ボクがキミを王にする   作:モーン21

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※公式戦だと前半開始が奏和攻撃(レイド)なら後半開始は能京攻撃(レイド)のはずなのに、この試合前半も後半も奏和から攻撃(レイド)開始してますけど、これは練習試合だからってことでいいんですかね?


第9話 VS奏和 三人の獣

【宵越side】

 

俺にとって姫沢叶はよく分からんやつだ。

 

最初公園で部長と一緒に出会った際におちょくられたことには今でも根に持っている。だから最初俺はあいつと仲良くなるつもりはなく、今にして思えばかなり罰当たりな態度を取ったなと回想する。

 

しかし、姫沢は俺の無愛想な対応に腹を立てることはなかった。更に後の歓迎会で俺のファンだからメシの支度をしたいと言い出したことと、カバディの攻撃(レイド)でけちょんけちょんにされたことで俺の中であいつをどう見なせばいいのか分からなかった。

 

更に休み明けの学校で同じクラスだということが分かったり、ヤツの料理が思いのほか美味かったり、ヤツの部屋の風呂に入った後にマッサージを受けるのが日課になったり等色々なことがあったことも原因の1つだ。しかし、ヤツのことが分からん1番の理由は別にある。それは……

 

 

 

 

 

「コートチェンジ!!攻撃(レイド)奏和(そうわ)!!試合再開します!!」

 

「6番と姫沢が交代か…気をつけていけよ」

 

「あれ?あの素人くん下げられちゃったんすね」

 

ぐぬぬぬ…

 

六弦と高谷にこちらの交代について触れられる。すごくムカつく。

 

「お…落ち着くベヨイゴシ。ヒメサワにも言われたろ?」

 

「うるせー!俺は落ち着いてる!!」

 

「まったく落ち着いてねーベよ…」

 

隣の畦道が何か言ってくるが的外れも良いところだ。俺は落ち着いている。少し、少しだけ!この交代を不服に思っているだけだ。交代の理由もまぁ納得できるものだったからな。これ以上引き下がるのも良くないなと思ったのだ。それに、

 

『ボクとマーくんは病み上がりだからね、体力も大分落ちてるから後半だけでも持たないかもしれない。いつでも出られるように集中は切らさないようにね』

 

俺からの質問が終わった後思い出したように姫沢が言ったことだ。その言質にほだされたわけではないが、言われた以上は準備しないわけにはいかない。俺は少しでも早くコートに戻るためにも本当に不服だがベンチにいる間に守備(アンティ)を見て少しでも自分の身にしなければならない。

 

ここ数日部長との居残り練習で『ロールキック』等攻撃(レイド)を中心に学んでいたから守備(アンティ)についてはまったく触れずにいた。俺が『最強の攻撃手(レイダー)』を目指していることもあって正直守備(アンティ)は無視していたこともある。回避は何故か他のヤツよりも上手いようだが倒すことは全然分からん。前半も何度か高谷を掴めたのだがそのどれもヤツを倒すことには繋がらなかった。

 

「カバディ…」

 

「高谷来るぞ!!」

 

「キャント切れんのを待つ訳にはいかない!!隙があればキャッチ行こう!!」

 

高谷の攻撃(レイド)が始まりそれに対して井浦の指示も飛ぶ。高谷の狙いは部長。今(チェーン)を組んでいるのは水澄と伊達のみ。姫沢は前半の俺と同様奇数人数の時は(チェーン)は組まないようだな。

 

高谷の正面からのタッチを余裕そうに躱す部長。いつ見ても分からん部長と姫沢の回避は。俺のはただ見て反射しての回避なのに対して2人の回避は完全に動きを呼んで先回りしている感じだ。見てるものは同じなはずなのに。

 

高谷は時折対角の姫沢を見て牽制している。高谷が部長と姫沢に対して攻撃(レイド)をするのはこれが初めてだ。2人が世界組だというのは試合前から把握していた所を見るに2人への警戒はひとしおだろう。俺の時にはなかったそれにムカつく所はあるが。

