ボクがキミを王にする   作:モーン21

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※最近仕事で疲れてすぐ寝ることが多くて1週間に2つ上げるのが難しくなってきました。何とか1本だけでも上げていくようにしていきます。

※今回話の都合上原作1話飛ばして書いてます。次話はこれの原作1話前と原作1話後を合わせた内容を投稿する予定です。

※お気に入り登録、感想等ありがとうございます!


第16話 自分の周りを

カバディにおいて、(チェーン)守備(アンティ)の基本とも言えるものだ。

狭いコート内で1人身軽な攻撃手(レイダー)を捉えるには、道を塞いだり取り囲んだりする為の(チェーン)が必要だ。

ボク自身他の人よりも身軽である自信はあるけれども、それでも攻撃(レイド)(チェーン)を組んでくる相手に連勝できると思い上がるほど自惚れてはいない。

 

それは、ボクが守備(アンティ)をする時も同じだ。

 

ボクは速さ(スピード)に自信あるから、攻撃手(レイダー)を相手にしての回避や特攻も得意だ。

でも、あくまで守備(アンティ)の目的はタッチすることではなく倒すこと。体重の軽いボク1人が攻撃手(レイダー)の脚を掴んだ所で引きずられて帰られるのは目に見えている。少しの間足止めはできるかもだがそれだけだ。

 

だからボクが守備(アンティ)をする時は、牽制目的以外だとほぼ常に(チェーン)を組んでいる。ボク相手の攻撃(レイド)に慣れている攻撃手(レイダー)を相手にしている場合いくら1人で牽制をしてもまったく反応を示さないことが多々あったからだ。

ボクが(チェーン)を組めばその人の動きも格段に良くなることは検証済みだ。ボクからしたら組まない理由がない。

 

 

 

 

であるからして、マーくんから(チェーン)を組まないで守備(アンティ)をしろと言われてすごい慌ててしまった。

 

 

 

 

 

「今日はここまで!各自失点数確認しとけ!」

 

『うす!!』

 

水澄チーム          伊達チーム

 

○水澄:4失点        ○伊達:6失点

○畦道:7失点        ○宵越:4失点

○伴:9失点         ○関:11失点

両チーム所属         両チーム所属

○人見:13失点        ○人見:18失点

○姫沢:4失点        ○姫沢:3失点

○井浦:2失点        ○井浦:1失点

 

計39失点          計43失点

 

うーん、結構失点してしまった。それに未だどっちのチームでもマーくんを倒せていない始末。

ぐぬぬ…

 

「おい姫沢、俺にも見せろ」

 

「あ、うん」

 

スコア表を宵越くんに渡すと彼はすぐさま表情を引きつらせた。この練習を始めて数日経つけど、初日に言われたとおりチームの勝ち負けという点では、伊達チームは水澄チームに毎度負けている。だからだろうね。

 

紙から目を離すと今度は人見をジッと見つめる宵越くん。どうしたんだろうか、なにやら言いたいことを言えないでモヤモヤしてそうな顔だけど。

当然、見られていることに気付いた人見に声をかけられる。

 

「どうしたの宵越君?」

 

「えっいや、なんでも…」

 

「気になるかい宵越君」

 

面白そうだったのでからかいに行こうとしたらマーくんが声をかけるのが早かった。

 

「人見くんが手を抜いてるかもーとか?」

 

「えっ?」 「いっいや…」

 

マーくんの指摘に分かりやすいぐらいに固まる宵越くん。こういう時本当分かりやすいね宵越くん。ウソをつけない性質(たち)だ。

 

先程見たスコア表の内容を反芻する。確かにマーくんの言ったとおり人見の失点だけに絞ると伊達チーム(宵越くんの所)は18失点だったのに対し、水澄チームは13失点。同じ人見なのにこの差は顕著だ。気になるのは仕方ないとも言える。

 

「そんな事ない…ハズですけど…」

 

そう返す人見も疑問そうにそう呟く。チームは代わりばんこに交代してプレイしているから疲れの線もない。本人も自覚なしというなら手抜きもありえないだろうね。人見本人の問題では無いだろう。

ってか、疲れてきた場合はボクがストップかけてるし。

 

差ができた理由は、それこそチームの差だろうね。

 

