【完結】タイセイに告ぐ!   作:ふくつのこころ

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気まぐれレオパルド前編

 その後、悟空は来栖から説明を受けた。

 先ほどのように因縁をつけられるのは珍しくないこと。

 ユーウェインが悟空を同級生だと知っていたのは、学年ごとに上着にバッジをつけているため、同じ英数字の一のバッジをつけていたことから判別していたこと。

あとは食堂の場所などの簡単な施設の説明を受け、教室に案内された。

 

「今日から、このクラスの花果悟空くんです。

悟空くん、一言」

「花果悟空です、どうぞよろしく!」

 

 来栖が黒板に悟空の名前を書き、小さく悟空が頭を下げる。

 反応はあまり芳しくなく、クラスにもSCのシンボル入りの上着、昇り龍の腕章を着用した生徒が多かった。

 

「じゃ、じゃあ、窓際から三番目の席で」

 

 来栖が示したのは、窓際から三番目の空席。

そこに行こうと歩いて行くと、昇り龍の腕章をつけた学ランを着た青髪のウルフカットの男子生徒が足を引っ掛けるが、悟空はそれを難なく歩いて行った。

 

「随分な歓迎だけど、ここの歓迎ってこんなのばっかりか?」

 

 心底、困ったように悟空が眉尻を下げると、その生徒は舌打ちした。

 

「だ、大丈夫そうかい?それなら、授業初めて行くからね」

 

 おどおどした来栖が男子生徒と悟空のやり取りを見た後、大丈夫そうだとみれば、そのまま授業を開始した。

悟空は席に着くも、男子生徒は悟空の方に視線を向けているのを感じる。

 

(面倒だなぁ、こっち見てんじゃねえよ)

 

 建前上、カラバ侯爵と交わした約束である『マガリであることは極力知られてはならない』ということを悟空は守ろうとしていた。

 マガリが政権を握っているとはいえ、悟空は気に入らない人間をどうこうしてやろうという気持ちはさらさらない。

というのも、弱い人間を蹂躙したところで悟空の中にある乾きが満たされるわけではないからだ。

もう一つ、カラバ侯爵が言うには、悟空のマガリの姿、金色の角を持つカブトムシの怪人の姿はこの斉天大征伝説が色濃く残る町では目立ってしまうからだという。

 もっとも、それは建前なだけで本当のところは面倒なものには関わりたくないのも本音なのだが、ナメられるのも気に入らないという矛盾があった。

 

「よう、転入生っ!ゴーライには慣れたかよ?」

「誰?」

「俺は御堂(みどう)。御堂マシロ!で、こっちが清光(きよみつ)。知ってるよな?」

 

 悟空が下校の準備をしている時、見知らぬ赤髪のアシンメトリーヘアの少年が席にやってきた。

 先ほど、足を引っかけてきた青髪のウルフカットの男子生徒の肩を組んでいるが、青髪のウルフカットの男子生徒はそっぽを向いている。

 二人とも昇り龍の腕章をつけており、おそらく、二人とも来栖が言っていた昇龍會(しょうりゅうかい)に所属しているのだろうと悟空は思った。

 

「お前、まだチームどこにも入ってねえんだろ?どうすんだよ」

「その清光って奴。そいつ、足引っかけてきたんだけど?」

「あー、悪い悪い!おら、謝れよ。清光!」

「なんで俺がこんな猿野郎に!」

 

 御堂に促されるも、清光が悟空を指差すと悟空はその指を掴んで力を込め始めた。

 

「いや指差してんじゃねえよ」

「いだだだだだだ!は、離してくれ!折れる!折れるから!」

 

 少しずつ悟空が力を入れると、みしみしと骨がきしむ音がすると、清光は冷汗を浮かべるが、悟空は心底不快な表情を崩さない。

 謝るまで決して離さない、折っても構わないという様子のため、御堂はフォローに入った。

 

「清光もそう言ってるしよ、離してやってくれねえか?」

「ごめんなさいしろよ、ごめんなさい」

「……わ、悪かったよ」

 

