※マンガワンで4月16日まで100話(大山律心戦途中)無料公開されましたね。これを機会に灼熱カバディを読み始める人が増えて欲しいです
「わ、わぁぁ…ホントすごい量だね。宵越くんが大食いって本当だったんだ…」
「うん。ましてやさらにおかわりもしてたからね宵越くん。見てるだけで満腹になりそうだったよ」
「あ、でも姫沢くんが食べてるデザートおいしそう…。流石テレビで話題になってるお店だね…」
「うん、すごく美味しかった。カレー食べて結構満腹だったんだけどパクパクいけちゃうぐらい」
いつものように授業を受けて今はお昼休み。隣の乃子さんと一緒にご飯を食べる。彼女に見せているのはこの間行ったバイキングの写真だ。宵越くんの食事量に唖然としたり、スイーツを見て目を輝かせているのを見て少し和んだ。
「そ、それにしても試合は惜しかったね。あとちょっとで勝てる試合だったのに…」
「ありがとね乃子さん。でも惜しい試合だろうが勝ちに近い引き分けだろうが勝てなきゃそれまでだからね。次はこうならないように練習頑張らなきゃ」
あの試合明けの日から乃子さんとのおしゃべりでカバディのことを話すことが増えた。ボクが渡したルールブックを見ながらボクらの試合を観戦したことで興味を持ってくれたそうだ。長年カバディをやってきた身としてこれほど嬉しいこともないね。
「そういえば奏和の体育館で知り合ったっていうあの3人、あれから何か話聞いてない?」
「あ、3人とも都合がついたみたいで、今日から来れるって聞いたよ…?」
「そう?よかった!7人だけだとホントギリギリだから、新入部員が来てくれるのはホントに嬉しい!」
「よ…よかったね、姫沢くん…!」
どうやらあの試合の時乃子さんと一緒にいた3人(キレイな子は男の子だったんだって。ビックリしたよ)もあの試合を見てカバディに興味を持ってくれたらしい。それどころか、なんと3人ともカバディ部に入ってくれるというのだ!!こんなに嬉しいことはないよね!!
「乃子さんが色々と3人に話してくれたんだよね?ありがとう!!」
「そ…そんな!私なんて感謝されるようなことなんて何にも…。姫沢くんが用意してくれてたルールブックとか姫沢くんに聞いてたことを3人にしゃべっただけだから…」
「そんなことないよ!確かにカバディについては乃子さんよりも詳しいけど、あの試合の時にカバディのことを説明してくれたのはボクじゃなくて乃子さんだからね!本当にありがとう!!」
「う、うん。どういたしまして…」
「「失礼します!!」」
今日ボクら一年生は早く授業が終わったから早めに練習を開始していると、試合の時に見かけたあの3人組が旧体育館に訪ねてきた。
宵越くんと畦道が驚いたように声を上げる。
あれ?リーゼントの子、
そんな風に2人の反応がおかしいことに疑問に思っていると
「ここ、カバディ部ですよね?」
「入部希望なんですけど…
「
「あ…、…………」
「声張れ!!」
「いきなりなんてこと言うの宵越くん!!?」
確かに伴リーゼントだけど!ヤンキーっぽいけど!!
見た目で決めつけちゃダメだって!!
そして伴声ちっちゃ!!聞こえなさすぎてビックリしたよ!!
「オドしてねーってよ」
「「何で聞こえる(の)!?」」
「あ…あの…自分達伴に誘われて試合も見に行ったんですよ。最初は何も思ってなかったんですけど…すごく熱くて面白そうだなって思って…」
畦道が何故か伴くんの発言を聞き取れることに驚いてると、ぽっちゃりくん、
「ルール全部わかった訳ではないですけどかっこよかったです!!
一年の
「同じく一年六組
「ヒトミとセキか!!おら畦道!!」
「ボクは姫沢叶、これからよろしくね!」
「あっ、戸鳴さんが言ってた人だ!本当に僕よりも小さい…。あ!ごめんなさい!失礼でしたよね!!」
「あはは…、気にしてないから大丈夫だよ人見」
「ゴメンなさい姫沢さん、人見も悪気はないんです。
そうだ、ルールブック戸鳴さんから見せてもらったんです。おかげでカバディがネタなんかじゃない奥深い競技だって分かりました。ありがとうございます」
「…………」
「うん、どういたしまして。そう言ってもらえるなら作った甲斐があったよ」
キレイな子、
人見からチビなことを指摘されたことに少し思うことはあるけど、まあいいや。小さくてもカバディできるって思ってくれたのならヨシっ!て思っておこう。
それに3年の知り合いに高1時点でボクくらいの身長だったのがモリモリ成長して190cmくらいまで成長した人がいるんだからね!ボクも将来そうなる可能性はあるんだから!!
