ボクがキミを王にする   作:モーン21

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※友人の結婚式と連続して親戚の葬式に参列したため更新遅れました。申し訳ない。

※UA1,000突破ありがとうございます!!!果てには5,000だったり10,000行きたいですね!!

※お気に入り登録、感想等ありがとうございます。

※いつも以上ににわか知識でカバディを語る回です。おかしい所があったら生暖かい目で見てもらえると助かります。


第15話 ポジション発表と役割

「8月の大会まで残り3か月!!」

 

「今年も急ごしらえのチーム…他の何倍練習しても足りないくらいだ!!」

 

「まずは1回戦を勝てるチームを作ろうね」

 

『はい!!』 『おう!!』

 

伴たち3人が部活に入ってから数日、マーくんと慶さんがチームの士気を上げるためにもさっきのことを言い出した。

いくら最終的な目標が日本一でも能京(うち)が万年1回戦敗退なチームだという事実は消えない。階段は手頃な高さでかつ、一歩ずつ進んでいくしかないんだから。

 

「…しかし毎度1回戦も勝てねーのか?部長だけでも相当強いんじゃ…」

 

「前の大会じゃ俺ら足手まといだったから、言いづらいんだけど…毎度毎度井浦(いうら)先輩のクジ運が悪…」

 

「という事で今日はポジションを決める――…!!ついてこい!!」

 

あ、慶さんごまかした。

 

 

 

 

 

「大会では7対7の試合になる。守備位置は…②人、③人、②人で3つの(チェーン)を作って動く形になる」

 

空き教室に移動したボクらを相手に慶さんが黒板を背にポジションの説明を始める。7つの(「守」って書いてある)マグネットがフォーメーションに沿った形で黒板にくっついている。

 

「名称は覚えなくていい。それぞれの動き方だけ覚えてくれ」

 

「結局『捕まえる』のが目的だろ?動き方なんてあるのか?」

 

宵越くんが右手を軽く挙げながら問いかける。細かい所しっかりしてるよね宵越くん。

 

「目的は攻撃手を『自陣に帰さない事』。全員がバラバラに捕まえに行かない。シミュレーションしてみるぞ」

 

そう言って慶さんが手元の(「攻」って書いてある)マグネットを黒板に置くとそれに合わせて7つのマグネットを再度動かし始めた。

 

「攻撃手が右側をタッチしに来たら…左側の守備が逃げ道を塞ぐ。逆ならこう。常に扇形(おうぎがた)だ。

『逃げ道を塞ぎつつ、捕まえに行く。』それが本来7対7でやるカバディの理想だ」

 

「それをふまえて適材適所に7人振り分けるぞ」

 

その慶さんの宣告を受けてボク等の間に緊張が走る。実際スタメン発表みたいなものだもんね。分かるよ。

さて、ボクはどの位置に入るのかな?

 

「まず左角(レフトコーナー)宵越。反対側右角(ライトコーナー)部長(キャプ)

(コーナー)敵の後ろに回り込む速さが必要…そして、どちらかは大体攻撃に出やすい位置になるポジションだ」

 

「役割は僕と一緒だ。また教えるよ」

 

「……うす」

 

マーくんに声をかけられるもどこか上の空な様子の宵越くん。まぁサッカーのポジションと違ってカバディは特にエースの位置とかはないし、まだ馴染みも無いだろうからしょうがないか。

 

「次、中央の3人…中央左(左カバー)水澄、中央右(右カバー)伊達。中央(センターマン)は叶」

 

「うす!!」 「はい。」 「はい!」

 

うん、概ね予想してた所で呼ばれたね。返事は大事だからね、元気よく大きくなるように声を張った。

 

部長(キャプ)の隣、右中(ライトイン)は俺だ。残る宵越の隣、左中(レフトイン)は畦道!!」

 

「はい!!」

 