 清光が小さくつぶやくと、悟空はその手を離して学生鞄を手に立ち上がった。

 清光や御堂より五センチほど身長差があるだけなのに、軽く力を入れただけで骨をきしませるのは彼らのチームの頭領や対抗しているチームのヘッドでなければ、あり得ない(・・・・・)

 

「おい、花果悟空はいるか?」

 

 教室に入ってきたのは、SCのシンボルを入れた上級生らしい不良だった。

 

「サザンが何の用だ!」

「お前らには関係ねえよ、昇龍會の奴らには」

 

 御堂が食って掛かると、不良は小馬鹿にしたように笑う。

 

「こいつが花果悟空だよ」

「き、清光!?」

 

 清光が悟空を指差すと、御堂は驚愕して目を丸くした。

 指を折られそうになったとはいえ、吹っ掛けたのは清光に非がある。

なのに、チクったのだ。

 

「たまにはお前らも役に立つじゃねえか。ヘッドがお呼びだ、来てもらおうか!」

「行かねえと言ったら?俺様は別に昇龍にもさざん?にも関わる気はねえよ」

「て、転校生!行ったほうがいいって!」

 

 きっぱりと断った悟空に近くにいたギャル風の女子生徒が口を挟むが、悟空は学生鞄を手に不良がいる出口とは違う方向から教室を出た。

 

「要件聞いてねえし、行かなくていいだろ」

「一年坊主が!大人しく言うこと聞いてればいいんだよ!」

 

 不良が勢いよく駆けてきて、悟空に拳を振りかぶろうとしたとき、悟空は思い切り顎を蹴り上げた。

 わかりやすいほどに顎の骨が砕ける音が響き、悶え苦しむ。

 

「あ、やべ。蹴っちまった」

「は、はは。あいつ、サザンの奴らに喧嘩売りやがった!!」

 

 手加減なしでやってしまったことを悟空は少し悔いるが、向こうから吹っ掛けてきたのであればいいかと切り替えることにした。

 御堂は悟空が腕が立つ事が分かったことで、悟空に興味を持った。

 

「た、たのむ。呼んでこないと殺される!花果さん(・・)

「俺様、勝手に呼びつけてきやがったアンタの事なんてどうだっていいんだけど」

 

 悶え苦しみながらも、不良は涙目でふらふらと立ち上がる。

 悟空は涙目になっている、年上の生徒に辛辣に吐き捨てる。

 

「この通りだ!」

 

 目の前で土下座したことで、悟空はようやく彼についていくことを決めた。

 

「仕方ねえな」

 

 悟空が案内されたのは、学園の裏にある旧校舎だった。

 壁にはサザンクロス最強、と書かれた文字のほかに様々なスプレーアートが描かれており、そのほかにも多数のラクガキが描かれている。

 舞台にある彼らのリーダーが座る席らしい、ソファには一本に結わえた三つ編みとタレ目で黒い中華服を着た青年が笑顔で座っている。

 周囲には王を守る兵士たちのようにサザンクロスに所属する不良たちが悟空の方を見ており、その中には朝に悟空と睨みあったミズチの姿もある。

 悟空の方を睨みつけており、悟空は自分が顎を蹴り上げた不良がまだ涙目なのも含め、サザンクロスのアジトに来たのを後悔した。

 

「はーい、コンニチハ!花果悟空くん。

俺がサザンクロスのヘッドやってます、来 理人でっす☆ウチの奴ら、ちょーっとばかし、気が早くてさ。

たぶん、ゴックンがその隣の奴の顎砕いたんだろ?それ気にしなくていいからねー?」

「あー、はい?」

 

 理人は笑顔を崩さないまま、両腕を広げてまわりを示すと、悟空の態度を気に入らないミズチが食って掛かった。

 

「テメェ!猿野郎!ヘッドがお話になってんだぞ!?その態度はなんだ!」

「いいよ、ズッチー。気にしなくていい。それにズッチーじゃ勝てないよ?ゴックン、たぶん俺や豪太郎(ごうたろう)同じ(・・)だからさ」

「つまり、マガリってことッスか!?」

 

