待て、それ以上近付くな! 俺の性癖が歪む! 作:POTROT
カリカリカリカリと、ペンが紙越しに机を叩く音が聞こえる。
音の発信源は二つ。俺と、机を挟んだ俺の向かい側。
そこに座るトリニティ総合学園の警察組織、正義実現委員会の副委員長こと羽川ハスミである。
「……ハスミ、最近の委員会はどんな感じだ?」
書類にペンで署名しながら、何気なくハスミに問いかける。
「……エデン条約でゲヘナとの戦闘は極端に減りましたし、先のあの件で流石に不良達も大人しくなったのか、出動はほぼありませんし、処理しなければならない書類も大幅に減りました。おかげで勉学に集中できています」
「そうか……そりゃあ良い事だ。警察組織は忙しいより、暇な方がよっぽど良い」
書類に捺印しながら、相槌を打つ。
……あ、やべ。ちょっとズレた。……まぁ良いか。
「……ええ、全く。これも
「まぁ、みんなで頑張ったからな……お前だって十分過ぎるくらいに頑張ったんだ。しばらくは楽したって良いだろ」
次の書類に目を通しつつ、相槌を打つ。
……ん? 商店街で起きた事件の報告書ぉ……?
あー……やべ。あの後に起きた事件の方が衝撃的すぎて、すっかり忘れてた。
えーと、経費のメモは……良かった、消してなかった。セーフ。
さて、申請書は……っと。そろそろ追加しないと残り少ないか……?
「…………その、先生」
「あん? 何だ?」
「ここに来てから疑問に思っていたのですが、そのサングラスは……?」
俺がテンプレートを探していると、何かに耐えかねたような声でハスミが俺を呼ぶ。
何事かと顔を上げて聞いてみれば、ハスミは手で俺がかけたサングラスを指し示した。
「ああ、これ? 対策用」
俺はそれに、スチャッとサングラスの位置を直しながら答える。
ボディーガードが付けているような、すげー濃いサングラスだ。
おかげで書類が見にくい事この上無いが、背に腹は代えられないと言うやつである。
「……何のです? ここは室内ですが」
「ん? お前」
「は?」
「え?」
ハスミが素っ頓狂な声を上げる。
普段は冷静沈着な彼女が、そんな声を出すとは、何と珍しい。
「……その、私の対策……ですか?」
「うん。お前」
「何故……?」
「え、お前の格好がちょっと刺激的過ぎるから」
「なっ、何を仰るのですか!?」
「あぁ待て待て待て待て待て待て待て座れ座れ座れ座れ座れ座れ!」
ガタリ、椅子から立ち上がり、こちらへ身を乗り出すハスミを、床を蹴って椅子についたキャスターを回し、後ろに下がりながら声とジェスチャーで押し戻す。
「いいか? ハスミ。いいか? いいな? ハスミ。よーく聞いてくれハスミ」
「ええ、是非聞かせていただきたいものですね……!」
ハスミが顔を真っ赤にして、鋭い目でこちらを睨みつける。
「まずハスミ。俺はお前よりも歳下だ。そこは良いな?」
「はい。先生は私の一つ下でしたね」
「ああそうだ。つまり俺は今、思春期真っ只中だと言う事だ。それも良いな?」
「……まぁ、そうですね」
「で、だ。ハスミ。お前は気づいていないかも知れないが、お前のその格好は、思春期男子高校生には余りにも刺激が強過ぎる」
「何故です!?」
「何故も何も無いわ
ガタリと椅子を蹴って立ち上がったハスミに、俺は床を蹴ってキャスターを回し、壁にぶつかるまで下がってから立ち上がり、いつでも逃げ出せるよう臨戦態勢を取る。
そして俺は、ハスミが立った事で見えるようになったそれを指差した。
「まず最初に! 何だそのスカートは!」
ハスミが穿いているのは、いわゆるロングスカートというものだ。
どこぞのミレニアムオオフトモモの穿くミニとは違って、きちんと
しかし、ハスミの穿いているものであれば、また話が変わって来る。
そう、それこそが────
「そのどぎついスリットは、一体何のために入っている!?」
スカートの左側面をほぼ尻の辺りにまで裂いた、とんでもないスリットだ。
長すぎて、もはや……えーと、ガーターベルト……だったか?