お、宵越くんの隣は畦道なのか。宵越くんに守備合わせるのは難しいから、ボクが入るなら中央(センターマン)の次にあるかなって予想してたけど、まぁ畦道(パワー)あるし入部して以来のコンビだと考えたらボク以上に適任か。

 

後はまぁ当然と言ったら当然だけど伴たち3人はベンチか。これでボク等の人数が6人以下なら誰かしら入ってただろうけど、流石に入部して数日でスタメンに入れると思っていないからか3人に特に動揺した様子は見られなかった。

 

「伴はリーチは言わずもがなパワーもそれなりにあるから水澄たち中央の練習に混ざってくれ。そういや関は、スピードもパワーもあるな?身長も畦道と変わんないし…」

 

「…!わかりました…」  

 

「い、いやまだ自分は…」

 

伴が相変わらずの声量なのはいつものことだからいいとして、関の反応が微妙なのが引っかかる。新入りの自分が前から入っている畦道を押しのけることに遠慮してるのかな?

 

だがそんな関の表情を緩ませたのはマーくんでも慶さんでもなく、比べられた当事者であった畦道だった。

 

「じゃあ、とりあえずおらと交代でやってみんべぇ!!メンバーは(つえ)ぇ方がいいもんな!!」

 

関の肩を叩きながら事も無げに笑顔を浮かべてそう言う。教室の中で漂っていた不穏な空気がすぐに晴れていった。

別に関との間に実力差が開いている余裕があるからじゃない。本当に言葉の通りなんだろうね。そういう所は畦道の美点ではあるんだけど、少しエゴイズムが足りないようにみえる。これも幼少の頃からの環境所以なのかな。

 

ボクはどうだろうか。ボクは畦道のように、簡単に(スタメン)を譲るようなことが言えるだろうか?

1番を目指している以上もちろん試合には出たい。活躍したいのもそうだし、これまでそうしてきたという自負もある。

だけど、これから先はどうだ?経験や技術、速さ(スピード)はともかく、身体(フィジカル)じゃ人見はともかく伴や関には敵わない。大会まで残り3ヶ月程しかないがそれまでに抜かれない保証はない。カバディ向けの身体になった皆にボクはどれだけ立ち向かえるのだろうか。

 

 

 

 

 

……何を考えてるんだボクは、()()()()()。チームが強くなるのは嬉しいことだ。それはもちろんボク以外も含まれている。ボクのこの目があれば効率的に仲間を強くすることができる。これは明確な能京(うち)の強みだ。ただでさえ能京(うち)は人数が少ないんだ。これを活かさない道はない。

 

 

 

ワガママになるな。ボクは恵まれているんだから。

 

 

 

「どちらにせよ人数不足だ。交代しながらになる。1回試してみよう」

 

慶さんを先頭にボク等は教室を後にする。ボクは先程まであったモヤモヤを晴らして練習に切り替えることにした。

 

 

 

 

 

「最初の1回は俺が攻撃する。役割は2パターン!!」

 

先程告げられたフォーメーションの通り並ぶ。慶さんが抜けたところは関が穴を埋めている。

 

(チェーン)の外側にいる人間は攻撃手の裏に回り込み…攻撃手の足を止める。先陣をきって『特攻する』役!!」

 

外側…今の場合はマーくん、伊達先輩、水澄先輩、宵越くんか。この人たちは速さ(スピード)を活かして敵を翻弄する役割だ。この4人の中だと伊達先輩が少し浮いているかもだけど、浮いているのは先輩だけじゃない。

 

「内側の人間は足の止まった攻撃手にトドメを刺す、『支援をする』役だ。以上2つ!!」

 

内側…慶さん(関)、ボク、畦道だね。先程の外側のメンバーが速さ(スピード)重視なら内側は(パワー)重視だね。

…うん、伊達先輩同様ボクも浮いているんだ。ボクに(パワー)なんて一番似合わない言葉だろうからね。

 