「人見君の失点が多い理由がわからないのは、まだお互いを理解できてないからだよ」

 

「確かに新人(こいつら)の事はまだよくわかってねーけど…どうすりゃいいのかサッパリ…」

 

「練習中の姿しか知らない事がマズイんだ。たまにはみんなで遊んだりするのも大事だよ」

 

ニコッと笑顔でそうボク等1年生に呼びかけるマーくん。

宵越くんは不服そうな声を出すが言い得て妙だなと思った。

 

 

 

 

 

せっかくの1年生6人による初遊びにもかかわらず天候は生憎の雨。マーくんに背を押される形で学校外へ出たボク等だけど、未だにどこで遊ぶのかも決まらないままだった。

 

「うーん近くに山ねぇしなぁ…」

 

畦道、こんな天気なのに初手山なんて中々やるね…。

 

「……」

 

「雨降ってるから屋内だよね…」

 

「うーん、学校周辺だとスーパーぐらいしか知らないんだよなー。

ガチャポンでもやる?」

 

「何が悲しくて野郎だけでガチャガチャなんざするんだよ…」

 

人見の意見に沿って案を出してみるも宵越くんに却下されてしまった。

だめかーガチャポン。言いだしたボクもそこまでやりたい訳じゃないけども。

 

小中学校には友達がいなかったから、友達と遊ぶって言ったら専らマーくんといったカバディ選抜の人たちとだった。休日に集まって遊びに行くってことは無かったけど、ガチャポンとか買い食いとか練習後に帰宅の電車に乗る間まで遊んだことはあった。

 

お行儀が悪いことと知りながら、学校の先生や父さんたちの教えに背くのは少し怖かったけれど楽しかったことはよく覚えている。

 

まぁだからこそなんだけど、こういう時にどこに遊びに行くべきか誘われて行くことが多かったボク自身詳しくないんだよね。

 

「あの…」

 

うーんと悩んでいると突如救世主が現われた。

 

「良ければ自分が決めちゃっていいすか?」

 

関!!

 

「お!じゃ任せんべぇ!」

 

「自分のルーティンでいいなら!」

 

へぇ、関こういうの慣れてるんだね。ちょっと格好良い。

カバディの練習だけだと知ることが出来なかったことを知ることが出来たことからも、マーくんの言った通りだったなと痛感する。

 

「…で、どこ行くんだ?」 「高校生ならみんな行くトコっすよ!」

 

どこだろ?やっぱガチャポンか?それともどこにあるのか分からないけどゲーセンかな?

 

関のヒントになりそうでヒントにならない言葉から何か読み取れないかと頭を働かせながらただ彼に付いていくことにした。

 

 

 

 

 

「おぉ…!!すげぇ!!」

 

「へぇ、ボウリングなんて初めて来たよ!!」

 

「あれ?畦道君はまだしも、姫沢君も初めてだったんだね」

 

ボウリング。スポーツ自体は聞いたことはあったけど実際に来てプレイするのは初めてだ。父さん母さん共に医者で指を大事にするお仕事だから、こういう所に家族で来ることもまずなかったというのもあるけれども。

 

「ボウリングか。部活帰りに来るようなトコか…?」

 

「いや、そんなに疲れませんから!」

 

「もう、せっかく関が提案してくれたのに水差すようなこと言わないの宵越くん」

 

「うっせぇ」

 

「あっ僕、割引券もってる!」

 

宵越くんが口を挟んできたからからかってみるけど、もう慣れたように返されるだけだった。

 

「嫌だったっすか?」

 

そんな宵越くんを見て関が心配そうに聞いてくる。

 

「…いや、いいんじゃねーか?」

 

「いやーそれなら良かっ…」

 

肯定的な反応が返ってきたことに安堵する関だったが、それを言いきるよりも先に。

 

「いい筋トレになりそうだしな。投げる時、体幹(たいかん)を鍛えられそうな感じだ」

 

「確かに。プロの選手とかのフォームとかまったくブレてないもんね」

 

「あぁ。カバディにも活かせるかもしれねぇな」

 

宵越くんがマジメなことを言い出したのでとりあえずボクも乗っかる。後ろの2人が何故かドン引いた様子でボク等を見てくる。何かおかしなことでも言ったかな?

