アタシはキヴォトス一のジャズプレイヤーになる。   作:えーすえいち

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私あなたキライ

「……」

 

 紅茶を啜る音と沈黙が流れる。

 最近になってまたナギちゃんの紅茶を飲む量が増えている気がしなくもない。前増えてた原因はエデン条約で私が色々してたからだけど…。

 特に話すことも無いから黙ってるし、セイアちゃんもいつものごとくシマエナガと遊んでる。…話すことが無いっていうのは嘘になるか。

 

「…先日、アオホシさんがここに来まして。」

 

 ナギちゃんが口を開いたと思えば、ゲヘナ生のことだ。それもそう、私達が許した…許してしまったゲヘナ生だから。

 

「謝肉祭への出場を認めてほしい、と言われました。」

「ふむ。」

「……はぁ?」

 

 思わず間抜けな声が出てしまった。ゲヘナが?トリニティ謝肉祭の出場を?

 

「へぇ、そう。それで?ちゃんと断ったの?」

「えぇ。仮に私達が許したとしても他の生徒は許さないだろう、と。」

「もー、ナギちゃんは甘いなぁ。そういうのはちゃんと無理ですってしっかり言わないと。他の生徒に認められたから出場許してくださーいとか言われかねないよ?」

「ふむ、ただまぁ他の生徒が許すのなら別に良いのではないか?私としてはアリだと思うがね。」

「はぁ…またそんなこと言って。いつ牙をむくか分からないゲヘナ生をたったの1人であったとしても学内に入れるのを許してる。そこからルールを緩めちゃったら、それはどんどん広がっていくよ?」

「ただ私とナギサからすればそれを願っているところもある。テロリストや犯罪者を受け入れるわけでは無いが、別の学園の生徒だからといって門を閉める必要は無いだろう?例えそれがゲヘナであっても。」

 

 話が通じない。そう上手くいくはずが無い。セイアちゃんやナギちゃんは、ゲヘナ生を入れても問題が生じない、起きてもすぐに鎮圧ができるって思ってるんだ。

 

「ミカ、前にも言ったと思うが…。私達は変わらなければならない。時間と共に、変化に適応していかなければならないんだ。決して嫌いなものを好きになれと言っているわけでは無い。ただ、関わりはしなくとも、排斥をしてはならないと思う。」

「……それでその排斥をしなかったことで、被害が出たらどうすんのさ。」

「だからエデン条約を結んだんだ。そのためのエデン条約なんだ。」

 

 全部道理が通ってて、一つも反論の余地も無い。だから嫌だった。理屈だけで人は動かないの、知ってるはずじゃん。

 紅茶を飲んでから席を立つ。

 

「どこに行くんだ?」

「アオホシちゃんとやらのとこ。聞いて回ったら分かるでしょ。」

「……はぁ。」

 

 ため息を後ろに、部屋を出た。

 

 

 

 

 他の生徒たちに聞いて回ると、どうやらここ2日間は救護騎士団と一緒に行動しているらしい。何でだ?私達の知らないところで暴動でも起こして、怪我でもしたのだろうか。いや、だとしたら正義実現委員会に捕縛されてるか。聞いた感じでは、正義実現委員会とも行動していたことがあったらしい。イチカちゃんと行動していたらしく、よくトリニティスクエアで演奏していたとか。

 それで、どうやら件の救護騎士団は今日は病院のボランティアらしく学園内にはいないとのこと。ただ啖呵を切って出てきた始末、何もなしに帰るのも嫌だった。

 せっかくだから、救護騎士団が行ったという病院へ私も向かった。

 

「ここかな。」

 

 白が基調として、まるで要塞のような入りづらさを醸し出す。まぁ、特に用もないのに病院に来ることがそもそも無いか。自動ドアを開き、病院内へ入る。

 消毒されて少しどこか肌寒く感じる中に、少し明るさを感じた。

 音が、少しだけ聴こえてくる。病院で?アーティストを呼ぶわけでも無い…絶対、あいつだ。

 音の鳴る方へ歩く。徐々に音へ近づいていく。

 ドアを開け、音と対面する。

 病院に似つかわしくない、綺麗な音が聴こえる。綺麗で、分厚くて…聴き心地がよくて…

 

なんなのかなぁ……

 

 演奏を聴いている患者さんが、皆笑っている。誰一人残らず、笑顔で聴いている。目を瞑って、耳を澄ませて聴いている。よく見ると、コハルちゃんもそこにいた。周りにはヒフミちゃんや、アズサちゃんも。……1人足りないような…

 

「聖園ミカさん♡」

 

 背後から声をかけられ、振り返る。

 

