現在地は事務所近くのマンション。
そこの一室のインターフォンを鳴らしていた。
『はーい?どちら様ですか〜?』
「私たちだよっ!お見舞いにきたよ〜!」
『リンネちゃんか!待ってて今すぐ開けますからね〜っと!』
「ありがとっ!」
するとガチャっという音がした後ドアの隙間から赤髪で深緑のメッシュが入ったロングヘアーの女性の顔が見えた。
ダボっとしたパーカーに短パンという防御力があるのかないのかわからない格好をしている。
ガワと同じ顔のトリトさんだ……ていうか身長思ったより高いな!?
「いや〜クドくんが台パンした瞬間に腕の真ん中から変な方向に行っちゃいましてねぇ……ほらこれその時の写真」
「うぁっ……結構痛々しいなぁ」
「それでクドさんはこれからどうするんですか?病院ですかね?」
「リンネちゃん久しぶり!前回会ったのってドッキリ兼ミーティングの時だっけ?」
「そうだよ!でもそれでも4日前くらいじゃないかな?準備が結構スムーズだったし!」
「え……クドさん手が折れたって聞いたんですけど!?」
いきなり現れたクドさんの右腕はさも当たり前かのように治っていた。
曲がってもいないしギプスもない。
怪我なんて一切していない普通の腕だった。
「あれ?リンネちゃんから聞いてない?トリトのおかげで治ったよ?」
「リンネさん……?」
「……てへっ?」
可愛いから許しますっ……!
「ていうかそれって一体どういう原理ですか……?」
「それはトリトのこれのおかげですよ!」
そういって一つの手のひらサイズのガラス瓶を私に渡してくる。
瓶の中には深紅色の液体が瓶いっぱいに入っていた。
「これは……?」
「あたしの血ですよ〜!」
「へぁっ!?血!?」
「問題!あたしは何の末裔でしょうか!」
「え、いや不死鳥の末裔ですよね……もしかして!?」
「そう!私の血には回復効果がありまーす!それでクドくんを治しましたー!」
だからトリトさんに連絡があったってリンネちゃんが言ってたんだっ……!!
「……ん?てことは社長は僕が怪我するの見越してトリトを寄越してきたの?」
「社長がめっちゃ心配してましたからねぇ?あたしも動かなきゃって思ったわけですよ!」
「……だからと言って人の枠壊していいわけじゃないんだけどねぇ?」
「す、すみませんでしたぁあああああ!!」
「えぇっちょっと!?頭あげて!?私そこまで怒ってないよっ!?」
「そう!?ならよかったぁ……」
「……僕の同期がごめんね?」
「いやクドさんも十分ぶっ壊してましたけど……?」
自覚がないのだろうか……?
「マネちゃん!?やっぱ僕の扱い雑だよね!?」
「クドさん?ここ廊下ですよ?他の方にご迷惑おかけしないようにしませんと」
「僕のマネージャーさんと同じこといってるぅ……」
「それは当たり前のことだからだと思うよっ?」
「リンネちゃんまでぇっ……!?」
「とりあえず元気そうだからよかったよっ!じゃあ私たちはこれでっ!」
「なんで行っちゃうのぉおお!?トリトと二人きりにしないでよぉおお……!!」
「私たち急いで事務所に戻って社長にお休みの許可貰わなきゃだから!」
「え、本当にお休みするの!?」
「トリちゃん!クドくんも安静にした方がいいいだろうからベットまで連れて行ってくれないかな?」
「え?」
「ベッド……それじゃあまた遊びにきて!今度コラボしよ!」
「それはスケジュール確認してから連絡するねっ!じゃねー!」
「それじゃあ失礼します……」
「いやだぁあああああああああ!!死にたくないぃいいいいいい!!おかされるぅうう!!」
「クドくん〜?ベッドに戻りましょうね〜?」
あれは多分ネタだろう……というかネタと信じたいっ……!
いつもネタに走るのは一種の職業病なのかな?
そして多分リンネちゃん休み明けにこのこと配信で話すんだろうなぁ……
* * *
「しゃちょー!4日位お休みちょーだいっ!」
「……え?」
事務所に到着後速攻社長室に向かった。
と言ってもリンネちゃんが特攻しちゃっただけなんだけど……
走る姿も可愛いから良しっ……!!
「配信では一日ほどって言ってませんでしたか……?」
「マネちゃんとちょっとした旅行に行きたいから4日お願いっ!」
「その間の配信はどうするんですか……?」
「帰ってきたらその分入れるから!」
「そうですか……わかりました。休暇を許可しましょう……」
「やったぁー!ありがとしゃちょー!日程表持ってくるっ!」
そう言って部屋を飛び出てしまった。
「お休みなんて頂いちゃっていいんですか!?」
「大丈夫だよ。というか僕はその言葉を待ってたからねぇ……」
「ど、どういうことですか……?」
そして社長はリンネちゃんが出て行った扉を見ながら独白するように言葉を吐いた。
「実は彼女はデビューしてから一度も配信予定を崩したことがないんだよ」
「え?」
「前任のマネージャーが組んだ日程を全て崩すことなく配信をしていた。それどころか動画の撮影などを自ら進んで撮影していたんだ……まるで何かを忘れようとしてるみたいにね?」
リンネちゃんにそんなことが……
「でもね?」
そこで社長は視線を扉から私に移す。
「リンネさんがあそこまで楽しそうに笑っているのは梓川くんがマネージャーになってからなんだよね」
「私……ですか?」
「実はそうなんだよ?最初と比べて明るくなったと思わないかい?」
「……確かにそうですね?私が初めて会った時と比べたら口角が少し上がってますし」
「それは少し怖いよ……?」
それは少し悲しいんですが……?
「ま、配信を休んだことがない彼女が休んでまで君と遊びたいってことは結構信頼されてるってことなんだねぇ……」
「そうなんですか!?いやったぁああああああ!!」
「楽しそうだけどなんの話してたの〜?私も混ぜてっ!」
「リンネさんのお話です!」
「へ?私の話してたのっ?もう二人とも私のこと大好きすぎっ!」
「まぁ初配信からのファンなので!!じゃあどこ行くか決めましょうか!」
「そうだね!」
「イチャイチャはあげた部屋でやってね……?」
「しゃ、社長っ!?」
「あ、これで美味しいものでも食べて?」
「……ふぁっ!?」
渡された封筒には十数万円ほどのお札が入っていた。
「これいいの!?しゃちょーありがとっ!」
「いいんですか!?こんなに頂いちゃって……」
「もらってくれなきゃお国のバカに払うお金が増えちゃうからもらってくれないかい?」
「それ言っちゃっていいんですか!?ここ国直属みたいなもんですよね!?」
「いいんだよ。寝てるだけで給料が入る議員どもに渡す金なんて一銭もないからね」
「社長結構思想強めですね!?」
「冗談だよ?流石にそこまでは言わないさ」
「しゃちょーありがと!これでマネちゃんと美味しいもの食べて余ったお金でお土産買ってくるねっ!」
封筒を受け取ってすぐに部屋に走っていってしまった……
ちょっとぉ……でかわいいっ!よしっ!
「すみませんありがとうございます……」
「リンネさんの笑顔を引き出せた梓川くんへのボーナスみたいなものだから気にしないで?さ、早く計画を練っておいで?時間は有限だからねぇ」
「す、すみません!ありがとうございました!」
そうして私は社長室を後にした。
旅行楽しみだなぁ……!