 

一泊置いた後高谷は先程までちょこまか動いていたのから一変、一歩ずつ部長へ向けて歩み続ける。(パワー)なら勝てると当たりをつけたか?マズいな。

 

だが部長は徐々に進出してくる高谷に対してもまったく動かない。だがもう一歩進もうとしたタイミングを見計らって特攻(タックル)。高谷は少し意表をつかれた形だが予想通りの展開のはずだ。掴まれてから振り切るなり掴まれたまま帰陣するなり高谷有利のはずなのに高谷は捕まることを嫌って飛び退いた。そして部長の特攻(タックル)に続いて近づいてきていた水澄、姫沢に対して右足を振り回す。

 

高谷の攻撃(レイド)が六弦を挟んだものであったこともあって水澄も高谷のリーチはまだ完璧に測り切れていないようだった。姫沢もずっと見ていたとはいってもそれはベンチからのもの。外から見るのと中から見るのとじゃ勝手が違う。俺は2人が接触(ストラグル)される光景を予見した。

 

しかし

 

触られたのは水澄のみ。姫沢は高谷のリーチを完璧に把握していると言わんばかりに紙一重の所で高谷のタッチを回避した。

 

「はぁ!!?」

 

思わず声がでた。今のは接触(ストラグル)されるタイミングだった。仮に俺だったら接触(ストラグル)されていただろう。

……いや、されないが?誰かが接触(ストラグル)されると言っても俺は絶対認めない。

 

そういえば歓迎会の後に姫沢は言っていたか。『相手がどう動くのか感覚で分かる』のだと。だからといって相手のリーチまで含めた距離感覚が瞬時に分かるものなのか?分かるとしたらそれはすごいなんてものじゃないぞ…。

 

高谷は接触(ストラグル)が1人なのに対して不思議そうにしながら水澄からの守備を避けるように後ろを向いて帰陣する。これで9点差だ。点差を付けられてる以上奏和からの得点はなるべく避けたい所だが…!!

 

追撃!!!

 

完全に不意を突いたはずだった部長の追撃をすんでの所で回避する高谷。今少し振り返ろうとしていたがそれで躱せるのか。俺が前半高谷にやられたことを高谷はしのげたことに対してなんか面白くない。

 

追撃に慌てる奏和守備陣に対して部長は落ち着いたまま貪欲にコート最奥に向かいボーナスを獲得。

 

「「帰すかよ!!」」

 

右側の守備(9番・4番)が声を出しながら(チェーン)により部長の進路を塞ぐように立ちふさがる。中央の守備(六弦・5番)が左側、中央線付近の高谷がさらに外側をカバーするように動く。部長の進路は完全に塞がれたように見えたが、

 

「カバディ…」

 

前方の2人(9番・4番)を倒して道を作る部長。力によるものではない、カウンターだ。前半には披露していない技に奏和守備陣も驚いているようだ。というか六弦も知らないんだなカウンター。

 

()けろ高谷!!」

 

六弦の指示に舌打ちしながら最後の部長のタッチを躱す高谷。部長も深追いせず後ろの様子をうかがいながらの帰陣。こういう細かい所で俺と経験者(部長)の違いがどんどん出てくるな…。

 

「なんだ今のは…!!」

 

「あわよくば高谷も触ろうとしてやがった…」

 

「こっちの守備を削っていこうと思ってた?それは無理だ

 

部長がいつぞやの黒いオーラを出しながらの邪悪な笑みに少し震えそうになる。こっちが悪役だと言わんばかりだ。観客席の方からも歓声は1つもなく、代わりにヒッと怯える声が聞こえてきた。

 

18対24

 

「…水泳(あっち)にもいたな…競技中に人柄も動きも変わる人…懐かし…」

 

点数が徐々に縮まることで少しは緊張するかと思ったが高谷は余裕そうに振る舞う。

 