「…浦和ハナコ。」

「お久しぶりです。まさかここで会うとは。」

「私が会いに来たからね……外で話そっか。」

 

 

 

「会いに来たとおっしゃいましたが、一体なぜ?」

「気になったからだけど、悪い?」

「いえ、ただ素直じゃないなと思いまして。」

 

 相変わらず性格の悪い。私がアオホシを気に入っていないことも知ってるはずでしょ。

 

「…謝肉祭に出ようとしてるらしいね。」

「えぇ、順調そうですよ。」

「本気で出ようと思ってるわけ…。意味わかんない。」

 

 誰も彼女を咎めない。トリニティ謝肉祭にゲヘナ生が出ることを誰も。

 

「未だに、お嫌いですか。」

「……当たり前でしょ。暇さえあればテロ活動、道路は爆破…好きになる要素が無いじゃん。」

「しかし、彼女は違いますよ?」

「今はね。でも過去は違う、過去は拭えない…ずっとついて回ってくる。」

 

 私だって、そうなんだから。

 

「絶殺仕事人アオホシ、ですか。」

「なんだ、知ってるんじゃん。どんな相手も一人ずつ確実に倒していく、伝説のスケバン…。今は鳴りを潜めてるだけだよ。どうせいずれ…。」

「そのいずれとやらはいつなんですか?」

 

 ハナコが私の言葉をさえぎってまでそう聞いてきた。そんなの、セイアちゃんじゃないと分かる訳ないでしょ。

 

「…知らないよ。でも、爆弾と一緒じゃん。導火線の見えない爆弾を、私達は抱えてる。」

「それが爆発するかも分からないのに?」

 

 ナギちゃんたちだけじゃなくて、ハナコまで私を否定する。さっきの観衆たちもそうだ。あの様子だと、コハルちゃんも…。

 

「…聞きましょうか。聖園ミカさん、アオホシちゃんの出す音は嫌いですか?」

 

 嫌いなわけない。あんな綺麗でかっこいい音を出すやつを、下手だとか、耳障りだなんて言えない。

 

「…………好きだよ。今まで聴いてきた音の中で、一番。」

 

 

 

 ミネ団長がアオホシと話しながら出てくる。その後ろを救護騎士団とコハルちゃんたちがついてきている。

 全力で吹いたのか、汗をかいている。

 

「改めて、3日間のお付き合い、ありがとうございました。」

「いえいえ!こっちも楽しかったですし…って、ハナコ?」

 

 私よりハナコに先に気づき、その後に私を見てくる。

 

「えーーと…ミカさん、だっけ…。」

「…宮本、アオホシ。」

 

 彼女の真正面に立ち、あと3歩分ほどの距離まで近づく。覚えてないか、当たり前だけど。

 

「な、なんすか?」

「私、あなたが嫌い。」

「あぇ!?」

 

 正直に伝えよう。嘘ついたって意味無いし。

 

「あなたが嫌い……だけど、あなたの音は今までで一番好き。」

「え…」

「謝肉祭、もし腑抜けた演奏をするようなら許さないからね。」

 

 伝えたいことは伝えた。戻ろう。

 

「あっ、あの!本気で演奏するんで!ぜひ聴きに来てください!」

 

 ここまでされてるんだし、ナギちゃんとセイアちゃんが認めないはず無いと思うけど…一応私からも言っておこうかな。彼女の演奏は聴きたいしね。

 

 

 

【……まぁ驚かされたよ、憎たらしいほどに。まさか先生まで彼女のバンドメンバーだったなんてね?言ってなかったからねって、別に隠すことでもなかったじゃーん!

演奏についての感想?もちろん先生のドラムかっこよかったよ!上手っていうか、久しぶりにあんなに全力な先生見たかも!……サックスについての感想?はぁ…やっぱり言わないとダメか…。

……凄かった。上手いだけなら、探せばいくらでもいる。何ならあのテナーサックスより上手なプレイヤーもごまんといると思う。でもそうじゃない、彼女の演奏は凄いの。センスもテクニックもその上手なプレイヤーより劣っていたとしても、彼女の演奏は聴く人を圧倒させる能力がある。天性とか、才能っていうのかな…。技術を磨くだけじゃ埋められない差なんだろうね。そういう点ではピアノもその片鱗は感じたかな。先生や彼女よりあらゆる面で劣ってはいる。ただ熱意は感じ取れたよ。ま、それでもまずしっかり弾けなきゃだけどね…。】




もうそろそろバンドの演奏シーン書きたいっすね。
というか知らん間にバンドイベント終わってるしメイドミドモモ実装されるし。
一旦筆遅いか…
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