アタシはキヴォトス一のジャズプレイヤーになる。   作:えーすえいち

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景色が見える音

 カヨコちゃんが出した、署名を集めてフェスを開く案を実現させようと試行錯誤した。そして早速壁にぶち当たった。

 

「ゲヘナで集めるとしても…私達ゲヘナではお尋ね者でしょ。」

「…そういえばそうだったわ…。」

 

 そう、便利屋68の皆さんが手伝ってくれることには変わりないのだが、まずゲヘナ学園から署名を集めようとするも便利屋は風紀委員会に目をつけられているということ。そして、この署名をすることによるメリットが何なのかということ。

 

「ゲヘナにしても…どの学園でも目的に賛同してくれなければ署名をすることは無い。だからと言って署名をした人にお礼を用意するのは、署名を買収してるのと同じ。お金で買った署名を連邦生徒会が許すはずがない…。」

「といってもゲヘナ生が一番こんな署名なんか書かなそうな感じはするよね~。」

「それは…そうですね…。」

 

 ゲヘナ学園の校風は「自由と混沌」。そしてその校風の通り犯罪が至るところで行われている…。かくいうこの便利屋68も風紀委員会に目をつけられているし。

 年度末あたりだったか、前にヒナちゃんの手伝いをしに行ったときに年間事故・事件数を記した書類で学園内のみで90件と記されており、それを見たヒナちゃんが「あぁ、今年はまだ少ない方だったのね…。」とこぼしていた。結構普通にヤバい。そしてそんなゲヘナ生たちに署名運動を行ったところで、風紀委員のみんなが書いてくれたとしても全然足らない。

それにトリニティとか行ったら多分ボコボコに言われそうな感じするし…。あそこの人達、別にアタシが何もしてなくてもゲヘナ生ってだけで影口叩くからなぁ…。

 

「…署名をしてくれたらアタシが1曲吹くみたいな…。」

「それもほぼお礼みたいなものだから、ダメだと思う。」

「署名する前だったら良いんですかね。」

「そういう問題なのかしら…。」

「……いや、良いかも。1個思いついた。」

 

 

「ということでヒナちゃん、こういうことを学園内でやりたいと思うんだけど…。」

「ふぅん……。」

 

 場所と日は変わって、風紀委員会本部。昨日便利屋の皆と一緒にまとめた提出用の資料をヒナちゃんに渡す。風紀委員長がその資料を読みながら、顎に手を当てていた。

 

「また連絡もよこさずに来たと思ったら、はぁ、フェス開催のための署名活動とは…。ヒナ委員長の手を煩わせないでください。こんなもの、許可できるわけ無いでしょう。」

「それはアコ先輩が決めることじゃないですよねー。」

「例えそうであったとしても、便利屋68が絡んでいるものなんてろくでもないものに決まっているでしょう!」

「確かに、便利屋が絡んでるというのは確かに私達にとってもマイナス要素ではありますが…。」

「でも資料読んだ感じ、別に悪いことをしようとしてるわけじゃないし…。」

 

 イオリ先輩とチナツ先輩も資料に一通り目を通し、OKを出してくれる。 

 資料をじっと見つめていたヒナちゃんがこちらをチラリと見る。少しクスッと微笑んでから、右手側に置いてあるハンコを、資料に押した。

 

「えぇ、良いわよ。学園内での署名活動を許可するわ。ただし、ちゃんと規則に従ってするように。」

委員長!?良いんですかこんなもの通して!!!」

「チナツが言った通り、便利屋が関わっているのは少し危ないかもしれない。私としても仕事は増やしたくないし、便利屋が付き添いで来ていたりしたら却下していたかもね。

でもこれは別にどの規則違反を犯しているわけでもない。ゲヘナ学生全員に与えられている正当な権利を使っているだけ。それに、アオホシが主導で行うんでしょう?なら、心配はそこまでしなくても良いはず。分かったのなら、早く仕事に戻ってアコ。」

「…良いの?ヒナちゃん。」

「アオホシがいるなら大丈夫だって思ったから通しただけ。ただこれで私達が出なければいけないような問題を起こした際にはすぐにこれは撤回するから、そのつもりでね。」

「…ありがとう、風紀委員長!あと、署名もお願いしても良いかな…?」

 

