仮想の鬼神、幻想の都に墜つ 作:じゅじゅじゅ
呪術廻戦残り5話ってマジ?唐突すぎるよね。あと5年続いて、どうぞ
そういや次の話くらいまで、名無しセリフのみの使い捨てオリモブキャラが複数でるんですが、苦手な人はごめんなさい。まぁ世界観のフレーバーテキストみたいなものです。
天狗という種族にはいくつかの特徴がある。
そもそも、幾千もの――1人1派とも呼べるほどに細分化されている妖怪の種族の中でも、天狗はまとまった個体数を持つ上、才能という面で見ても
(鬼などとは異なり)肉体の強度や身体機能こそ平凡ではあるが、先天的に高い妖術の才能に恵まれる事が多く、とりわけ風を操る術に関しては他の種族と一線を画している。また、種族として高い知性も持っており、それは外の人間と比較しても遜色が無いどころか、軽く上回る者すら多い。
ゆえに太古の日本において、山へ立ち入る際に『最も恐れられた妖怪』であり、その伝承は今なお全国各地に残っている。
(…………ククッ、これだけの数の天狗が集まったのだ。よもや無策という事はあるまい。興が乗ってきたな……この俺を失望させるなよ)
半身の姿勢を取り、嘲笑を浮かべながら冷静に天狗たちを見据える。
しばらくすると、左右に展開した天狗たちが――地上で腕を組んだままの宿儺に向けて――手に持っていた
天狗の作り出した竜巻は、いわゆる外の世界の“一般的なもの”とは異なる。妖力が込められた影響で、その渦自体が強烈なまでの殺傷能力を持っており――巻き込まれた木々が、バラバラに切り刻まれる。
やがて宿儺のすぐ目前まで、竜巻は到達し――
「解」
不可視の斬撃により竜巻が
巨大な壁が迫ってくるような、威圧感のある複数の竜巻が消えた事で宿儺の視界は晴れたものの――上空には既に、天狗の姿は存在しなかった。
(なるほど……今のは目眩しか。俺の視界を塞ぎ、一瞬にして森の中へと散開したな)
瞬間、宿儺の周囲の土が盛り上がり、地面の下から5人の鼻高天狗が出現する。
長槍や手斧、錫杖など思い思いの武器を手にした鼻高天狗たちが――――奇襲を仕掛け、宿儺へと肉薄する。
「覚悟ぉお!!」
やがて、最も宿儺に近付ついた者の刃先が肉体を貫こうとして――盛大に空を切った。
「な?」
一番槍を買って出た勇敢な鼻高天狗の男は、思わず呆気に取られたような声を上げる。
つい先ほどまで目の前に居た宿儺の姿が見えない。一瞬、脳がフリーズしてしまうものの――改めて宿儺の姿を探し出そうとして、後ろの仲間から焦りを孕んだ怒号が飛ぶ。
「おい!馬鹿気を付けろ!!!」
シンプルな呪力強化のみとはいえ、宿儺のスピードは並の妖怪の知覚速度を優に上回る。
手始めに最も近くに居た鼻高天狗の顔面を鷲掴みにした宿儺は、躊躇なく『捌』を発動する。顔の表面をズタズタに引き裂かれた男は、断末魔を上げる暇すらなくその場で崩れ落ちた。
仲間の顔面が、原型を留めない程に破壊された様を見て――――鼻高天狗たちは思わず足を止めてしまう。それがこの場において、
天狗たちに走った動揺を、宿儺は見逃さない。
すぐさま2人の天狗が密集している場所に近付き、相手の腹に手を押し当てながら同時に『捌』を発動させる。その間、宿儺の腹の口は絶えず呪詞を詠唱し、余った2本の腕で術式の指向性を残りの鼻高天狗へと合わせ…………
「解」
強化された『解』が、最後に残った鼻高天狗たちを切り刻んだ。
「まずは5人……こんなものでは無いだろう?」
戦端が開いてからわずか数十秒。5人の鼻高天狗を戦闘不能にし、なおも不敵な嘲笑を続ける宿儺に――――今度は巨大な岩の塊が、まるで隕石のように上空から落下してくる。
圧倒的な物量から来る攻撃に対して、多くの者は回避か防御を選択するだろう。しかし宿儺は、自らを圧し潰そうとする巨岩に向かって、
『捌』『蜘蛛の糸』
宿儺が巨岩に触れた途端、直径約30mを越える岩の塊が、一瞬にしてバラバラに砕け散る。
よもやこの攻撃に怯まず向かってくるどころか、真正面から破られるとは思っていなかった鴉天狗は――巨岩の裏に隠れていたものの、その姿を露わにしてしまう。
「しまっ……!」
「遅い」
一瞬で距離を詰めた宿儺は、腕で鴉天狗を拘束し――――その喉元を
ごぽりと水音を立てて、糸が切れた人形のように落下していく鴉天狗を見下ろしながら――宿儺は血に塗れた口元を拭う。