「おい井浦…今の説明の通りならよ、伊達と姫沢は逆の方がいいんじゃねえのか?」

 

宵越くんが慶さんに質問する。確かに疑問に思ってもおかしくはない。(チェーン)外側(速さ)内側()で求められることを考えたら宵越くんの方が正しい。

 

まぁ、結論を言えば事はそう単純じゃ無いってことだけども。

 

「宵越も知っているだろ?叶は目が良い。攻撃手が次にどう動いてくるかも分かるぐらいにだ。それも(チェーン)を繋いでいる味方の動きを何故か良くさせるくらいだ。

お前は(チェーン)を組んだことはないだろうが、攻撃手として対面したことはあったから分かるだろ?」

 

本当にこれはボクもよく分からない。別に(チェーン)を組んだからって視界を共有するみたいな特殊能力はボクにはない。

でもカバディ選抜(中学)の頃から言われてきたことだけどボクと(チェーン)を組んだら安心するみたいだ。ある程度誘導はしてるけれど、そんなにかなとボクは疑問だったけど、組んだ人ほぼ全員から同じ事を言われたからそういうもんなんだと納得せざるをえなかった。

 

「伊達は(パワー)はあるが気質が慎重なせいか動き出しが遅い。普通なら接触が少ない内側に置くんだが、叶が誘導するなら話は別だ。100%って訳じゃないだろうがある程度のタッチを避けられるのなら伊達の(パワー)はそのまま敵の攻撃手への脅威だからな。それだけでうちの失点が減るってもんだ」

 

いくら攻撃手のタッチを回避できたとしてもボク単体の脅威はかなりないに等しい。脚を掴んだ所でボク1人ぐらい簡単に引き連れるだろうからね。

だから伊達先輩の存在はボクとしてもすごく助かる。掴んだだけで即確保できる(パワー)もボクの誘導も素直に聞いてくれる従順さだったりボクのペアとして欲しいものをすべて持っている。本当に助かっている。

 

「後はまあボク自身中央(センターマン)カバディ選抜(中学)の頃からやり慣れてるからね。基本どこでもできるけど、やっぱりやり慣れてるっていうのはあるから」

 

この間の奏和戦のように(コーナー)もやったことはある。1人で攻撃手を牽制したり、(チェーン)を組んで2人で特攻することは過去にもやってきたことだ。

でもボクの守備(アンティ)での役割としてはやっぱり中央(センターマン)として(チェーン)を組んで誘導することだろうと思う。

ま、単純に他のポジションと違って()()(チェーン)を組めるからってのもあるけれども。

 

「他に質問はないか?…じゃ攻めるぞ!!」

 

「「特攻!!」」 「「支援!!」」

 

慶さんが仕切り直すように号令をかけて練習が始まる。水澄先輩と伊達先輩と組む腕に力が入る。

 

さて、ボクが中央(センターマン)に居る限り守備は8割成功させたい所だね。

 

 

 

 

 

それから攻撃手(レイダー)をローテで回しながら1対7の練習は繰り返されていく。主に攻撃手になるのはマーくん、ボク、宵越くん、慶さんだね。他のメンバーも攻撃手になるも1対7で守備優位であることとキャントに慣れていないこともあってまったく上手くいかない。そのため先程挙げた4人以外は攻撃手のローテから抜けることになった。

特に伴はキャントも極小だったため宵越くんからもダメだしされてた。せっかく183cmもあるんだからこれさえ解決すればすぐに攻撃手として花開くだろうと見ているこちらとしてはなんとも歯がゆいね。

後人見が攻撃手の時に水澄先輩からタックルされてたんだけど、なんか背景がキラキラ~って輝いて見えたんだよね。なんか少女マンガ?みたいな感じ。運命感じちゃった、みたいな?長年カバディしてきたけど、こんなこと初めてだから結構ビックリした。

 

 

 

 

 

