仮想の鬼神、幻想の都に墜つ   作:じゅじゅじゅ

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 ちなみに東方で好きなキャラは、水橋パルスィと古明地さとり、星熊勇儀です。

 今回、この物語でわりと主軸になる部分の話なので、読んでくれると幸いです




第四話 おぜう・オブ・幻想郷

 

 

「うぅ……お腹痛い……平安時代の殿方ってDV気質なんですね…‥メモメモ。これは咲夜ちゃんポイント-1です」

 

 崩落した家具に埋もれ、全身が痺れて指一本すら動かせなくなった咲夜を無視しつつ、レミリアは宿儺に悪魔の様な微笑みを向ける。

 

 

「ふふ、それにしても中々やるじゃないの。……ウチの咲夜は最上位帯にこそ敵わないけれど、幻想郷でもそれなりに強者の部類に入るのよ?流石は“呪いの王”かしら」

 

「……能力に依存し過ぎなのだ。……基礎となるフィジカルがアレではな……術が破られた後は呆気なかったぞ?」

 

「ある意味、咲夜にはいい薬ね。あの子って、思い込みで行動しちゃう癖して何かと能力頼りだから…………ちゃんと反省するのよ?」

 

 レミリアからにやけ顔で嗜められた咲夜は、唇をつぐみながら不貞腐れ、瞳にうっすらと涙を溜めて抗議の視線を向ける。

 

「お嬢様のために戦ったのに……あーあー、お腹が痛いです!これは中々治らない予感がしますね!!こうなったらお嬢様に、頭なでなでからのほっぺにチューを要求します!ついでに時給10円アップも!じゃないとメイド業務に戻れません!」

 

 

 ギャーギャーと喚くだけの元気がある事を確認したレミリアは、やれやれといった表情で宿儺に対して小さく謝罪する。

 

「話が逸れちゃってごめんなさいね。早速本題に戻るんだけど……あなたの事を知ったのは、私の能力がキッカケなのよ」

 

「ほぅ……」

 

 

「運命を操る程度の能力……まぁ平たく言えば『運命視』ね。私は自身や視界に入った者の未来を、不確実な運命として()()事が出来るの。

…………2ヶ月くらい前だったかしら……唐突に幻想郷中の運命が大きく変わったのよ。私含めそこに居る咲夜も美鈴も、私の妹も………ありとあらゆる住民の運命が、例外なく……ね。そして、その中心にはいつもある1()()()()が居た。

……幸いにも身体的特徴が大きかったからね。パチュリーに調査して貰ったら、すぐに『その男』が誰か分かったわ。

 

……もう言うまでもないと思うけど、その男こそがあなた……両面宿儺なのよ」

 

 

「……なるほどな。俺を知っていた点については理解出来た。……だが、なぜそれが『同盟』に繋がる?貴様の目的は何だ?」

 

「当然の疑問ね。…………ただ、返答には少し困っちゃうかしら……強いて言えば『目的なんて特に無い』のよね。いえ、やって貰いたい事なら一つあるんだけど」 

 

 これ以上の誤解を産まない様、難しげな表情を浮かべながら必死に言葉を捻り出そうとするレミリア。椅子に深く腰掛けた宿儺は、鋭い視線を向けつつも冷静にレミリアの次の言葉を待つ。

 

 

「……私たち妖怪にとって、退屈っていうのは拷問にも匹敵する苦痛なの。肉体以上に精神の健康に左右される生き物だからね…………あなたはこれから幻想郷の『台風の目』になる。せっかくのお祭り騒ぎなんだもの、どうせなら一番の特等席で見たいじゃない?そう、私はただ単に楽しみたいだけ。

…………代わりに我々は、衣・食・住と知ってる限りの幻想郷の情報を提供するわ。あなたなら、それを使って派手にやってくれるでしょ?」

 

 

「……その口ぶり。やはり貴様、俺の目的にも勘付いているな?」

 

「えぇ、断片的にだけれど。八雲紫を倒したいんでしょう?」

 

 

「ふむ。当たらずとも遠からず、といった所だな。

 

…………今の俺は八雲紫との『縛り』で4()()()()()()によって行動を制限されている。

だが、俺にとって“生きる”とはただ“在る”事。食らいたい時に食らい、殺したい時に殺す。誰の指図も受けず、誰かを顧みる事も無い。己の快・不快のみが唯一の生きる指針であり……そうやって生きてきた。