「そんな奴らもみんな沈めて、オレは1番になったんだった」

 

そう言いながら不敵な笑みを浮かべる高谷。

 

……

 

すごい顔になりそうな所をなんとか抑える。高谷(こいつ)が怯えることはねーのかよ。

 

「すげー性格してんな…」

 

アウトから戻ってきた水澄も俺と同じだった。それとは反対に笑みを浮かべる部長。俺を置いて勝手に勝負を始める2人に対して歯を噛みしめることでなんとか耐える。

 

そうしながらコートの方を見ると姫沢の表情は他のヤツらと全然違うものだということに気付いた。2人(部長・高谷)みたいに勝負に飢える獣のような笑みではなく、他のヤツらと同じ不明な力に恐れを抱いているわけでもなく、ただ目の前の事象に対応しようと仕事にあたるような無表情を浮かべるだけだった。普段はコロコロと表情が変わっていたのに練習の時攻撃(レイド)成功した時はあれだけ喜んでいたのにまるで別人のような姫沢に思わず気圧されそうになった。

 

再度高谷の攻撃(レイド)。高谷の狙いはまたしても部長だ。しかし先程と違うことがあった。対角の方、姫沢が伊達と(チェーン)を組んでいたのだ。

 

普段の守備(アンティ)練習で姫沢は特定の人物とだけ(チェーン)を組むことは無かった。俺とも(チェーン)を組もうとした時に激しく断わったことがあった為俺と組んだことはないが、俺以外の全員と組んだことはあるはずだ。だが、裏を返せば姫沢の連携は出来る人は多いものの時間の問題もあってそこまで深くない。水澄と伊達(2年生)(チェーン)を断ってまで姫沢と(チェーン)を組むメリットは分からなかった。

 

俺の困惑を余所に高谷の攻撃(レイド)は続く。高谷は左手を部長の顔の前へ向けて大きく広げる。視線が読めないことを嫌った部長の動きを読んでいたかのように高谷が今度は脚でタッチを図る。部長の脚を狙ったそれは躱されたのも束の間今度は部長が高谷の脚目がけてのチャージ。それも躱した高谷が低い体勢の部長目がけてタッチを図るもたった数センチ届かなかった。

 

一挙手一投足が、紙一重の連続。互角の勝負を見せる2人だがこのコートにいるのは2人だけではなかった。

 

姫沢と伊達が特攻(タックル)する。速さ(スピード)は伊達に合わせているからかそこまで速くない。速さ(姫沢単体)よりも(姫沢・伊達)を優先しての(チェーン)だというのは(チェーン)を組んだ時点で分かっていたがこの速さだと高谷に余裕で対応されるぞ!

 

予想通り高谷も2人の特攻(タックル)には気付いていたようで避けられないタイミングで右腕を振り回す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、未だ接触(ストラグル)なし。

 

何故か、2人の特攻(タックル)が急にキャンセルされていたからだ。

 

「GO!!!」

 

姫沢の少し高い声がコートに響く。右腕を振り回したことで無防備になった高谷の胴体へ向けて2人の特攻(タックル)が刺さった。思えば前半も通して伊達が守備(アンティ)でタッチされることはあったがそれは全て攻撃手(レイダー)側からのタッチによるもので特攻(タックル)によるものはこれが初めて。

 

2人の特攻(タックル)によって高谷の身体が地から離れた。その勢いのまま場外へ行くかと思われたが高谷は飛ばされたまま右腕を後ろに伸ばして自陣へ届かせようとする。

 

タックルを食らってるクセになんでそんな動けんだよ!!?

 

見ながら俺は舌打ちを打つ。だがその右腕は姫沢によって抑えられた。

 

姫沢!?これも見えてんのか!!?

