仮想の鬼神、幻想の都に墜つ   作:じゅじゅじゅ

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 再開しました。
 年末だし、ホラー映画見たい。




第十四話 スピード! 最強vs最速

 

 

 

『解』

 

 

 宿儺によって放たれた三閃の不可視の斬撃。

 回避はおろか知覚すら困難を極める()()を、射命丸文は隙間を縫うように飛行しながら回避する。

 

(ほぅ……俺の術を何らかの手段によって『感知』しているな。先ほど“無制限の解”を凌ぎ切ったのはまぐれで無かったか)

 

 

 戦闘機のアクロバット飛行さながら、縦横無尽に天空を舞う射命丸文は――額に汗を滲ませつつも、宿儺から放たれる斬撃を華麗に避け続ける。

 射命丸文の能力『風を操る程度の能力』は、風を自由自在に操ることで多様な攻撃手段を手に入れた――――だけでなく、全身に風を纏うことで他の鴉天狗たちを遥かに凌ぐほどの超高速飛行すら可能だった。

 とはいえ、ただの高速飛行で避け切れるほど、宿儺の斬撃は甘くない。

 

 文はこの能力の()()()()でもある「風を読む力」を用いて、宿儺の斬撃が見えずとも事前に察知し――未だ撃墜されることなく、回避を行っていた。

 

 

(相変わらず宿儺の術式は見えない……!それでも、周囲の風を切り裂いて飛んでくる感覚が()()()分かる!……先ほど私の『無双風神』が命中した時、一時的とはいえ宿儺にダメージが通った感覚がありました。このまま少しでも宿儺を削って、後続に繋げるのが今の私の役割!)

 

 

 たった一度の被弾すら許されない緊迫した状況。

 普段のあっけらかんとした仮面を脱ぎ捨て、大妖怪としての片鱗を滲ませた射命丸文が躍動する。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

――――1000年前  妖怪の山

 

 

 

 当時は鬼たちが妖怪の山の支配者として君臨していたものの、そこで働く射命丸文にはプライドが()()()

 新聞記者として不誠実ではありながらも、熱意を持って取材に取り組んできた彼女は、この世のありとあらゆるゴシップを「最速で手に入れて、自分の都合の良いように流してみたい」という淡い夢を持っていた。

 

 いや、文は未だにその夢を見続けている。

 

 自分が投稿した記事を読んだ、ありとあらゆる人妖が右往左往する――――そんな甘美な夢想に、今なお耽ってしまう。

 

 

 大衆の“大切な情報”を握り、クリエイターとしても評価される未来。それは全てのジャーナリストが目指す“夢の果て”であると同時に――――1000年前のあの日、彼女が抱くには分不相応な願望だった。

 

 

 

 

 

 

「あやや、両面宿儺ですか?」

 

 仲の良い鴉天狗の同僚を相手に、食卓を囲みながら雑談を楽しんでいた最中。そんな興味深い話題が、ふと飛び出してくる。

 

 今よりおよそ1000年前ーー俗に言う平安時代。

 後に『妖怪の山』と呼ばれる組織は既に確立していた。とはいえ、その支配体制は僅かに異なり――――数多の鬼たちが支配者として立つことで外部からの侵略を防ぎつつ、内部では有力な妖怪たちによる安寧な統治が行われていた。

 その鬼たちの中でもトップに君臨していたのが、かの有名な“山の四天王”であり――戦闘面で劣るが、種族として優秀な天狗は中間管理職のような立ち位置にあった。

 

 

 そんな天狗の一員として、情報系の業務に手を出していた鴉天狗たちは意外に多く――――かくいう射命丸文もその一人だった。

 

 

「そう。異形の肉体を持った、とんでもなく強い呪術師らしいのよ。それが今や鬼たちのアイドル的な存在らしくってね…………なんでも彼に挑んで退治されるっていうのが一種のステータスなんですって」

 

「……なんですかそれ?あまりに理解し難い価値観なのですが……というより“呪術師”って、最近になって台頭しだした『頭のおかしい癖に、もの凄く強い人間たちの集団』って話じゃないですか。天魔様も迂闊に近づくな、祓われるぞって注意喚起してましたよ?」

