転生者の戦極ライフ   作:ショウ・ヤマ

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史実年表は無視でやっていきます。
細かい突っ込みも多々あるかと思いますがご了承下さい。


序章〜地方豪族の憂鬱な日々〜
第1話


 越後国と甲斐国に挟まれた信濃国、俺が生まれた時そこには明確な統率者は無く多数の豪族がひしめきあっていた。

 

 そんな状況が変わったのはつい最近の話だ。

 今ではこの信濃国は越後国の上杉謙信や甲斐国の武田信玄という大名に狙われた全国で観てもかなりの危険地帯となっていた。

 

 そんな危険地帯である信濃国にある石高2万にも満たない豪族である我が家も例外では無く現在かなり荒れていた。

 まあどういう事かというと、俺の自己紹介も兼ねて色々説明したいと思う。

 

「上杉につき即刻武田へと対抗するべきであろう!!」

 

 ドンッ。という音と共に齢80は超えているはずなのに年を感じさせない、というかどう見ても40代程度にしか見えない男、一栗放牛は大声を響かせ座っている床を叩く。

 一栗放牛、古くから我が家に仕えている一栗家の者である。

 俺の祖父とほぼ同年代らしく、祖父と共に過去に武田家で起こった一揆を治めるべく戦場へと赴いた事もあるらしい。

 その際には剛力無双と言わんばかりの大活躍だったとか(本人談)。

 現在我が家の者では唯一の戦場経験者でもある所謂老将である。

 

「うるさいです。クソジジイは黙ってるがいいです!!そもそも何の誼もない上杉が受け入れるかもわからないのです。それよりも多少は誼のある武田につくほうが現実的です」

 

 これに対抗し同じく床を叩き大声で返すのは、これまた10歳前後にしか見えない栗色の髪ツインテールが特徴な一栗放牛の孫娘である一栗高春である。

 この一栗高春、見た目こそ童女ではあるのだが俺(元服済の16歳)よりも年上である。

 俺が物心ついた時には今と変わらない姿だったし。一栗家は不老長寿の秘薬でも持っているのだろうか?

 昔、一度だけ興味本意で年齢を聞いた事があるのだが返答は槍(もちろん刃付き)での顔面突きだった。それ以降は聞いていない。

 なにせ、この一栗高春という人物は放牛に負けず劣らず、下手したら放牛以上の女傑なのである。命は大事にしたいね。

 

 この一栗の家の者は幼い頃に両親を亡くし天涯孤独の身となった俺を現在に到るまで、あくまでも俺を主人として育ててくれているのである。

 この戦国の世にも珍しい忠義の士なのだ。そんな二人に挟まれるように上座に位置する場所に座っているのが俺こと鷹島雛樹、信濃の豪族である鷹島家の当主である。

 何を隠そう、所謂現在日本からの転生者というやつである。

 

 この世界に生まれて物心ついたあたりから前世の記憶が頭に流れて自分が転生者であると気づいた。

 よく読んでたSSみたいに神様なんかにあった記憶はない。

 それに残念な事に前世の記憶があるといってもこの戦国という時代や後の世や自分の前世に関する記憶が霧がかかったみたいにかなり曖昧な感じで役に立たないのだ。

 まあ、正直その曖昧な記憶のなかでは戦国時代とは男性がメインで活躍したはずではあるのだが、何故かこの世界では高春の例もあるように女性も入り交じっているのには最初は面食らったが。

 

 そして、何故だか前世にはあまり無かったと思われる身体能力がチート気味になっていた。俺はこれを転生特典と思っている。

 この戦国の世の中を生き抜く為には力はあったほうがいいからね。

 

 まあ、俺の事はこれくらいにしてだ、現在の鷹島家状況をもう少し詳しく説明したいと思う。

 二人の会話から察せるとは思うが鷹島家は現在、武田家につくか上杉家につくか滅亡かという三択を強いられている。

 何故、そうなっているのかというと原因は簡単なものだ。

 父の跡を継いだ武田信玄がこの信濃に難癖付けて侵攻を始めたのである。

 そうして瞬く間に諏訪家・木曾家・と信濃四大豪族を臣従させたのである。

 

