ボクがキミを王にする   作:モーン21

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※オリジナル展開です。次話から原作に戻ります

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第13話 反省会atバイキング

「じゃあこれで。3人お願いします」

 

「はい、拝見しました。ではごゆっくり」

 

チケットを渡した後スタッフさんが去って行く。ボクはクルッと後ろを向いて2人と対峙する。

 

「じゃあまずは適当な座席に行こっか」

 

「おう」

 

「はぁ~、都会って本当スゴイ所だな~」

 

宵越くんはいつも通りだね。反対に畦道は感嘆の声を漏らす。バイキングに来るのは初めてだというのは昨日聞いたから、楽しめてるなら誘ったこちらとしても嬉しいね。

 

「畦道はボクが見てるから宵越くんはもう行って良いよ。もう食べ始めてていいから。時間も無制限だから急がなくていいからね。大丈夫とは思うけど取り過ぎないように」

 

「お前はオカンか、言われなくても分かってる」

 

「分かってるならいいよ。行ってらっしゃい」

 

目印として上着を椅子にかける。宵越くんはたらふく皿に盛ってくるだろうけど、多分ボクらの方が長く時間かかるだろうからね。前もって伝えておく。

 

「お待たせ畦道、じゃあ行こっか」

 

「おぅ!よろしくなヒメサワ!!」

 

畦道を連れていざ料理が並ぶテーブルへ。畦道は初めてということもあって、各々が歩き回りながら自分の皿へ料理を自由に盛る光景に目を奪われていた。

 

「はぁ~、前もって話は聞いたけど夢みたいだ!おら東京(ここ)に来て慣れてきたと思ったけど全然知らないことばっかだべ」

 

「楽しんでくれてるならなによりだよ。畦道たちを誘った甲斐があった」

 

「なぁ、バイキングってなんかルールとかあったりするのか?」

 

「細々としたものはあるにはあるけど、畦道は気にしないで自分の食べたいものを好きなだけ取っていけばいいよ。もしダメなことがあればその時ボクが止めるから」

 

そうボクが言うのを聞いて畦道はおろおろしながらも進み始める。初めて見るメニューを見る度に驚きの声を上げると共に好物らしいたけのこときのこをふんだんに使った炊き込みご飯を見たときは目を輝かせているのが見えた。

ボクはそんな畦道をサポートしながら自分の分のご飯をよそっていった。

 

とりあえず畦道の皿がいっぱいになったので席まで戻ると予想通り宵越くんが先に戻って食べ始めていた。大皿が4枚、所狭しと並べられているけれどあれ全部宵越くんのだよね?

カレーにハンバーグにステーキに…、うん。宵越くんの好物がいっぱいだね。

 

「ただいま。予想はしてたけどそれ以上だったよ」

 

「相変わらずよく食べるなヨイゴシ…」

 

「おぉ、遅かったな」

 

戻ってきたボクたちにチラッと目を向けたがすぐに自分の食事に戻る。花より団子とはまさにこのことだと言わんばかりの様子にボクらは苦笑いする。

 

「じゃあ、ボクらも食べよっか」

 

「おう!」

 

ボクと畦道はおしゃべりをしながら楽しく食事を始める。途中皿がカラになる度におかわりしにいく畦道に付いていきながら気になったデザートをちょっとだけ取ったりした。宵越くんも時折会話に混ざってきたりして3人ともに中々有意義な時間を取れたように思えた。

 

 

 

 

 

 

「それにしてもよかったよ、畦道の元気も戻ったみたいで。試合が終わった時何か悩んでたみたいだったから」

 

「あぁ~、ヒメサワにはバレてたんだな」

 

一息入れる為にコーヒーを口に含みながら言う。今席にはボクと畦道のみ。宵越くんはあの後さらにお代わりした皿をカラにしたと思ったらお手洗いに直行した。慌てなくていいって言ったのに。本当せっかちな人だ。

 

「父さんからもらってたここの無料券をどうしようかって思ってた所だったから、いい気分転換になるかなって思ってね。でも昨日河川敷で会った時には大分元気が戻ってたから驚いたよ。要らない気遣いだったかな?」

 

「いやいや!そんな事ないって!!今日は本当に楽しませてもらってるから!!」

 

ボクの意地の悪い言葉にもマジメに答える畦道。そんな様子に笑いがこらえきれなくなって謝りを入れた。

 

「ごめんごめん、冗談だよ。でもあんなすぐに元気になるのは流石に予想外だったよ。

あの時宵越くんと何かあったの?」

 

「あぁ…そうだな、その通りだ」

 

