アタシはキヴォトス一のジャズプレイヤーになる。   作:えーすえいち

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珍しく戦闘回です。


掃除の時間だ

 ヴェリタスのみんなと昼食を食べて解散をした後、また同じ場所で練習を続けることにした。さっきはギャラリーがどんどん増えていったし、わざわざ目の前に皆が立つからつい勢いをつけて吹いてしまっていた。

お昼過ぎで、しっかりと晴れているのもあって若干眠たくもなってくる頃合いだろう。今度はあまり激しくせずに、慣らす感じで吹いてみよう。

マウスピースを口に咥え息を入れる。リズムよく、楽し気に吹くことを忘れずに…。

 

「おっ、てめぇがチビの言ってた例の演奏家か。」

 

 そう思っていた矢先、突然声をかけられた。なんだか声の感じからして穏やかに済みそうな気がしないが、誰だろうか。

 

「やーっと見つけたぜ。わざわざゲヘナ生がミレニアムにまで来てるって噂でよ。」

「もー!リーダー待ってよー!」

「リーダー、急にどうしたの…って。」

「あら、あなたは…。」

 

 振り返ってみるとそこにはかわいいメイド服を着た4人組がアタシの事を見ていた。

 

「えーと、どちら様でしょうか…。」

「あん?」

「申し遅れました。私はミレニアム2年メイド部、室笠アカネと申します。」

「アスナだよー!」

「角楯カリン。よろしく。」

「ちっ…美甘ネルだ。」

 

 メイド部なんてものがミレニアムにあったのかと少し驚く。

 

「んで、単刀直入に聞こうか…。てめぇが、”絶殺仕事人”だな?」

「え?」

 

 ネルさんにずいと詰められながら聞かれ、何の事だと首を捻る。なんだそのクソダサい二つ名は……いや待て。確か随分前に誰かにそんな感じのことを言われたような気が…。

 

「ほぉ、とぼける気か。まぁ闘り合えば分かる話だもんなぁ。」

 

 仕舞っていたダブルマシンガンを手に持ち始め、その2つを繋げる鎖が地面に垂れ落ちる。何だ、もしかしてここで戦う気か。だとしたらマズイ。

 

「ちょちょちょ、ちょっと待ってください!やるんだったらサックスだけ片づけさせてください!」

「あぁ?…チッ、わーったよ。さっさとしろ。それに、今思ったがここじゃ口うるさいのが飛んでくるかもしんねぇしな…。それ仕舞ったら、ついてきな。」

 

 ……あ、思い出した。絶殺仕事人って、前に風紀委員に引き渡したスケバンの人達から言われたんだった。あのダッサい二つ名、ミレニアムの人達にまで浸透してんのかよ。

 

「何なに?リーダー戦うの?」

「おう、お前らは黙って見てろ。アイツがどれほどのもんか知るためでもあるからな。」

「あの人があの絶殺仕事人とは思えないけど…。ホントにただの演奏が上手な人じゃないの?」

「いや、あたしの目が見間違えるはずがねぇ。アイツは間違いなくあの仕事人だ…。おい!早くしろ!」

 

 ネルさんに急かされて、サックスを丁寧に仕舞ってから慌てて後をついていく。しかしここ最近はホントに銃撃沙汰とか、喧嘩みたいなことはしてないんだけど。いつその二つ名で呼ばれなくなる日が来てくれるのだろうか…。

 

 

 後についていき、案内された場所はミレニアムタワー内の訓練場だった。

 

「おし、やるぞ。ゴーグルとプロテクター着けてから銃持って早く来い。」

 

 ネルさんがプロテクターをつけ、防弾ゴーグルを装着してから訓練場に向かった。その前に…。

 

「すいませんアカネさん。荷物見ておいてくれませんか。」

「分かりました。それよりも早く訓練場に向かってあげてください。リーダー、本気であなたと闘り合いたいみたいですよ。」

 

アカネさんが指差した方を見ると、既にダブルマシンガンを構え、準備運動をしているネルさんが見えた。

 

