ボクがキミを王にする   作:モーン21

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※第10話突破しました。この調子のまま書いていきたいですね

※今回と次回の話はオリ主1割原作9割になりますけど、付き合っていただけると幸いです

※お気に入り登録、感想等ありがとうございます


第10話 VS奏和 俺の最善を

「明日の練習試合のスタメン攻撃手(レイダー)は宵越くんだね。頑張ってー」

 

居残り練習を終えて姫沢の用意したメシを食べているとヤツがそう切り出してきた。

 

「は?お前か部長じゃねーのかよ」

 

「ボクとマーくんはベンチスタートだからね。慶さんも攻撃手(レイダー)だけど、今回の練習試合組んだ意図を考えたら宵越くんたちに経験を積ませたいだろうから」

 

「なんか出番を譲られたみたいでムカつくなおい…」

 

こいつら(部長、姫沢)に勝っている訳ではないことを改めて伝えられる。井浦にも勝てていないだろう。だからといってわざわざ本人に伝えるか?

 

「あはは、そうカッカしないでよ。マーくんも慶さんも、もちろんボクも宵越くんに活躍してほしいのは一緒だよ?」

 

いや、それは分かってるが。じゃなきゃ居残り練を見てもらったり、能京カバディ部(ここ)に勧誘されたり、メシの世話を見てもらったりされてないだろうからな。

 

姫沢はコロコロと一通り笑ったと思ったらすぐにそれを潜ませてこの部屋の空気を一変させる。

 

「でも奏和(相手)は違う。六弦さんはマーくんをライバル視してるから、正直それ以外のボクらは()()()扱いだろうね。高谷さんの実力は未知数だけど、マーくんレベルでようやく奏和に通じると言っても過言じゃない。だからマーくんが試合に出たら宵越くんが攻撃(レイド)する機会は激減すると思うよ」

 

「…部長から聞いた。そんなに強いのか、六弦ってやつは」

 

「六弦さんが強いのはもちろんだけど奏和自体もね。『東京でカバディをやるなら奏和』と呼ばれているのは伊達じゃない」

 

だからさ、宵越くん。

 

間を置いて俺の目を見つめながら姫沢は続けた。

 

「少ない機会(チャンス)で結果出してる所見せてよ。ボクは宵越くんなら出来るって信じてるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

能京(うち )のタイムアウト後奏和の攻撃(レイド)で試合再開。1点差まで縮められたけれども高谷さんは緊張する素振りも見せずに淡々と攻撃(レイド)を開始する。

未だ負けている能京はボーナスポイントも惜しいため守備のラインを前めにセットする。高谷さんは一貫してマーくん狙い。2年生(水澄先輩・伊達先輩)が連携して特攻(チャージ)するもこれを読んでいた高谷さんに一歩上を行かれて帰陣。

 

27対30 残り1分30秒

 

さっきは能京(うち)のタイムアウトだったけれども今度は奏和がタイムアウトを申請した。カバディのタイムアウトは基本ベンチに戻ることは出来ないため、コート内で話し合いをする。監督がいる場合はベンチ近くまで近づいて指示を仰ぐのだが能京(うち)にはもちろんいない。だが、ベンチの人にも話し合いを聞かせる為か今回のタイムアウトもベンチ近くでやるみたいだ。

 

アウトになった2人とコート内にいるマーくん、慶さん、()()()()がベンチにいる()()と畦道の近くまで来てくれた。

 

 

 

……何ですか?何か疑問になることでもありましたか?

 

えぇはい。宵越くんと交代しましたがなにか?

 

 

全滅(ローナ)取った後水澄先輩や伊達先輩、マーくんから褒められた時はボクも有頂天だったけど、歓迎会時の比にならないくらい怒気を帯びた慶さんを目に入れた瞬間水をぶっかけられたぐらいに落ち着いたよね。何も声を荒げた訳でもないのに従わせる威圧感を感じた。

 

とは言ってもこの交代にボクは異論ない。それよりも自分自身のふがいなさに腹が立っている。攻撃(レイド)前から体力がギリギリだったからあんな無茶な追撃に出たこともあってもうガス欠だし、あの技(バック)を使ったから脚のケアもしないといけなかったから。言い訳をするならあの技を使う気はなかった。でも待ち構えている六弦さんを見て半端な技は通用しないって直感したんだ。ホント守備(アンティ)の理想だよ六弦さんは、ボクなんかとは大違いだ。

 

 

 

「慶…どういう事?」

 

ん?マーくんの声なんだけどあまり聞かない調子だ。何かイラついてる?