そしてその時あったことを簡単に教えてくれる。

いっぱい練習したのに何も出来なかったこと。チームが追い上げた時も同輩(タメ)のボクや宵越くんが活躍した時も喜びきれなかったこと。

その事を宵越くんに打ち明けても彼は何も気負うこともないまま告げた。練習の成果は試合で発揮出来ないのが当たり前だということと『負けるのは他の奴がもっと『積んで』きてるって事だ』と。

そして宵越くん自身、不倒を始めに色々な名前で呼ばれたエリートだということ。そんな人間がなぜカバディをやっているのかと。そういえば慶さんの計らいで畦道と1対1して負けたからって言ってたっけ。

 

 

『『不倒』を初めて倒したのは、誰だと思ってる』

 

 

そして畦道が負けたらそれに負けた宵越くんの株も落ちるからということで、へこんでるヒマがあるなら練習するぞと言われたと。

 

本当敵わないなって思っちゃうね。宵越くんは彼にとっての当たり前をただ畦道に伝えただけかもしれない。そこに畦道を気遣う思いがあったかどうかは分からないけど、基本裏表が無い自分に正直な宵越くんに言われたからこそ畦道には響いたんだろうなって。

 

ボクには出来ない方法を選択した宵越くんに改めて感心する。流石は宵越くんだ。

 

 

 

 

 

ま、それはそれとして。

 

「じゃ、畦道の元気も戻ったことだし、あの試合の反省会を始めよっか!!

元気になったなら特にボクが気にかける必要もないよね!!」

 

「…お、おう。よろしくな、ヒメサワ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戻ったぞ。…何やってんだ?」

 

「あ、宵越くん。昨日の試合の畦道の反省点を言ってたの。…それにしても、まだ食べるんだね」

 

「おう、1回出してきたからな。まだまだイケるぞ」

 

「…いつものご飯時ならまだしも、外食先で言わないでよ」

 

とりあえずボクから言える簡単なことを畦道には伝えた。とはいっても特にそんなヘマしてないんだけどね。単純に力と経験不足。せいぜい六弦さん相手の守備(アンティ)で脚狙いなのを口に出していたぐらいか。でも結局脚タッチには成功してるわけだから、今度から気をつけてという注意レベル。これが慶さんや宵越くんみたいにブラフとして口にするなら別だけどね。

 

それよりも、だ。

 

「偉そうなこと言ってたけど、畦道よりもボクの方が課題あるんだよなー」

 

「ん?ヒメサワの課題ってなんだ?」

 

「単純に体力(スタミナ)不足!!いくら病み上がりだからってあれはヒドかった」

 

「確かにお前体力(スタミナ)なさすぎるだろ。チビなのもあるだろうが他に何か原因あるんじゃねーか?」

 

宵越くんに突っ込まれちゃった。まぁ隠す必要もないし言うか。

 

「歓迎会の時にボクが死角の所含めて相手の動きが分かるって言ったの覚えてるかな?」

 

「言ってたな。それがどうした?」

 

「あれ意識的にOnとOff切り替えてるんだけどさ、Onにした時範囲を制限することができないんだよね。だから、必要ないものも見えちゃって余計に疲れちゃうっていうか」

 

歓迎会の時はボクらだけだったのと1プレイだけだったからそうでもなかったけど、あの時は奏和のメンバーが多かったのもそうだし観客もいた。試合に集中したい一方で視界の隅でカサカサ動くものをいやがおうでも認識させられる感じ。精神的にもキツかったりするし、

仮に今Onにしたらここにいるお客さんと店員全員分の動きが見える。激しい動きをする人はほとんどいないから短時間なら大丈夫だけど、これを長時間ってなったらけっこうダルいと思っちゃう。

一応今認識できるのはヒトだけなので、それ以外の風景とか物体は全く見えない。()()()()とかも分からないから、ボクはそのことに心底安堵していた。

 

「な…なるほどな…?」

 

「難儀なやつだな。そんなんで世界戦戦えてたのかよ」

 

「全体を見れるようになったのは中3の世界戦がほとんど終わった時だったからね。それに疲れそうになったらOffに切り替えればいいだけだから」

 

「まぁ、そりゃそうだな。…あ?ってことはお前…」

 

「うん、これができるようになって初めての試合だったから()()()()()()()()()()()()O()n()()()()()()()()マーくんの攻撃(レイド)中もね。」

 

「…なるほどな。テメーの限界値を図るためってやつか」

 

「ん?なんで能京(うち)攻撃(レイド)中もやってたんだ?せっかく休めるのに」

 