 

高谷も思わず目を見張ったようだ。しかし、残った左腕にまで姫沢の腕が回ることはなかった。ギリギリの所で高谷の左腕が中央線を越えて帰陣成功。奏和に2点が追加された。

 

18対26

 

「はっ、バンザイ帰陣なんてカッコつかねーな…」

 

「…高谷さんは顔が良いんだから、ダサい行動でバランス取ってくださいよ」

 

「言ってくれるねぇ()()()。可愛い顔してるくせにしつこいんだから」

 

「褒め言葉として受け取りますね」

 

未だに起き上がらない高谷に向けて姫沢が手を伸ばす。高谷はその手を取って立ち上がった。高谷が少しだけ笑みを浮かべる傍ら姫沢は先程から相変わらずの無表情だった。

 

「絶対倒します。期待して待っていてください」

 

「ははっ、可愛くない1年生だ」

 

その言葉を最後に2人は離れる。片やコート内へ片やコート外へ。表情も片方は笑顔なのに対してもう片方は無表情。コートに戻って仲間から何か言われても無視する高谷に対して伊達と先程の守備(アンティ)について話を進める姫沢。どこまでも対照的な2人だった。

 

……

 

俺はさっきの守備(アンティ)について振り返る。最後の高谷の右腕を抑えたのはわかる。姫沢なら普段の練習で似たようなことをやっていたからだ。だがその前の急停止(キャンセル)がまったく分からない。姫沢1人ならできても驚かないがお世辞にも素早いとは言えない伊達も同じ動きができたことに驚きが隠せなかった。

 

「すごいべダテ先輩。おらもヒメサワと(チェーン)組んでる時はいつも以上に動ける気がするもんな…」

 

「は?どういう事だ畦道!」

 

考え込んでいると隣の畦道が聞き捨てならないことを言い出した。慌てて聞き返すと逆に畦道はそんな俺に対して驚いているようだった。

 

「え?ヨイゴシも知ってるはずじゃ…いや、そういえばヨイゴシはヒメサワと(チェーン)組んだこと無かったんだべな。もったいないべ、今度練習で組んだ方がいいべよ?」

 

「余計なお世話だ!!とにかくさっき言ったことについてさっさと教えろ!!」

 

「分かったから落ち着くベ…。何て言うかなヒメサワと(チェーン)組んでる時は部長相手でも安心できるんだべ。攻撃手(レイダー)のタッチに対してもビビらないで対処できるというか、なんか()()()()()()()()()()()()()()気がするんだ」

 

んなバカなことがあるか!!

 

と言いたいが確かにそれなら先程の特攻(タックル)キャンセルできたのも頷ける。何かしらの指示が姫沢から伊達にもあったはずだが、伊達にも少なからず分かったからこそできたのだろう。

 

そういえば俺が攻撃(レイド)練習の時姫沢から得点を取れたことも()()()()()()()()()()からも得点は取れていないことを思い出した。あの時は姫沢が単に上手いからだと思っていたが今の話を聞いた上で思い出すとただそれだけにはとどまらない。それが本当なら姫沢の鎖周りから得点を取るのはほぼ不可能と言っても言い過ぎではないと思った。

 

コート外にいる姫沢は未だ無表情を貫いている。仮に高谷を倒せたらその無表情は崩れるのだろうか?何となく何の根拠もないが俺はそうはならないと思った。

 

 

 

 

 

……それから2人の目まぐるしい攻防に会場は沸いた。

 

そこからは、攻撃手(レイダー)同士首のとりあい。

 

互いの攻め手(エース)を狙う展開…高谷を守りつつ王城を倒そうとする奏和。

 

同じく、高谷を倒すべく果敢(かかん)に飛びかかる能京。

 

両者一歩も譲らず…!!