…ま、その人はボクと違ってご飯をいっぱい食べてたし、ボクの父ちゃん母ちゃんはどっちも身長は低めだったから栄養面でも遺伝面でもボクの成長する見込みは薄いんだけど。
「見てたんならわかると思うが危ねー競技なんだ。そこのデ…太っちょはともかく、女は男子にはまざれねーぞ」
畦道とボクが3人に友好的に挨拶していると1人頭を抱えて黙っていた宵越くんがようやく前に出た。言ってることはその通りなんだけど、ボクのこと忘れてないかな?デジャブ感すごいよ、その台詞。
人見がピクッって反応したのにも気付かぬまま「部員の数的にマネージャーもいらねーし…」と呑気に続ける宵越くんだったけど、人見が意を決して宵越くんの右手を掴んで…!
ぺとん
「僕、男ですよ」
「少しでも男らしくなれればと、思ってるんですけど…」
「む、胸タッチ!!?ボクだけじゃ飽き足らず、
「ウソだろヨイゴシ!!おまえ、
「うっせーぞ姫沢ァ!!!誤解招くようなこと言うんじゃねぇ!!!」
人見の胸を触ってフリーズする宵越くんだったけど、ボクと畦道が呼びかけると途端に再起動して元気いっぱい叫んでくれました。よかった、リサイクルに出す必要はなさそうだね。
「そもそもだ!!
『お…おう…』
「イテテ…なんでボクだけ殴るのさー、不公平だー!」
「喋るなクソが!!お前は一生黙ってろ!!」
流石にふざけすぎたからか宵越くんから一発もらっちゃいました。まだヒリヒリする…。
だって仕方ないじゃん。ボクと同じ事が目の前で起こったんだから。宵越くんも全く学習してないの本当に面白かった。ビデオ回しとけば良かったよ。
「それにしても人見、男らしくしたいなら髪短くすればいいんじゃない?
ボク個人としては人見の髪ってサラサラだから切るのはもったいないと思うけどさ」
「あ、ありがとう姫沢くん。でもすみません、髪は家庭の事情で…」
ふと疑問に思ったことを尋ねると人見は申し訳なさそうに答えてくれた。
ふむ…家庭の事情か…。
じゃあ仕方ないか。ボクとしては、人見の髪は容姿も相まってお人形さんみたいで可愛いなって思ったんだけど、人見本人としては嬉しくないみたいだし。
男らしくなりたいんだな人見は。ボクも男らしくなろうと色々やったっけ…。ボクの場合は拗れちゃって今のスタイルになったけどこればっかりは正解がない。フォローしたい所だけど、こればっかりはまず人見と仲良くならないとね。
「…………」
伴がなにやらボソ…と呟くけれど、近くの畦道が「お?」と反応するだけで他の誰も聞き取ることはできなかった。乃子さん、あの試合の時よくコミュニケーションとれたなと感心する。
「『ヨイゴシが髪を伸ばしても男らしいままのように、男は見た目ではなく中身で変わるものでは…』だってよ。おらもそう思う!!」
「さっきから何なんだテメーら!!」
「そんな喋ってたかなぁ今!?理解力高すぎない畦道!!?」
すっかり慣れたように伴の通訳をする畦道。2人とも今日が初対面だよね?なんで長年連れ添ってきたコンビ感醸し出してるの!?
