仮想の鬼神、幻想の都に墜つ 作:じゅじゅじゅ
“マコラ”って英語圏だと“マホラガ”って言うんすよね。
なので、マコちゃんとかマコーラ呼びが海外に通用しない説。マホちゃん、マホーラガ、マホラーガの時代なんすかね。
パラパラと瓦礫の雨が降り注ぐ中、宿儺と幽香はまるで散歩でもするかのような気軽さで紅魔館の中庭を歩いていた。
自分たちが生み出した破壊の痕跡など、まるで意に介した様子もなく――他を顧みない圧倒的な自己を持ち合わせた2人の狂人が、灰色のカーテンをかき分けながら進んでいく。
そこで…………ふと何かに気付いたような幽香が、申し訳なさそうに眉根を寄せた。
「そういえば……ごめんなさい。私ったらつい夢中になって、あなたの部屋を壊しちゃったワ」
「気にするな、どうせパチュリーが直す…………とはいえ、あまり壊し過ぎるのもなんだ。場所を移すぞ」
宿儺の拳から繰り出されたストレートのパンチを、幽香が腕をクロスさせて受け止める。
大妖怪が本気の妖力で固めても――腹に喰らえば嘔吐必至の宿儺パンチに、幽香は外壁を粉砕しながら水平に吹き飛んでいく。
そのまま紅魔館の敷地を越え、草原の上に着地した幽香は――――久々に感じる
「良かった……復活明けでも腕は鈍ってないのね。1000年前と変わらず…………いや?前より少し
「ほぅ。よく気付いたな?あくまで誤差の程度だが……神力を加えて強化した」
宿儺の言葉に、目を凝らして立ち昇る呪力を眺めた幽香は――――確かに“混ざり物”の気配を見つける。
「本当……驚いたわ。神様にでもなる気なの?」
「たわけ。目が覚めたら手に入れていただけの力だ……とはいえ、
「あら、私はただのモルモット?1000年も寝ていただけのあなたとは違って、私はずっと
一瞬にして間合いを詰めた幽香が、大気を断ち切るような剛力で拳と日傘の連打を叩き込む。
すかさず四つの腕に呪力を纏わせた宿儺が、身を捩りながら幽香の攻撃を紙一重で凌いでいく。誰もが目を見張るようなハイレベルな近接格闘の応酬、その均衡を先に打ち破ったのは――宿儺だった。
「ぐっ……」
宿儺のカウンターパンチを顔にもらった幽香が、額から血を流しつつ後ろに飛び退く。
純粋な肉体能力では、妖怪である幽香に軍配が上がるだろうが――圧倒的な呪力出力を誇り、手数において優れる宿儺に――
(呪力出力はまだしも……異形の肉体が厄介ね。ただの連撃じゃア、抜ける気がしない)
戦いの天秤が宿儺に傾いた現状に、傷を治した幽香が酷薄な笑みを浮かべる。
「……まァ、私じゃなければね……『
宿儺の足元に、青白い花弁の――スイレンに似た一輪の花が咲く。
たった一呼吸。その成分を体内に取り込んだだけで、48時間の痙攣を引き起こしたのち、神経細胞の壊死と多臓器不全によって死に至る。
ただし、これはあくまで人間が基準であり、妖怪などの肉体に依存しない存在には効き目が薄かった。
しかし、宿儺には“人としての”肉体が存在する。
次の瞬間、花弁が割れ――――中から紫色の胞子のようなものが空気中に散布された。近くに居た宿儺が何か異変を感じるより早く、彼の肉体がひきつけを起こす。
「……毒花か」
小さく呟き、その場で硬直する宿儺。
そして『歴戦の大妖怪』風見幽香は、決してその隙を逃さない。
風見幽香が手にしている
妖力自体が見えない質量を持ち始めたかのように、周囲の景色を歪めながら――――大地から水分が失われるほどの熱量を放ち、網膜を焦がすような極光の塊が生成される。
通常、特異な妖力特性でも持たぬ限り、妖力そのものが熱を帯びることなど
これこそが『幻想郷で恐れられる風見幽香の代名詞』であり、『弱者の為の奥義』。
風見幽香は実のところ、
一般的な花の妖怪として産まれ落ち、あくまで「花を操る程度の能力」しか与えられなかった彼女には、本来(肉弾戦を除いて)高出力の攻撃手段が存在しない。
それゆえ、過去には同じ強者との戦闘において決め手に欠け、格下相手にも相性次第では戦闘を長引かせてしまうことが多かった。
だからこそ、彼女は“コレ”を開発した。
自身の妖力を一点に集中させ、それを極限まで圧縮した上で放出する。あくまで
現在は(魔道具の補助ありきではあるが)とある人間の魔法使いにも継承された、その技の名前は――――
「行くわよ…………『マスタースパーク』」
空間を削り取るような熱量の眩い光線が、宿儺に向かって発射される。
触れたもの全てを蒸発させる極度の熱線が、呪いの王の脳天を貫こうとして――――毒花による硬直から抜け出し、即座に上体を逸らした宿儺は――――頬を焦がすだけに終わった。
「ッ!!あの状態から避けるなんて…………ハヒヒッ、さすがだワ」
不適な笑みを浮かべた宿儺が、バックステップで距離を取りつつ、頬に出来た小さな火傷跡を撫でる。
そんな何気ない、彼の一連の動作には一切淀みがなく――――既に“幽香渾身の猛毒”が分解されていることを示していた。
(即効性に優れ、毒性の強い『