 ごうたろう、という見知らぬ名前と理人が言った同じ(・・)というのは、マガリであるということだろう。

 ミズチは悟空を一瞥するも、その目には恐れと怒りが混ざっていた。

 他の構成員たちも同様であり、構成員たちは悟空を恐れる視線を送っていた。

 悟空を殴ろうとし、悟空に顎を蹴り砕かれた不良も同様であり、悟空は隣から視線を感じた。

 

「まあ、そんなことはどうでもいいんだよ。ゴックンさ、昨日、来ルシアって会っただろ?」

「そういえば、会った気がする。アンタ、アイツの兄貴か」

「そうだよ。だからこそ、ゴックンに言っておかなきゃならないことがあるんだよねえ。

助けてくれたことはありがとうって言ってやりたい、俺の妹ちゃんを守ってくれたんだからね。

ウチの奴ら、俺以外はほとんどよわよわちゃんばっかりだからさ、ルシアにつけてやれないんだよ。

ルシア、俺がサザンクロスやってるの、あんまり好きじゃねえみたいだから」

 

 そこは感謝してる、と壇上から降りた理人。

 理人はそのまま、悟空の元へと歩いてくるなり、満面の笑みを浮かべた。

 

「でさあ、俺とタイマン張らない?それで、俺と一緒に暴れちゃおうぜ!ゴックンもサザン気に入ると思うんだ!」

「え、俺様が?嫌だけど」

「じゃあ、()っちゃうね!ゴックン!!」

 

 心底嫌そうに悟空が返すと、理人はドスを効かせたまま、マガリとしての姿を変貌させていく。

 大きさとして、約百八十センチほどの豹のマガリ、マガリ・レオパルドというべき姿に理人は変身した。

 

 一方、旧校舎近く。

 先日の夜に遭ったマガリのせいでちはやは怪我をしてしまったが、命に別状はなかった。

 ただ、ルシアの兄は自分の妹を助けたカブトムシの怪人に変身した少年のことを探すと言っていたが、そんなアテがあるとは思えなかった。

 自分の兄がヘッドを務める、チームのアジトに来るのは正直好きじゃない。

 それでも、心配で食事やらを持ってくるのが日課になりつつあり、今日もちょっとした差し入れとしてエコバッグにカップ麺などを入れてやってきた。

 

「兄貴、今日も差し入れに来たよ。───……昨日の!?待って、兄貴!そいつ、オレを助けてくれたんだぞ!?」

「おっ、はろーん?ルシア。こいつ、俺とタイマンで負けたら、お前の用心棒させるから」

 

 ルシアがアジトに入ると、今まさに昨日の赤毛の少年がマガリ・レオパルドになった理人と対峙している。

 

「そいつが傷ついちまうって!」

「いいっていいって、変異する前も結構強いみたいだし?ウチの奴も顎蹴り砕かれちまったみたいだし、気になってたんだよねえ。どこまでやるのか!」

 

 理人は手加減ができない。

 特にマガリ・レオパルドになった理人の強さを知っているルシアとしても、自分と友達の命の恩人が傷つくのは見ていられなかった。

 

「大丈夫、俺様は負けねえよ」

「なんで、そう言えるんだよ!?」

 

 ルシアは徐々に悟空が昨日見た、金色の角を持つカブトムシのマガリに変異していく様を見ながら叫ぶ。

 

「俺様は悪魔だからさ」

 

 顔が完全にカブトムシを思わせる、それに変異する前に悟空は不敵な笑みを浮かべる。

 

「いいねえ!そう来なくっちゃ!!」

 

 光線的な表情を浮かべた、理人が悟空にしなやかな動きで悟空に蹴りを繰り出す。

 

 戦いの火蓋は今、切って落とされた。

 

 

 

 




悟空の倫理観は人間のふりをしている怪物に過ぎないので、基本的に戦うことにためらいはありません。
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