仮想の鬼神、幻想の都に墜つ 作:じゅじゅじゅ
呪術、アニメのクオリティ高くてビビる。
めんどくさい政治のシーン終わらせて、はやく戦闘書きたい……
「一体、どういうことですか!?いくら宿儺への対抗策とはいえ……旧地獄の鬼を巻き込むなんて、あなた何を考えてるんですか!!」
興奮し頬を紅潮させた射命丸文が、上司である飯綱丸の机を勢いよく叩く。バンという乾いた音が執務室に響き、やがて痛いほどの静寂が辺りを支配する。
慇懃無礼を絵に描いたような性格で、なおかつ天狗社会の序列に染まり切った文が――大天狗様に対し声を荒げ、机を叩くなど――妖怪の山に棲む者が聞けば、誰もが耳を疑うだろう。
しかしながら、彼女が“そうするだけの問題”が飯綱丸の発言には存在した。
「……いくら宿儺が脅威だからといって、我々のコントロール下にない“過剰な戦力”を新たに地上に呼び込むなど…………状況を悪化させるだけです!!」
「過剰戦力ですか…………文、あなたは宿儺が八雲紫に封印されたという事実に囚われ――彼を
「…………え?」
「いえ、それは別に構いません……そう思えるだけ
文を嗜めた飯綱丸は、卓上に置かれた古風な紋様の描かれた湯呑みへと手を伸ばす。
視界の端で柔らかな湯気がくゆるのを眺めながら、玉露特有のほんのりした「覆い香」を堪能していると――――時間が経ったことで我に返った文が、申し訳なさそうに身を縮こませていた。
「頭は冷えましたか?」
「……はい」
普段あまり見ることのない文の意外な一面に――ちょっとした可愛げを感じて目を細めた飯綱丸は、静かに湯呑みを口に近づけた。
豊かな渋みとコクを味わいながら、渇いてしまった喉に潤いを与える。ほぅと熱を帯びたため息を吐き出しながら、ゆっくりと文の方へ向き直った。
「とはいえ……あなたの懸念も分かります。私が言いたいことはただ一つ…………もし仮に『鬼たちの動向を、我々が完全にコントロール出来るとしたら?』……あなたならどうしますか?」
「なッッ……!!」
驚愕に目を見開く文に――飯綱丸は天狗らしく、嫌らしい薄ら笑いを浮かべた。
先ほどとは打って変わり、話の続きを真剣に聞こうとする様子の文に――我が意を得た飯綱丸は淡々と話し始める。
「使えるモノは全て使う……最後に笑うのは
「それはそうですが…………“鬼を利用する”とは一体?上層部は何をするおつもりなのですか?」
「追って説明しましょう……まず初めに、鬼にとって“宿儺”とはどういった存在だと思いますか?」
飯綱丸の質問に、文は過去の――1000年前の記憶を掘り起こす。
「アイドルのような存在だったと思います……崇拝、熱狂、憧憬…………いずれにせよ宿儺に対して深く執着し、彼によって屠られることを一種の誇りのように語っていました」
「そう……まさに
飯綱丸の返答に、文は口には出さずとも「なるほどな」と思う節がある。
平安時代において、鬼たちの間の宿儺人気には凄まじい勢いがあったが……
あの時代の人間は、妖怪に対しひどく
つまり、一言で言ってしまえば『宿儺以外でも戦う相手に困らない』時代だったのだ。
だが、現代になりまともに戦える人間が激減し、あまつさえ
「話しは戻りますが……はたてに
「なるほど……!間接的に情報を流し、鬼たちを扇動するんですか……!」
「その通りです。どの道、通常の手段で地底に情報を広めるのは難しいので…………地上を去った鬼が再び居座るとも思えませんし、彼らの注目は宿儺にのみ集中するでしょう」
「そうなれば、鬼たちの唯一の目的は“宿儺と戦うこと”……我々に興味を示さない第三勢力に、宿儺を狙わせて介入させる……という事ですか?」
肯定の意を示すような――優しい笑みを浮かべた飯綱丸の姿に――文は味方ながら、身体の奥に氷を詰め込まれたような恐怖を感じる。
格上の存在を1つの『駒』として扱い、直接手を下さずとも盤上を自らの有利に動かすその手腕。これぞまさに、天狗たちの中でもごく一部の者にのみ与えられる――大天狗の座に就くだけの理由だろう。