受肉体であっても、宿儺を毒で仕留めることはおろか拘束すら難しいという事実を――幽香は頭の片隅にメモしておく。
自身の手札を一枚、何らかの手段を用いて無効化されたという現状は――――常人であれば眉を顰めたくなるようなシチュエーションだろうが――――風見幽香は一転して狂喜の笑みを浮かべている。
自らの
「あァ…………楽しくなってきたわ……!」
マスタースパークが掠ったことによる頬の火傷跡をなぞった宿儺は、1000年ぶりに戦う幽香の『十八番』が、以前より洗練されていたことに笑みを浮かべる。
(良い……伊達に“生きてきた”というだけのことはあるな。だが、
幽香からある程度距離を取った宿儺は、この戦いにおいて“初めて”自らの神力にしっかりと意識を向ける。
黄泉がえりと信仰の獲得により、宿儺はこの幻想郷において『神力』という新たな力を手に入れたが――――結論から言ってしまえば、宿儺は神力を100%本物の神々のように扱うことは(今後いかなる努力をしようとも)出来ない。
なぜならそれは「宿儺の神力が少量であるから」だとか「神力に対して未熟だから」などの理由でなく、
人間と妖怪と神々etc……我々が思っている以上に種族の差は大きい。
仮にハーフとして2つの力を同時に持って産まれたとしても、才能はどちらか一方にしか与えられないし、後天的に人から妖怪・神に変異した場合においては、元の力を全て失ってしまうことがほとんどだ。
思念と信仰によって構成される神々と、魂と肉体によって構成される人間とでは、個としての存在が
そして、これは逆に対しても同じことが言える。
仮に神様が後天的に人間の力(呪力)を手に入れたとしても、肉体に刻まれた術式はおろか肉体そのものを持たない神では、初歩的な呪術を扱うことさえ出来ないだろう。
そんな絶望的な『神力の活用』という課題において、宿儺は一筋の希望を見出していた。
「さて……
『神力』を神同様に扱うのではなく、あくまで
(ククッ、成功だな……ただ神力の消費が激しいか。仮に神力のみの反転術式で肉体全てを修復した場合……一度で神力切れを起こすだろう。とはいえ、それ以上に
拳に神力と呪力を纏わせた宿儺が、再びこちらへ接近してきた幽香に向かって殴打を放つ。
いつも通り呪力強化した打撃に比べて、ほんの
これこそが神力を手に入れた事によるメリットの一つ、『
(通常、呪力による肉体強化には出力制限がある。だが、神力を併用する事で“バフの重ねがけ”が可能になり、更なる肉体強化が行えるようになった…………問題は神力総量・出力がゴミ同然で、効果が薄い点だが……
それは神力による2つ目のメリット、『
肉体を使って練り上げる呪力とは異なり、信仰によって得られる神力は――――ある意味「肉体に外付けされたエネルギー」であるため、よほど特殊な事例を除いて出力が低下する事はまずない。
そして、順転では心許ない神力出力も、
(あくまで呪術に最適化されていない神力では、高度な結界術や生得術式の運用は出来ないが…………反転術式の使用が可能だと分かった以上、脳に深刻なダメージを負ったり、呪力出力が低下した状況において「緊急時の回復手段」が手に入ったという事になる)
幽香と超高速での近接戦闘をこなしながら、神力に対する――脳内における宿儺の探求は続いていく。
(俺の神力効率であれば、反転を使わない限り
「
青々とした草原に、宿儺と幽香の拳が交差する。呪力と妖力のぶつかり合いによって、衝撃波のようなものが発生し大気を揺らす。
相変わらず肉弾戦において優位に立つ宿儺だったが、だからといって幽香を侮ることはない。彼女はこの戦いにおいて一度たりとも
再び距離を取った幽香が、歪な笑みを浮かべながら湿度の混じった視線を宿儺に向ける。
「お互い……まだまだ試してみたい事が多そウね?」
「……そうだな。小手調べはこれくらいでいいだろう」
「そ。じゃあ、行くわ…………
突如として、宿儺の足元を中心に――――不気味な鉛色の輝きを放つ、鋭く尖った奇妙な形の花弁を持つ――――花が辺り一面に咲き乱れた。
古来より大妖怪や高位の神々とは、ただ
戦いにおける“ボルテージ”を一段階上げた花の大妖怪は、手をかざすだけで無数の花を大地に咲かせる。
何も知らぬ者が見れば、その光景は天からの福音のように見えたかもしれないが――――その花の一つ一つに込められた禍々しい妖力と、自然界には決して存在しない“歪な花弁”に添えられたメッセージは、間違いなく『凶兆』であった。
神力についてのルール
・あくまで呪術の延長でしか使えないうえ、高難易度の結界術や生得術式は使えない。
・呪力出力と神力出力は別。重ねがけも可能。
・神力は基本的に出力が落ちない。
・すっくんの場合、神力効率も良いので神力切れはほぼ無い。
神力で新しく出来ること(まだまだ追加予定)
・神力による反転術式が可能。
→分かりやすく言えば、本編の受肉再開による回復みたいのが出来る。割とエグい。
・神力による半永久的な肉体強化。