 もう一つ持っていたクリアファイルから署名用の紙を抜き出し、ヒナちゃんの前に出す。ため息をつきながらさらさらとサインを書いてくれた。やっぱりヒナちゃん大好きだ…。チナツ先輩やイオリ先輩も名前を書いてくれて、アコ先輩は途中まで渋っていたがイオリ先輩たちに煽られて無理やり紙を奪い、殴り書きで名前を書いてくれた。嫌味ったらしいけど、なんだかんだ優しい先輩だなと少し感じる。

 

 

 便利屋の皆にはモモトークで許可がもらえたと報告をした。昨日解散する前にお金の話をすると、「手付金は貰わないようにしてるの。だって、貰ってしまったらその人の言う通りにしなきゃいけなくなるでしょう?」とかなりのキメ顔で返され、いつ払えばと改めて聞くと

「そうね…貴方が文字通り、キヴォトス一のジャズプレイヤーになったとき、私達の社用車を買ってちょうだい。それも、とびきり高いものをね?」

とめちゃめちゃかっこよく返された。そしてこの人は、アタシの夢を笑わずに絶対になれると暗に言ってくれた。なんだか胸がぎゅっとなった。

 

 便利屋の皆にモモトークを送ったのち、今日の練習をまだしていないことに気づいたので帰り際にサックスを取り出し、いつもの練習を始めていた。

そろそろ春も近づいてきているのだろう。ふきつける風は少し冷たいが、日なたに出ていると体がポカポカと温められる。いつもより少し多めの汗を書きながら、いつも通り吹いていると、ちょんちょんと背中をつつかれた。普段は遠巻きに見られたりすることが多いし、もはやゲヘナ生はいつもの光景だと気に留めなくなってきているため、誰かが話しかけてくるのは少し珍しい。吹くのを中断して後ろを振り返ると、そこには誰もいない……と思ったら下に居た。思っているより小さく、ちょっとしたホラーかと思って驚いてしまった。

 

「ねぇっ!それ、凄いね!!」

 

 黄金色の目を輝かせながら、サックスを見ている。ゲヘナ学園の生徒だろうか、いやでも一応制服羽織ってる…。じろじろと観察していると、その少女の羽織っている左腕の袖に、万魔殿の腕章がついていた。この子、万魔殿の…と記憶を探り、数週間前にテレビでマコト先輩がインタビューを受けている最中、後ろからマコト先輩に突撃しにいっていた子と風貌が一致していた。確か名前は…

 

「あっ、急にごめんなさい!イブキはね、イブキっていうの!おねーさんの名前は?」

「宮本アオホシです。万魔殿の方ですよね。」

 

 そうだ、イブキだ。上の名前が言われなかったのでフルネームが分からなかったが確か…丹花イブキだっけ…。

 

「そう!マコト先輩にちゃんと言ってから探検しに来てるんだ!そしたらなんか、ブワーッて音が聴こえて!聴こえる方にいったら、アオホシ先輩がいたの!」

「基本アタシはここで練習してますから……その、イブキ、さん。」

「イブキでいーよ!」

「イブキ、アタシの演奏どう感じました?」

 

 若干失礼かもだけど、子どもから聴いてどういう感想が出るのか、少し気になったので聴いてみる。

 

「んー?んーとね…、うーーん…。」

 

 だいぶうんうん唸りながら何を言おうか迷っている。適切な言葉が見つからないのだろうか。

 

「うーんとね、すごかったよ!なんか、目の前にふわーってお花が咲いたと思ったら、お空にぴゅーって飛んで行ったり、ぐるぐるーって回転しだしたり!とにかくすごかったよ!」

「そ、そういう感想は初めてだな…。それは、アタシがそう見えたっていうこと?」

「んーん。アオホシ先輩がじゃなくて、そのぴかぴかを吹いてるときの音が!」

 

 音が景色で見えてるのだろうか。ただ、とにかく悪いことを言われているわけでは無さそうだったので、少し嬉しかった。この子にもっとアタシの音を聴かせたいと思った。

 

「…もっと聴いていきます?」

「えっ!?いいのー!?」

「誰かが迎えに来たりはしますか?」

「うん!たぶんマコト先輩かイロハ先輩が来てくれると思う!」

「じゃあそれまで吹きましょう。イブキだけに向けて、全力で吹きますから。」

「やったー!」

 

 とにかく、迎えの人が来るまでずっと吹き続けた。

イブキの感想を聴いて思ったのは、凄さはこんな子どもにでも伝わっているという事実だ。自分の演奏を初めて聴いたような反応でありながら、凄いと褒めてくれたことは純粋に嬉しい。自分の音が年齢を問わずに通じていることを知った。

