振り出しに戻るウマ娘   作:LBえもん

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遅くなりましたぁ。
感想、評価ありがとうございます。
もう少し更新頻度と文字数を多くしたい……!



『もしも契約ができたなら』

 

十月二日

 

「急にも関わらずありがとうございました。と、いう訳で少し多めの五百円です」

「あ、あぁ、ありがとうございます」

 

 意外と簡単に外れたミチビキエンゼルらしきものを取り敢えず人に目立たちづらい河川敷の橋の下(ここはなんていうのだろうか?何気に知らない)で外して気前よく(私はすっかり忘れていたが)五百円玉を貰った。……残りはお菓子なんかにしようか。

 

「いやぁ、本当に助かりました。通勤中に気になったとはいえそのまま手を入れた私がバカでした」

 

 ハハハと疲れ気味に笑うこの新人トレーナーの名前は指引(ゆびひき) (ゆかり)というそうだ。……バカだと自虐しているが、実際ほとんど初対面のような指引トレーナーに喉が乾いていたといえ着いてきた自分もバカである。

 

「それで、これをどうしましょうかねぇ……」

 

 と、まあそんなくだらないことを考えていると適当に地面に投げ捨てられたミチビキエンゼルらしきものを指引トレーナーは摘んでいた。

 このまま河に流してもいいかもしれない、なんて言いながら光輪を掴んで呑気にぐるぐる回しているのを見ると、この人を疑うのもどうでも良くなってきた。元々私のさいころが秘密道具であっても正直驚かないような代物なのもあって、この分だと(少なくとも自力では取れなかったことは)本当かもしれないと思い始めてきた。

 

「あの……少し貸してもらっても?」

「はあ……いいですが」

 

 これをどうするんですかといった感じの目線を受けて貰ったミチビキエンゼルらしきもの。確かに漫画やアニメで見たものにそっくりな気もするがこれといって変なところは……うん?光輪と人形部分を繋いでいるものがない。プラスチックや細い糸の感触もなく本当に浮いているように感じる。

 ……もしかするとこれ、本物では?

 

「……えいっ」

「えっ、それ本当に取れなかったんですよ?」

 

 ……思い切って手を突っ込んでみた。なんだか変な感触だがむしろ快適で蒸れたりしなさそうだ。

 

『はやく帰らないと授業に間に合いませんよ』

 

 本当に喋った。指引トレーナーに聞こえてなさそうな様子を見てもやはり本物かもしれない。……これがあるなら、もしかして私のさいころも秘密道具なのかもしれないのか?

 その後一旦外してみようとしたがウマ娘の自分でも外せず、やはり他人には外せるようで指引トレーナーに外して貰った。

 

「……そういえば、なんと言っていましたか?」

「えぇっと……早く帰らないと間に合わないって……今、何分ですか」

 

 ギリギリ間に合った。

 

 

一回休み

 

 

 今日はミチビキエンゼルに抜き打ちテストにと色々と大変だった。私は今日あったことを思い出しながら自主練も終わったので一度寮に戻ろうとしていた。

 ……そういえば私は間に合ったが、指引トレーナーは間に合っただろうか。ふと思い出してトレーナー寮の方をなんとなく見た。……ああいう人なら多分大丈夫な気もする。

 

「こんにちは。朝ぶりですが……そんなに驚かなくても」

 

 物陰に隠れて見えなかったが向こうに居たらしい。……そういえば前の選抜レースでも物陰から現れていたような気もする。少し変わった人だ。

 

「色々と話したいことがあったので……良いですか?」

「あー、はい、歩きながらなら」

 

 意外としっかりしているところはしっかりしていて(その割には朝ミチビキエンゼルに手を突っ込んでいたが)朝時間に間に合ったかどうかを聞いてきた。

 

「ああ、良かったですね」

「あ、はい。ちなみに指引トレーナーは?」

「……ええ、担当をまだ持っていないので一応間に合いましたが、たずなさんに軽ぅく白い目で見られましたよ」

 

 そう言った指引トレーナーは苦虫を噛み潰したような顔を体現していた。この人は無表情に見えて案外感情表現が豊かだ。

 少しの沈黙の後。

 

「……あれ、どうなったんですか?」

「あのあと鞄に突っ込みました。今も入ったままです」

 

 河には流さなかったらしい。……あれはそう安々と捨てていいものではないだろう。なぜ存在するのかわからないがあれは恐らく本物の秘密道具だ。

 私のさいころも気になって今日ネットで調べてみたところ、さいころで時間を巻き戻すといった力を持つ秘密道具が出番は少ないもののあったのだ。

 その名も『ふりだしにもどる』。

 ダイヤルもあれば数分単位での巻き戻しも可能……らしい。ゲームコントローラーにありそうな小さい穴はあったものの、ダイヤルらしきものはなかったのだが。

 さいころも秘密道具ならミチビキエンゼルも本物だろう。

 