 

能京は姫沢、奏和は六弦とそれぞれ守備(アンティ)の名手がいるからか前半ほど得点は加算されなかったが、徐々に差は現われていた。残り約4分時点で。

 

23対27

 

後半開始時にあった8点差が4点差にまで縮まっていた。

 

「はー、4点差!!あとちょっとで逆転だべなヨイゴシ!!でもなんでこんな縮まったんだべ?」

 

「…姫沢のおかげだろうな」

 

畦道の疑問に答える。答えるつもりはなかったが手元のスコア表に目を落としていたら思わずそう零していた。畦道がまだ分からないようでこっちをまじまじと見てきたから認めたくないし面倒くさいが続けることにした。

 

「…後半に入ってから部長の攻撃(レイド)の得点は8点。それに対して高谷は4点。こっちの攻撃(レイド)終わりで点数が縮まっているのはあるが、能京(うち)の守備での失点が減っているからこその結果だろう。ここの守備(アンティ)で無得点にできれば…」

 

そう言いながら今高谷の攻撃(レイド)中ではあるが奏和コートを見る。そこには六弦が1人コート内で孤独に立っていた。

 

「ここで高谷を倒すまでいかなくても無得点で帰らせれば奏和の守備は2人だけ。部長の攻撃で十分全滅(ローナ)できる人数だ」

 

丁度能京(うち)が前半で直面した問題だ。相手が得点を重ねる裏でこちらが得点できない状況が続くとこちらの守備人数が揃わないまま相手の攻撃(レイド)を受け続けなければいけない悪循環に陥る。それが今は奏和に襲いかかっている。

 

無論それは奏和も分かっているはずだ。だから後半開始早々みたいに高谷も部長狙いではなく取れる所を取って守備人数を戻そうと思っているだろう。今も部長を狙っているが本当の狙いは援護に来る他のメンバーだというのは言われずとも分かる。

 

それはコートにいる5人も分かっていた。姫沢も伊達と(チェーン)を組んで牽制をかけるが特攻まではしない。狙いが分かっているから深追いしないのだ。井浦の指示によってボーナスを取られても構わないということでかなり引き気味な位置にいるのもそのためだろう。

 

高谷は引き気味な能京(うち)守備(アンティ)に対して脚を伸ばしてボーナスを取ったが井浦の指示もあって誰も触られなかった。後ろを向きながらの帰陣の途中で姫沢が近寄るも高谷は腕を振って近づけさせずにそのまま帰陣。

 

23対28

 

ボーナスこそ取られたものの誰も接触(ストラグル)されなかったことで奏和の守備人数は2人のみで増加はなかった。残った2人は六弦と高谷の強敵ではあるが部長なら何の問題もないだろう。俺がコートにいたら攻撃(レイド)に出させろと言いたい所だが…!!

 

 

 

 

 

 

 

【高谷side】

 

オレが姫沢叶を見て思ったのは「こいつが本当に世界組1番なのか?」だね。

 

事前に六弦さんから1年生の世界組1番が能京にいることは聞いていた。それと六弦さんのライバルの王城さんのことも同じかそれ以上に気になったから能京が使用する更衣室に待機して出待ちすることにした。

 

3年生の1番とは去年の大会で対決できたけど、2年生(タメ)の1番にはまだ会えていない。去年の夏大会では話すら聞かなかったからもうカバディ辞めたのかと思ったら冬大会にはいたみたい。いつか大会でも対決したいね。

 

いや、それよりも1年生の1番だった。

 

ドアが開いて挨拶をした後に誰がその1番なのかはすぐ分かった。オレのことを()()()()こともそうだし雰囲気からして周りと違ったから。でも女子中学生と言われても納得できる可愛らしい外見とおんぶされるほど体調悪そうにしている情報とマッチしなくて少し混乱したよ。

 

そして試合開始。王城さんも1番くんもベンチスタートらしい。どうやらつい最近までケガで入院していたとのこと。ふーん、何か訳ありみたいだね。後で聞いてみたいな。

 