「はたてが情報を広めるスピードにもよりますが…………恐らくは2ヶ月もしない内に、痺れを切らして宿儺に襲撃をかけると睨んでいます」
「……鬼と宿儺が衝突して互いに消耗すれば…………私たちは
「えぇ、実に天狗らしいやり方でしょう?……ちなみに、この方針には守矢神社も消極的ながら賛同してくれました」
そこまで根回しが出来ているのであれば、もはや文としても反論する気は一切ない。
上層部の判断が突飛でハイリスクなものではなく――――現時点で成功確率の高い、最もリターンの大きい戦略だと理解出来たからだ。
「この計画が上手くいけば、あなたの“専属記者”任務も2ヶ月で終わるでしょうし……まぁ気楽にやってください」
「はい!分かりました!でしたら、椛にも声を掛けて……明日にでも動き出そうと思います」
「ふふ……期待していますよ?射命丸文」
その後、任務の内容について詳細な打ち合わせを行い、話がひと段落ついたと思った文は――お礼の言葉を口にして、軽く頭を下げながら執務室の扉へと足を運ぶ。
ところが――――執務室のドアまであと一歩というところで、口元に薄い笑みを浮かべた飯綱丸に呼び止められる。
「あぁ、そうそう。言い忘れていましたが…………もし今回の一件で、文が“非常に良い働き”を見せてくれるのでしたら……次の昇格審査で私が“口利きする”というのも……やぶさかではありませんよ?」
「……ご期待に沿えるよう、全力を尽くして参ります」
再度ドアノブに手をかけるが――――今度は呼び止められることもなく文は執務室を後にした。天魔の居城の一角であるがゆえ、いつも人通りの少ない廊下を、カツンカツンと靴音を鳴らしながら歩く。
これから自分に待ち受けるであろう
◇◇◇◇◇◇◇
「…………ということで、以上が宿儺様にお伝えしたかった話でございます」
本来の目的を隠しつつ、あくまで1人の純粋な記者として――――文は事前に考えてきた
紅魔館のとある一室。黒檀のベッドに背を預けた宿儺が、丸太のように張った腕で顎を撫で、文の話を反芻して思考に耽っている。
完全にリラックスした状態であるにも関わらず、全身から不思議な威圧感を放つ姿は、さすが『最強の人間』と呼ばれるだけのことはある。
10秒にも満たない静寂が、まるで数時間のように感じられた。
やがて思考を終えた宿儺が、ゆっくりと顔を上げ――内心で冷や汗をかいている――文に向かって淡々と話し始める。
「例の覗き魔……姫海棠はたての処罰は了承した。それで俺への取材の件だが…………条件次第では受けても構わん」
今のところ、こちらの狙いに気付く様子のない宿儺に――――文は静かに胸を撫で下ろし、心の中でガッツポーズを浮かべる。
「あやや、条件ですか……私たちに可能なことであれば、最大限努力させていただきますよ?」
「大したことを要求する気はない…………俺が貴様の取材に応じる対価として、相応の“金銭”と貴様の持つ“幻想郷の情報”を出してもらおう。俺も色々と、この世界の情報を集めたいと思っていたのでな」
もう少し難題を突きつけられると思いきや――かなり常識的な範疇の要求に、文はある意味肩透かしを食らったような気分になる。
ここまで全ての流れが上手くいっている事に感謝しつつ、文は満面の笑みを貼り付けながら明るい声音で返答した。
「えぇ!それはもちろん!取材に協力していただいたお礼は、しっかりさせていただきますとも!むしろ、
「…………いや、それは別に構わん。
思いの外、冷静な宿儺の返答に少し拍子抜けしてしまうが――彼の言い分には文も納得がいく。
(なるほど……意外と慎重ですね。少なくとも金銭で動くようなタイプではないと……平等な条件で取引を持ちかけたのは、こちらに借りを作らせない為でしたか)
適当な相槌を打ちながら、脳内にある彼の人物像に修正を加えていく。もちろん、文としても彼が謙虚でいてくれる分には困ることもないので――そのまま交渉の詰めへと取り掛かる。