「それと、そこのデ…太っちょ!!体重は!?」
「う…うす…85kgっス…」
「アウトだ!80kg以上は試合出られねーんだぞ!!」
「あっ!?や…やっぱりそうなんスね…」
宵越くんが忙しそうに叫びまくる。元気いっぱいだね、何か良いことでもあったのかな?でも関くんの体重を聞いてボクも少し表情を変える。ボクのルールブックを読んでいたと言っていたし、関くんも半ば分かっていたことを突きつけられて意気消沈している。
「なぁヨイゴシ、そういう問題は入ってからでいいべ。やりてぇってんだから…」
「『好き』で通用しねーのはお前も知ってんだろ」
「!!」
畦道が3人をフォローするように言うも宵越くんは様子を変えぬまま返していく。ボクは茶々をいれずにそんな宵越くんをただただ見ていた。
「ケガすんのも負けて泣くのも本人なんだぞ。他人にどうこう言われて諦めるくれーなら、ハナからやらねー方がいい」
…本当に厳しくて優しい人だね、宵越くんは。
ボクとしては畦道派の考えなんだけど、ここは宵越くんのに反論しないでおこう。ちょっと3人には手厳しいかもだけど、ここを乗り越えることができれば
だけど3人はボクの思ってた反応とは違った。まるで
「…宵越さん…伴君の言った通りの人みたい」
「あ?俺の名前知ってんのか?」
「はい!…ていうか伴の事覚えてます…?」
「…?いや…?知らねーけど…」
関の問いかけに対して数瞬考え込む宵越くんだったけど、伴に身に覚えはないとのこと。
うーん、3人のうち一番宵越くんに詳しくて、試合見学に行きたいと言ったのも伴くん。
そういえばボクもどこかで伴を見た覚えがある気がする。
これらのことから推測するに伴はもしかして…
「とにかく、先輩達が来る前にお前らをチェックしてやる。
『は…はい!!』
宵越くんの号令に3人が返す。宵越くんの思ったような反応じゃなかっただろうけど、やることは変わらないみたいだね。
ボクはどうしようかな…。
「…じゃ、俺が攻撃するから、お前ら守備やれ」
「おう!!」 「は…はい!!」
宵越くんの
「危ねーからお前は1回見てろ」
「はい!!…あのー、姫沢くんは?」
「先輩命令でね、当分の間試合形式の練習は先輩がいない時は止められてるの。
ヒドいよね?」
隣の人見がなぜボクが出ないのか疑問に思ったようだったので事情を説明する。
口を尖らせるボクだけど、人見以外の2人の実力を見るためには1回外から見ておきたかったからむしろ丁度良かった。3人のステータスはあらかた
「ヨイゴシにタッチされねぇように逃げんだ。わかっかな…?」
「あ…はい。ルールなら姫沢さんのおかげである程度…」
「倒しても…」
「ん?そうそう!!ヨイゴシを倒してもいいんだ!!」
畦道が2人に声をかけて士気を上げてる。丁度前の試合で先輩達にしてもらってたことを2人にしてあげている。こちらからは何も言っていないのにやってくれるあたり、畦道が元より人間ができているのがよく分かる。
それにしても、今回はちゃんと聞こえたな伴の声。緊張してるからなのか意識的になのか分からないけど、彼は威嚇しているかのようにずっと眉間に力が入っている。もうちょっとリラックスしてくれたらしっかり声も聞こえそうだと思っちゃうね。
「完全に…る…」
「え!?おめぇそうなんか!?」
「意外とそういう奴なんですよ。忠犬っぽいというか」
今度は少ししか聞こえなかった。でも隣にいる2人は聞こえていたようで少し疎外感。ちらっと隣の人見を見てみるが彼もはてなを浮かべている様子。よかった、仲間がいたよ。
「オイ攻めんぞ!!見込みがなきゃ先輩も欲しがらねーからな!!」
「おう!!」 「はい!!」
「見た目で
「頑張っぞ!!バン!!」
宵越くんが
「人見、試合を見ながらでいいからボクの質問に答えて?」
「えっ?うん!どうしたの?」
元気よくこちらに振り向く人見。いや…振り向かなくていいって言ったのに…。
「こっちは見なくていいから…。で聞きたいことなんだけど…、
伴と関ってそれぞれスポーツやってたのかな?ボクの予想だと伴はサッカー、関は相撲だと思うんだけど」
「す…すごい、2人とも正解!!どうしてわかったの!?」
「あぁ、ゴメンね。それについては3人一緒の時に話すから。
で、伴についてなんだけど。彼って宵越くんのファンだったりするの?」
「う、うん。多分そうだと思います。
本人から直接聞いたわけじゃないけど、普段の言動的にも…ね」
ボクの推測は合っていたみたいだ。やっぱりそうか。伴のステータスを見て上半身よりも下半身の
「でも、伴君が宵越君のファンだったら何かあるんですか?」
「いや、特に何も?ただ、同じ
伴は宵越くんのタッチを躱し続ける。流石スポーツ経験者。カバディの動きではないけれどもよく動けてる。そして、この
伴がいつから宵越くんのファンになったのかは分からない。でも小声で分かりづらいけれど、彼から宵越くんに向ける視線はとても温かく優しいものだってことは分かる。
ほとんど雑誌の記事だけ追ってる
それがこうして
お帰りなさい――…、と。
「カバディ!!」
宵越くんのタッチが伴のタンクトップを擦る。例え服でも触れられれば
ギン!