それから宣言通り大量点差をつけて2人を引きずりだそうとした。途中5番くんがケガして王城さんの方を先に出させることが出来たんだけど、反応すらできないままアウトにされた。()が聞こえないのは久しぶりだったから上がっちゃったよね。六弦さんも上がったみたいで1対1(タイマン)を挑んでた。結果は負けちゃったけど王城さんがどういう人なのかは分かったし、努力家(そういう人)を負かすのも楽しいから全然大丈夫。でもせっかくの良い気分を邪魔されたのはウザかったね。負けてるクセに余裕そうな顔してるところも。いつかやり返したい。

 

ハーフタイムが明けてついに1番くんがコートに出てきた。ハーフタイム中チラッと見てたけど交代したくないという素人くんを言い負かしている所は面白かったね。でもそれよりも興味があったのはやっぱり王城さんだ。さっきの借りも返したいし、純粋に勝負したい(負かしたい)

 

攻撃(レイド)をして王城さんと1番くんはすごく厄介だってことが分かった。2人とも完全にオレの動きを読んでいるみたいだったし、1番くんの場合は隣の白目クンを完全に誘導してた。あれのおかげで1番になったのかな?ちょっとおしゃべりしたけど上の人に対しても生意気な所は好感もてた。仲良くなりたいね。

 

でもなー。なんか義務感でカバディやってるカンジがするんだよね。ずっと無表情で楽しくなさそうだし。余裕がないって訳じゃなさそうだけど、オレや王城さんみたいに楽しんでやっても誰も文句言わないだろうに。何を背負った気になってるんだろうね?

 

気付けば8点もあった点差は4点まで縮められていた。いやぁ、マジで面白いね!前半は簡単に得点取れてたのに後半になってからまったく簡単にはいかなくなった。王城さんは触らせてくれないし、1番くんが触りに来る時は絶対と言っていいほど糸目クンも一緒だ。1人だけの時は王城さんみたいに絶対に触らせてくれない。そのクセ牽制はしてくるのが本当にウザいね、可愛くない。

 

相手の2番さんが引き気味に守るように守るようにとの指示を出す。奏和(うち)の守備人数が2人だけだからボーナスはいいから守備を増やさないようにだろうね。まったく脳筋らしくない作戦だ。

 

ボーナスを取れば手が早そうなパーマくんが突っかかってくるかなと思ったけどそんなことはなかった。前半の能京と同じとは思えないな。マジで強い。キャントを1分以上粘ったのにボーナス以外に得点できなかったのは初めてだよ。帰ろうとした時に1番くんが突っかかってきたのは分かったけど、牽制だっていうのが分かっていたから前までと同じように腕を振る。やっぱり躱すよね、分かってたよ。

 

後半開始早々追撃をかましてきた王城さんを視界から外さないように帰陣する。でもどうしようか?守備の人数増やせなかったから今コートにはオレと六弦さんだけ。2人だけで王城さんの相手をするのは手が焼ける。でも全滅(ローナ)されないためにはなんとか凌がないと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何をやっている!!?早く戻れ高谷!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

攻撃手(レイダー)は王城じゃない!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視界には入っていたんだ。

 

いくら王城さんを最警戒していても一番近くにいる相手を警戒していないはずがなかった。

 

しかし相手からはまったくそういう()は聞こえなかった。牽制に来た時も完全に守備のそれだった。周りの反応も。

 

だって、思わないじゃん?

 

それまでずっと無表情で楽しげもまったく見せない程守備に徹していた男が、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別人と見間違うほどの、太陽のような会心の笑顔を浮かべながら攻撃(レイド)に出てくるなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【姫沢side】

 

身体が重い。

 

後半だけの出場だっていうのになんだこの体たらくは?自分のことながら情けない。いくら病み上がりとはいえ、集中しすぎたら疲れやすいとはいえ、あの時はもっと長く動けていたのに。

 

何を我慢しているんだ、ボクは?

 

気付けばボクは中央線(ミッドライン)付近にいた。あぁ帰陣しようとしている高谷さんを牽制に来たんだっけ?誰も触られてなかったから奏和の守備は2人のまま。狙い目だね。

 

試合に出る前のボクは何か考えてたみたいだけどなんだったっけ?