 

 

 一見すると、乙女たちの他愛もない雑談タイムにしか見えないだろうが――情報を扱う者同士、こうした雑談から得られるモノは決して馬鹿に出来ない。何より、情報伝達の手段の多くを伝聞に依存していた時代であったからこそ、“噂話”は何にも変え難い価値を持ち得ていた。

 

 

「まぁ、天狗のウチらからしたら理解できない話よね〜。“強い人間と正々堂々戦えるなら、それで死んでも構わない”ってのは……全くどこの戦闘民族かってのよ」

 

「まぁ、それはそれで良いんじゃないですか?最近、外に強い人間が増えてきたおかげで、身内である私たちが彼らに絡まれる――――おっと、失礼。相手をする機会が減ったんですから」

 

 わざとらしい文の物言いに、二人してクスクスと笑い合う。

 普段であれば絶対に逆らえないような上司に対して、人目を盗みながら仲間同士こっそりと愚痴を言い合う姿は、今も昔も、そして妖怪であろうとも変わらない社会の摂理である。

 

 

 そんな同僚との他愛もない雑談に花を咲かせる中、文の胸中には一つの欲望が生まれていた。

 それは「その両面宿儺という男を取材して、自らの記事に掲載したい」という欲望。文の記憶が確かならば、宿儺の取材という『偉業』は現在どこの新聞でも達成出来ておらず――同僚の話から鑑みるに、仮に発行されれば天狗だけでなく、上司である鬼たちですら文の新聞をこぞって買い漁ることになるだろう。

 そうなれば、新聞の売上は天文学的な数字になって――文の評価も鰻登りだ。

 

 即断即決・即行動を信条としている文が、実際に動き始めるまでそう時間は掛からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――数日後、平安京からほど近い、宿場町の某所にて

 

 

 燃え盛る炎の中、怨嗟のこもった絶叫が鳴り響く。

 この惨劇を作り出したのは――都はおろか今や市井の人々にすら存在を知られつつある――『呪いの王』両面宿儺。

 

 それは些細な喧嘩か、それとも町の住人が愚かにも宿儺の機嫌を損ねたのか。何が原因でこの惨状が生まれたか定かではない。

 しかし、ただ一つ確かなことは――――火事場が大きければ大きいほど、それを生業とする“好奇心に駆られた野次馬”が人知れず湧いてくるという事だろう。

 

 

 

 

 

 どっぷりと更け込んだ夜空を背に、まるで星々の間を泳ぐかのようにして突き進む一つの影がある。

 射命丸文は、自身が独自に構築していた情報網から『近隣で宿儺の出現』という特大スクープを聞きつけ、早速現場へと急行していた。

 

(ここしばらく、行方が掴めてませんでしたからねぇ……あやや、この機会に是非とも接触してみたいものです)

 

 射命丸文には自信があった。

 文には長年に渡って人間たちと縁を築き、取材を成功させてきたという実績――――だけではない。妖怪として非常に高い実力を持ちながら、日本全国を取材して回った事で手に入れた“千金にも値する貴重な情報の数々”、そして高度な心理戦すら容易にこなす天狗ならではの高い知性。

 一旦、交渉にさえ持ち込めれば、例え相手が“山の四天王”のような乱暴者であっても簡単に御しきれる自負があった。

 

 現着したとき、スムーズに取材の段取りを取れるよう――脳内で宿儺の情報を反芻しながら、文の中で人物像を作り上げていく。

 

 

(数少ない情報源ではありますが――――己の快・不快のみによって動く、超自己中心的な破壊者というイメージですね。とはいえ、意外にも話が通じるとの情報もありましたし……実際、わずかではありますが人間や妖怪との交流も確認されています)

 

(取り敢えずは下手に出ておくとして、ギブ&テイクの関係を築ければ最高ですね……まぁ万が一失敗しそうになったら、写真だけ撮ってすぐに逃げましょう!“いのちをだいじに”ってヤツです!)