 

「やったことねーんだけど、重い球の方がいいのか?」

 

「さぁ分かんない。店員さんに聞いてみれば?」

 

宵越くんの疑問にボクも首をひねっていると畦道が1人予約してたテーブル近くの台に顔を近づけていた。

 

「変な台から風がでてくる!!」

 

「ホント!?ボクもやる!!」

 

興味引かれてなんとなく手頃な重さのボールを手に急いで畦道の元へ。

は~。畦道の言った通りだ。扇風機ほど快適な風でも強い風でもないけれども、ふわ~って確かに風が出てくるのを確認できる。

 

「ヨイゴシ!玉であの棒倒すんだろ?勝負しようぜ!」

 

「あっ!」

 

風に夢中になっているボクを余所に畦道が宵越くんに勝負をしかけていた。

 

「フン…この俺に勝てるとでも思ってんのか?」

 

お、宵越くんのやる気に火がついた。歓迎会の時も思ったけどホント何かとすぐ火がつくよね。逆に何だとやる気にならないのか聞いてみたいや。

 

それから畦道の提案でチーム戦負けた方がジュース(アイス)を奢るということになった。欲しいなら全員分奢るのにと思ったけどこういう時は何も言わない方が良いというのは中学の頃で学んだことだ。

 

「部活で分かれてるチームでいいすか?」

 

「いいんじゃねーか」

 

「ヒメサワとヒトミはどっちに入る?」

 

「分かれてるチームってことならどっちのチームにも入るのがベストじゃないかな。追加のお金はボクが払うし。それでいいかな人見、皆?」

 

「そ、そんなの悪いよ!そんなお金持って無いけど僕も僕の分くらいは…」

 

「あ~、止めとけ人見。こいつの両親どっちも医者でバカみてぇに小遣いもらってるらしいから。

なんなら全員分払うとか言い出すやつだ」

 

「あっ、そっちの方がよかった?」

 

「…ほらな?」

 

「な…なるほど…」

 

「姫沢って…もしかして姫沢総合病院!?東京でもかなり大きい病院だよね!!?なんで能京(ここ)に…」

 

「あはは…まぁワガママ言ってね…」

 

大げさだな人見は。たった数千円くらいで何を慌ててるんだろうか。

今度何かジュースでも奢ってもらえば気は済むのかな?

関もなにやら驚いてるけど、そういえば伴たち3人には父さん母さんが医者だってこと言ってなかったことを思い出す。

隠してた訳じゃなかったんだけど、まぁこのタイミングで言えて良かったって思っておこう。

 

 

 

 

 

ボウリングの勝負についてなんだけど。

 

やれ初手G(ガター)で調子が悪そうだったのに、感覚を掴めたのか投げるごとに調子を上げていった宵越くん。

やれ初手からストライクを取る等真ん中に投げるのが異常に上手くて初心者詐欺を疑った畦道。

1人静かにボールを投げ続け、慌てず冷静にピンを倒していった伴。

ボク等で唯一マイグローブとマイボールを用意して格好良くキメながら得点を稼いでいく関。

フォームもブレブレでボールもヘロヘロなのになぜかストライクを取れた人見。

宵越くんと同じく尻上がりに調子を上げて行くも、なんとなく端のレーンでプレイしていたボクと同じ背格好の赤髪の女の子のフォームを()()真似てみた所、ボールを上手く曲げることで最後ストライクを連発したボク。

 

 

 

で、勝負の結果は…、

 

「ち…チクショウ…!!」

 

「ドンマイっすよドンマイ…」

 

畦道と伴チームが勝ったことで負けた宵越くんと関がアイスを2人に奢ってる。いやぁ、接戦だったねぇ。

 

ちなみにボクと人見は両チーム所属とのことで罰ゲームを受けることは無かった。

ただアイスは食べてみたかったので、さっきの借りを返してもらう形で人見にアイスを奢ってもらった。人のお金で貪るアイスは美味しいねぇ!