ただ凄いだけじゃ…ダメな気がする。言葉でパッと言い表せない自分がもどかしく、少しだけ音が荒くなる。イブキはそれもしっかりと捉えているようで、少し音が荒くなっただけで先ほどまでの笑顔が少しだけ驚いた表情になった。こんなにも音を感じてくれる子がいるのか…。

 

「ぶはぁっ…ぜぇ…ぜぇ…あー…。」

「すっごーい!!アオホシ先輩ホントにいろんな音が出せるんだね!」

 

 いつの間にか日は沈みかけており、運動場のトラックを走る生徒も帰る準備をしていた。

 

「えぇ、遠くから聴いていても耳がうるさく感じるほどの大きさでしたね。」

「あっイロハ先輩だー!」

「さぁイブキ、もうそろそろ時間です。帰りますよ。」 

 

 イロハ先輩と呼ばれた赤く長い髪をした人がイブキの手を取る。

 

「イブキを見てくださってありがとうございました、アオホシさん。」

「あぁいえこちらこそ、聴いてくださってありがとうございました。」

「じゃあねーアオホシ先輩!また聴かせてね!」

 

 イロハ先輩と手を繋ぎながらこちらに手を振り、帰っていく。やば、アタシもそろそろ帰らなきゃ…。

 

――――――

「あのね!アオホシの演奏ホントにすごかったんだよ!どんどん見えてる景色が変わっていくの!」

 

 私の手を繋ぎながら帰る途中、イブキがずっと興奮している。

 見えてる景色が変わっていく…言い得て妙な表現だと思う。確かに全てサックスから出ている音のはずなのに、音質というか…とにかく何かが違った。

 

「イブキは、あの演奏を聴いてどんな景色が見えたんですか?」

「うーんとね、お花畑とか、雲の上とか…。」

「キキキッ、それは面白い。」

「あ、マコト先輩。結局来たんですね。」

「お前に頼んだはずなのに帰ってくるのがやけに遅いからだ!ちょっと不安になったぞ!」

 

 私達の後ろにいつの間にかマコト先輩が来ていた。

 

「アオホシとやらの演奏を聴いていたと言っていたなイブキ?」

「うん!アオホシすっごいんだよー!」

「そいつとは明日も会うのか?」

「分かんない!」

「キキキッ!まぁ来るだろう!イブキが行くのに来ない方が悪いからな!それよりも、私もそいつが気になる。明日会いに行くぞ。」

「え…本気ですか。」

「当たり前だ!イブキに悪い虫がついたら危ないだろう!」

 

 何だかめんどくさいことになったな…。まぁ、いいか…。被害被るのあの人だし。

 

――――――

 翌日、いつもの場所で練習をしていると昨日と同じようにイブキがやってきた。ただ今日は1人ではなく、イロハ先輩ともう1人背の高い女性を連れて来たらしい。

 

「キキキッ!お前が宮本アオホシだな?」

「あなたは…」

「キキッ、そうだ私こそが万魔殿の羽沼マコト様だ!手厚く歓待するが良い!」

 

 なぜか万魔殿のトップがアタシの演奏を聴きに来たらしい。しかもイブキとイロハ先輩を連れて。

 

「はぁ、何でまた万魔殿のお偉いさんがアタシのところなんかに?」

「それはだな、イブキが教えてくれたからだ。とにかくお前のことを褒めちぎっていたからな、私も気になったということだ。」

 

 イブキがなぜかどや顔をする。こうやって知られていくのは嬉しいのでイブキの頭を撫でてやると、へにゃりと顔をほころばせた。

 

「ここに来た理由は分かりましたけど…何しに?」

「無論、お前の演奏を聴くために決まっている!せいぜいこの私を楽しませる演奏をするのだ!」

「イロハ先輩、この人普段からこうなんですか?」

「はい。イブキのためにも頑張ってください。」

「おい!何をこそこそと話している!」

 

 うーんこれはまためんどくさいな。前々からめんどくさそうな人だとは思ってたけど。それにアタシがここで吹いてるのはただの練習であって誰かに聴かせるもんでもないんだけど…。ただそれを伝えたところでこういうタイプの人は「だから何だ!私が聴きたいの言っているのだから演れ!」みたいなこと言ってきそうだし…。まぁ別に吹くこと自体は良いんだけど、せっかくだし何かいつもじゃやらないこととかやってみたいな。

 

