崩壊したキヴォトスの終末旅   作:ぱぶしぃ

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蘇ることの無い辿り

 

 

――――改めて見ると、やはり学園内は壮絶な状況だった。

 

 

 

大聖堂もそうだったが、校舎はもちろん他の施設に無事な物は一切無く、いずれも必ず何処かには損傷が見られた。

その事から、恐らくトリニティの中には逃げ場は無かったであろうと考えられる。

 

彼ら(無名の司祭)が計算してミサイル落としたのか真相は定かではないが、徹底的にトリニティを潰すという強い意思を感じられた。

...ただの見せしめの為に。

 

「...ここまでやる必要はないだろう。」

 

先生は小さく呟き、顔を歪ませながらトリニティの校舎を見る。

壮大で神聖なオーラを放っていた大きな校舎は、今はもう形を保っているのがやっとのように感じられる程、損傷が酷かった。

多くの生徒が談笑し、活動し、青春を謳歌する憩いの場であった活気ある校舎は、今はもう無かった。

 

 

トリニティには、多くの部活動が存在していた。

 

生徒会の立場にあるティーパーティー。

 

学園の風紀を守る正義実現委員会。

 

神を信仰し、生徒を影ながら支えるシスターフッド。

 

古書館を守り続ける図書委員会。

 

甘いものには目がない者の集まりである放課後スイーツ部。

 

生徒の健康を守る救護騎士団。

 

非公認部活であるが、平和維持を目的とするトリニティ自警団。

 

多種多様でそれぞれ個性を持つ部活であり、ある意味彼女達の居場所ともいえたものでもあった。

そしてこの校舎には一部部活を除き、多くの部活が部室を持っており、それが理由として多くの部員がここに集まっていた。

もちろん所属していない生徒達も、この場所でたくさんの時間を過ごしていたのだ。

つまりこの校舎はトリニティに所属する生徒の青春を具現化したような、そんな場所だったのだ。

 

 

 

それ故にこの校舎の傷は、トリニティの終焉を嫌でも感じさせるものだった。

 

 

 

「...先生、気持ちは分かりますが、決して中には入らないでください。大聖堂もかなりの被害でしたが、もうこの校舎は本当にいつ崩れるか予測できません。」

「――うん、分かってるよ。」

 

アロナの声に寂しげな表情を浮かべる先生。

その顔を見たアロナは、先生にどう声をかけるべきか迷ってしまう。

あまりにも悲痛で、そして自責の念に包まれた表情。

この顔を前に、慰める言葉が見つからなかったのだ。

 

「はは...大丈夫だよ無理に慰めようとしなくても。もう、分かっているからさ。」

「せ、先生...」

 

アロナの気まずそうな雰囲気に気付いたのか、先生は軽く苦笑いを混じらせながら微笑む。

 

今は、自分を責める時間じゃない。

 

心の中で、自分に言い聞かせるように呟く。

 

「それじゃあ、次は古書館に行こうか。」

「古書館...ですか?確かに崩れる危険性は低いとは思いますが...」

 

 

多くの古書が保管されている、恐らくキヴォトスの中でも有数の規模を誇るトリニティの古書館。

図書委員会が活動している場所でもあり、館内に保管されている古書にはキヴォトスについての歴史本や聖書等、貴重なものまでも保管されている。

 

だが、大聖堂や校舎程ダメージが大きくはないにしろ、古書館内部は火災が発生した為、中の文書などはほぼ消えているのだ。

その理由からアロナは疑問を持った。

特に見るものがない。行ってしまえば行く価値を感じないのだ。

彼女たちが残したであろう記録は炎の中へ消えていっただろうし、館外はともかく館内は悲惨な状況であると容易に予想できる。

 

先生もそのことは分かっているはずなのだが...