 

「相手に悟られる。何回も言わせんな」

 

マーくんと慶さんの間でいや~な空気が流れてる。さっき慶さんが何を言ったのかは聞けてないけど、マーくんがこの調子だってことは考えられることは1つだよね。

 

「僕が次の攻撃に出ちゃいけない理由を聞いてるんだよ。慶…!!」

 

マーくんが慶さんに詰め寄る。慌ててアウトの水澄先輩がコートに入らないよう気をつけながら間に入って抑える。

 

「簡単な話だ。向こうが慣れてきてる」

 

マーくんの鬼気迫る威圧もなんのその、あくまで冷静に慶さんは話を進める。

 

「早い段階で『カウンター』を使わされた。そして高谷との対峙(たいじ)…お前の動きは一番見られてる」

 

「攻守共に全力で見られ体力も削られた。さっきの叶の追撃で多少は回復できただろうが、それでも心許ない。早めに試合に出たツケが回ってきてるんだよ」

 

隣の畦道がハッとした顔になる。マーくんが前半終了間際で出る原因は畦道だからね。今この状態になったのは自分のせいだと思ってるのかな。

 

「でもこの残り時間なら…」

 

「…ああ。本来はエース(おまえ)が出るべきだろう」

 

「そのエースが壊れない強い身体を持っていたらな」

 

「「……」」

 

マーくんと一緒にボクも一瞬思考が止まった。

それでも慶さんは続ける。

 

「大前提として…攻撃手(レイダー)は常に死角からタックルされる危険がつきまとう。

普段なら(かわ)せる…受け身もとれる。だが、それをできなくさせるのが『疲労』だ」

 

「無茶をして潰され、涙をのんだ人間を…大会でも見てきただろう」

 

脳裏によぎるのは去年高校大会を観に行った時のこと。試合後半勝っているチームのエースが攻撃(レイド)に臨むも前半では躱せてた相手の特攻(タックル)が躱せず、さらに打ち所が悪かったこともあってそのまま担架に運ばれたところ。試合はエースを欠いたチームの逆転負けだった。

 

マーくんの身体を()()。マーくんもボクと同じく体力(スタミナ)が減少しているのが分かるし今にもそれが底を突きそうなのがわかった。このまま攻撃(レイド)に出ていたら()()()()()になっていたかもしれない。

 

「…カバディに危険が伴うのは当然の事だ。恐れてちゃ勝てないよ」

 

慶さんから顔を背けながら答えるマーくん。そんなマーくんの態度に落ち着いていた慶さんの表情が変わった。

 

「…正人(まさと)。俺はケガを恐れろっつってる訳じゃない!」

 

「!!」

 

マーくんが驚いている。それは慶さんに胸ぐらを掴まれたからか、部員の前では部長(キャプ)と呼ぶ慶さんに名前で呼ばれたからか真意は分からなかった。

 

「今壊されたら大会も終わるんだぞ…」

 

 

 

「お前の夢が!!俺たちの目標が終わるんだ!!」

 

 

 

「それを恐れろっつってんだ!!」

 

 

 

そう叫ぶ慶さんには先程までの冷静さはなく、積年の夢や願いが重なった必死さがこれでもかと現われていた。

 

慶さんとは長い付き合いだけど、こんな表情を見るのは初めてかもしれない。頭も良くて教え方も上手。強豪の運動部が多い能京高校(うち)で味方をつけるために大人相手に立ち回る狡猾さもある。だからか慶さんはどんな時でも冷静沈着なんだっていう思い込みがあった。試合前もあんなに悩んでる所見たのに何してるんだろうねボクは。1人反省する。

 

慶さんの叫声に能京メンバーだけではなく観客席の方でもざわめきが立つ。それを確認したのか慶さんが謝罪を入れて手を離す。だけどボクは慶さんの叫びに反応する宵越くんの表情に目が惹かれた。

 

「ゴメンわかった…でも僕…」

 

「分かってる。練習試合だからって、俺も負ける気はない」

 

マーくんも慶さんも落ち着いたからか2年生の2人(水澄先輩・伊達先輩)が安堵している。そりゃそうだ。2人以上の付き合いのボクも同じだもん。何張り合ってるんだろ?

