【完結】タイセイに告ぐ!   作:ふくつのこころ

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気まぐれレオパルド後編

「金色の角を持つ虫?」

「なあ、アレって神社の奴じゃね?」

「つまり、あの一年は生まれ変わりとかか?」

「バカ、そんなわけねえだろ」

 

 金色の角を持つカブトムシのマガリに悟空が変身すると、サザンクロスの面々は傲来市に古くから伝わる、斉天大征の伝説を思い出す。

 

 曰く、戦場を縦横無尽に駆け回る高速走法。

 曰く、凄まじい膂力で自分より体格が大きな相手とも渡り合う力強さ。

 曰く、黄金色の先端を輝かせる様を目撃して生き残った者はいない。

 

 そんな伝説を残していることもあり、悟空の変身は動揺を周囲には知らせるには十分すぎた。

 

「ヘッドがあの虫野郎に負けるはずがねえ!」

 

 ミズチが身体を震わせながら言うと、そうだそうだと同意の声が広がる。

 彼ら、サザンクロスは皆、ヘッドの来理人のカリスマに惹かれ、その軍門に下っている。

 自分たちのアタマを信じずになにがサザンクロスか、と彼らは自分たちの中にあるヘッドの理人の勝利を信じることとした。

 

(ルシアの奴、大丈夫だといいが)

 

 一人、ヘッドの相棒である柚木恭平は心配そうに豹の怪人ともいうべき、マガリ・レオパルドに変異した兄が命の恩人と戦う様子を見守るルシアを見る。

 

「見なよ、ゴックン!!サザンの奴ら、俺たちのケンカ!!楽しみにしてるんだよ?これってさ、俺たち、すっごく仲良くなれるんじゃない!?」

「俺様、別にアンタと親友になろうって気はねえんだけどな」

「まあまあ、そんなこと言わねえでさっ!

……久しぶりにそんなにツレねえこと言われたな、仲良くやりたくねえの?お前」

 

 悟空がそっけなく返すと、理人の左足の蹴りが首元に炸裂するが、カブトムシの頭部と同を繋ぐ“隙間”にある刃のような部分が挟み上げる。

 刃が理人の足をギチギチ、と締め上げて離さず、地道にであるが、その足を切り刻んでいく。

 

「ヘッドのあの蹴りを受け止めやがった!?」

「あの猿野郎、ズルい手を使ったに違いねえ!!」

「お前ら、ちょっと静かにしててよ。コレ、俺とゴックンとのタイマンなんだぜ?」

 

 ミズチやほかの構成員たちが悟空がカブトムシの特徴で理人の攻撃を受け止め、挟み上げるという返しを見せると、次々とヤジを飛ばすため、理人はメンチを切って返し、彼らを黙らせた。

 空いた右足で悟空の胴に蹴りを入れ、出血するのもいとわず、その衝撃を生かして挟まれていた足を引き抜いた。

 

「へーえ?なかなかやるんじゃない?っていうか、ソレ。俺への挑発のつもり?ゴックン」

「好きに捉えてくれていいぜ、面倒臭ェ!」

 

 悟空が金色の角をまるでリーゼントを撫でるような仕草をすると、理人は煽られていると思い、カチンときたので、蹴りの猛攻を叩き込む。

 豹のマガリである、マガリ・レオパルドの脚力は非常に強く、その蹴りは拳を繰り出すよりも威力が非常に高い。

 悟空がその猛攻の中を抜け出そうとすれば、軽快なステップで後を追い、背中を蹴り上げる。

 自分たちの仲間をやられた報復をヘッドの手によって執行されていることは爽快だったが、それ以上に生意気な一年坊主がボコボコに殴られているのが心地良かった。

 

「ヘッド!そんな奴の角なんか、へし折っちまってください!!」

「そんな金メッキ、へし折って飾ってやっちまいましょう!そいつは標本で!」

 