「あの、ミチビキエンゼル、私にくれませんか?」

「駄目です。仮にもトレーナーがこんな怪しいものをウマ娘に渡すのはいけません」

 

 う〜む。(朝ミチビキエンゼルに手を突っ込んでいたが)中々しっかりとしているトレーナーだ。こんなものなら割と早めに担当がついていそうなものだが。ああ、そういえば新人だったか。

 

「そうですか……。そういえば指引トレーナーは担当を持っていないって言ってましたけど、狙っているウマ娘はいないんですか?」

「今のところは私が新人なのもあって特に……。取り敢えず今度の選抜レースでスカウトしようかなと思ってるんですが、ダイススターターさんは出走するんですか?」

 

 今年は前評判からもわかっていたことではあるものの中々に強いウマ娘が揃っていたはずだ。新人で経験がないということでスカウトできないと踏んでいるらしい。

 勿論出走することを伝え、良かったらスカウトしてくれないかと、まあ私にしては中々うまい具合にコミュニケーションを取れたと思う。

 

「それで、話はまた戻るんですけど……ミチビキエンゼル、どうしてもくれませんか?」

「本当に欲しいんですねえ。どうしても、と言うのですね?」

 

 おお、いけた。私の中での意外としっかりしているという評価を撤回しよう。本望を遂げて、今にも漏れ出てしまいそうなニヤケ顔を抑えてキリリとした顔にする。

 

「どうしても、です」

「分かりました、それなら……選抜レースでぶっちぎりの一着を取れるなら……そして私と契約するのなら……仕方ありませんねぇ?」

 

 趣味の悪いニヤニヤした笑顔をしながらこちらを見る悪い大人を見て、久々にふりだしにもどるを振ろうかと思った。

 

 

一回休み

 

 

 私は指引縁。ただのしがない新人トレーナーである。

 まだ担当を持っておらず、ウマ娘の朝練を見ながらトレセン学園に通勤している。とは言っても朝練中のウマ娘にスカウトなんてできていないが。

 ぼんやりと河川敷を歩いていると、草むらになにか落ちているのを見つけたので少し近づいてみると数ある秘密道具の一つ、ミチビキエンゼルのようなものだった。

 何故かはわからないが、なんだか無性に気になって手を入れてしまった。

 

『あなたは今すぐあそこの自販機にいきなさい』

 

 ミチビキエンゼルらしきものはそう言いながら向こうにある自販機を指差した。

 

『今すぐいくのです!』

 

 私がそんな超常現象に呆然としていると、どういう訳か引っ張られていった。抜こうと思っても抜けず、どうにか暴れるこれを抑えて自販機の後ろでさながらけんか手ぶくろのように一人格闘していると朝練中のウマ娘が自販機に近づいてきた。

 

「あっ、お金ないじゃん」

「なら、私が貸しましょうか?」

 

 しめた。そう思ってミチビキエンゼルを後ろで抑えつつ飛び出したのが、ダイススターターとの出会いだった。

 

 

一回休み

 

 

「メイクデビュー前にしてはうまいですね……」

 

 勿論名家だとかそう言われるところの出身には劣るものの、明らかに他のウマ娘との違いが見て取れる。他のトレーナーにスカウトされなければ良いのだが……。

 グラウンドの周りには他のトレーナーも私と同じように新入生のウマ娘をスカウト目当てなのかちらほら見かける。それと理事長秘書のたずなさんも。

 

「指引トレーナーさん。どなたかスカウトしたくなるようなウマ娘は見つかりましたか?」

「たずなさんですか、どうも。少し朝話したウマ娘がいましてね、ダイススターターと言うのですが」

 

 たずなさんが近づいて来たと思うと、朝遅刻ギリギリになったせいで目をつけられたのか、ただの新人トレーナーにも話し掛けてきた。案外理事長秘書というのは暇なんだろう。

 

「ダイススターターさんですか……。確かに今の時期にしては中々ですね。なんでも、つい昨日から急激に上手くなったんだそうですよ?」

「急激に、しかも昨日からですか?」

「お友達と話しているのを聞いていたのですが、なんでも因子継承かそれに似たようなことが起きたそうで……」

 

 ウマ娘にはよく超常現象が起こることはレース界隈……神話や民間伝承にも多いが多くの人々に認知されており、その中でもURAに非公式といえ認知されているものの一つが因子継承である。詳しいことはわからないものの、三女神に関する物の前で力を授かる……といったものである。

 とはいえ今回はたずなさんいわく違うような感じもするそうで、話を聞けば三女神と関係なしに起こったのでは、だとか。

 これだから困るのだ、ウマソウル関連の超常現象は。(ミチビキエンゼルがウマソウル関連なのかは流石に不明だが困っていることは事実である)