 

「次の攻撃で高谷を絶対に追い出さねーとって思ってたんだろ?」

 

「…うん…時間的にあと1回向こうに攻撃が回るし…まだ3点差がある。

高谷君は時間を使って攻める事ができるから…このターンで追い出さないと、ほぼ負けが確定する」

 

「そして高谷君は…並の攻撃手(レイダー)じゃ倒せない。

彼は異常だ。ほぼ1人で攻撃を回して…しかも全然アウトにならない」

 

点差を縮めるために相手の得点源(エース)を潰す。単純な結論だがここまでずっと狙って、結果から言えばマーくんの時もボクの時も不意打ちでしか追い出すことはできなかった。

更に試合前に見ていた通り体力(スタミナ)の底が見えない。マーくんよりも攻守共に動いて体力も削られているはずなのに。まさかここまでとは思わなかった。

 

「前なら叶に任せるところだったけど、叶は今止められてるからね」

 

そう言いながらマーくんは歩きだす。

 

「長い身長(リーチ)速さ(スピード)……センスもある。宵越君」

 

その行き先はこのコート内で誰よりも初心者である彼だった。

 

「キミが僕の代わりだ。高谷(たかや)(れん)を…追い出せるのはキミだ」

 

 

 

 

 

 

【宵越side】

 

「タイムアウト終了です!!能京攻撃から再開します!!」

 

攻撃(レイド)に出る俺を見て奏和コートだけでなく観客席からも驚きの声が上がる。

 

「ん…?攻撃…」 「王城じゃ…ない…!?」

 

「カバディ…」

 

いつもなら俺を見ろと激昂するところなんだがな。今そういうのは起きなかった。

 

『お前の夢が!!俺たちの目標が終わるんだ!!』

 

『高谷煉を…追い出せるのはキミだ』

 

俺1人が勝てればいい。そう思ってたんだけどな…

 

中学の頃エースの立場を上級生から奪ったことがある。その時は実力で実績で、とにかく結果を出すことで周りを納得させた。その上級生から恨み言は受けたが問題がその後起こることはなかった。結果を残した人間が重要なポジション(エース)になる。それをあの上級生が理解していたこともあっただろう。

 

もしこれが逆の立場で、新入りが何の結果も出さないまま大事な場面でエースを代われと言われたら?俺は絶対納得しない。全力をかけてそうならないように動くだろう。

 

今俺がその『新入り』だ。色々事情はあったがそれでもエース(部長)は悔しいだろう。本来代わりに出るはずだったライバル(姫沢)も同じだろう。その選択をせざるをえなかった司令塔(井浦)はその責を負い続けるだろう。

 

なら俺は?『初心者』の俺には何ができる?俺1人の為じゃねぇ。チームを勝たせる為に何が出来るか死ぬ気で考えろ!!

 

『ボクは宵越くんなら出来るって信じてるから』

 

あのお人好しが言ったことを思い出した。信じられた以上はそれに報いないとな。

 

高谷を狙うタッチはどれも躱される。対角の牽制は忘れない。だが今回あくまで狙うのは高谷だ。

 

俺の音、目線、表情はあの2人(部長・姫沢)よりも隠せていないのだろう。高谷は余裕そうに躱し続ける。

 

「必死になる程わかりやすい。バカのやる事っしょ~もっと楽しんでやろーぜ?」

 

…うるせぇ

 

高谷のニヤケ顔がシャクに障る。頭に血が上るのが嫌でも分かる。バカで何が悪いんだ。

 

「カバディ!!」

 

スポーツなんて元々バカらしいもんなんだ。

 

どいつもバカみてーに考えて…

 

バカみてーに練習して…

 

最後は勝って、バカみてーに喜ぶためにやってんだ!!

 

だから俺は!!そんなバカ野郎から学んだ全てを出し切る!!