 そんなガヤを入れられるたび、悟空はそれに反応せず、理人の攻撃を受け止めながら、拳を繰り出す。

 悟空の拳を受け止めると、その重たい一撃は身体にズシンと広がるようで、受けるだけで移動を阻害するようなダメージを与えられているかのようだった。

 そんな攻撃が理人の心を燃え上がらせていく。

 

 理人は悟空との戦いの中、“わっくわく”で心が満たされていくのを感じる。

 もう一つの対立しているグループ、豪太郎との戦いとはまた違うモノを一年の花果悟空から感じるとは思わなかった。

 

(ルシア、兄貴は嬉しいぜ。こ~んな、わくわくする奴!ひっさしぶりだぁ!)

 

 いつまでも殴り合っていたい。

 いつまでも、この蹴りと拳の打ち合いを続けていたい。

 そんな楽しみを感じさせてくれる、このマガリが自分たちのチームに入ってくれたなら、どんなに楽しい毎日がやってくるだろうか。

 どんな相手にもパワフルなマガリ、花果悟空と自分が組めば勝てるだろうし、もしかしたら、あの昇龍會との戦争だって勝てるかもしれない。

 

「なあなあ!ゴックンゴックン!すっげえ楽しいだろ?俺とお前でやり合うの!サザンに入ったら、お前みたいに喧嘩好きな奴といっぱいやり合えるんだ!それってさ、すっげえわっくわくでいっぱいだと思わねえか!?右腕のポジションはやれねえけど、それなりにいい場所においてやれるし。あ、左腕とかする?」

 

 理人はすっかり、自分の攻撃に耐えるタフさを見せながらも、気持ちいい拳を当ててくる悟空の強さに夢中になっていた。

 サザンの他のメンバーは彼を凶悪な怪物の生まれ変わりだと思っているようだが、理人にはそうは見えなかった。

だからこそ、こうやって熱烈な勧誘だってするのだが、悟空の感情は変わらない。

 チームのヘッドからは歓迎ムード、それ以外の構成員からはそうでもないどころか、恐れられているなんてアウェーもいいところ。

 

「だから、しねえって言ってんだろ……!!」

 

 悟空としては、さっさとここで決着をつけ、今後、二度と関わろうと思えないように理人をノックアウトすることが脳裏に浮かびつつあった。

 このサザンクロスというチーム、ヘッドしかマガリがいないのであれば、自分と渡り合えるものはいない。

 マガリはその性質上、人間の何倍もの力を発揮するため、そもそも、まともな戦いがマガリと人間の間には成立しないのである。

 

 次の瞬間、マガリ・レオパルドは姿を消した。

 

「ふーん、そっか。背中、がら空きだよ?」

 

 一瞬、目の前から理人が姿を消したかと思うと、背後から蹴りを入れられ、うつ伏せに押し倒される。

 鎧越しに踏みつけられると、悟空が理人に圧倒されている様子にサザンクロスのメンバーのボルテージも上がっていく。

 

「どうだ!ゴックン!こんなもんか?ルシアを助けた力ってのはこんなもんか?なあ、つまらねえよ!もっとさあ、わっくわく!わっくわく!を感じさせてくれるようなタイマンやろうぜ!俺、お前の事気になっちまって仕方ねえんだ!!」

 

 何度も何度も悟空の背中を地団太するように踏みつけるたび、鎧から悟空へダメージが入る。

 自分たちを睨みつけ、生意気な態度をとっていた悟空がうめき声を押し殺し、食いしばっている様は不良たちに暗い感情を灯すのにそうは時間もかからなかった。

しかし、理人が睨みを利かせていることもあって、彼らは悟空に手出しできない。

 

「兄貴!やめてくれ、これ以上やっちまったら、悟空死んじまうよ!!」

「ルシア。これは兄貴なりのお前への優しさだぜ?お前がサザンのヘッドを俺がやってるのをよく思ってねえのは知ってるけどよ、今のこの物騒な町(・・・・・・)でお前が出歩くには用心棒が必要なんだって言ってるよな?こいつなら、お前の用心棒させてっもいいって思ってるんだ。角もキンピカピカ、人間の姿もぜ~んぜん悪くない。