 

 

 たくましい記者精神を胸の奥にしまい込みつつ、凄まじいスピードで空を滑空していく。

 やがて妖怪の生息圏を飛び出し、ポツポツと人間の民家が見え始めた頃――――戦火によって彩られた闇夜を照らすオレンジの光と、身の毛もよだつ程の邪悪な気配を察知する。

 

(これが『両面宿儺』……!!この距離でこれだけ濃密な気配を感じさせる人間が存在したとは……!なるほど。これは鬼たちが夢中になる訳ですねぇ……)

 

 

 宿場町を大きく旋回するように飛びながら――念の為、少し離れた場所で着陸する。

 

(まずは観察……話しかけられそうなタイミングを窺うとしますか……………あやや?あれって、もしや……)

 

 近くの物陰に隠れながら宿儺の様子を観察しようとして――――宿儺やその従者と思われる中性的な人間以外に――――見知った顔を発見した文は、超特大の混乱に巻き込まれる。

 

 

 血に濡れたカラスの羽根が周囲に散乱している。両腕を切断され、腹から下が存在しない()()はまるで“普通の焼き鳥を調理する”時のように、従者によって近くの炎に焚べられていた。

 見覚えのある顔が、今まで見たこともないほどの恐怖に歪んだまま硬直しており――――その人物こそ、数日前に文と宿儺に関して情報交換していた同僚だった。

 

 

(ぇ?……彼女死んで……いや、あの子も1人で取材に……?なんで焼かれて……火葬?私も逃げないと……でも取材……)

 

 

 現代に比べて、死が身近に存在していた時代に生きる妖怪であっても――つい先日話したばかりの妖怪が、ここまで凄惨な殺され方をしていれば流石に動揺する。

 頭の中が真っ白になってしまった文を他所に、宿儺はこんがりと焼けた“女性の足のようなモノ”をどこからか取り出し、豪快にそれに一口かぶり付いた。

 

 

「鴉天狗の肉を食うのは初めてだが……いかんせん焼くと旨みが増して良いな。人肉ほどのクセは無いが、鶏肉に近い――筋肉質なハリがあって食べ応えがある。これは美味だな」

 

「宿儺様のお口に合ったようで、何よりでございます」

 

「言うな裏梅。素材の味が良かったのも事実だが、それを適切に処理したお前の腕あってこそだ。よくやった」

 

「……ッ!勿体なきお言葉にございます……!」

 

 

 宿儺からの賛辞に思わず全身を震わせる裏梅を尻目に、また一口と肉に齧り付いていく。

 

 

「しかし面倒だな。せっかく野次馬を一匹始末したかと思えば、さらに沸いて出るとは…………どれ、()()()()()()()()()

 

 

 宿儺と裏梅の視線が、ぐるりとこちらに向けられる。

 自らの覗き見がバレていた失態を嘆くよりも疾く――――文の肉体は全力で宿儺からの逃走を選んでいた。「宿儺に取材したい」などという意気込みはとっくに消え失せ、無惨に死んだ同僚に対して同情をむけることすらなく――文の心は恐怖と後悔によって支配されていた。

 後ろを振り返ることなく、一心不乱に数時間と飛び続け――――宿儺が追いかけていないことに気付いて、ようやく一息つけた。

 

 

 文はその日向けられた“宿儺の視線”を生涯忘れることは無いだろう。

 敵意や憎しみといった感情が一切込められていない――純粋な食欲と弱者に対する侮蔑が込められた視線。

 

 その日、射命丸文は圧倒的弱者の()()()()()()

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 間髪入れずに迫り来る不可視の斬撃を躱しながら、文は徐々に自らの飛行速度を加速させていく。

 自身の奥義『無双風神』は、トップスピードまで加速した己の肉体を1つの弾丸とすることで敵の喉元に喰らいつく技である。当たれば最上位の大妖怪ですら大ダメージは免れず、それなりの妖怪では視認することはおろか、気付いた頃には肉片になっている。

 

 しかしながら、この大技を繰り出すためには『トップスピードまで到達する』必要があり、加速だけに集中しても30秒・敵の攻撃を回避しながらであれば2分ほど技を繰り出すまでに時間がかかってしまうデメリットがあった。

 とはいえ、「風を読む能力」を持ち「亜音速にて飛行する」射命丸文に対して、空中での撃墜は困難を極めるため――――事実上、文はこのデメリットを踏み倒すことが出来ていた。

 

 

 しかし、そんな文の頭に浮かぶ()()()()()

 

 

(さっきの無双風神は、仲間が五感を奪っていたから完全な状態で宿儺に当てることが出来ました……五感が回復した状態で、()()()()()()()()()この技が果たして通じるでしょうか……?)

