待て、それ以上近付くな! 俺の性癖が歪む! 作:POTROT
シャーレ……正式名称『連邦捜査部S.C.H.A.L.E』は、紛う事なきブラック職場である。
まず連邦組織のために全ての学園の生徒を制限なく加入させる事ができる上、各学園自治区内で制約なしに戦闘行為ができるとか、その時点で既にスリーアウトなわけだが、具体的な活動方針が存在しておらず、『とりあえず各学園から要望が来たらそれを解決する』みたいな組織になっているのが一番ひどい。
キヴォトスに一体何千の学校があって、何万人、或いは何億人の生徒がいると思ってるんだと言う話である。
本当に様々な生徒達が要望の書類を送ってくるので、その処理がアホみたいに大変なのだ。
まぁ内容としては飼い猫が逃げ出したとか、宅急便の配達の手伝いだとか、どうでも良いやつが大部分を占めるのだが、たまにアビドスみたいなとんでもなく重大なやつが紛れたりしているので、どれもちゃんと目を通しておく必要があるのが面倒くさい。
しかもそれと並行して近くで起きた事件の解決とか、シャーレビルの運営とか、連邦生徒会から送られて来る仕事とかを全部こなさなきゃならないので、マジで本当に仕事量が多い。
当然ながらそんな仕事量を俺のワンオペでこなせるわけもないので、採用されているのがシャーレ着任当初から採用されている当番制なわけである。
……のだが、ここだけの話、実は初期の頃の当番制はほぼ形のみであり、ほとんど俺のワンオペで回していたりする。
と言うのも、当時の俺は『俺はクソガキであるが原作通りに事を進めなければならず、そのためには生徒に頼られる存在にならねばならない』と言う強迫観念に思考を支配されており、『そのためには仕事を生徒に頼ってはいけない』と本気で思っていたのである。
だがまぁ、その頃はまだシャーレと言う組織の存在自体があまり知られておらず、仕事量も少なかったので俺一人で十分にできていたし、その上で十分に人間らしい生活もできていた。
しかし、アビドス編が終わった辺りから一気にシャーレの知名度が上がり、爆発的に仕事量が増えた結果、俺の日常生活は一瞬にして人間性を喪失。
アロナやその他生徒達から休めと言われつつ、それでも意地を張り続けた結果、まぁ当然の如くダウン。たまたま様子を見に来た生徒に発見され、緊急搬送となったわけである。
で、搬送先のベッドで生徒達に代わる代わる説教されつつ反省した結果、正式に当番制を起用し始めたのだ。
……うん、今にしても、当時の俺は本当にどうにかしてたと思う。
まぁ、今はしっかり人間らしい生活が出来てるので、もう大丈夫であるのだが。
で、話を現在に戻すと、そんな俺を発見して緊急搬送してくれた生徒こそが本日の当番。
トリニティ総合学園所属、トリニティ自警団の守月スズミである。
「…………ふぅ……で、スズミ。最近の自警団はどうなんだ? やっぱりいつもと比べて楽なのか?」
ペンを机に置いてググッと体を伸ばし、そんな事を向かいに座るスズミに問いかける。
ちなみに自警団と言うのは、トリニティにおける非公式の部活動。
活動内容としてはトリニティ自治区内のパトロールに暴行等の取り締まりと、正義実現委員会とあまり変わりないが、場合によっては正義実現委員会と真っ向からぶつかり合うこともある、少々特殊な組織である。
「そうですね、少なくとも私が鎮圧を行う事はかなり減りましたね」
「うーん、やっぱり治安維持系のところはだいぶ楽になってるんだなぁ」
「ええ……まぁ、自警団は元々仕事というわけではありませんので、殆ど差は無いですが」
「まぁ、そりゃあそうか」
ボフリと音を立てて背もたれに沈み込みつつ、納得する。
自警団は別にはっきりとした組織というわけではない。
トリニティ生徒の一部が勝手にそう名乗って勝手に活動しているだけであるため、活動が義務ではなく、正義実現委員会や風紀委員会と違って、休もうと思えばいつでも休む事ができるのだ。
「じゃあ何だ。単純に閃光弾の消費が減っただけか」
「はい。最近では全く買い足さなくても減りませんね」
スズミは不良の鎮圧に閃光弾の使用を好む。
理由は誰も怪我しないから、だそうだ。
実に素晴らしい理由だと思う。
ただ、それ故に『トリニティの走る閃光弾』とか言う名誉か不名誉かよくわからん名前をつけられているが。
また、閃光弾によって制圧された者は怪我こそしないが、電柱に縛り付けられて10年前くらいの懐メロを大音量で聞かせられる。
少なくとも、俺は絶対にやられたくない。
「……ってか、そう言えばなんだがな。スズミっていつもどこに閃光弾を持っているんだ?」
