待て、それ以上近付くな! 俺の性癖が歪む!   作:POTROT

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部員証と任侠娘

「お頭ァ! フィーナ、一つお頭に申し上げたい事がありマス!」

「おうおうおうおうおうおう。何だ何だ藪から棒に」

 

 執務室の扉を開けてすぐ、ビシッと任侠映画のヤクザがするようなポーズを決めてそんな事を言い放ったのは、何とも大胆な和服を着た金髪碧眼の、まるでアメリカ人がうろ覚えの知識で日本のコスプレをしているかのような印象を抱かせる生徒。

 彼女こそ本日の当番にして百鬼夜行連合学園所属、お祭り運営委員会の一員こと朝比奈フィーナであった。

 

 お頭という呼び方とこのポーズからもう既に察することは出来るだろうが、彼女はキヴォトスでも類を見ないほど重度の任侠映画愛好家だ。

 その愛たるや、ヒフミがペロロに向けるそれにも比肩する程。

 故に彼女は、己も映画で見たような『任侠』たらんと、日々努力を続けているのである。

 所属こそお祭り運営委員会────その名の通り百鬼夜行における様々な祭りを運営する委員会────だが、在り方としては修行部に近いだろう。

 

 ……まぁ、その『仁義』と『任侠』の知識の仕入れ先が悉く映画であるからして、些か知識に偏りがあったり間違った知識を得たりしているが、『困っている人を見つけたらとりあえず助ける』という根本に変わりは無いので、まぁ問題は無い。

 

 さて、そんな任侠映画好き、どころか任侠映画=人生みたいな彼女がいきなり俺に提案をして来た。となれば、十中八九映画から何かしらの影響を受けたのだろうが……

 

「まぁ、とりあえず言ってみろ」

「ハイ! ワタシ、思ったのデス! 組員には、組員としての証が必要ではないかと!!」

 

 うん、やっぱり思いっきり影響を受けてやがる。

 ……しかし、組員としての証、ねぇ……?

 

「あー……どうしてそうなった?」

「『ワンワン組の流儀』と言う映画では、組員達が全員お揃いの染毛*1を背中にしてマシタ!! それが組員としての証となり、同時に誓いともなるのデス!! そこでフィーナ、シャーレにもこのような『証』が必要ではないかと思いマシタ!!」

 

 俺がそう問うてみれば、フィーナは目を輝かせてそんな事を熱弁する。

 ……ふむ、確かに言われてみればシャーレには部員証と言うものが無い。

 流石に刺青と言うのは無いとして、やるとすれば制服や腕章みたいな形になるだろうが……

 

「……アリだな」

「!!」

 

 シャーレと言うのは言っちゃあ何だが、現状ではキヴォトスで最も強い組織だ。

 立ち位置的には連邦生徒会の下に当たるのだろうが、その影響力も行動力も、連邦生徒会のそれを大きく凌駕する。それどころか、民衆の間では連邦生徒会がシャーレ……と言うか、俺の下にある、と言う認識がなされているだろう。

 

 これに関してはカルバノグ2章のゴタゴタの時に色々はっちゃけてしまった結果だ。

 カヤ政権に俺が真っ向から反抗を表明した結果、三大学園とD.U.地区全体、その他多数学校と企業が俺のために動き、一種の革命のような状態になってしまったのである。

 この事から、俺がキヴォトスの頂点、と言う認識がキヴォトスに出来てしまったわけだ。

 

 そんな俺が直接運営するシャーレは、言ってしまえば『先生の力』、つまりキヴォトスの頂点の手足としての意味が強い。

 シャーレの制服を制作、部員に配布する事で部員達にその自覚を高めると共に、シャーレ部員である事を周囲に示して、一種の抑止力とする事も出来る。

 

 それに何より、制服を作れば、アコのような『ヤバい服装』を封じる事ができる!!

 それだけでも制服を作る意味というのはあると言うものだろう。

 

「………………いや、しかしなぁ……」

「エ?」

 

 ここで忘れてはならないのが、この場所がキヴォトスだと言う事だ。

 ご存知通り、キヴォトスの治安は前の世界のそれとは比べ物にならない程に悪い。

 甘い汁のためだったら何でもする、と言う輩が、生徒にも大人達にも多すぎるのである。

 俺の努力によってD.U.地区やらブラックマーケットやらの治安は格段に改善こそしたものの、それでも悪事に手を染める連中は後を絶たない。

 

 そんな中で、『これを着てたらシャーレ部員!!』なんてものが発表されればどうなるか。

 間違いなく違法に量産されまくるに決まっている。

 前の世界ですら違法に入手した警察の服を使用した詐欺やら何やらが横行していたのだ。

 どれだけ対策を施そうと、まず確実に大惨事になる。そんな未来がありありと想像できる。

 

「……うん、やっぱりやめとこう」

「そ、そうデスか……ザンネンデース……」

 

 ガックリ、と肩を落とすフィーナ。

 

「うう……良い案だと思ったのデスが……」

「んや、案自体はそこまで悪くなかったぞ。ただキヴォトスが悪いってだけで」

 

 いやホントに。

 何でこんなに治安悪いんだキヴォトス。

 俺がこれだけ頑張ってどうにか出来たのがたった数ヶ所とかどうなってるんだキヴォトス。

 最終編が終わってから割と本気でやってるはずなのに何でなんだキヴォトス。 

 ……いや、こんなこと考えてても不毛なだけだな。

 

「さ、仕事するぞ。相変わらず溜まりに溜まりまくってるからな。さっさと片付けんと一向に終わらん」

「ハイ! それでは気を取り直して! このフィーナにお任せ────」

「っとその前に、だ!」

 