「どうした、吹かんのか?」

「んーと、そうだな。吹いてほしい曲とかはあったりします?」

「何?」

「せっかく聴きに来てくれてるんだし、普段じゃやらないことやろうと思いまして。なのでリクエストでアタシが知ってたら吹きますよ。」

「キキッ、殊勝な心掛けだな。ふむ……イブキ、何かあるか?」

「え!アオホシ吹いてくれるの!?じゃあ…あれ!ペロロのテーマ!」

 

 ペロロ…確かモモフレンズっていうやつのキャラクターだっけか、ニワトリだか何だか分かんない鳥の。何とか知ってる曲が出てきてくれたので良かった。一応ジャズを知り始めた時、他の曲とどう違うのかを知る為色んな曲を聴いてはいる。ただ全部知ってるわけ無いので、これでぜんっぜん知らないクラシックとか出されたら困ってた。

 

「おっけー。ペロロのテーマね…。それじゃ、これ座って良いですよ。」

「おぉ、椅子まで用意しているとはな…キキッどこぞの風紀委員長とは違って、自分の立場を理解できているようだな!」

 

 ムカッ

 なんかいちいち鼻につくっていうかなぁ…。そういやヒナちゃんこの人嫌ってなかったっけ。

 

「では、せいぜい私を満足させてくれよ?」

「楽しみー!」

 

 …まぁイブキのために頑張るか…。

 

 ペロロのテーマはモモフレンズが新たに展開した、アニメ「ももふれんず」のキャラクターテーマだ。子どもから大人まで幅広い年齢にウケているアニメであり、その人気の理由は、かわいいキャラクターの見た目に比べて、子供向けアニメなのか疑うような本編ストーリーのちょっと重めの設定とキャラクターの毒舌さによるギャップだろう。

そして「ももふれんず」のまたもう1つの人気の理由は曲のカッコよさだ。このペロロのテーマはホントに子供向けアニメかと疑うほどに激しくてカッコいいのだ。ジャズのような激しさとは全く違う、ハードコアというのか。重低音だったり、DJスクラッチのようなとにかくノリが良い曲だ。序盤からずっとその重低音が途切れることなく、それでいてかっこよく、聴きづらいことの無い曲になっている。なので正直ジャズとは違うが嫌いではないタイプの曲だ。

 そしてそれを今回、サックスでアレンジカバーをすると…なかなか難しいな。あと再現するとしても絶対サックスではない。正直キーボードカバーとかドラムアレンジでノるやつだと思う。まぁ出来る限り再現はしよう。

 

 元の曲にかなり近づけるためにも、かなりのハイペースのまま指を運ぶ。ソロの時ですらここまで激しく動かしたことがあるのかというくらいだ。序盤からずっとこのペースのまま吹いている。もはや壊れたんじゃないのかってほどに吹く。チラリとイブキたちの方を見ると、イブキが目を輝かせて、マコト先輩とイロハ先輩は若干引いていた。ははっ、上等…。あんたらにジャズ聴かせるためにも、ここで終われるかよ…アタシは、まだアゲるぞ!!

 

 ペロロのテーマを吹き切る。サックスから口を離し、息を吸おうとすると、ヒュと喉から音が鳴った気がして、思わずむせてしまった。1曲だけなのに汗びっしょりだ…。やっぱ無理あったか…?曲が曲だったのもあるけど、ジャズアレンジを入れる予定だったのに挟む暇も無かった…。それだけが少し後悔かな…。

しばらく目を閉じて息を整えようとすると、目の前から拍手が聞こえた。

 

「すごかったー!昨日全然違う感じですごかった!!」

「はぁー…はぁ…そう…すか…。」

「おいイロハ、こいつはいつもこんな風なのか?」

「ん…まぁおおむねそうかなって感じです。私も昨日見ただけなので知りませんけど、昨日もこのくらい汗だくになってましたよ。」

「キキッ狂っているな。」

 

 ただ、まだ本命のジャズができていない。ジャズアレンジも挟めなかったし、自分のしたい演奏からは離れている。だから、まだ終われない。

 

「はぁ…マコト先輩、あともう一曲、いいですか。」

「…何?まだ吹くと言うのか?」

「自分のジャズを、まだ見せれていないので…。だからあともう一曲、いいですか。」

 

――――――

 