だからさ、こいつのこと飼ってやろうかって思ってるんだぜ?」

 

 屈託ない笑みを浮かべるが、理人のその顔がルシアには怖くてならなかった。

 

「物騒な町?……ああ、じゃあ、俺様が勝ったら、アンタにやってもらいてえことがあるんだ」

「なんだよ、ゴックン?ゴックンは俺に負けるんだよ?なのに勝てるわけないじゃん。で、もし仮に俺に勝てたら何が欲しいの?聞いておいてあげる」

 

 悟空の角を踏みつけ、上半身だけは身を屈めるようにして悟空の言葉を待つ。

 

「その物騒な町で何が起こってんのかとか、アンタとアンタの兵隊に探させてやっから、覚悟しろよクソ猫野郎!!!!!」

 

 角のY字部分がちょうど金色になっているあたりをマガリ・レオパルドが足を載せたとき、いきなり悟空はその怪力を以てして空中へと打ち上げる。

 

「ほえ?」

「「え?」」

 

 理人が急な出来事に言葉が出ないのに加え、他のサザンクロスメンバーも呆気にとられる。

 空中へと上がった理人の身体を飛び上がった悟空が力を込めて肥大化させた角で見事に挟み込み、段々と回転を加えて旋回していく。

 みるみるうちにマガリとして強化された、感覚によって吐き気を理人は催してくる。

 

 花果悟空は犬派ではない。

 かといって、猫派でもない。

 

 従順すぎるのも嫌いだし、気まぐれなのは面倒だからもっと嫌い。

だからこそ、理人のつかみどころがない態度には内心イライラしていたし、自分を踏みつけたり、ギャラリーからのヤジには気分が悪かった。

 悟空は理人を挟み込んだまま、とどめに上空に飛び上がって地面に力強く理人を叩きつけた。

 

「へ、ヘッドォ!?……クソ虫野郎、何しやがった!?あんなの見たことねえぞ!」

「そいつもマガリなら、傷はすぐに癒える」

 

 地上に降りた悟空を一瞥し、ミズチは食って掛かるが、悟空の身体は理人によってつけられた多くの傷はすでに癒えており、マガリは根本的に自分たちとは違う生き物であることを思い知らされる。

 

「その、悟空だよな?アンタの名前」

「そういうお前はルシアだったか?」

 

 気を失った理人にサザンクロスのメンバーが駆け寄り、応急手当てをしている中、ルシアは悟空の元にやってきた。

そのときにはもう悟空は変異を解除し、人間の姿を取っているが、いまの悟空に喧嘩を売ろうなどとという者は今のサザンクロスには誰もいない。

 

「ああ、昨日ぶりだな。……兄貴が悪かったな。昨日の怪物の事だろ?絶対、兄貴と兄貴のチームに探させるようにするから。オレ達のせいでアンタに迷惑かけたくねえし」

「驚いたな、お前、兄貴のことで怒らねえのか?」

「今回のことは兄貴のせいだから、オレが怒ることじゃねえよ。迷惑料払うわけじゃねえけど、何か奢らせてくれよ」

「まあ、それくらいなら」

 

 ルシアが学ランの袖を引っ張りながら、悟空を見上げる。

 悟空としても、珍しい申し出だったので、その申し出に乗ることにした。

 これでヘッドを倒したサザンクロスからは喧嘩を売られないだろうと思っていた。

 

「……本当に、サザンのヘッドもやりやがった」

 

 ルシアと悟空がサザンクロスのアジトを出るところまで、この一部始終を眺めていた人物によって、悟空は思わぬ事件へ巻き込まれていくこととなる。

 




技のイメージはトルネードスローです
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