「なに言ってんのさ畦道、マーくんの代わりに試合に出た時はボクが代わりに攻撃(レイド)出るんだから。攻撃(レイド)中は休憩時間じゃないんだよ」

 

大会では1日に2試合やることもある。そうじゃなくても連日試合をすることもザラだ。うちのエースはマーくんから変わることはないだろうけど、流石のマーくんもずっと試合に出続けられる訳ない。

その為のボクや宵越くんなんだから、それを見越して5人制の試合でベンチに余裕がある今のうちに試してみたんだ。欲を言えば上限値の底上げになればいいなって。

 

結果は後半20分もせずにバタンだったのは本当に反省だ。退院してから毎朝ランニングしてるけど、明日からもう少し距離を伸ばさないとかな。

 

「…俺は部長やお前の代わりで終わるつもりはない。ぜってぇ追い越してやるから首を洗って待ってろ」

 

「おぉ、こわいこわい。頑張ってね宵越くん。あ、サポートは任せてね」

 

宵越くんの宣戦布告をヒラヒラと片手を振りながら受け流す。さて、ボクの課題についてはもう1つあるんだけど、今のところはいいかな。さて、畦道とボクの反省は終わったから次は…

 

「じゃ、次は宵越くんね。畦道以上にいっぱいあるから、覚悟してね」

 

「おう」

 

先程の畦道とは違い何も気負う様子もないまま宵越くんは了承した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…以上かな。何か聞きたい事ある?」

 

「…なるほどな。じゃあ1個、お前に聞きたい事がある」

 

簡単な反省会が終わると宵越くんから質問があるとのこと。といっても、何が聞きたいのかはある程度察してはいるんだけど。

 

「お前が最後にやった攻撃(レイド)、六弦に触った時だ。あれは何の技術だ?」

 

「あ、それおらも聞きたかったべ!なんかイウラ先輩がすっごいキレてたけどなんかあったのか?」

 

畦道も気になってたんだね。じゃあ手間が省けた。水澄先輩も伊達先輩も知ってるから今部内で知らないのは2人だけだもんね。

 

「あの技の発案者はマーくんでね。名前は『バック』。首、肩、腕、腰、脚…普通は連動して動く部位を分離して動かして、全力で走っているように見せかけて事前にブレーキ即ターンする体勢に入ることで真後ろへダッシュする、いわゆるフェイントだよ」

 

「へー、前から思ってたけどヒメサワって器用だよなー」

 

「それとスピードを落とさないまま()()()調()()()()()()と重心を操作して曲がりやすくする()()()()。この3つの技術を駆使した集大成とも言える技だよ」

 

「…ん?歩幅調整と体重移動?」

 

畦道はただ感心するだけだが宵越くんは何かに気付いたようだ。そうだよね、何よりも自分がよく知ってるよね。

 

「宵越くんも覚えはあるかな?だってこの技、()()()()()()()()()()()()()()()()を参考にして出来た技だからね」

 

 

バン!!

 

 

宵越くんが机を叩く。幸いコップも皿も空だったから机が汚れることはなかったけど、ちょっと行儀が悪いかな。

 

「宵越くん、落ち着いて。店に迷惑かけるのは違う」

 

「あぁ、悪い…。いや、それよりもだ!あの技が俺の動きを参考にしたってことは…!」

 

「うん。宵越くんにも出来る技だと思うよ。さっきの技術3つのうち2つはもう持ってるだろうから、ボクの時よりも早く習得できるんじゃない?」

 

「おぉ!よかったなヨイゴシ!!…あれ?じゃあなんで怒られたんだ?」

 

宵越くんが喜ぶ傍らではてなを浮かべる畦道。うん、それもちゃんと伝えないとね。

 

「急な方向転換は自分が思ってる以上に負担がかかるんだよ。ましてやそれを習得の為に何回も繰り返して練習していたらタダでさえ脆い身体の()()()()()()()じゃ耐えきれなくなってもおかしくない」

 

「…ん!じゃあもしかして…」

 

「うん、ボクとマーくんが入院した原因なんだこの技。オーバーワークもあるけど、単純にこの技でかかる脚の負担がバカにならないんだよね」

 

たまたま同じ日にボクは公園で、マーくんは旧体育館で自主練習中に同様のケガしたって後で慶さんに聞いたときはホントびっくりした。それ以上にすっごい怒られたんだけどね。せめて一緒に練習していればマーくんの脚の疲労度を見て練習を止めさせたりできたかもしれないから、ボクとしてもすごい後味が悪い。

 

退院した後に慶さんからバックは使わないようにって注意されてたんだよね。数回までなら使っても大丈夫なんだけど、ボクとしてもわざわざケガのリスクがある技を使おうとも思わない。他の技を使えばいいだけだからと頷いたんだけど、あの時は六弦さんが余りに隙が無さ過ぎて使わざるを得なかったんだ。

 

 

ボクは悪くない!

