振り出しに戻るウマ娘   作:LBえもん

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続きました(驚愕)



『もしも仲をやり直せたなら』

 

八月二十四日

 

 結局あの後、怖くなった私はトレセン学園に一旦帰ったのだが、あの時間の私は丁度未勝利戦直前のトイレに行っていたようで帰った頃には警察とたずなさんに驚かれるとともに事情聴取やらなんやらをされた。

 

「スタータちゃん、ちょっと話いい?」

「なぁに?」

 

 夜、同室の友人(流石にこの呼び方も可哀想だろう、彼女の名前はゲットテレスコープ、私くらいにはよくわからない名前だ。これからは私が負ける前と同じように呼ぶことにする)が帰ってきたと同時に私を落ち着きながらも、テレスにしては珍しく人を責めるような声色で呼んできた。少し俯いているせいで短いはずの茶色の鹿毛に隠されて表情は伺えない。

 

「どうして居なくなったの?」

「それはまあ……魔法なんだよ、魔法」

「そう……そっか」

 

 どうして居なくなったのと聞かれてもさいころのせいなのだからこう答えることしかできない。もうなんとかなるから、どうでも良い。

 あっけらかんと言ってしまったせいで一気に覇気をなくしてしまったらしい。一瞬だけ顔を上げたのだがその表情は私が見たことがないくらい悲しそうだった。

 可哀想だ、他人事のようにそう思った。

 

「じゃあ、特別に魔法を見せてあげる。驚かないでね?」

 

 なんの反応も見せないテレスの前にさいころを出し、転がした。

 

 

六つ戻る

 

 

八月十八日

 

 なにも起きなかった。スタータちゃんは魔法でテレポートしただなんて言っているけど、一ミリも動いていなかったからだ。

 

「六かぁ……」

 

 可哀想に、ここまで来てしまったらできる限り寄り添って、カウンセラーを呼ぶしかないだろう。感情の抜けた笑顔を思い出してそう思った。

 

「じゃあ、テレビつけるね」

「……うん、何やってたかな」

「九の、六日前のだから、えーと」

 

 やっぱり、精神科あたりの方がいいかもしれないなと思いつつ、未勝利戦でも勝てない子は多いといえ応援しかできなかった自分を憎む。

 そんな私の心情を知らないスタータちゃんは私物のテレビをつけて、こっちを見てふふっ、と笑った。

 

「これって、再放送……だよね?」

 

 再放送にしてはあまりにも早すぎる。これは丁度六日前の番組のはずだ。チャンネルを切り替えても少なくとも放送される曜日が違う。

 

「確かめる?はい、番組表。どう?」

「いや、そんな……。ねぇ、違うでしょ?」

「なにも違わないよ?」

 

 日付は六日前、急いでスマホの日付も見る。また日付は六日前。LANEも六日前の会話で止まっている。

 ニッコリと、いつも表情があまり変わらないスタータちゃんにしては珍しい笑顔をスタータちゃんはした。

 

 

一回休み

 

 

 ちょっと考えさせてほしいとテレスは外に行ってしまった。少し実験のようになってしまったがどうやら近くにいる人もタイムトラベルができるらしい。考察していると寮室の鍵が開けられてドアが開いた。もう帰ってきたのだろうか?

 

「よう、ダイススターター。ちょっと話がある」

「寮長? テレスがどうかしたんですか?」

 

 どうやら我らが美浦寮長であるヒシアマゾン先輩だったようだ。テレスとは何度か話しているのを見たことがあるが、私と話したことはそれまでなかったはず……。大方テレスが相談かなにかしたのだろう。ヒシアマゾン先輩が悩みを聞いてくれるということを噂のみならず自分からも言っていた覚えがある。

 

「なんでも、少し張り詰めすぎてちょっとおかしくなっちまったって言ってたが……」

 

 訝しむかのようにじっとこちらを睨まれ、私は少し肩をこわばらせた。

 

「そうだな……確かにお前、少し自棄になった感じだな」

「確かに最後の未勝利戦ももうすぐだが……少なくとも、そう簡単にやられることはないと思うぞ?」

 

 そう、簡単にやられたんだ。やる気に満ちていてみんなそれに気圧されたのもあったんだ。まったくもって憂鬱だ。

 

「ま、最後まで諦めんなよ?」

「は、はい」

 

 そう言われてもなぁ。私には魔法のすごろくがあるけどこのままでは何度やっても勝てない気がする。

 

「……やっぱりなぁ。なんかこう、違和感が……本当にタイムトラベル? まさか

 

 ウマ耳でも聞き取れない小声で独り言ちた後、ヒシアマゾン先輩は迷ったように考え始めた。なにを考えているのだろうか。

 

「いや。なんでもないさ」

 

 違和感、とはなんだろう?そう思いじっと見つめるも私に明るく笑ってがんばれよ、とだけ言って出ていってしまった。 ……取り敢えず、明日からのトレーニングに精を出すとしよう。

 

 

一回休み

 

 

 いつもニコニコと柔らかく笑っているテレスが門限を過ぎて私に相談してきたものだから、嫌な予感がしていたが確かにありゃおかしい。しかもテレスいわくタイムトラベルをしたなんて妄想との区別もついていないかもしれないとのことだ。

 ダイススターターとはあまり関わる機会がなかったが、もう少し気に掛けてやるべきだったと後悔する。

 

「テレス。あいつは多分……」

 

 不安そうにこちらを見るテレスにかける言葉を詰まらせる。なんと言えばいい?自分でもどう表現すればいいのかわからない今のダイススターターを。

 

「ま、不安でも紛らわそうとしてるんじゃないか? たまにああいう奴は出るんだよ」

 

 取り敢えず、それらしい言葉をかける。

 

「そう、ですか」

「すまんが、あまり力になれそうにない。ごめんよ」

 

 まだ不安そうなテレスにも、おかしくなったダイススターターにも力になれそうにない自分が悔しかった。

 

「ところで……今日の日付は……」

「今日?今日は八月十八日だが……タイムトラベルが本当な訳ないだろ?そっちはあまり気にすんな」

 

 それを聞いたテレスはさっきのそれ以上に真っ青な顔をしていた。

 

 

中断

 

 

『本当に君は……ん? これ、絵本入り込み靴じゃないぞ!?』

『えぇっと……それって……どういうことなのさ?』

『君が使ったのは絵本入り込み靴じゃないの。二十二世紀の露店で安く買った中古だからこれが本当はなんなのがもわかんないし……。仕方ない、僕だけで行ってくるよ、君がいたらろくなことにならなさそうだしね』

『えぇ〜』

 





ゲットテレスコープ
同室の友人。既に未勝利戦突破済み。
人付き合いが少ないダイススターターの数少ない友人。
ダイススターターのことが少し怖くなった。それでも友達。

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