「なるほど。宿儺様のお考えはよく分かりました。でしたら、そのような条件で今後ともよろしくお願いします!」
「あぁ、それで問題ない」
その後、再び宿儺に感謝の言葉を述べた文は、お互いの間で細かな取り決めを行い、無事に交渉をまとめる。
ふと、椛の様子が気になり隣に視線を逸らす。この部屋に入ってきた時から、ずっと神経を尖らせ無言を貫いていた椛も――フワフワとした表情で分かりやすいほどに胸を撫で下ろしていた。
とはいえ、文も人のことは言えないだろう。
この後、飯綱丸へ『色の良い報告』が出来ることが確定し――――自分でも自覚出来るほどに浮き足立っているのが分かっていた。
「それでは本日はこのあたりで……」
コンコン。
部屋のドアが外からノックされる。帰り支度をしていた椛と顔を見合わせると、外から小さく震えた美鈴の声が聞こえてくる。
「ご、ごめんない……宿儺様にどうしても会いたいという方がいらしてまして…………」
美鈴の予想外の発言に、宿儺と咲夜も困惑した表情を浮かべている。
あの快活で明るい美鈴の声に、全く元気が宿ってないのもそうだが――――受肉してからそれなりの時間が経ったとはいえ、宿儺のことを訪ねに来る人物は非常に少ない。何なら、今日の文と椛が
逡巡した宿儺が入室の許可を出すより早く――ガチャリと部屋のドアが開かれた。
瞬間、悍ましいほどの力の奔流が室内に流れ込んでくる。
椛は喉から掠れた音を出しながら縮み上がり、あの咲夜でさえ驚きに目を丸くしている。
圧倒的な
研ぎ澄まされた闘志と敵意を感じさせるその雰囲気に、文は気圧されるよりも先に
(まさか……!鬼の襲撃!?こんなにも早く……?!ま、まずいです!このままでは私たちも巻き込まれ……)
しかしながら、そんな文の疑問は――ぬるりと宿儺の私室に侵入してきた――1人の少女の姿を見ることで霧散した。
平均的な女性をはるかに上回る背丈、おどろおどろしい妖気を垂れ流し、瞳孔の開いた真っ赤な眼球が怪しく光っている。
太陽の畑に住む『フラワーマスター』、幻想郷における“
「(鬼じゃない?!)風見幽香……な、なぜ彼女がここに……」
文が乾いた声を漏らしていると、宿儺の方からくつくつと笑い声が聞こえてくる。
声の方向を振り向くと、満面の笑みを浮かべた宿儺がゆっくりとベットの上から立ち上がり、だらけていた身体をほぐすように動かしている。
「ククッ……久しぶりだな。貴様も
「アラアラ?私が幻想郷に居るのなんて、調べたらすぐに分かることでしょう?……会いに来てくれれば歓迎したのよ?」
「興が乗れば、いずれ会いに行くつもりではあったが……貴様の方から来るとは都合がいい」
剣呑な空気が漂う最中、気軽に雑談を交わす2人の姿に――文は本気で困惑する。
隣にいる椛の手を引いて、今すぐここから逃げるべきか。それとも宿儺の動向を監視する者として、一部始終をしっかりと見届けるべきか。
楽しげに話す2人を見ていると、判断に迷ってしまう。
「積もる話もあるけれど……せっかくこうして2人が再会したんですもの」
「あぁ、これ以上は
次の瞬間、幽香の姿がかき消え――室内を爆発するかのような衝撃が襲う。
あまりの衝撃に椛はスカートの中身を晒しながら吹き飛び、文も後頭部を家具にぶつける。
「ぐえっ」
紅魔館の一角が爆発し、崩落した瓦礫の雨を浴びながら――――宿儺と組み合った幽香が咆哮を上げた。
「ハヒッ……アハハハハハッ!!やっぱ
「……ケヒッ、俺も“新しい力”を手に入れたのでな……慣らし運転にはちょうどいい」
ようやく書きたい事が書けそう。
登場人物の目的まとめ
・宿儺陣営→自由を求める
・妖怪の山+守矢神社→鬼と宿儺を潰し合わせる。現状維持。
・八雲紫 →宿儺を使って何かを企む
・旧地獄の鬼→最近、地上の天狗がボロボロになりながら喧嘩売ってくるんだけど……え?怖……
・風見幽香→古い友人(本当)の復活を知って戦いに来たヤバい女