「ふむ……鴉天狗を食うのは1000年ぶりだが……やはり味付けが無いと食えたものでは無いな」
平然とした口調で、文字通り
しかし、この程度の恐怖で義憤に燃える彼らの闘志は衰えない。たとえ一の矢が失敗に終わろうと、間髪入れずに二の矢、三の矢をつがえ続ける。
空中に1人取り残された宿儺に対し、森の木々に姿を隠した天狗たちが、空を埋め尽くすほどの弾幕を一斉に掃射した。
木を砕き、地を抉るほどの威力が込められた弾幕が殺到する中――――宿儺はその凶相をより凶悪に歪めながら大声で嗤う。
妖怪の山にて、鬼神の邪悪な嗤い声がこだまする。力の無い妖怪は必死に身を隠しながら、天狗たちの勝利を祈っていた。
戦闘が開始してから、およそ5分が経過した。
逼迫する戦況に焦りを感じながらも、射命丸文と初老の山伏天狗――2人の大妖怪は、森の中の一角で軍内談を進める。
「……こちら側の戦力は今、どの程度残っていますか?」
「我の探知によると……うむ。残り10といったところだな。その中で、大妖怪の部類に入れるのは……もはやお主と我のみよ」
「何発か攻撃を当てることは出来ましたが、有効には見えませんでしたし……何なら完全に回復されてますねぇ」
「やはり無謀だったか…………うむ。たった今、残りが7になった」
「……では」
「うむ。我らも出るとしよう。文、後は任せたぞ」
「えぇ、こうなったら最後に一矢報いてやりましょう。1秒でも長く時間を稼いで、少しでも被害を少なくするために…………何より、あのいけ好かないニヤケ面を少しでも崩してやらないと、こっちの気が済みませんから」
暗闇の中、顔を見合わせた2人は静かに頷き合い――残る天狗たちに、妖術による
森の中に感じる妖力がポツポツと消えていく。
それは宿儺によって天狗たちの反抗勢力が潰されていくことを表すのと同時に、一つの戦の終焉を感じさせるものだった。宿儺からしてみれば、手札の多くを禁じた“手加減ありき”の戦いではあったものの――多種多様な妖術を用いて、果敢に立ち向かう天狗たちに確かな充足感を感じていた。
(……頃合いだな。そろそろ切り上げるとしよう)
自分の中の意識を“娯楽”から“作業”へと切り替え、残る天狗たちを冷徹に処理しようとする。
そんな宿儺の眼前に――バサリと翼をはためかせた1人の――初老の見た目をした山伏天狗が降り立った。
(この男……大妖怪程度の実力はあるようだな。どれ、最後にこの男を相手に“遊んで”やろう)
宿儺が男に対して手掌を向け、術を使用しようとした瞬間――宿儺の全身が硬直する。
わずかに驚いた宿儺は、すぐさま山伏天狗の男に視線を向ける。男は、宿儺を睨みつけるようにしながらひたすらに詠唱を続け、瞳から血の涙を絶えず流していた。
(ほう。瞳術による拘束か……それもかなり高位と見た。本来ならば展延にて解除すれば良いのだが……この状態で展延を使うのは難しいか?)
「今だッ!皆の衆、今こそ宿儺に反撃するのだあッ!!!」
喉が張り裂けんばかりの叫び声を上げると、森の中から――今まで息を潜めていたであろう6人の天狗たちが、宿儺へ向かって殺到する。
(ククッ……なるほど。
「この俺を相手に、随分と粗末な作戦を立てたものだなぁ!」
瞳から血を流し続ける男に、無数の『解』が命中する。
宿儺はたとえ全身を拘束された状態にあろうと、ノーモーションで『解』を使用する事が出来る。もちろん、威力や精度はその分だけ減衰されるものの――――圧倒的な呪力量と出力を誇る宿儺からしてみれば、それは些細な問題に過ぎない。
一瞬にして、山伏天狗の全身に裂傷が走り、夥しい量の出血が生じる。ダメージによる肉体強度の低下から、行使していた瞳術は出力を落とし――その隙に展延を使った宿儺は、既に拘束から解放されていた。
「惜しかったな。だが、これで貴様は退場だ」
男に近付き、触れて『捌』を発動しようとする。
しかし、絶体絶命・敗北が確定したこの状況において、山伏の男は一人笑っていた。それは諦観から来るものでは無く、忌々しい仇敵に復讐を果たした時に浮かべるような――――底意地が悪く悪意に満ちた笑み。
瞬間、山伏天狗を中心に爆発が生じる。
爆発の威力自体は、先の河童の砲撃よりも更に劣るほど