 フィーナが対面の椅子に座ろうとしたところで、俺はズビシとフィーナを指差す。

 

「……? どうかしマシタか?」

「フィーナ、上を着ろ。そのままだと俺の性癖が歪んでしまう」

「持ってマセンが……セイヘキとは?」

 

 そう言って、フィーナがコテンと首を傾げた。

 ふむ、どうやら本当に何もわかっていないらしい。

 

「良いかフィーナ。お前はなぁ……服がヤバい!!」

「!!!」

 

 俺が再びズビシとフィーナを指さしてやると、フィーナは何やら衝撃を受けた様な顔になり、直後にずいと机からこちらへと身を乗り出してきた。

 

「ソレ! トモダチに言われたことありマス!! 教えて下サイ!! ワタシの服の、一体どこがダメなんデショウか!?」

「あああああああ待て待て待て待て待て!! 教える! 教えるから一旦待て!!」

 

 興奮した様子のフィーナを押し留め、コホンと咳払いを一つ。

 

「いいか? フィーナ。まずお前の服はなぁ、胸元が無防備すぎる

 

 そう、フィーナの服は胸元が死ぬほど無防備だ。

 着物で言う『肩出し』の状態であるのだが、それにしても出しすぎと言う話である。

 いやまぁ単に肩出しをしているだけなのならば全然良いと言うか、普通に直してくれればそれで済む話なのだが、こいつの場合は話が違う。

 胸の辺りがバニー服の様な感じで、しっかりと隠れるべき部分が隠れる様に改造されている。

 つまり、コイツの服はこの状態がデフォルトと言う事である。

 

「そ、そうデスか……?」

「ああそうだっておい待てバカやめろ持ち上げるな強調するな俺の性癖が歪む!!」

 

 自覚なさげにフィーナが自分の胸を持ち上げる様にして胸元を観察し始めたので、俺は慌ててそれを止める。

 

「言われたことあるんじゃないのか? 胸元が無防備すぎるって」

「マァ、確かにワタシの選ぶ服はどれも胸元が心許ないとは言われマス!」

「そうだろうそうだろう。実際マジでヤバいからなそれ。……で、次はスカートだな」

「スカート……デスか?」

「ああ、短すぎだ」

 

 そう、フィーナは……と言うか、フィーナ()スカートが短すぎる。

 もはや股下数センチ。ユウカやスズミと同じレベルの領域だ。

 なんかもうこれに関してはかなりの数の生徒が似た様な丈のスカートを穿いているので、この丈がデフォルトの様に感じている人もいるであろうが、間違いなく異常である。

 前の世界の学校でこんな丈のスカートを穿いていれば、まず間違いなく指導が入るだろう。

 

「ウーン……こっちは大丈夫だと思うのデスが……」

「全然大丈夫じゃないが? 普通に大惨事だが?」

 

 前の世界だったらコスプレイベントとかでもない限り、痴女として通報されてもおかしくはないレベルだぞ。

 

「……まぁ、下はともかくとして、上は……そこに俺が使ってる上着が何着かあるから、今日はそれを使ってろ。そんでもって、今度から新しい服はお前のトモダチとやらに選んでもらえ」

「ハイ! わかりマシタ!」

 

 コクリ、と頷くフィーナ。

 うむ、素直で何より。

 って言うか、俺の服装への注意が素直に受け入れられたのは初めてなのでは?

 これは快挙だ。この俺の今までの行動は無価値では無かったと証明された。

 なんかユウカとかイオリとかアルちゃんとかに散々止められた気もするが、今後もこの活動はコツコツと続けて行くことにしよう。

 

「後はアレだな。単純にお前が美人」

「え」

「あ?」

 

 俺の上着を物色していたフィーナが、ピシリと固まった。

 

「ビ、美人……デスか? beautiful?」

「おう。いや、だってお前美人じゃん。元の顔綺麗だし、化粧もすげー似合ってるし、髪の毛とかもしっかり手入れされてて艶があるし。まさに西の美人さんって感じだ」

 

 フィーナは本当にマジで美人だ。

 ゲームだとデフォルメされているせいであまりよくわからないだろうが、フィーナは俺が今まで会ってきたブルアカキャラの中でもトップクラスの美人に分類される。

 ちなみにフィーナ以外でトップクラスなのが、昨日のミモリに、万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)のバカ二人とアルちゃん。あとはナギサとリオ。ついでにマリナ。

 元よりレベルの高いキヴォトスだが、この辺はガチで格が違う。

 前の世界だったら一日に五十回くらいナンパされるレベル。マジヤバい。

 

「……はぁ、まぁ何だ。とりあえず、上着てもあんまり俺には近づくなよ。マジで性癖が歪むからな」

「ハ、ハイ……わかりマシタ……コ、コレってもしかして、そう言う事デスか……?

 

 ……ふぅむ……どことなく上の空な気がするが……ま、大丈夫か。

 さて、仕事仕事……と。

*1
人間で言う刺青




 テスト終了!!
 まだ答案返ってきて無いけど! 物理科学数学が死ぬほど不安だけど!!
 何にせよ、これで心置きなく小説が書けると言うわけだァ!!

 さて、次回はどうするかな……ワカモはまだまだ時期尚早な気がしなくもないんだよな……ってなると、リンちゃん……でもワカモのハードルを上げすぎるのもアレなんだよな……まぁ、まずはリンちゃんか。

 あ、アンケートありがとう!
 結果通り、白亜の予告状やるぞ!! もうちょっと後に!

ワカモ大勝利編

  • 作れ。
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