ゆえに、この現状がひどく苦痛でな。なにせ今の俺は、自分の意思で人間1人すら殺せん。

 

…………俺の目的はただ一つ。八雲紫を死の間際まで追い詰め、『()()()()()()()()()()()()()()()』。命を人質にすれば、奴とて縛りの破棄を受け入れざるを得ないだろうからな」

 

 

「…………なるほどね。状況は分かったわ」

 

 レミリアは瞳を閉じながら腕を組み、宿儺の発言を噛み締める。しかし、徐々にその両肩が震え出し――――ついには耐え切れないといった様子で、大声を上げて笑い始める。

 

「…………何が可笑しい」

 

「あっはっはっ!いえ、決して侮辱する意図は無いのよ?……でもね?ふふ……やっぱり、あなたってばイカれてるわね。1000年ぶりに生き返って、真っ先に考える事が“ソレ”って!いいわ!最高に面白いじゃない!!」

 

「……チッ、貴様も大概ではないか」

 

「ふふっ、そう拗ねないでよ。ここは似た者同士、協力し合いましょう?」

 

 幼さの残る顔を邪悪に歪めたレミリアは、笑いすぎて乱れてしまった息を整える為に――そっと紅茶に手を伸ばす。

 

「ふぅ……ねぇ。ところで何で、受肉直後に八雲紫を追い詰めようとしなかったの?あなたなら可能だったんじゃない?」

 

 

()()()()()()()()()()()

 

…………俺があの女に対して迂闊に手を出せないのは、3つ目のルール『幻想郷の維持に致命的な支障をきたしてはならない』、これに抵触する可能性があったからだ。口ぶりからして、奴がこの世界の管理者なのは明らかだろう。

 

ならば、奴の運営能力に影響が出る程のダメージを与えた場合、縛りによって罰を受けるのは俺の方になる。そうなっては本末転倒だろう?」

 

 

「……ふむふむ。理屈は分かったわ。…………ねぇ、一つ疑問があるの。だから、あなたの運命をもっと良く見せて貰えないかしら?」

 

 

 宿儺が了承するや否や、レミリアは宿儺の腕の1本を手に取り、優しい手付きで自分の腕と重ね合わせた。その状態のまま、じっと瞳の中を覗き込む。一見すると、少女漫画のワンシーンの様に淡く感じられるかも知れないが、それにツッコミを入れる人物は――――

 

「お嬢様ってば、ヤラシーですね。……動けない咲夜ちゃんを放置して、殿方との逢瀬ですか?」

 

「ち、違うわよ!今集中してるんだから、変な事言わないで!!」

 

 白い目を向けてくる咲夜に反論し、頬を赤らめながらも再び集中して能力を行使する。5分ほど経過し、満足のいく結果が出たのか手を離して椅子に座り直す。 

 

 

「……やっぱりそうね。道理で納得がいかない訳だわ」

 

「……どうした?」

 

「その前に。まず、私の能力についてだけれど……運命視っていうのは、確実に未来を見通せる便利な力ではないの。単体の的中率で言えば、せいぜい30~40%くらいね。

でもそれは、あくまで()()()()()()()()()場合の的中率。…………一つの事象に対して、複数人の運命視の結果を束ねて統計的に観察する事で、的中率を大幅に上げる事が出来るの。

……たった今、あなたの運命を見て分かった事が2つだけあるわ。1つは、『あなたが幻想郷に悪影響をもたらす事はない』という事。もう1つは、『あなたが八雲紫と真っ向勝負をする』という事。

 

この事象は、あなた以外の数十人の運命視でも共通して見えた。つまり、()()()()()1()0()0()%()()()()未来の出来事よ」

 

 

「ッ!!そうか……」

 

「えぇ!そう、つまりは……」

 

 

 

 

「「ルール3に抵触せずに、八雲紫と戦う手段が存在するのか(わよ)!!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、お互いの情報を共有し終えたレミリアと宿儺は、雑談に花を咲かせながら深夜のティータイムを楽しんでいた。

 

「ふふふ、まさか元人間のあなたが人肉食まで嗜んでいたなんてね。あくまで私は、血の方がメインだけど…………若い娘の首筋に牙を立てる感覚は、いつの時代も甘美なものだわ」