「その…なんかしましたっけ、アタシ…。」

「いえ、その点に関しては私も本当に知らないですね。ただああなってしまうとリーダーは人の話を聞かないので…。なので早めに終わらせてくださると、ありがたいです。」

 

 

 

 プロテクターをつけ、ゴーグルを装着する。一応腰に予備用のリボルバーを差しておく。アカネさんに手を振って見送られ、訓練場に入場する。

 

「やっと来たか。待ちくたびれたぜ。」

「一応聞くんですけど、どうなったら終了ですか?」

 

 捻挫しないように足首を回しておく。

 

「そりゃもちろん、どっちかがぶっ倒れるまでだ。こっちも一応言っておくが、別にアンタに恨みを持ってたりするわけじゃねぇから、安心して戦ってくれよ。」

「そうすか…。それじゃ、闘りますか。」

 

 アタシが言い終わる前に、同時に相手の方へまっすぐと走り出す。小柄な分、相手の方が若干速いか。

小手調べと言わんばかりに左から蹴りが飛んでくる。屈んでそれを躱し、相手の残った左脚を払うが、ジャンプして避けられる。撃ち下ろされる感じが何となくしたので、慌てて蹴り上げて相手を後ろへ引かせる。

ネルさんがどういった戦い方をするのかは正直知らないが、今の当たり合い的に突っ込んでくることが多そうだ。接近してあのマシンガンを使った格闘戦に持ち込み、相手が引くか自分が弾かれたらマシンガン主体で戦ってくる感じだろう。接近してるときにはあの鎖にも注意しなきゃ、足ひっかけられたりとか使ってきそう。

ネルさんが早速マシンガンを構え、乱射してくる。急所に当たると危ないので横に走って避ける。射程の差が若干辛いかもしれない。それに乱射しているかのように思ったが、全然正確無比な射撃で、アタシの走る跡を追うように銃痕ができている。

 

「オラオラオラァ!逃げてばっかじゃ勝てるもんも勝てねぇぞぉ!?」

「分かってます、よっ!」

 

 避ける勢いのままネルさんに向かっていく。障害物を使いながら戦いたいけど、この訓練場には無さそうなのでとりあえず1発射撃。ただネルさんはその射撃が牽制だと気づいたのか、腕と銃身で顔をガードしながら真っすぐ突っ込んできた。そのままスライディングをしながら撃ってくるのを、アタシも腕と銃身で顔を守る。ジャンプしてスライディングを避けようとも思ったが、防戦一方になる予感がしたので銃口を滑り込んできた腹に向ける。

 明らかに決まったかと思ったが、突きつけたショットガンの銃身を仰向けの姿勢のまま蹴られ、狙いが右にずれる。

 

「ハン!離さなかったのは褒めてやるよ!」

 

 ショットガンを蹴った方を軸足にした回し蹴りがヒットする。大きく吹っ飛んでしまったが、即座に起き上がりまた走り出す

 

 お互いに引くこと無く、何度もぶつかり合う。ただ、着実にアタシの体力が削り取られていっている。愚直に真正面から突っ込み、吹き飛ばされ、また立ち上がり突っ込むのを繰り返す。

 仕事人とは思えないような戦い方をするが、十数回の当たり合いの後に、ついに脚が震えだしてしまった。

 

「…チッ、もう終わりか。」

「ハァッ…ハァッ…。まだ、もう一回…!」

「何度やっても無駄だって…の!

 

 飽きたと言わんばかりの蹴りを全力で食らう。ショットガンが手から離れるが、それには目もくれずにネルさんへと近づく。

 

「あぁ…!?」

(これを…待ってた!)

