添加物たっぷりの不健康食品じゃねぇか、とか思ったりした者も居るだろうが、それは大きな勘違いだ。
俺が食ってるのはただのコンビニ惣菜ではない。
フウカによる監修の元、ミレニアム脅威の技術力で開発された、『安価かつ大量生産可能で健康的な弁当』と言うコンセプトの弁当……を、折角だからとエンジェル24に持ち込んで商品化した結果生まれた至高のコンビニ惣菜。
栄養分は勿論、味や腹持ちも良い、洗練された、正に最高の一品である。
ちなみにエンジェル24キヴォトス全店舗で大好評発売中だ。
どんくらい好評かと言うと他のコンビニから『今すぐ販売を中止し、レシピを公開しろ』という旨の脅迫状が届くくらいには好評だ。
勿論、送って来た会社にはちゃんと『調査』が入ったので、今はもう安心である。
まぁ、それはさておき。
俺の昼食はコンビニ惣菜であるが、それは実に健康的なものであると言うことはこれでわかっていただけただろう。
しかし、同時に『そこまでしてコンビニ惣菜にこだわる必要があるか?』と疑問に考えた者も居るはずだ。
いつだったかワカモも、自分が毎日弁当を作った方が安上がりだし美味しいし愛がこもってる、なんて事を言っていた。
だが、俺がコンビニ惣菜にこだわるのにも理由があるのだ。
と言うのも────
「ん、うまい」
「ふふっ、ありがとうございます」
パクリ、と弁当を一口食べて、素直に感想を述べれば、目の前に座る少女は何とも嬉しそうにはにかんだ。
箸は止まる事なく進んで行き、パクリ、パクリと俺は味わいながら弁当を平らげていく。
そんな俺の様子を、少女は本当にただ嬉しそうな表情で、ひたすらにジッと見つめている。
少々小っ恥ずかしいが、そんな事で箸は止まらない。
みるみるうちに弁当の中身は減って行き、遂にはご飯粒の一粒も残らず食べ尽くされた。
「はい、ご馳走様でした」
「ええ、お粗末様でした」
パン、と手を合わせ、感謝を示す。
あぁ美味かった。
────とまぁ、このように。俺のために昼食を作ってくれたり、弁当を持って来てくれたりする生徒がいるので、そんな生徒達のためだ。
後はいつぞやのチナツの時のように、外出した時一緒に外で食事をするため、なんて事も理由の一つである。
ワカモはその時は私の弁当を捨てても良いとか言ってたが、ンなこと出来るわけがねぇだろうがと言う話だ。俺がいつもお前にどれだけ世話になってると思ってやがる。
「……あ、お弁当もお箸も、こちらで洗いますので、大丈夫ですよ」
「ん」
などと内心で憤りつつ、箸と空になった弁当を流しの方へ持って行こうとしたが、そこにストップが入ったので、キッチリとケースに戻して彼女に返してやる。
「いや、本当に美味かった。また作ってくれるか?」
「勿論です。先生がそれでよろしいのであれば、毎日私が作って差し上げてもいいのですよ? 朝食だって、夕飯だって作りますし、望むのなら、それ以上も」
「………………」
……と、そんな明らかに『そう言う意味』であろう事をなんて事なさげに言ってのける彼女は、本日の当番こと百鬼夜行連合学園の修行部副部長、水羽ミモリ。
長い桃色の髪と、透き通るような空色の瞳が何とも儚げな雰囲気を感じさせる彼女は、『大和撫子』を、ひいては素敵な花嫁を目指して、日々修行中の身であるのだそうだ。
そのために掃除、料理、洗濯、裁縫などなど、数多くの家事スキルを非常に高いレベルで保有している……が、一方で砂糖と塩を間違えたりと、たまにそう言う初歩的なミスをやらかしてしまうなど、そう言った可愛げも持ち合わせている。
そんな彼女のお誘いとなれば、まぁ、悪い気はしないが……と言うより魅力的すぎて飛びつきたくなるくらいだが。
「遠慮しとこう」
俺も先生なのでな。生徒と結婚は出来ん。
と言うかお互い同い年の16歳だ。そもそもまだ結婚できる年齢じゃない。
「そうですか、残念です。ですが、気が向いたらいつでも仰ってくださいね? 私は待っておりますので」