 

「若い娘も中々だが、俺は子供の肉もイケる口でな…………鏖殺したての鮮度の高い肉であれば、尚のこと良い」

 

「鏖殺……懐かしいわね。つい、昔を思い出しちゃうわ」

 

 ティーセットを囲った2人の鬼が、にこやかに鏖殺と人肉食のこだわりについて語り合う。先ほどまでの緊迫していた空気感は薄れ、同好の士として悪魔の様な会話に興じていた。

 

「ふぅ……それで、あなたはこれからどうするつもり?」

 

「しばらくは紅魔館(ここ)を拠点とし、情報収集に専念するつもりだ。……奴の作ったルールの抜け道を探しながら、この世界を見て回る。それを繰り返しつつ、俺の元に情報と機会が集まるのを待つ。それだけだ」

 

「うん、私もそれが良いと思うわ…………食事や拠点以外にも、何か手伝って欲しい事があったら言って頂戴。出来る範囲で協力するから」

 

「ふっ……痒いところに手が届くな。心配せずとも、紫の一件は俺が対処する。あまり多くを求める気は無い…………それで、俺にやって欲しい事があると言っていたな?くだらん事で無ければ聞いてやる」

 

「あぁ、それね。お願いしたい事が1つ……いえ、2つあるのだけど」

 

 宿儺は無言のまま顎をしゃくり、レミリアに続きを話すように促す。

 

 

「まず一つ。屋敷にいる間、出来るだけ気配を抑えて欲しいの。ウチには低級妖怪や妖精の使用人がたくさん居るからね。今のままだと、咲夜以外のメイドが皆失神しちゃって使い物にならないのよ。

もう一つは、私の妹について。私の妹って、少し気が触れてるの。定期的に狂気が溜まっちゃうから、一年のほとんどを地下に幽閉してるんだけど…………あなたにはあの子の狂気(ストレス)発散に付き合って欲しいのよ。あの子の暴走(お遊び)に適当に付き合って、後は適当に殴って気絶させてくれれば最高なんだけど……」

 

「……なんだその程度か。ちなみに、妹とやらは強いのか?」

 

「えぇ……暴走してると私でも手が付けられないわ」

 

 くつくつと機嫌の良さそうな笑い声を上げた宿儺は、ティーカップをソーサーに戻し――――ゆったりとした様子で席を立つ。

 

「そうか。なら、今から相手をしてやろう」

 

「………………え?」

 

「元より食後の運動を期待して、ここに来たのでな。……俺としても都合が良い。で、今の条件で『縛り』を結んで良いのだな?」

 

「…………ふふふ、やっぱりあなたって面白いわね。……えぇ、問題ないわ。今の条件で『縛り』ましょう。…………これからよろしくね?同盟者さん」

 

 

 レミリアの差し出した手を宿儺が握り返す。

 

――――1000年前の屈辱を晴らし、自由の身を求める一体の鬼神と

 

――――自身の悦楽の為に周囲を巻き込むことすら厭わない紅魔

 

 幻想郷最悪のトラブルメーカー達による、悪意に満ちた同盟が人知れず締結された。

 

 

 

 

 「地下室までの案内役を呼んでくるわ」と言い残し、負傷した咲夜を引きずりながら退室したレミリア。1人部屋に取り残された宿儺は、すでに湯気を失って久しい――焦茶色の冷え切った液面を眺めつつ、物思いにふける。 

 

(初日にして、未来の見える女と協力関係を結べたのは僥倖だったな。食に関しては言わずもがな、安定した拠点も手に入れた……初動としては悪くない。…………ククッ、俺が自由の身となる日もそう遠くはないかもしれんな…………)

 

 なんの因果か――1000年前のあの夜と何一つ変わらない居待月が、窓を通って室内へと静かに月明かりを落とす。全身で月明かりを浴びながら、誰に聞かせるでもなく独りごちる。

 

 

 

――――待っていろ八雲紫。俺を受肉させた事を後悔させてやろう

 

 

 

 





 NEW!→宿儺の『悪友』『同盟』枠にレミリアが追加されました!

 次回、フランvs宿儺
 弾幕無しのマジバトルです。

 ちなみに紅魔館組はパチュリーの調査によって、基礎的な呪術の知識を持っています。
 パッチェさん有能。



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