 

 ホルスターに仕舞っていたリボルバーを即座に取り出す。銃を腰だめに構え、トリガーを引きながらハンマーを連続で下ろす。放たれた訓練用50口径マグナムがネルさんに向かっていく。

そしてネルさんは、その6発全てを体で受け止めながら殴ろうとしてきていた。

ビタッとあと数ミリで額に拳が直撃するところで動きが止まる。

 

「……降参です。」

「…フン。」

 

――――――

 

 防弾ガラス越しに一部始終を見ていた。

 

「あはは!リーダーすっごい楽しそうだったねー!」

「うん、相手の人も凄かった…。」

 

 ようやく戦いが終わったという小言を、リーダーが帰ってきた時に言おうとも思った。ただ少し驚いてしまった。あのリーダーと1対1をこんなにも続けられるのかと。

あのリーダーに銃弾を6発…。いや、今までネル先輩が傷つかずに帰ってきたことなんて無かったから、なんら不思議なことでは無い。

ただ見ている限り、攻撃のチャンスが当たり合いの度に発生していたように見えた。実際アオホシ側もそのチャンスを逃さずに攻撃をしていたし、ネル先輩と実力が拮抗しているかのようにも見えた。

さらに驚くべきはその体力だろう。時間は始めてから既に数十分経っている。その数十分の間、アオホシは走り続けていた。リーダーの弾を避けるのにも、リーダーに詰め寄るときにも常時走り続けていた。あんな戦い方をすれば脚が震えるのも当然だ。

 

(思っている以上に凄い方だったのかもしれませんね…。)

 

 訓練場からリーダーがアオホシさんを担ぎながら出てきた。

 

「おら、さっさと降りろ!」

「す、すいませぇん…。」

 

 アオホシさんの脚がガクガクに震えている。限界まで走ったのだろう、ベンチに倒れこんできた。

 

「ったく。てめぇの戦い方は単調すぎんだよ。もっと別の行動をしろっての。」

「いやーあんな広いところで闘りあったの久々なんで…。」

「にしてもって話だ。」

 

 アオホシさんの額を人差し指で突きながら話している。

 

「ただ最後は良かったぜ。何かを隠してんのは分かってたが、ファニングだったとはな。あれはずっと考えてたのか?」

「いや、蹴られたときに思いつきました。そういえば持ってたけど使ってなかったなって思って。」

「ハハハハッ!面白れぇ、土壇場であれをしようっていうのは中々なもんだ。作戦も単調、強いって訳でも無いのに、何度も立ち向かってくる。お前、なかなか熱いヤツじゃねーか。そういうのは嫌いじゃないぜ。」

 

 リーダーが珍しくベタ褒めをしている。アオホシさんのことをかなり気に入ったらしい。ふと時間を見ると、クライアントが予定していた時間まで30分を切っていた。

 

――――――

 

「リーダー、もう気は済みましたか?時間、見てくださいね?」

 

 アカネさんが圧の感じる笑顔をしながら、ネルさんに近づく。

 

「あれ、もうそんな経ってたか?ならそろそろ急がなきゃな。またなアオホシ。次はお前の演奏を聴きに来ることにするぜ。それまでに腕磨いとけよ。」

 

 ネルさんがアカネさんに引きずられながらそう言って去っていった。

 誰もいなくなった訓練場のベンチに体を預け、大きくため息をつく。

とにかく疲れた。久しぶりにしっかり戦ったのもあるが、ずっと走っていたせいで脚が悲鳴を上げている。あともう数分は戦えると思っていたのだが、体力が落ちていたのだろうか。流石にこの疲れた体で練習は無理だ。今日はもう帰ることにしよう…。

 

 

【アオホシ?あーあのリーダーと戦ってた人!そういえばサックス吹いてたね!

初めて聴いたのは、確かー…SNSだったかな?それか前にリーダーが聴きに行ったときについていった気もする!

どう思ったって…凄いなーって思ったよ!今までこういうの聴いたときって、なんかできそうな感じしてたんだけどさ、あの子のやつはなんか真似できない感じしてて!

え?他の楽器は演奏したことあるのって?したことないよー!でもなんか見てるとできそうな感じしてこない?え?そんなことない?】




戦闘描写って、難しいですね…。
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