 まず、イブキがこんなにも褒める演奏家…というか、楽器を弾くやつがこのゲヘナにいるのかという驚き。

イブキは可愛いし、優しいから色んなやつを褒める。そして今まではイロハやこの私をいつも褒めてくれていた。すごい、カッコいいと尊敬してくれていた。それがある日帰ってきたと思ったらある楽器を吹くやつが凄かったとベタ褒めしていた。聞いたことも、見たこともない高等部1年のアオホシというやつらしい。

 次に、実際に音を聴いて確かに上手だったし、イブキを演奏だけでこんなに感動させることができるのかという驚き。

音楽だけで、カバー曲でイブキが知っている曲だったとは言え、あの風紀委員長が弾いていたピアノであればこんなにも感動はしていなかっただろう。まぁイブキは優しいから、凄いと褒めていたかもしれないが。

 最後に、こんな音楽が、存在していたのかという驚き。

イブキがリクエストした曲の演奏が終わった後、目的のものは聴いたし帰ろうとしていたところ、そいつがまだ終わっていないといった。まだジャズを見せれていないと。正直、こいつは何を言っているんだと思った。イブキのリクエストした曲を演奏しただけで、息も切れかけて、汗も凄い。銃撃戦に参加したわけでもないのに、正に満身創痍だった。こんな状態のやつが、まともな演奏をできるはずがないと思った。だが、イブキはそいつの言葉を信じ、用意された折り畳み椅子に座っていた。

圧巻だった。ペロロのテーマはイブキがいつも万魔殿で見て聴いているため、私もある程度は覚えている。だけどそいつの吹く「ジャズ」とやらは、それと同等…いやそれ以上の激しさだった。イブキが昨日教えてくれた、見える景色が変わるというのはこういうことか。こんなにも感情の入れ替わる音が存在するのか。虎丸の主砲のような威力で1つ1つの音が向かってくる。とうに私達はボロボロなのに、まだ主砲発射をやめない。それどこら、機関銃までどこからか取り出して撃ち始めた。全て本当に1人から放たれているのだろうか。どこか服の内側にスピーカーでも仕込んであるのではないのか。きっとそうだ、私達を驚かせるためにこれほどの仕込みをしているとはさすがなものだが、少しやりすぎではないか?

 

 気づけば音が無くなっていた。鼓膜が破けてしまったのかと勘違いしたが、どうやら演奏が終了したらしい。

 

「どう…でしたか。アタシの…ジャズ。」

 

 今にも死んでしまいそうなくらい疲労困憊な状態で私達の感想を待つ。

こいつは、何故こんなにも必死なんだ?それを極めた先に残るものは何なんだ?お前は、なんのためにそこまで吹けるんだ?お前はなぜそんなにも、必死になれるんだ。

イブキが椅子の上でひたすらに拍手を送り続ける。イロハがそれにつられるように、小さな拍手を送る。

 

「キキキッ…。お前、狂っているな。」

 

 そう言い残し、万魔殿へと戻ろうとする。イブキとイロハがゆっくりと私について来ようとしたが、アオホシがなぜか私達を呼び止めた。

 

「これ、署名してくれませんか?」

 

 紙に新たに3人の名前が増えた。

 

 

 

【うん、私達は確かにアオホシがキヴォトス一のジャズプレイヤーになるための手伝いをした。ちゃんと報酬ももらったよ。といっても、私達は何もしてないよ。ほとんどはアオホシの努力。

最初にアオホシの演奏を聴いたのは…確か、運悪く雨に降られたときにとりあえず入ったジャズバー。「Jazz ENCORE」っていうところ…そこでアオホシが別のバンドに混じって演奏してるところを見た。そこで初めてアオホシに会ったし、アオホシの演奏とジャズにも出会った。あの時ジャズバーに入った自分を褒めたいくらいだね…。いや、1位は変わらないよ。ブラック・デス・ポイズンはずっと最高だから。でもジャズの1位は、アオホシの演奏かな。それも他のみんなと一緒に聴いた、アオホシが便利屋に来た時の演奏が、一番好き。だって、私達だけに向けた突発のワンマンライブみたいなものだったからね。アオホシからはたまに連絡が来るよ。あの子もブラック・デス・ポイズンのアルバム聴いてくれてるみたいで、新しいのが出る度に感想を送ってくれる。改めて、ホントにゲヘナ生なのかなって思うよ。】




ペロロのテーマは、総力戦ペロロジラの戦闘bgm「Oxygen Destroyer」のアレンジ版だと思って下さるとありがたいです。
10話目にしてですが、評価、お気に入りありがとうございます!励みになります!あとアンケートにも答えてもらえるとありがたいです。
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