 

 眼下に佇む宿儺は、腕を組みこちらに嘲笑を向けながら、時折不可視の斬撃を放ってくる。

 自身の胸中に、じわじわと気味の悪い不安が滲むものの――ついにトップスピードへと到達した射命丸文は、頭を振って湧いて出る疑問に蓋をした。

 

「……どの道、弾幕やら他の攻撃手段じゃあ宿儺にダメージは入りませんしねぇ……玉砕覚悟。このまま突っ込んでいくしかないとは……あやや!世知辛いですね!!」

 

 覚悟を決めた文が一気に空を滑空する。

 周囲の景色がまるでストロボ映像のように引き伸ばされ、時間の感覚が狂い始める。

 

 

――宿儺まで100m――奴が動く気配は無い

 

――宿儺まで70m――奴が腹の前で組んでいた腕を解く

 

――宿儺まで50m――半身になりながら、文に対して構えの姿勢を向ける

 

 

――宿儺まで25m――回避しようという気配が、奴から感じられない

 

 

 

(あの男ッッッ!!!)

 

 宿儺のあからさまな挑発行為に、文の脳内は激情に染め上がる。今までに()()()()()()()()()()()()()()()()()

 とはいえ、この距離まで近づいてしまえばお互いに打てる手は限られてくる。あちらが技を見切ったつもりでいるなら、文はソレを「速度でブチ抜く」だけである。

 

 

「トップスピードッ!力は重さと速さ!!最高速度でブチ抜いてやりますッッ!!!」

 

「奥義『無双風神』!」

 

 

 宿儺との距離がゼロになり、耳をつんざく轟音と全身に響くような衝撃を感じる。

 あまりの衝撃に周囲の木々が粉々に粉砕され、地表が大きくめくれ上がる。視界に広がる土埃を煩わしく思いながらも、文は確かな感触があった。

 

(命中!ですが……先ほどより手応えが小さく感じたのは、直前で宿儺が僅かに受け流したから……?とはいえ、当たったことに変わりはありません。もう一度加速して、再び攻撃を仕掛けるとしましょう)

 

 再度、上昇しようと両翼を羽ばたかせようとした文は――宙空にて()()()()()()()()()()()()()()

 右足と右翼から感じる熱の正体を探る暇すらなく、顔面から地面につんのめった文は、そのまま数十mの間――大地に全身を打ち据えながら転がり落ちていく。

 

 

 

 

 

 土埃の中、まるで一発の弾道ミサイルが滑ったかのように抉れた地表を、射命丸文の()()()()()を抱えた宿儺が歩いていく。

 内出血によって青黒く変色した自らの皮膚を反転術式によって治し、手に持った肉体の一部からは新鮮な血液がしたたり落ちている。

 

「貴様の術……速度こそは()()()()だが、いかんせん技としての完成度が低すぎる。加速に時間が掛かるとはいえ、2分も見ていれば目が慣れる。その上、最終的には一直線で突っ込んでくるとなれば、そこに『解』を仕掛けるだけでも勝てただろう……」

 

 全身から流血し、浅い呼吸を繰り返している文の前まで辿り着き――――宿儺は手に持っていた足と翼を文の傍へと投げ捨てた。

 

「だが、何よりも致命的だったのは『術が命中した瞬間、お前自身が大きく減速する』点だ。その瞬間を狙って反撃すれば、お前自身はどうとでもなる……()()()()()()

 

 教師が出来の良い生徒に対して講評するように、丁寧な物言いで自身の奥義の欠陥を語ってくる宿儺の姿に、流血によって意識が朦朧としていた文は思わず乾いた笑みを浮かべてしまう。

 

 

「ははっ……なんですかそれ。はぁ…………化け物め」

 