「う~おしり痛いです…ハレてません?」

 

「ケツなら問題ないって。もっと肉つけなよ人見ちゃん」

 

なんでだろ?ボクが言うのもなんだけど臀部を押さえてる人見に絡む水澄先輩がセクハラしてるように見えちゃう。

 

「ん?…どうした姫沢?」

 

「…いや、なんでもないですよ水澄先輩」

 

「なかなかキツイっすね…(ばん)も結構こたえたって」

 

「表情の読めん男だなぁ…」

 

「お前が言うか?」

 

練習も一通り終わって片付けもすませたボク等は旧体育館から切り上げようとしている。伴たち3人がボク等となじめるか少し心配だったけど今のところ上手くいってるみたいで安心した。

 

「じゃお先…っす」 「お疲れ様でーす!」

 

「またね」

 

ボク等の挨拶にマーくんが返すのを見て退出する。寮に帰宅する先輩たちとも別れてボク等はスーパーへ。そろそろ食料が尽きてきたからね。宵越くんにも付き合ってもらわないと。

 

「伴たちもカバディ部に馴染んでくれているみたいだね。これで入部早々退部届出されてたらどうしようってちょっと心配だったよ」

 

「ふんっ、弱いやつらのことなんてどうでもいいんだよ」

 

「もうそんなこと言って、入部初日から関にタックルされたクセに」

 

「掘り返してくんじゃねぇ!!」

 

うん、宵越くんは相変わらずだ。今日の練習を受けて少し気分下がってるかなって思ってたけど杞憂だったみたいで安心した。

 

「さて、初めての対7人守備はどうだった宵越くん?」

 

「…人数が多い分後ろに回られやすくなったな。だが大丈夫だ。明日には修正できる」

 

主に攻撃手をやってたボク等4人の中で宵越くんの得点が一番少なかった。その次に慶さんボク、マーくんの順だね。

でもそれは今宵越くんが言ったとおりなんだろう。今日組んだばかりの守備なんだから明日には更に強固になるのは当然だけど、それを踏まえても宵越くんなら突破できるんだろうと考える。

 

ちなみにボクの今日の目標の「守備8割成功」はあえなく失敗した。ボク自身がアウトになったのは対マーくんの3回だけだったんだけど、隣の水澄先輩がアウトになったことが多々あったんだ。水澄先輩はボクの誘導は嫌いだろうなと思って前もって声をかけていたんだけど、中々上手くいかない。

今のところは水澄先輩の特攻に合わせてボクも援護に飛ぼうと思ってるんだけどタイミングが悪かったのか2人とも触られて帰陣されたんだ。っていうか、ボクがマーくんに触られた3回ともこのケースだね。

 

ま、それはそれとしてだ。

 

「でもバックを使うのはまだ止めときなよ。()()()()()()()()()()()()、ただでさえ練習で疲れてるのにそれだけでも身体に負荷はかかってるんだからね」

 

「…気付いてたのかよ」

 

「そりゃ気付くよ。ボクをなんだと思ってるのさ」

 

宵越くんの意識が高いのは知っている。常在戦場じゃないけど無駄な時間を過ごすことを嫌うぐらいだ。移動の時間もカバディの練習に当てたいのも分からなくも無い。ってかボクも以前やってたからね。

 

でもこの技はダメだ。その技でダメになった人がボク含めて2人もいるんだ。幸い疲労度を見れるボクが毎日宵越くんをマッサージしているから翌日までダメージを引きずるようなことは無いと言っていい。だからといって軽視するつもりもないけどね。

 

「まったく、宵越くんだけじゃなくて畦道もだよ。今日も居残り練するみたいだし。やる気があるのはいいことだけどさ」

 

「…あ?あいつ、んなことしてたのかよ!?っクソ!俺も今から…!」

 

「ストーップ!!行かせないよ宵越くん!!ボクとの買い物はどうするつもりなのさ!!?」

 