とにかく下着みたいなやつすらバッチリ見えてしまっている。
「答えろ! 何だ!? 何のためだ!? 露出か!? 露出狂なのか!?」
「ちっ、違います! これは正義実現委員会として動きやすさを追求した結果であって……!」
「だったら普通のスカート穿けよぉッ!?」
実際、彼女の上司にあたる委員長のツルギは超近接戦タイプであるが、ロングでもなくミニでもなく、本当の本当に通常のスカートを穿いている。
動きやすさと言う面で考えるのならば、全然そちらでも大丈夫なはずだ。
「しかし、……そっ、その、こちらの方が私に似合っていると言うか何と言うかその……」
「うッ……た、確かにすげぇ似合ってるけどッ……!」
段々と尻窄みになりつつそう主張するハスミ。
痛恨の一撃である。それを言われてしまえば俺はこう返す他に無い。
事実、ハスミはこれ以上ないくらい今のスカートが似合っているのだ。
長過ぎるスリットやそこから覗くガーターベルトも、ハスミの体型や雰囲気と合わさって、むしろ妖艶な色香を漂わせている。
……いやまぁ、その色香を漂わせ過ぎだから俺がまずいと言う話なのであるが。
「とっ、とにかくッ! まずそこが一点! 次に!」
「まだあるんですか!?」
「当然だ! 次はそれだ! それ!」
次に指差すのは、ハスミの着るセーラー服。
もっと具体的に言えば、セーラー服を暴力的なまでに押し上げる『それ』だ。
「え? ……むっ、胸ですか!?」
「そうだ! そのッ……そ、それだぁッ!」
そう。ハスミのそれは本当にえげつない大きさをしている。
本人の顔とほぼ同じ、或いはそれ以上。正に巨大だ。
何ならもう服が押し上げられすぎて、腹がモロに見えてしまっている。
「お前はそれがデカ過ぎると気を揉んでいるようだがなぁ! 思春期男子高校生たる俺にとっちゃあそれは猛毒を超えた劇薬なんだぁッ!! そんなもの見せつけられてしまっては、俺の性癖が破壊されてしまうッッ!!」
「え、えぇっ!?」
本当にヤバい。
ハスミのそれは本ッッ当にヤバい。
さっきも言ったあのスリットも合わせてガチのマジにヤバい。
「いいなハスミ! お前はもう爆弾なんだッ! お前にこれ以上近付かれれば……俺が今お前を肉眼で見れば! 俺の性癖は一瞬にして爆砕されてしまうんだよッ!!!」
「そ、そんな……し、しかし、先生! 初めて会った時は特にそんなことは……それどころか、私と完全に密着していたではありませんか!?」
「事情が変わったんだッッ!!?」
えー、これはつまりどう言うことかと言えば、初めて銃撃戦の場に駆り出された恐怖で足腰ガクガクで、立つことすらままならず全く動けなかった俺をハスミに運んでもらったと言う事だ。
あの時は普通にハスミと密着していたし、何ならそれも普通に当たっていたとは思うが、当時の俺はそれどころでは無かったので、ハスミに抱えられていた事は覚えているものの、そのこと以外は全く覚えていない。
だから性癖も無事だったのだ。
しかし、あの時と今では、本当に事情が全く異なる。
今度そんな事をされれば、性癖がぐちゃぐちゃを通り越してスムージーになってしまう。
「いっ、いいか!? とにかく! お前は俺にとってあまりにも刺激が強過ぎる! 別にお前のそれを変えろとは言わないから、だからせめてこのサングラスを付ける事は許してくれ!! でないと俺は変態教師になってしまうんだッッ!!!」
床に膝をつけ、手を三角なるようにして同様に床へ。
そしてその手の間に頭を下ろす。
土下座である。
渾身の、そして全身全霊の土下座である。
「う、うう……」
ハスミが揺れる声が聞こえる。
緊張で汗か吹き出し、俺の心臓は早鐘を打つ。
どうだ……どうだ……!?
「わ、わかりました…………」
「っしゃああああああああああああああああああッッ!!!」
大勝利である。
俺はこの戦争を生き延びたのだ。
「かっ、代わりに!」
「!?」
交換条件だと!?
「その……当番一回ごとに、私の予定に付き合うと言う事で……サングラスはつけたままで構いませんので……!」
「ぬ……!」
コイツさては、俺にしこたまスイーツを奢らせるつもりだな……!?
……まぁ、いいか。どうせ使い道なくて貯金は億単位で有り余ってるし。
「いいぞ。予定はそっちで決める事、当日に終わって帰れるものである事、俺が拒否したものはすぐにやめる事。これらを守ってくれるなら、今日からでもな」
「……! はい!」
そう言って満面の笑みで頷き、机に戻るハスミ。
よしよし。これにて一件落着。
許可は出たわけだし、さっさと仕事を終わらせてしまおう。
この後、一瞬で仕事を終わらせてめちゃくちゃスイーツ食ってからハスミの服を見て来た。
普通に楽しかった。
筆者はガチ高校生なので書類作成とか全く知りません。
なのでなんか変な事あったら是非とも指摘プリーズ。