 

 

いや、ウソです。反省してますからね慶さん。

え?もし同じようなことがあったらどうするかって?

…むざむざ倒されたくないですし、…やっぱり使うと思います。

うあぁああああ――想像上の(イマジナリー)慶さんにど突かれたぁーー!なんで――!

 

 

 

閑話休題(それはさておき)

 

 

 

「宵越くんはボクやマーくんと比べてもガッチリしてるから、ちょっとやそっとじゃ壊れないと思うよ。でも脚に全く負担がかからない訳じゃない。この技術を磨くのも大事だけど、それ一辺倒じゃなくてちゃんと基礎も鍛えるようにね」

 

ボクが中学の時マーくんから教えられたことだ。自然で安定した動きは地道な『基礎』から作られる。技ももちろん大事だけどだからって基礎をないがしろにしていい理由にはならないんだから。

 

ボクの指摘に宵越くんも素直に頷いてくれた。うん、これなら大丈夫かな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございましたー!」

 

店員の挨拶を背中に受けながらボクらは退店する。

 

「いや~、食べた食べた。たまには食べるだけってのもいいね」

 

「いや、お前そんな食べてなかっただろ。カレーとサラダとあとデザートぐらいか?」

 

「ヒメサワ小食とは聞いてたけど予想以上だったべ。おらたちだけ満喫したみたいでごめんな?」

 

「全然いいよ。今日使ったのも無料券だけだし、本当はマーくんたちも誘う予定だったから」

 

畦道が何か申し訳なさそうにしてたから大丈夫だと伝える。ボクとしても外食先であれだけ食べる宵越くんを見れて楽しめた所もあったし。

 

「ん?部長たちも来る予定だったのか。チケットまだあんのか?」

 

「いや?1枚だけだから3人までだよ。でも3人だけで行くのもあれだから残りの人の分はボクが出すって言ったら急に行かないって言われちゃって…」

 

「ヒメサワ、先輩相手に奢ろうとしてたのか…。スゲェべ」

 

「おい…、あの店1人1万円するってさっき見たんだが…」

 

「それぐらいするでしょ、駅前に構えるお店なんだから。宵越くんたちが気に入ったのなら今度チケットなくても連れていくけど?」

 

「いいのか!?じゃあよろしくな!!」

 

「姫沢の金銭感覚どうなってんだ…?そういえば両親が医者だとか言ってたな…」

 

軽く受け答えしていると何故か宵越くんがブツブツ呟きながらボクを恐ろしいものを見るような視線を向けてきた。なんかおかしいこと言ったかなボク。

 

あ、そういえばあの時も同じ事言われたっけ?

 

「なんか同じようなこと言われたなって思ったら春休みの時だ。水澄先輩がお寿司食べたいって言うから前に家族と行った寿司屋さんに5人で行って奢った時も言われたんだっけ?」

 

「へぇ、寿司屋か!!いいなぁ、おらん所には寿司屋さんなかったから一度行ってみたいって思ってたんだ。ヒメサワオススメの店ならきっと美味いんだろな~。先輩たち羨ましいべ!!」

 

「気になるなら今度連れていくよ。今度こそ先輩たちも連れて全員で」

 

「何から何までゴメンな!!楽しみにしてるぞ!!

でも奢られてばっかなのもアレだから、そんなに頻繁には大丈夫だからな!!」

 

「そう?別に気にしないけど、畦道がいいならそうしようかな」

 

「…くそ、回らない寿司をタダで食える機会だったのに…」

 

なんか宵越くんがなにやら言っているけど小っちゃくて聞こえないや。

 

確かにマーくんたちも畦道と同じ事言ってたな。『僕たちがダメになっちゃうから頻度を考えて』って。寿司のお礼を言われたことが嬉しかったからすっかり忘れてた。

 

次の機会って言ったら大会開催前かな?それとも1学期お疲れ様会?

ヒマな時にでも手頃なお店探しておこうかな。

 




※原作で部長が入院していた理由は9割これだと思うんですけど特に明言されていないんですよね。とりあえずこの物語ではこの設定で通します。

※姫沢は両親から生活費以外でお小遣いとして毎月10万円弱もらってます。金額こそ変動あれど、小学生の頃からずっと。
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