「んなの知るか!あの野郎!ここ最近練習後見ねえと思ってたらそんな事しやがって!!」

 

うーん、言わなきゃよかったかな?もう気付いてると思って言ったんだけどやぶ蛇だったね。でもさ宵越くん、もうちょっと周りを見た方が良いと思うよ。

 

「畦道はマーくんたちが止めてくれるはずだよ。闇雲に練習すれば上手くなるなんてことが無いって、宵越くんもよく知ってるでしょ?」

 

「ぐっ!…それは…そうだが…」

 

ボクの言葉に宵越くんが揺らいでくれたようで抵抗が弱まる。

 

「どうしても練習したいなら今のうちに明日の練習でどう動くかシミュレートしておきなよ。それなら疲れないし、いい気分転換にもなるでしょ?

また食事の時にこの間の試合(奏和戦)のビデオ見せるからさ」

 

ボクの提案に納得したのかじたばたするのを止めてボクと向き合う宵越くん。その顔はとても不服そうだった。

 

「…お前、俺のこと子どもかなんかだと思ってねぇか?」

 

「そう思うんだったら普段の行動を省みなよ。少なくともボクよりも子どもっぽいって皆言うと思うから」

 

「んなわけねぇだろ!!どう見てもお前の方がガキだろうが!!」

 

「行動の内容を言ってるんだよ。外見の話じゃない」

 

「はっ、よく言うぜ!部屋に抱き枕やらぬいぐるみなんか置いてるやつがガキじゃねぇって言うならそいつの顔を見てみてーな!!」

 

「なっ!ボクの趣味は関係無いだろ!!?

それを言うなら宵越くんの好物だってハンバーグとかカレーとか、子どもっぽいっていうならキミの方がそうじゃないか!!?」

 

「うっせー!!お前もカレー好きだろうが!!」

 

ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー

 

途中宵越くんから聞き捨てならないことを言われたけれどもボクはオトナだからね。気にしない気にしない。

とりあえず宵越くんの自主練を止めることが出来たからヨシとしておこう。

 

 

 

 

 

――翌日――

 

「カバディ…」

 

「特攻っ…」

 

昨日から引き続き7人守備の練習。宵越くんが攻撃手で抜けた穴を人見が埋めるターン。畦道を狙う宵越くんだったけど隣の人見が特攻に来たのを知るやいなや、人見の接触(ストラグル)後即ブレーキ即ターンで自陣まで戻る。うーん、援護したかったけどこんな速かったらどうしようもないね。

 

「あのヤロ~…7人守備でもものともしなくなってきやがった」

 

隣の水澄先輩が愚痴る。早速昨日の課題をクリアしているのは流石宵越くんだね。ボクもうかうかしていられないや。

 

「…もう1回攻めるぞ!!」 「おう!!」

 

「すみません僕やられてばかりで…」

 

人見がなにやら申し訳なさそうに隣の畦道に謝る。確かに他の攻撃手相手でも人見の失点数は顕著だ。伴たちと比べても頭1つ分くらい差がついているから本人としても気にしているんだろう。

 

「次に(つな)げばいいってぇ。それよりヨイゴシの倒し方考えんべぇ!!」

 

それに対して畦道は何のこともないようにニッと笑いながら返す。よかった、もしこれが宵越くんならこんなパーフェクトな受け答えはしてくれなかっただろうから。

 

「優しいなぁ畦道君は…」

 

人見の顔も先程までと比べて明るくなる。落ち込んでいたらプレーにも影響がある。だから空元気だとしてもテンションを維持するのはとても大事だし難しいことだ。畦道は周りをよく見てくれているからマーくんたちも助かっているだろうね。

 

「フン…」

 

反対に宵越くんは機嫌が悪そうだ。どうしてだろうか?1点じゃ納得できないってことかな?何となくそんな理由じゃなさそうだけど。他に何も思いつかない。

 