 

「それでは、また。指引トレーナーさんの活躍を期待していますからね」

 

 少し雑談をして、それも話し終えると走って……いや、ちょうどウマ娘基準でのランニングくらいで去っていった。

 そろそろ私も帰ろうかと思ってチラリとグラウンドを見るとウマ娘がこちらに走って来ているのが見えた。

 

「あ〜、行っちゃった。たずなさんに用事があったのに……」

 

 入れ違いで走ってきたのはピンクの髪と瞳孔が特徴的なウマ娘。どうやらたずなさんに用事があったらしい。

 

「どうかしましたか?」

「わっ、トレーナーさん?私ハルウララって言うんだけどね、友達のスタータちゃんのえ〜と、インシケイショー?ってのをたずなさんに聞きたかったんだけど……」

 

 スタータちゃん……スターター……ダイススターターのことか。

 どうやら丁度ダイススターターに起きた何かしらの超常現象についてたずなさんに聞こうとしたようだったので少し掻い摘んで教えておいた。

 

「えーと、スタータちゃんのは因子継承じゃなくて……なんか、こう……よくわかんないやつなの?」

「まあ、因子継承も良くわかってないものですからね。」

「そうなんだ!ありがとうございました!」

 

 向こうにスキップしていくハルウララというウマ娘はトレーナー間でもたまに話題になるウマ娘で、負けてもニコニコしている、商店街の人と仲が良くていつもお手伝いをしている、飽き性でトレーニングに集中できていない、癒やされる……まぁ、少なくとも人格面に関しては良い噂ばかりだ。

 しかしレース関連に関してはからっきしのようで契約の話になると皆苦い顔をするウマ娘だ。それこそ名トレーナーでもないと勝たせることは不可能だろう。

 ダイススターターと練習していたグループとは別のグループに近づいていくハルウララを眺めて私も今度こそ帰ろうと……。その前に良いことを考えついた。

 

「いや、そうしたほうが……まったく、私というものはねえ?」

 

 ダイススターターに少しでも仲良くした方が契約できる確率も上がるだろう。一人になった時の方が話しかけやすい。確かダイススターターは美浦寮だったはずだ。

 

 

一回休み

 

 

 夜も十時半は越した頃。テレスが置物のように静かに眠っていても私は寝ることができず、ベットの上で考えごとをしていた。

『選抜レースでぶっちぎりの一着を取れるなら』

 ミチビキエンゼルは欲しい、一着は取れるかもしれないがぶっちぎりの判定がどこからどこまでかはわからないのが問題だ。

『そして私と契約するのなら』

 指引トレーナーはただの新人トレーナー。正直そこまでの魅力は感じない。

 

「うぅん……」

 

 しかし、ミチビキエンゼルはどこ由来かもわからない秘密道具の、ふりだしにもどるの手掛かりになるかもしれない。

 それに教官よりも具体的なアドバイスなんかもくれたトレーナーだから、中央トレーナーとしての能力も少なくともそこそこ持っているだろう。

 前回はトレーナーと契約できなかったこともあり迷っていた。もしミチビキエンゼルだけをとるならふりだしにもどるを使えばいい話だが、もしかすると前回は私をうまく育成できる自信があったからスカウトしてきたのかもしれない……なんて思うと惜しい気もする。

 仕方がない、こう言うときは運任せだ。

 スマホを開いて、ネットサイトでさいころを振ってみることにした。

 

 

一から三ならこのまま、四から六ならふりだしにもどるを振る

 

中断

 

 

「ふむふむ……へぇ、君って理事長さんの猫なんだ」

 

 話は朝に戻り、ドラえもんはタケコプターで月見台に向かおうとしたところ、横の河に猫が溺れているところをみつけて助けていたところだった。

 

「ぜひ、お礼がしたいので来て欲しい……かぁ、うーん、でも帰らなきゃだし……」

「……ま、いっか! 遅くなってもタイムマシンで戻ればいいし」

 

 流石はあの幼きまま中央トレセン学園の理事長の座を勝ち取った秋川やよい……の飼い猫。恐らくだが言葉巧みにドラえもんを誘導したのだろう。

 

「お言葉に甘えてっと……ふふん」

 

 鼻歌を歌いながらドラえもんと一匹はトレセン学園に歩いていった。

 





指引 縁
今年入った新人トレーナー。
ちょっぴり腹黒いかもしれないが、少し間の抜けた大人。

ドラえもん
次回こそトレセン学園の敷地に足を踏み入れる……かも?

なんとか投稿できました。5000文字って一気には書けないですけどのんびり(一ヶ月以上)書けば案外行けるものなんですね。
次回はいつになるかな……?

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