途端、伴の目力が強まる。なんでここで彼が威嚇したのかは分からないけれど、それを見た宵越くんが一瞬怯むのが分かった。
「スキありィ!!」
その隙を見過ごさずに畦道が
それには2人とも気付いた様だった。片や素人に負けられないと力が入る
しかし結果は…、
ドムッ
宵越くんにタックルを見事に決めたのは関だった。畦道に足首を掴まれてのタックルだったため宵越くんは何の抵抗もできぬまま倒される。完璧な連携だったけど、成功したはずなのに畦道は「えっ…」と驚きの顔を隠せないでいた。
畦道に何かスポーツをやっていたのかと聞かれた関は自身が相撲をしていたことを明かした後に、
「確かに…危険なスポーツっスね…眼鏡は外した方が良さそうだ…」
と、眼鏡を手に取りながら零す。その様は守備成功もあってか中々にキマっていた。
予期せぬ伏兵にやられたことにか関に格好つけられたことにか、とにかくイラッとしている宵越くんに近づいていく伴。そして何も言わないまま宵越くんにタッチ。
宵越くんは「なんなんだてめーは!!」と不満を隠さないでいる。
「宵越さんに触りたかったんですよ」
「つーか、一年同士タメ語でいいべ」
「あっ、僕も筋肉触りたい!!」
「えっ!?」
伴の奇怪な行動を説明する関の口調が敬語なのを聞いてタメ語でいいと促す畦道。伴に便乗してか人見がなにやらスゴいことを言い出したけども。
「筋肉って男らしくていいですよね…触っちゃダメですか?」
頬を軽く赤らめ、手の指を胸の前でモジモジとさせながら宵越くんにお願いをする人見の姿は中々形容できない色気があるように感じた。宵越くんも何も発することが出来ないまま汗をダラダラと流し続けている。
そうか…、ボクと人見との間にある明らかな違いはこの『お淑やかさ』だったんだ!!最近はちょっと押せ押せ半分からかい半分で少し踏み込みすぎていたのかもしれない。
可愛さというものは攻め100%のものではない。相手との距離感に応じてたまには相手から攻めさせるように掛からせることも必要だったんだ。ボクは今の人見のムーブを見て学ぶことができた。
ま、それはそれとして。
「うっい…いや、…ダメ…じゃ…ないけど…」
「いいよ、宵越くん触っても。ボクが許可する」
「やった、ワーイ」
「気持ちわりーなヨイゴシ…そしてなんでおまえが許可してんだヒメサワ…」
なにを言うんだ畦道。ほぼ毎日、宵越くんの疲れた筋肉を誰がほぐしていると思っているんだ。
「う…うるさい!!とにかくこんな奴ら認めん!!もう1回やって――…」
「じゃ、今度は俺らもまぜてくださいよ」
倒されたことに未だ納得いってない宵越くんが駄々をこねるも、それを止めたのはここにいる一年生の誰でも無かった。
「
「新入部員ですよろしく」
「クック…初心者に3対1で倒されてら…」
「
あ、マーくんたちがようやく来た。水澄先輩たち2年生も一緒だったみたいだね。
先輩風たたせていた所を邪魔された宵越くんがサー…と血の気を失っている横で、早速新人3人に挨拶しに行くマーくん。
「部長の
「は…はい!!部長さん…?」
ひょろっとしている一見部長らしくないマーくんに話しかけられて驚く関だったけど、その後は何の滞りもなく会話が進んでいく。
ボクもそんな4人の所へ進んでいき、1人たたずんだままの男の元へと向かった。
「お疲れ様伴。宵越くん相手に初めてにしては良い守備だったよ」
「…!?いや…、俺は触られただけ…」
「初めてにしてはって言ったでしょ?今はまだ全然だけどさ、伴ならきっといつか
「…!憧れ…!?どうして…」
伴の発言は相変わらず小っちゃいけれど聞き取れる大きさだ。伴の人となりがある程度分かったからかもね。『憧れ』というワードを使われたことに少し動揺しているのはボクにも分かった。
「なんとなく分かるんだ。ボクも宵越くんのファンだからね。伴もボクと同じかもって」
「…………」
ボクも宵越くんのファンだと伝えると警戒心を解いてくれたようで安心する。それでも変わらず目元は厳しいままなんだけどね。あれずっとシワ寄せてるの?キツくないのかな?
「改めまして、ボクの名前は
同じ宵越くんのファン同士これからよろしくね、伴」
「よろしく…、姫沢」
伴を見上げながら手を差し出すと握ってくれた。力もそこまで強くない。見かけによらず優しい人なんだってことがよく分かった。
こうして、カバディ部に新たな仲間が加わった。
※今週末は友人の結婚式に参列するため更新空けます