 

「不思議そうな顔をしてるね。...まあ、無理もないか。」

 

先生は頬を指で掻きながら、空を見つめる。

 

「理由は、――無いよ。」

 

先生は静かに呟いた。

 

理由なんて無い。

ただ彼女達を少しでも感じたいだけなのである。

彼女達と一緒に居た場所。彼女達と一緒に歩んだ場所。

少なくとも、それだけで先生には行く価値があったのだ。

 

「...そうですか。」

 

少しだけ納得したような顔をするアロナ。

先生はその顔を見て微笑み、古書館へと足を進める。

 

 

ただ、感じたいだけ。

 

ただ、記憶を辿りたいだけ。

 

先生がこの旅に求めている物は、ただそれだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

――――焦げた匂いがする。

 

 

 

古書館の内部は予想通り、火災による損傷が多く見られた。

所々黒く焼け焦げた床に、煤が壁に付いているのか床よりはマシではあるが、黒に染められている。

そして古書のような、焦げた紙切れのようなものが館内に多く散乱していた。

 

「――まあ、思っていた通りだね。」

 

大方予想通りの見た目に、僅かに抱いていた希望が打ち砕かれる。

だが、その感傷に浸っていては日が暮れてしまうだろう。

感情を抑え、先生は古書館の通路を歩く。

 

どうやら見ている限り、木材以外の建材を使われていた所は被害が少く、また木材で作られていた所でもあまり被害が無い所もある。

それにより、被害が少ない所で張られていたポスターや保管されていた一部の本は無事のようだった。

 

とはいっても、やはり火災の影響は凄まじい。

 

机や本棚などは黒く焼け焦げ、中にあった本に至っては灰と化していた。

保管されておらず飾られていた本に至っては、これを見るに全滅だろう。

 

「貴重な本などは厳重に保管されていた為、無事なものが多いですが...そのほかに至っては...」

「残っていただけでも奇跡だよ。」

 

先生は、保管されていた1つの本を持ち上げる。

どうやらキヴォトスの歴史について書かれた本の1つのようだ。

 

「...ちょっと面白そうだし、1つぐらい...いいよね?」

 

先生はその本を背負っていた鞄に入れる。

こういう本は暇つぶしにはちょうどいいのだ。これから暇な時間が必ず出来るだろうし、その時の為にちょっと拝借させていただこう。

とは言っても戻す気は無い...いやわからないが。

 

「先生なんですから、ちゃんと戻すんですよ?」

「は、はーい。」

 

アロナからの視線が痛いので、やっぱりいつか戻すことにしよう。

 

先生はふと辺りを見渡す。

丁度古書館の中心辺りだろうか。

なら、近くに彼女が使っていた机があるはず...。

 

「...あれか。」

 

無事...とは言い難いが、一応形を保っている机に先生は向かう。

沢山の本が詰まれていたその机上は、今となっては随分と綺麗になってしまったようだ。

 

この机の主である彼女の名は「古関ウイ」。

トリニティ総合学園3年生で、図書委員会の委員長を務める生徒だ。

”古書館の魔術師”と言う称号?を持ち、普段は古書館に籠もって管理をしている。

もはや引き籠っている...のほうが正しいかもしれないが。

彼女の好きな物、それは古書その物であり古書に対する愛着は人一倍で、古書を”物”としてではなく”この子”等と呼んでいたりと。この上なく、とても古書を大事にしている。

その性格上、古書館の管理人としてはもってこいの人物なのだ。

 

とはいっても、少し思想

そんなウイの机に古書が無い。

その様子に、先生は少し寂しさを覚えてしまった。

ウイの周りには常に本があったからだ、いついかなる時であってもウイは必ず肌身離さず本と共にあった。

 

だからこそ、彼女がいないという現実が強く感じられたのだ。

 

 

...?

 

 

先生はウイの机の真下に落ちている、小さく折りたたまれたような紙を見つける。

...先生はそれをそっと拾い上げ、少しだけ付いている煤を払う。

 

「先生、それは?」

「...」

 

先生はゆっくりと紙を広げる。

そこには、メモ書きのような、殴り書きのような文字が書かれていた。

 

 

そして、少なくない血痕が紙全体についている。

 

 

先生は反射的に紙から手を放した。

呼吸が乱れていく。

見てはいけない物を見てしまったかのような感覚に陥っていく。

これが、どのような物なのか予想できてしまったからだ。

 

 

「――これは...」

 

 

先生は、恐る恐る手紙に手を伸ばす。

ここで見らずに終わるのは、違う気がする。

見つけてしまったのなら、最期まで読む義務があるような、そんなものを感じた。

 

 

 

――――そして、先生は紙を再度開いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




また遺書のおいにーがしますね。
あとウイ風呂入れ!

...はい。
まあという感じで大聖堂のお次は古書館です。
ウイ書きたかったんで発作的に書いちゃいましたわぁ...

というかもうあれですね。
先生本当に情緒不安定になってますね。どうしましょう。

...もうこういうキャラで行くか☆
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