 

姿勢を低くしてコートの奥へ。対角の2人(9番・4番)が近づいてくるのを目線を動かすことで確認する。

 

「カバディ…」

 

俺にできる事…やってきた事全てを……

 

くるっ

 

真後ろを向いてロールキックの準備をこれみよがしに見せる。試合開始早々に見せた攻撃(レイド)だ。俺の攻撃(レイド)といったらコレだとお前等は思うだろ?

 

対角の2人(9番・4番)がバッと下がるのを確認し、俺は……

 

ぐあっ

 

ドッ…

 

ロールキックではない、()()()()()()()()。狙い通り高谷に接触(ストラグル)できた。目線と技の(フェイク)を、バカ野郎たちから学んだことだ。

 

「チッ…」

 

高谷のタッチを躱して自陣へ、帰れる――…

 

ジャラ…

 

ドッ

 

「帰すかよ」

 

高谷の伸ばされた左腕は隣の5番との(チェーン)の為だった。

ウソだろ!!?後ろのやつと(チェーン)を組んだことはあるが、こんな守備なんて知らねぇぞ!!

 

「ナイス(えい)ちゃん!!六弦さんトドメ!!」

 

「任せろ!!」

 

六弦の援護が来たら終わりだ。能京(うち)の一番の(パワー)を誇る伊達が倒されるくらいだ。俺なんてひとたまりもないだろう。

至近距離からのプレッシャーを受けて、こんなやつから得点をたたき出した部長と姫沢の凄さを改めて感じる。

 

だが、まだ試合中だ。感慨にふけってる場合じゃない。

 

いつも『最善』を尽くしてきた…!!でも俺は何度も負けた…

 

 

 

だから俺は!!俺の『最善』を越えていく!!

 

 

 

2年生対1年生の2対2で水澄に対して俺たちが組んだ(チェーン)は上から乗り越えられることで抜けられた。あの時は悔しくてつまんねーと思ったがその経験がここで活きた。

 

失敗は成功のもと。言い訳みたいで嫌な言葉だが今この場では気にしていられない。

 

六弦の援護が遠ざかるのを感じる。目の前にも敵はいない。自陣まであと少し――…

 

ドグッ!

 

後ろから衝撃を受け俺の身体が宙に浮いた。進む方向は場外。高谷はそれ(場外)が目的でタックルしてきたのだろう。いつまでもジャマなヤツだなお前は!!

 

「カバディ…」

 

飛ばされながらも俺の身体はまだ熱い。まだ終わっていないからだ。

俺はお前に感謝するぞ高谷。お前のおかげで俺は学べたからな。

 

『長い手足はこうも使える』

 

着地寸前、俺の長い手足(リーチ)は難なくコートの内へ触れる。これが得点と認められるのを知れたのはお前(高谷)のおかげだ。ありがとうな。

 

「…よう。初心者なりに学ばせてもらったぜ。…高谷はキッチリ追い出した」

 

「勝つぞ先輩」

 

「「ああ」」

 

29対30

 

俺は3年の2人(部長・井浦)に任務完了を報告する。その後ベンチの方へ見ると、「1点差…!!」と驚く畦道の隣で反対に全く動じないまま俺にニッコリと3年の2人と同様にサムズアップしている姫沢がいた。

 

「ふっ…」

 

俺はヤツに何も言わないまま位置に戻る。2年の2人(水澄・伊達)もそれぞれ顔を向けてきたが軽く応えるに止める。まだ試合が終わっていないからだ。

 

 

 

残り時間52秒。ターンで言えば奏和の攻撃1回、能京の攻撃1回で終わる時間。

 

この試合、もう高谷の攻撃はほぼ無い事を意味していた。

 

1点差を追う能京は次の攻撃手を早めに倒し――…すぐさま最後の攻撃へ向かう構え。

 

対する奏和、攻撃の(かなめ)・高谷を欠いた状態。選択肢は時間を潰す事。または…

 

「…点差を広げに来るか。そうだよな。宵越が高谷をタッチした時…みんながアワくって止めに来る中で……」

 

お前(六弦)だけは、生き残る事を選択した。

 

奏和(チーム)のためだ。行くぞ…能京!!!」

 




次回VS奏和決着
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