そんなボクを余所に宵越くんは攻撃(レイド)を再開する。うん、気になるけど今は後回しだ。

 

「来るよ!みんな役割しっかり!!」

 

「「特攻!!」」 「「支援!!」」

 

マーくんの指示に全員が反応する。うん、全員集中出来てる。ボクも集中しないと。

 

先程からそうだったけど宵越くんはマーくんを狙うことが多い。今の(コーナー)がマーくんと人見だからかな。攻撃手(レイダー)の死角にいやすい為後ろに回りやすいポジションだけど、2人を比べたらどう考えてもマーくんの方が上だから、それをさせない為だろうね。容赦ないね宵越くん。いいことだ。

 

畦道と(チェーン)を組む人見はまだ宵越くんの視界内だ。今チラッと宵越くんが確認したのが見えた。ブラフの可能性もあるから断定できないけど狙いは人見かな?ロールキックする筋肉の動きが見える。

それならボクは両隣の2人をギリギリで避けさせて少しの隙を突くようにしよう。そう思って人見に接触(ストラグル)が入るのを待っていると…

 

 

 

ゴキッ

 

 

 

接触(ストラグル)したのは人見ではなく畦道だった。へぇ、かばったんだ。

しかもロールキックの軌道上に左拳を置いて宵越くんの体勢を崩すオマケつき。

ナイス!!

 

「相変わらず容赦(ようしゃ)ねぇなぁヨイゴシ。お前の『役割』はそういうトコだもんな」

 

ロールキック(左足)の為に残していた右足を掴みながら畦道が言う。

そっか、宵越くんが人見のタッチ数が多いなって思ってたけど、もしかして守備の穴だってことを自覚させるためだったのかな?だからさっき笑顔になる人見を見て機嫌悪そうにしていたのかな?

 

「仲間が弱いならおらが助ける!!おらが弱いなら仲間に教えてもらう!!

目指すのはそういう強さだ」

 

そう考えたら畦道は宵越くんとは対極だね。1人で飽くなく上を目指し続ける宵越くんと助け助けられながら上を目指し続ける畦道。うん、いいコンビだ。

 

 

 

「おらはそれで、1番になるよ」

 

 

 

畦道の真剣な顔に注意がそれたがまだ守備(アンティ)中だ。一刻も早く畦道の援護に向かわないと!!

 

「「支援ン!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぬん!!」

 

 

 

 

 

「ぐべッ…」

 

 

 

 

 

「「あっ」」

 

ボク等の支援が間に合うよりも先に畦道が持ち前のパワーで引きずり倒した。

 

1人でやっちゃったねぇ。先程と言っていることが違うことに突っ込んだほうがいいのかな?

 

「ナイス畦道!!」 「すごい!!」 「ぐべッて言ったねぇ宵越くん」

 

まぁ守備成功は守備成功だ。ボク含めた周りが畦道を称賛しに集まり始める。だけど畦道は歓喜に震えるのではなくあくまで真剣な顔で、

 

「えっ…いや…相手が()()()()()()()()()()()()()()()()()()きっと止めらんなかったべ…」

 

そう謙遜する。そこになんの悪意も無い事はボク等は全員分かっている。でも、言外に格下扱いされた宵越くんが黙っている訳が無く…、

 

 

 

「も゛う1回!!!」

 

 

 

鼻血をたらしながらオオォォォってオーラを出す宵越くん。もう1回って言ってるけど宵越くん、それ絶対1回じゃ終わらないよね?

 

「ダメだ。今度はお前守備!!」

 

「格下扱いされて黙ってられっか!!」

 

案の定慶さんから止められる宵越くん。「そ…そんなつもりねぇべ…」って畦道は慌てて訂正しているけど、発言だけを考えたら今のはそう捉えられてもしょうがないよ畦道。

 

「前にも言ったろ。能京(うち)は守備力が不足してんだ。スタメンのお前が守備やんねーでどうする」

 

「んな事言っても、攻撃手(レイダー)は全員スタメンじゃねーか!!