「あー……おう」
コイツ、儚げな雰囲気に反して本当に強かだよな。
いや、それがコイツの良いところなんだけどさ。
でも正直今はやめて欲しい。俺が死んでしまう。
「ところで先生」
「ん?」
「一夫多妻って素晴らしい制度だと思いませんか?」
「OK一旦落ち着こうぜミモリぃ」
何の脈絡もなくいきなりぶっ込んできたミモリに、俺は椅子から立ち上がって臨戦体制に入りながら冷静さを取り戻すよう促した。
それに対してミモリはしずしずと立ち上がり、微笑みを湛えたその顔をこちらへと向ける。
ほんのりと細められた目が怪しい光を放っているようで、少し怖い。
「どうかされましたか? 先生?」
「いやどうかしてるのはお前な? どうしたお前。いつもらしいと言えばまぁいつもらしいが、それにしたってなんかおかしいぞ今日のお前。どうした?」
なんかこう、いつものミモリは何と言うか、もう少しやりやすいと言うか、もっと素直と言うか……何だろうか。違いが微妙すぎてよくわからんが、違和感……とでも言うのだろうか。本当によくわからんが少しおかしい気がする。
と、そんな事を思って聞いてみれば、ミモリはさらにその目を細く、鋭く光らせる。
「ふふっ、どうしてでしょうね? 朝のオキシトシンハグが無かったからでしょうか?」
「…………いやまぁ、確かにしなかったが……」
まずミモリの言う『オキシトシンハグ』について説明するが、まぁ、簡単に言えばオキシトシンと言う『愛情ホルモン』やら『信頼ホルモン』と呼ばれるものを、ハグによって分泌させよう、と言うものだ。
ちなみにオキシトシンにはリラックスできる、自律神経を整える、穏やかな気持ちになる、脂肪分解を促進する、他人への理解を深める、集中力が向上する、幸せな気分になる、などなど、さまざまな良い効果があったりする。
で、そんなオキシトシンハグを、ミモリは当番の日だったり、俺が所用で百鬼夜行に赴いた日だったり、色々あって海に泊まりがけで行く事になったりに、ほぼ毎回俺とやっていたわけだ。
そして今朝もその例に漏れず、俺にオキシトシンハグを要求してきたわけであるが……今の俺にそんなことやってしまえば俺の性癖がシュレッダーにかけられたが如く粉微塵になる事は明らか。
なので、やんわりと断った次第であり、向こうもそれを了承した……はずなのだが。
「……なんか、怒ってるか? お前?」
「いえ、そのような事はありませんよ。むしろ、先生が私をどのように見ていらっしゃるか、と言う事を事細かに聞く事ができて、嬉しいとすら思っています」
「……じゃあ、その目は何だ?」
まるで、極限にまで研磨された小刀のような。
えもいえぬ美しさを醸し出し、それでいて凄まじいまでの攻撃性を秘めている。
今のミモリが俺を見るのは、そんな目だ。
「…………ふふっ」
「ッ」
ぞくり、と。
全身が粟立つ。危険信号が体を巡る。
今すぐここから逃げるべきだ、と。俺の直感が警鐘を轟かせる。
だがしかし、肝心の体が動かない。
まるで、足が地面に縫い付けられたかのような感覚だ。
「先生。今あなたが心の中で考えている事、当てて差し上げましょうか?」
「…………出たな、お得意の読心術……!」
ミモリは大和撫子になる修行の一環として、他者の観察をつぶさに行なっている。
それによって培われた観察眼と、彼女の高い推理力が噛み合う事により、彼女はまるで他者の心を読むが如く、相手の心情を察する事ができてしまうのだ。
「いいじゃねぇか、読んでみろよ、ミモリぃ……」
「はい、では……そうですね……」
じり、じり、と。
彼女がこちらに迫ってくる。
ざり、と。俺も後退するが、距離はどんどん縮まってゆく。
「先生は、今。この場から逃げ出したい。そう思っていますね?」
「……流石、と言ったところだなァ。ああ、そうだ。俺は今、お前から全力で逃げてやろうと思っているゥ……」
「ええ、ですが、もう一つ、違う事も思っていますね?」
「あ?」
違う事……だと?