「ククッ、妖怪(貴様)がそれを口にするか?……とはいえ、お前は中々に見事だった。幻想郷(ココ)に来てから、まともにダメージを負ったのは()()が初めてだ。ゆえに貴様は『本物の呪術』にて沈めてやろう」

 

 

 宿儺は腹の前でゆっくりと掌印を結ぶ。閻魔天印と呼ばれるソレが完成すると同時に、宿儺の呪力が活性化していき周囲に悍ましい気が満ちていく。

 もはや指一本すら動かせない文は、迫り来る死の予感に自らの鳥肌が逆立っていくのを感じながら――意外にもその内心は穏やかだった。

 

 

(あ〜あ。随分と私らしくない終わり方ですねぇ……やっぱり慣れないことに手を出すんじゃありませんでした…………そういえば、次に発行予定の『文々。新聞』はどこまで完成していたでしょうか?先週は、はたての『花果子念報』にしてやられましたからね……)

 

 ゆっくりと瞼を閉じれば、今まで過ごしてきた妖怪の山での日々が思い起こされる。

 

(これが走馬灯ってやつですか……まぁ、悪くない人生でしたね)

 

「鴉天狗の女よ、中々に魅せてくれたな……『領域展……』」

 

 

 

「それくらいで勘弁していただけないでしょうか?」

 

 

 声の聞こえてきた方向を見上げると、4人の女性――――と1人の鴉天狗が涙目を浮かべながら簀巻きにされているのが見えた。

 

 夜空を映したような深みのある青い長髪を優雅に背中まで流した声の主は、簀巻きの鴉天狗を脇に抱えながら、力強さが垣間見える切れ長の瞳を申し訳なさそうに歪めている。

 現代的な暗紺のドレスと濃い紫の高下駄を身にまとった彼女の腰からは、大きな黒い翼が広がっており――星の弾幕を操るように羽ばたき、全身から強大な妖力を漲らせた――その姿は天空の支配者そのものと言えた。

 

 

「失礼、私の名前は飯綱丸(いいずなまる)(めぐむ)。この妖怪の山を管理している大天狗の1人で――――今は大天狗の代表および天魔様の名代として、ここに立っております」

 

 

 待ちに待った大天狗の登場。

 しかしながら、宿儺は歓喜するどころか――――覗き見をされ苛立っていた頃が児戯に見えるほど、怒髪天をつく勢いで拳を握りしめ、額に青筋を浮かべていた。

 そのあまりの宿儺の形相に、真っ赤なドレスを着た大人びた女性とカエルをモチーフにしたアクセサリーを身に付けた幼女――幻想郷縁起の情報が正しいのであれば、彼女たちが八坂神奈子と洩矢諏訪子なのだろう――がぎょっとした表情を浮かべている。

 

 

 自らの戦いに水を刺されたことで腹を立てた訳ではない。

 宿儺の視線の先は、飯綱丸でも神奈子でも諏訪子でも――恐らく今回の下手人と思しき簀巻きにされた鴉天狗――にも向けられていない。残る最後の1人、胡散臭い笑みを顔に貼り付けながら、真っ赤な日傘を片手に優雅に佇む少女――――宿儺の怨敵にして、幻想郷に送り込んだ張本人である『八雲紫』を睨め付けていた。

 

 

「全く……ここに来てまだ10日よ?もう少し大人しく出来ないのかしら…………あぁ、大丈夫。貴方の言い分もこの一連の流れも()()()()()()()()()わ……そ・れ・と・も・私に会いたくてワザと派手に暴れ回ってたりして?♡」

 

「八雲……紫ッ……!」

 

 

 

 宿儺の完全受肉より10日が経過した今日――八雲紫と宿儺が再び邂逅した。

 

 

 

 

 

 






 射命丸文は、一級術師の超上澄みレベルの大妖怪。
 それなりの呪具を装備して、攻撃力不足を補った慢心しないドブカス(非呪霊)くらいの強さ。つまり超クソ強い。空飛べるしね。ただ、近接では投射呪法の方が有利。

 強さでは圧倒的にフランなどに劣りますが、一芸に秀でているので遥かに厄介。ステータスをスピードに極振りしたピーキータイプ。



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