 

……まあいいや。思い出せないってことはどうでもいいことだってこと。

 

マーくんは遠い。ならいいや。迷惑かけたらその時だ。

 

だって今なら攻撃(レイド)に出られる。

 

高谷さんが帰陣する。あ、マーくんの方を見てる。ボクのことは眼中にないのかな?

 

なら仕方ないね!!

 

ボクのことを放っといて余所見する高谷さんが悪いんだもん!!ボクは悪くない!!!

 

身体が軽い。今ならなんでもできそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【宵越side】

 

攻撃手(レイダー)は王城じゃない!!」

 

六弦がそう高谷に告げるのと同時だった。牽制に出ていた姫沢がそのまま追撃に出て高谷に接触(ストラグル)した。部長の時は躱せていた高谷が何の反応もできていない。

 

俺は思わず立ち上がった。隣の畦道も同じだ。

 

触られた高谷はやっと事態に気付いたようでコート奥へ進む姫沢を追う。進行方向には奏和の部長であり守備の柱の六弦。六弦は一瞬面を食らったようだったがすぐに落ち着いたようだ。

 

六弦は逃げもせずにただその場にいるだけだった。その佇まいから隙らしい隙はない。どこを触っても掴まれて倒される。そう思わされるほどだった。

 

姫沢と六弦、2人の間の距離が縮まり最早接触(ストラグル)も避けられない距離になっても姫沢はまったく減速せずトップスピードのまま突っ込んでいく。

 

「カバディ…」

 

「おい!ヒメサワ!!?」

 

畦道が悲鳴に近い声をあげる。俺は何も言わずにただその光景を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはまるで、『逆再生』だった。

 

トップスピードのまま突っ込んできた姫沢に対し思わず伸ばされた六弦の右腕に接触(ストラグル)するや否や姫沢はスピードを落とさないまま()()()にダッシュする。

 

真後ろで姫沢を追っていた高谷は驚いたようだがすぐに両手を広げて待ち構える構え。左右どちらへ避けても対処できるそれはリーチで負けている姫沢には到底太刀打ちできないものだった。

 

だからこそ、この時点で勝敗は喫した。

 

 

 

 

 

 

 

ドグッ!!

 

 

 

 

 

 

 

肉と肉がぶつかる嫌な音。姫沢が選んだのは()()()()。トップスピードのままにまったく減速しないまま姫沢は自身の頭を高谷の腹目がけて突っ込んだ。(パワー)で劣る姫沢がまさか突っ込んでくるとは思わなかった高谷は予期せぬ痛みの為に広げていた腕を閉じるのにラグが生じる。

 

その隙を姫沢は逃さなかった。

 

少し動きが止まった高谷を後ろに押し出し後ろから付いてきていた六弦の追撃を遅らせる。ぶつかった張本人はまったく動きに遅れはなく、攻撃(レイド)開始からずっと表情は変わらず笑顔だった。

 

それから誰にも触られないまま姫沢は帰陣する。

 

タッチ2点と全滅(ローナ)による2点の計4点が加算される。

 

27対28

 

奏和2度目の全滅(ローナ)が記録され、能京はこの試合初めて点差を1点に縮めた。

 




オリ主(152cm)と高谷(185cm)の身長差どれくらいだろって思って「152cm 185cm」で検索したらyah○○でカレカノ事情についての質問がトップに出てきてビックリしました

簡単な省略中の得点経緯(左から接触順)前半終了時 15対23

奏和攻撃        能京攻撃

5人 15対24(③)   5人 18対24(⑨④+1)

5人 18対26(④⑦)  5人 21対26(⑤⑨+1)

5人 21対27(③)   4人 23対27(⑤④)

5人 23対28(+1)  2人 27対28(③①+2)

これだけで15分ぐらいが経過するはずもないので、途中に無得点帰陣が数回あったと思ってくれれば幸いです。



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