「はい。先生は、このまま私に身も心も委ねて、楽になりたいと思っている……違いますか?」
「違う。違うな。絶対に違う。それだけは断言してやろう」
「本当ですか?」
「……何?」
ず、と。もう一歩が踏み出される。
「心当たりはありませんか?」
ず、と。もう一歩が踏み出される。
「いい加減、楽になってしまいたいと考えた事が、一度もないと言えますか? 私に身を委ねたいと、そう思った事がありませんか?」
ず、と。もう一歩が踏み出される。
「それに────先程から、私が近付いても離れようとしないのが、何よりの証拠というものでは?」
「ッ!!」
瞬間、俺はミモリに背を向けて駆け出した。
執務室の扉を開き、後ろから迫ってくるミモリの気配を感じつつ、いつもの避難所、男子トイレの中へ。
バクバクと、心臓が鳴る。ダラダラと、汗が流れる。
図星だった。
楽になりたいと思った事も、もうアイツでいいんじゃないかと思った事も。
ほんの一瞬。芽生えた瞬間に理性が押し潰し、消し潰したものの、それでも確かにほんの一瞬、そう思ってしまった。その瞬間は確かに存在するのだ。
否定してしまえばそれは嘘になる。俺は生徒に嘘をつかない。ついてはいけない。
「先生?」
不意に、扉の向こうから声が聞こえた。
「ッ……なんだ、ミモリぃ……!」
「もう、先生は十分に頑張った。そう思うでしょう?」
囁くような、諭すような声だ。
「私であれば、きっと先生を満足させて差し上げられます。きっと先生を幸せにして差し上げられます」
「…………ッ」
「先生がそう望むのなら、愛人でも、妾でも、側室でも構いません。ですから……先生」
私を選んでくださいませんか?
ぐらり、と。意思が揺らぐ。
ミモリの声に、思考が支配される。
もういいのではないか、と。心の奥底から声がする。
だが、それも一瞬だ。
俺の弱さを。俺の甘えを。俺は理性と責任で以て押し潰す。
「…………俺はッ」
「っ」
「俺は、先生だッ……!」
血を吐くように捻り出された、その一言。
それは、明確な拒絶の意を孕んでいた。
「…………振られてしまいました、か」
「……………………………時期が、悪いだけなんだ……」
「ふふ、そうですか……」
扉の奥で、微かに音がする。
「先生」
扉を抑える俺の耳元で声がする。
恐らく、彼女は扉にもたれかかっているのだろう。
「私は、あなたをお慕いしております。あなたが待てと言うのであれば、いくらでも待ちましょう。ですから────」
どうか、私を見捨てないで下さいね。
その言葉が、胸に突き刺さる。
「…………当然に決まっているだろうが」
口を突いて出たその言葉は、少なくとも確かな俺の意思だった。
あれおかしいな、ちょっとギャグの混じったほのぼのになる予定だったのにまた湿気が……
まいっか。
話は変わるけど、ブルアカって無課金に優しいよね。毎日やってたら石貯まるし。
そんなわけで筆者は無課金勢なのであまりガチャは引かないんだが、どうしてもルミを弊シャーレにお迎えしたかったので引いてみたぞ。
10連で出て割とマジでびっくりした。
で、こっから本題。
ゲーム開発部の分を合わせてここで白亜の予告状やりたいんだけど、どう?
いや、筆者思っちゃたんですよ。なんかこのままゲーム部やったらなんか全員ゲームだけやって終わりそうな気がするなって。
だからこう、ね? 折角だからイベストやろっかなって思っちゃったわけ。
時系列ちょっと違うけど……まぁ、ちっちゃい事は気にしないって事で。
でも筆者、こうも思ったわけです。『ウチの小説にそんなの求められてるか?』と。
『読者はただただ先生と生徒を一対一で絡ませるのを求めてるんじゃねぇの?』と。
筆者どうしようかな、と考えてアンケ取る事にしました。
そんなわけで答えてちょ。
白亜の予告状やっていい?
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やっていい。
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やるな。
-
そんな事より百花繚乱やれ。