視界が霞み、酷い耳鳴りに晒された宿儺は――――6人の天狗が凄まじい勢いでこちらに滑空してくる気配を、朧げながら感じていた。
(チッ、自爆とは……やってくれたな。だが、見えもせず聞こえもしないというのであれば……それはそれでやり方はある)
回避を断念した宿儺は、わずかな逡巡を経て意識を迎撃へと切り替える。
4本の腕を使った掌印、一切を省略しない呪詞、そして“次の攻撃において指向性を
「解」
全方位に向けられた、無慈悲かつ無差別な斬撃の雨が――妖怪の山に降り注ぐ。
夥しい数の斬撃が豊かな緑を切り刻み、岩壁を羊皮紙のように裁断する。その威力と効果範囲の「あまりの絶大さ」は、遥か上空から観察していてもよく分かるほどで――――呪術を聞き齧っただけの者が見れば、『領域展開』や『極の番』と見紛うほどであった。
しかし、宿儺も無傷ではない。
指向性を完全に放棄した『解』は、
とはいえ、宿儺の呪力を元にした攻撃である以上、宿儺自身が受けるダメージは軽減され――莫大な呪力によって守られたその肉体は、小さな裂傷を残すのみで終わる。
(自分の技で負傷するというのはみっともないが…………逃げ足の速い天狗を相手に一匹一匹潰して回るのも面倒だしな。向かってくるというのであれば、それを利用しない手は無い)
傷付いた肉体を反転術式にて一瞬で復元し、徐々に回復してきた聴覚で天狗たちが地に倒れ伏す音を感知する。
(1、2、3……5人か。山伏の大妖怪を入れて6……いや、待てよ。俺に向かってきた天狗は6人……合わせて7人の天狗が居たはずだ……!!)
瞬間、耳をつんざく――高速の
「あの斬撃を凌いだだと……!ククッ、面白い!良いだろう、名も知れぬ天狗よ!!この俺に向かって来るがいい!!!」
未だ視覚は回復していない。
それでも自身に残された五感の全てを動員し、相手の移動速度と自身との距離を予測した結果――――回避のしようが無いと判断した宿儺は、敵の攻撃を真正面から受け切る事を選択する。
腰を低くした体勢で両腕を大きく広げ、腹で練った呪力を全身に張り巡らせる。
刹那、時速800km――マッハにして約0.65の――亜音速の物体が衝突し、凛とした少女の声が囁くように耳朶を打つ。
「奥義『無双風神』」
大地を揺らすほどの衝撃、そして生々しい肉と肉がぶつかり合う音が響き渡り、宿儺が凄まじい勢いで吹き飛ばされていく。
奥義『無双風神』。鴉天狗として持って生まれた天性の飛行能力に、
その威力はまさに戦略級とも呼べるほどで――並の妖怪であれば形すら残さずに粉砕され、上位の大妖怪であってもまともに喰らえば致命傷を負いかねない。
外の世界における、最新の近代兵器すらも凌駕した“大妖怪すら恐れる超常の絶技”。
木々を薙ぎ倒し、大地に一本の線を残しながら100m近く吹き飛ばされた宿儺は――大の字になりながら地面に横たわり――心の底から笑みを浮かべていた。
この幻想郷に来て以来、あのフランドール・スカーレットでさえ与える事の出来なかった「初めての
否、たとえ神秘全盛の1000年前であっても、宿儺にこれだけのダメージを与えられる者などほとんど存在しない。
「……ケヒッ、
土埃を手で払いながら上体を起こし、自身の10mほど前で宙に浮かぶ一人の鴉天狗の少女に――ようやく視力の回復してきた――目を向ける。
「貴様、名は何という?」
「射命丸文、伝統の幻想ブン屋です。お久しぶりですね、両面宿儺…………少しは効きましたか?」
幻想郷最速の妖怪vs歴代最強の呪術師。
妖怪の山に入山して以来、300を越える妖怪を片手間に下した宿儺が――――射命丸文を初めての“敵”と見做した。
大まかな強さ設定
中堅妖怪の大まかな強さは、準二級呪術師〜準一級呪術師、一級呪術師下位くらいです。なので、蝗GUY・西宮桃・狗巻棘・パンダ辺りが分類されます。
ちなみに、美鈴が中堅妖怪のトップクラスで、七海建人を相手に良い勝負が出来ます。
逆に大妖怪の強さは、一級呪術師の中位以上に分類されます。とはいえ、呪術師も同じ等級内での振り幅が大きいように、かなりバラつきがあります。また、特級呪術師に匹敵するレベル(単独での国家転覆が可能)はかなり少なく、鬼の四天王や八雲紫クラスくらいです。
白狼天狗部隊は、平均して三輪ちゃんと同じ(かちょい下)程度を寄せ集めた感じです。