「え? どこに……ですか?」
「いや、スズミってぶっ続けで2桁近くの閃光弾を投げるだろ? でもスズミって鞄とか持ってないよな? どこから出してんのかなって」
ゲームとしてプレイしている時はまぁ、仕様なのかなとか思っていたのだが、実際に見てみるとゲームの仕様なのではなく、本当になんか気付いたら持っているのだ。
この辺も生徒達の格好と同じく、今までは気にしていなかったが、余裕ができて気になった事の一つでもある。
「ああ、それはですね……」
「待て立つな立つな立つな立つな! 口頭で! 口頭で説明してくれ!」
膝掛けを外し、立って説明しようとしたスズミを押し留め、再び座らせる。
「ええと……構いませんが、本日はどうかされたのですか? いつもと様子がかなり……この膝掛けも……」
「いや気にするな……ってのも無理か。まぁ、何だ。簡単に言えばお前によって俺の性癖が破壊される可能性がある。できればそこに座って上半身だけを俺に見せてくれ」
「え? は? ……え、ええと……つまり、私の下半身が、何か……その、まずいのですか?」
「まぁ、かなり」
俺はこくり、と首肯する。
「そのな? お前のスカートが短すぎるんだ。太腿もしっかり見えてるし、しかもそのプリーツ? だったか? もかなり盛り上がってるだろ? それがマジで見えそうで怖くてな。その辺が俺のような思春期高校生男子には刺激が強すぎるんだ」
「え? ……しかし、前は……」
「いや、少し事情が変わったんだ。わかってくれ、頼む」
「ッ!? ああっ、頭を上げてください!?」
俺が座ったまま頭を下げて頼み込むと、スズミはわかりやすく動揺する。
「そっ、その、わかりました、ここに居る間は極力座っているようにしますので……」
「ああ、そうしてくれると助かる」
「はい……し、しかしその……先生は、私の脚につまり、魅力を感じていると……?」
「ん? ああ、まぁ、そうだが……」
「そう、ですか……そう、なんですね……」
「ッ」
ほんの一瞬、スズミの目がギラリと光るのを幻視する。
……まさか怒らせてしまっただろうか。
まぁ、そりゃあ『俺はお前のこと結構ヤバい目で見てます』なんて公言したんだから、正義感の強いスズミを怒らせても仕方が無いか。
しかし、本人が何とか抑えてくれたようなので、その厚意に甘えてさっさと次の話題に入らせてもらおう。
「で、何だ。閃光弾をどこから出してるんだって話なんだが……」
「……あっ、ああ、はい……ええと、どこからか、でしたね。それなんですが……実は、このスカートの中なんです」
「そうなの!?」
え? そうなの……? でも……え? おかしくないか?
原作の描写でもそんな様子は微塵も無いし、俺が戦闘の指揮をしていた時もスカートの中から何かを取り出すなんて事してなかったような……
「疑問に思っているようですね。確かめてみますか?」
「へ!?」
「性癖云々と仰っていましたが、やはり百聞は一見にしかず。実際に見てみる方が良いでしょう」
「良くねぇが!?」
いや良くねぇが!!?
しかし、そんな俺の叫びを無視してスズミは立ち上がり、机を回ってこちらに移動しようとする。
「ま、まぁそう言わず、少し見るだけで構いませんので……」
「おい
それに対して俺は椅子を蹴って立ち上がり、スズミと机を挟んで反対側になるようにジリジリと移動する。
「本当に、本当に少しだけ、ほんの先の先だけでも構いませんので……」
「言い回しが完全に変態のそれだぞスズミィ!? 落ち着け! 本当に落ち着け!? お前は今、冷静さを失っている!?」
「そんな事はありません! 私は至って冷静……そう、冷静です……!」
俺が必死になって説得しようとするが、彼女は俺を追いかけるのをやめない。
……ま、まずい……このままでは、確実に破壊されてしまう……ッ!
「ッ……う、うおおおおおおおおおおおおおおッ!!?」
タイミングを見計らって、部屋から飛び出す。
そしてそのまま男子トイレの方へ。
「あっ、待っ、待ってください!?」
待てと言われて待つ奴が居るか
俺はこのまま逃げる! 逃げるぞおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!
※この後、何とか男子トイレに逃げ込んで事なきを得ました。
少ししたらスズミも落ち着いたようで、その後は普通に仕事をして帰しました。
次回はちょっと毛色の違う回を挟むぞ!
シリアスタグがようやく仕事する時だ!
あ、スズミの閃光弾を出してるところは完全な捏造だぞ。
誰かアレどこから出してるか知ってる人いたら教えてプリーズ。