 残った四大豪族のうちの一つである小笠原家は既に武田家に敗れ上杉を頼り敗走。

 そしてもう一つである村上家はというと。

 現在の村上家当主、村上義清は武田家に臣従することを良しとせず小笠原家と同じく戦を選んだ。その村上家、いや村上義清の力は凄まじく武田信玄を二度にわたって敗戦させ、現在三度目の合戦中である。

過去二度は退けられた武田家であるが今回は村上家を内部から崩しに掛かり調略を仕掛けた。その効果もあり村上家は内部がボロボロの状態で三度目の合戦を行っている。

もはや数日中に決着はつくであろう。

 

 村上家が敗れたらもはや信濃陥落は目前、返す刀で鷹島家に攻め入れるだろう。

だからこの三択、いや滅亡なんてしたくないから二択を早急に決めなければならないのが鷹島家の現在の状態なのである。そして相談し行く末を決めようと思った矢先にこの二人の意見が割れたのだ。

 確かに二人の意見はどちらも正しいのだ。

 

 放牛の言う上杉家を頼るというのも充分に有りな意見だ。

 確かに鷹島家は上杉家と誼はまったく無い、だが上杉家当主である上杉謙信は越後を統一して間もない。

 そんな状況で信濃が武田家へ抑えられたとあれば次に危険なのは信濃に隣接する越後上杉家である。

 現在の上杉家は信濃への侵攻は行っていないが、それは信濃へ侵攻する為の大義名分がないからだ。

 しかし信濃の豪族を受け入れれば旧領奪還を大義名分に掲げ信濃勢をたて信濃侵攻の足掛かりとする事が可能だ。

 是が非でもとまではいかいないが信濃勢を受け入れる事は上杉家からしても喜ばしいことだと思う。

 しかし上杉家を頼るとなれば、その情報は武田家の知るところとなりすぐにでも鷹島家は攻められるだろう。

 そうなれば上杉家からの了承を得る前に滅ぼされてしまう可能性もある。

 

 そして高春の言う武田家だ、先にも述べた通り放牛は俺の祖父と共に武田家への一揆を治めるべく加勢している。

 そして、稀にではあるが商いのようなもの行っている。

 鷹島家の心証は悪くないはずであり、臣従を申し出ても無下にはされることはないだろう。

 なんといっても武田家は勢いがある。

 信濃も統一してしまえば武田家は戦国一の大国持ちとなりその勢いに陰りはそうはないだろう。

 しかし、これまた武田家に頼るとしても鷹島家等の小豪族など価値も低く見られ良くない待遇を受けててしまうのでは?と思う。

 

 上杉家か武田家か正直迷いどころである。

 

 

 ちなみに放牛は武田家が難癖付けて信濃侵攻をしている事が気に入らないらしい。

 

 俺は迷い、二人は尚も言い争いを続けていると廊下をドタドタと走る音が聞こえ勢いよく障子が開かれる。

 

「大変でございます。村上義清殿が敗れ現在逃走中との報がはいりました」

「何だって!?予想より早いじゃないか。ちっ、で村上義清殿はどちらに向かっている?」

 

 報せをもってきた者に、舌打ちし尋ねる。

「はっ。村上義清殿は現在我が領土へと向かってきております。おそらく上杉家へ向かうものと思われます。さらに村上義清を追うべく武田家の追撃隊もこちらへ接近中です!!」

 

「あ〜。もうなんだってこっち来るんだよ」

 

「ここは越後への道に繋がってる最短の道ですからな。それに他は道とはいえないようなものばかり。越後へと行くならここへ来るしかありますまい」

 

 至極真っ当な突っ込みが放牛からはいる。

 まったく、いくら上杉家への通り道だからってこっちに来んなよ。

 道とは言えないような荒れ地や山林越えろよ糞が。

 戦の種を持ち込みやがって。

 って、いかんな落ち着け俺。今は愚痴言う場面じゃないな。

 

 俺は慌てる脳を冷やすように深く深呼吸する。

 

「よし。放牛、高春すぐに出立の準備をしろ。兵も全部連れていく。戦になるかも知れんからな。準備が出来次第に出立する、急げよ」

 

「「はっ。かしこまりました(です)」

 

 こうして、結論が出ないまま鷹島家は村上家と武田家の対処をすべく出発するのである。




上杉家か武田家か実は作者も決めかねている(オイ

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