振り出しに戻るウマ娘   作:LBえもん

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『もしもあの時に戻れたなら』

 

 ドラえもんの秘密道具でなにか一つ貰えるとしたらなにを貰うか、という問いは現代日本では定番である。

 大方、タケコプター、どこでもドア、四次元ポケット、お医者さんカバン等々のメジャーな道具やウソ800、ソノウソホントを始めとする事実上の願望機を答えるだろう。

 昔の私なら単純ながらビックライトと答えるだろう。大好きな食べ物がたくさん食べれるからだ。

 そして、ここ日本ウマ娘トレーニングセンター学園、通称『トレセン学園』にはすこしふしぎな噂がある。

 いわく、大樹のウロから返事が帰ってきた、といったあまり聞き馴染みのないものから、三女神像の前で力を授かった、といった有名なものまで色々ある。

 さて、なぜ秘密道具の話の後にトレセン学園の噂がでてくるのか、それは、その、レースで負けたリアルな夢を見た後に使っていない目覚まし時計の音がしたらもう一度やり直してレースに出れる噂があって……いや、違う、関係ないことで現実逃避をしたかっただけで違うんだ。

 クラシック級八月、未勝利戦に勝てなかっただけだ。

 

 

スタート!

 

 

八月二十七日

 

 私の名前はダイススターター。ただのしがない未勝利引退ウマ娘だ。

 結局、一日経って、二日経って、三日目が来ても目覚まし時計が鳴ることはなく、寮で起きるのは朝練に間に合う時間の六時だった。

 

「……なんでだろうなぁ」

 

 朝のぼんやりとした時間に、布団の中でそんなことを考える。

 勝てなかったとはいえ何回か惜しいところまで行けたのだが……結局、私はただのお山の大将だったということだろうか?

 ……きっとそうだろうなぁ。

 でも、でも一回だけ、一回だけトレーナーから声がかかったことがあった。

 新人なことを自分から言っていたのと、あんまり感情が籠もってなかったせいで断ってしまい、そのせいで名義貸しのトレーナーとギリギリで契約することになったが、あの時の自分が恨めしい。

 

「はぁ……」

 

 本当に、怨めしい。

 今まで応援してくれていた同室の友人も気まずくなってあまり話さないどころか目も合わせてくれない。違う、自分の八つ当たりのせいだ。

 

『きっと勝てるって言ってくれたのに、負けるはずないって! それなのに……なんで……私、勝てなかったんだよ!嘘つき!』

 

 未勝利戦で一着を取ったウマ娘は本当に速かった。男性のトレーナーと泣きに泣いて喜んでいた。……あれで不正があったら、私は二度と他人を信じることができないだろう。

 私は二着、一馬身差で負け、三着とはハナ差。

 

 応援に来てくれていた友人に私はあんなことを言ってしまった。もう二度と関係が修復されることもないだろう。

 それにあんなふうに送り出してくれた実家の両親からも失望され、白い目で見られているに違いない。

 もう何もかもが嫌だった。レースに勝てない自分も、こんな面倒くさいウマ娘の私に付き合ってくれた人達を裏切った自分も。

 

「死んでみようか、うん、そうしよう」

 

 ただ眠気も三日前の熱意も冷め、そう言った。安易に首吊りにでもしようか、それとも山道から走ってそのまま落ちようか。

 

「よっこらせ、と」

 

 重い身体をあげ、起き上がって布団をどかす。ちょうどガチャリと同室の友人が朝練から帰ってきたようだった。

 そうだ、せめて彼女には謝ってから死のう。

 

「この間、八つ当たりしちゃってごめんなさい」

 

 腰を曲げて謝った私を見た友人は、目を見開いて驚いた後に私の目を見て微笑んで、いいよと言ってくれた。

 でも、きっと許してくれていないんだろうな。

 誰よりも優しい友人のことだから、許してくれているかもしれないけど、私なんかは許されないほうが良い。

 

 

一回休み

 

 

 さて、ところ変わってここは府中にあるトレセン学園よりかなり離れた山の麓。

 あたり一面青い稲、もう少しで自殺するのに良さそうな山に着く。

 風も心地よく、空は青い。死ぬのには丁度いい天気だ。

 そんな雲一つない空を見上げているとパッという音と共に頭上から白いさいころが落ちてきた。

 

「痛っ……なに、これ?」

 

 おでこにあたり、コンクリートの地面に落ちたすごろくを拾い上げる。

 ……どこからどう見てもごくごく普通のさいころだ。一のところだけは赤く、裏の面と表の面を合わせると七になる。少し特徴を言うならばおもったよりも軽くて少しだけ大きくて、プラスチックとは少し違うことだろうか。

 空から降ってきたのは変だが今の私にはそれくらいどうでもいい。そう思って横に投げ捨てた。

 

 

一つ戻る

 

 

八月二十六日

 

「あれ……?」

 

 一瞬で、世界が変わった。……あんな量の雲なんて、あったかな。

 立ったまま気絶でもしていたのか、そう思ってスマホの日付を見る。

 

「あれっ……」

 

 その日付は昨日の筈だ。おかしい、壊れたのか。

 そう思って、自己暗示してジャージのポケットにスマホを入れる。……何か入っている。気になった私は一旦入れたスマホをもう一度出し、ポケットの中の何かも勢いよく出た。

 

 

 

二つ戻る

 

 

八月二十四日

 

 カタッとコンクリートの地面に落ちて出てきたのはさっきのさいころで、面は二を指していた。

 空は曇っている。震える指でスマホの日付を見る。負けたあの日の日付だった。

 

 

中断

 

 

『なに!? あの中古の絵本入り込み靴を勝手に使って、しかも道具が何個か入ってどっか行った!? まったく君は!』

『本物のウマ娘のレースが見たくて……』

『そういうことじゃなーい!』

 





ふりだしにもどる
出た面の数によってその日数分の過去に(おそらく)自分自身を置き換えるなりなんなりをしてタイムトラベルができる。場所はそのまま。

ダイススターター
未勝利ウマ娘。退学する筈だった。
自己肯定感がかなり低い。
ダイスはすごろく、スターターは物事を始める人、もしくは競技で、スタートの合図をする人、競技の出場者のこと。

ふりだしにもどるとウマ娘のクロスオーバー面白そうだなと思っただけなので何もかもが未定です。
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