控えの初心者(こいつら)の攻撃じゃまともな守備練にならねーだろ」

 

「落ち着きなって宵越くん、そのために攻撃手(レイダー)でローテ回してるんでしょ?守備練したくないからって見苦しいよ」

 

「うっせぇ!別にその為に言ってるんじゃねぇ!!

ってかさっきオメェなんて言いやがった!!?」

 

「なんの事か分からないなぁ、ぐべッて言った宵越くん?」

 

「分かってんじゃねぇかテメェ!!ゼッテー許さねぇ!!」

 

「まだ部活中だ、遊ぶのも大概にしろ!!」

 

追いかけっこが始まりそうな所を慶さんに窘められる。うん、確かにふざけすぎちゃったね。少し反省。

 

ってか、伴が急に離れていったと思ったらティッシュ取りに行ってたのね。わざわざ片膝をついて宵越くんが取りやすいようにまでしている。同じ宵越くんのファンなのにこの差よ。伴はファンの鑑だね。

 

「確かに宵越の言うことも一理あるが、今はどうしようもないんだ」

 

「う~ん…とすると…

7人での守備練習より『役割』を重点的に覚える事にしよう。みんな僕の言う通りのチームに分かれてくれるかな」

 

気付けば慶さんとマーくんの間で守備練をどうするかについての話が終わったらしい。何かミニゲームでもするのかな?

 

 

 

 

 

チーム水澄             チーム伊達

○水澄京平             ○伊達真司

○畦道相馬             ○宵越竜哉

○伴伸賢              ○関隆太

 

 

 

ボクハブられた!!?

 

 

 

「また紅白戦すか?」

 

「姫沢と人見、3年生は?」

 

「人見くんと叶、慶は両方のチームで守備をやってもらう。叶。人見くんの様子見てたまに休ませてあげて」

 

あ、良かったハブられてなかった。

 

「はーい、分かりました。よろしくね人見!」

 

「う、うん。よろしく」

 

「体力作りか。わかった。部長はどうすんだ?」

 

「両方のチームに所属する人がいんだべか…?どういう紅白戦だ…?」

 

「違う…」

 

あ、宵越くん気付いたかな?

とは言っても、ボクもさっきのマーくんの言葉でやっと分かったから偉そうにできないんだけどね。

 

「これからしばらくの練習…僕が両チームに攻撃をする」

 

得点表をゴロゴロと動かしながら事も無げに言うマーくん。だけど周りの反応は違った。ボクと宵越くん、慶さん以外の皆は心底驚いているみたいだ。

 

「『点を取った方』じゃなく、『点を取られなかった方』のチームが勝ちだ。

お互いに競いながら強い攻撃手(レイダー)を倒す方法を考えてほしい。

だからみんな全力で…

 

 

 

僕を止めてくれ

 

 

 

そう言うマーくんの顔はいつぞや見た魔王のようないでたちだった。皆にとっては頼りになっていた味方が一転して敵になったようなものだ。皆の間で緊張が走る。

とはいってもボクも守備に入るんだったら大丈夫でしょ。マーくんとの練習は何回もやっているし慣れている。さて、何回マーくんを倒せるかな…

 

「あ、叶はこの試合中(チェーン)を組む事と周りへの口出しと指導禁止ね」

 

 

 

 

はい!!?

 




※原作の変更点として、オリ主in 伴outと中央(センターマン)オリ主、中央右(右カバー)伊達ですね。理由については強引に本文に記載した通りです。
オリ主と守備面で相性が悪い人は誘導されるのを嫌う人でしょうね。

※オリ主が攻撃手で抜けた時の守備は原作通り中央(センターマン)伊達、中央右(右カバー)伴ですね。無論、練習中は伴の所が関だったり人見だったりします。
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