アタシはキヴォトス一のジャズプレイヤーになる。 作:えーすえいち
陽が沈みだし、学生たちの賑やかな声が聞こえてくる。少し遠くの方で爆発音も聞こえてくるが、いつもの事だ。そして今からやることも、いつものこと。
「アオっち今日も練習すんの?アツいねぇ~!んじゃ、解散てコトで!」
「アオっち頑張れ~。」
「ありがとうございます!さよなら~!」
河川敷に着き、肩にかけていたケースを下ろしてサックスを出す。今日も欠かさずに練習を続ける。姉ちゃんからもらったテナーサックスを少しだけ撫でてから、河の方を向き、いつものフレーズを練習する。
あたしは、キヴォトス一のジャズプレイヤーになる。
「ただいまー。」
「おかえりなさーい。今日も練習?」
「うん。今日のご飯何?」
「カレー。」
「やった」
ケースと鞄を自分の部屋に置き、制服からパジャマに着替える。手を洗って、食卓に戻ると美味しそうな匂いを漂わせるカレーが皿に盛られて置かれていた。
「いっただきまーす!」
スプーンを持って手を合わせ、カレーにがっつく。姉ちゃんのカレーはいつも美味しい。姉ちゃんはビールを冷蔵庫から取り出して向かいに座り、テレビをつけた。
「学校はどんな感じ?」
「いつも通りだよ。美食や温泉が問題起こして、風紀委員が鎮圧して。」
「いつになっても一緒か…。」
「姉ちゃん、おかわりもらっていい?」
「どーぞ。」
ビールをチビチビと飲みながら無気力そうに話す。今日もバイトだったのだろう。
「今日もバイトだったん?」
「うん。」
「お疲れさまです」
「ありがと…。おっ、万魔殿の人だ。」
万魔殿のマコトがろくなことを考えて無さそうな笑顔をしながら、インタビューを受けている。
「ヒナちゃん元気かな」
「風紀委員大変そうだもんね。」
姉ちゃんがしみじみとヒナちゃんの心配をする。そういや姉ちゃんはヒナちゃんのピアノ聞いてないんだっけか。
「ゲヘナのさ、バレンタインのパーティーあったじゃん?あれでヒナちゃん、オープニングのピアノ演奏してたよ。すっごい上手だった。」
「え。そうだったんだ。そっかー。…ふふ、きっと似合うだろうね。」
「うん、すっごい綺麗だった。演奏も上手だったんだけど、それだけじゃなかったっていうか。」
カレーを食べ終わったので皿を水につけて、鍋に残ったカレーをタッパ―に移し、粗熱が取れるまで置いておく。
皿洗いを終えてから風呂に入り、歯磨きをする。
「それじゃあ、おやすみなさい。」
「ん、おやすみー。」
自分の部屋に戻って、今日出された宿題を終わらせてからベッドに潜る。今日もいっぱい練習した。事件やテロ、爆発の絶えないゲヘナ学園でサックスを安全に吹けること自体が幸せな気がしなくもないが、アタシはここから、キヴォトス一のジャズプレイヤーになってみせるんだ。