 

「くそ…あの時もう1本倒してれば…」

 

「でも合計は宵越君が1番倒してるから!」

 

宵越くんが愚痴りながらアイスを購入していると人見が慰めている。そうなんだよね。もしこれが個人戦なら宵越くんの1人勝ちだったのは事実だ。

 

だけどそれを聞いても宵越くんは苦い顔を変えることはなかった。

 

「だからこそだ。チーム戦は仲間の不足を(おぎな)わなきゃならん。

俺がもっと伸びるべきだったんだ」

 

…うーん…。

 

いつもなら宵越くんは優しいねって声をかけるんだけど、最近の練習の目標を考えたらそうもいかない。なにか声をかけたいけど、今のボクは()()だからね。

ちゃんとお口はチャックしておかないと。

 

「しかし、ヨイゴシもヒメサワも覚え早えーよぁ」

 

ニコニコとアイスを片手に笑みを浮かべる畦道が話しかけてきた。

 

「動きにクセがねーからかな?バンもヒトミも重心ブレっから調整大変だったべ?」

 

「でも1回1回注意してくれたから初めていい点数でたよ!」

 

そうなんだよね。畦道を初心者詐欺だと思ったもう一つの理由がこれだ。

 

ボウリングは初めてって言ってた割りにはボク等へ普通にアドバイス伝えてくるし、そのアドバイスも分かりやすいときたもんだ。

普通は初めてやるスポーツだと後手に回るものだと思って聞いてみたら、故郷で同年代の子が少ない代わりに年下の子がそれなりにいたことで自然とリーダーシップを取ることが多かったからじゃないかとのこと。やっぱり環境ってその人の成長に大分関わってくるんだなって思った。

 

 

 

 

 

部活を終えてのボウリングで疲れているだろうからとのことで1ゲームだけということはプレイ前から話していたけど、もしそれがなかったら何ゲームもやっていただろうね。負けた宵越くんがもう1回ってゴネてたから。

 

「じゃ、おらたちミスミ先輩に呼ばれてっからここで!」

 

『またねー!!』

 

水澄チームの畦道、伴が別れていく。ミーティングでもやるのかな?伊達チームはどうするんだろと思ったけど、ボクが呼びかける訳にもいかないからスルーする。

 

「僕達どうする?」

 

「お腹すいたからご飯行こうよ」

 

「姫沢君はどうする?」

 

「あ~ゴメン、宵越くんしだいかな。いつも宵越くんのご飯作ってるから、宵越くんが帰るならそれに付いていかないと」

 

「話には聞いてたけどスゴいね。毎日自炊してるなんて」

 

「他の人のご飯を作るからってこともあるだろうね。ボク1人だとここまで継続できなかったと思うよ」

 

「宵越君は…」 

 

「なんかすごい真剣にスコア見てるけど…」

 

人見のご飯の誘いを保留にして宵越くんを見る。宵越くんはボク等の会話を聞いているのか分からないぐらい真剣にさっきのボウリングのスコアを見比べている。なにか引っかかることでもあったかな?

 

「……あのよ…」

 

いつもの宵越くんらしくないかぼそい声。こちらの様子を確認しながら言葉を選ぶ宵越くんは初めて見た。

 

「めめ……メッシ…!!俺も…一緒に行っていいか…?」

 

 

 

 

 

「あ…あの…どうしたの宵越君…」

 

「…聞きたい事がある」

 

ボク、宵越くん、関、人見の4人が向かったのは良くCMで見るハンバーガーチェーン店。

カバディ選抜(中学)の頃時々食べてたなと懐かしがっていると隣の宵越くんがボク等に尋ねてきた。

 

「俺の…どこが悪い?」

 

「え?」

 

急に何を言い出すのさ宵越くん。ほら、人見がポカンとしちゃってるじゃんか。

 

「玉が悪かったんじゃ…」

 

「ボウリングの話じゃねー!!」

 

「子どもっぽいところ、子ども舌なところ、周りをあまり見てないところ…」

 

「あの…姫沢君って本当に宵越君のファンなんだよね…?」

 

とりあえず指を折りながら宵越くんの悪い所を列挙していると人見に指摘される。

何を言うか。確かに伴みたいなタイプとは違うと自負しているけど、ファンは多少対象の負の面が見えるものなんだよ。ずっと見てるんだから。

それ以上に差し引きでプラスの面が大きいからファンになってるんだ。

 

宵越くんも真剣なのか、いつもならボクにツッコミを入れてくるけれども今回は顔をしかめながらも黙って聞いている。

 

「部活で…畦道達とはうまくやれてるみてーだし…」

 

ボク以外の2人の意見も欲しいのか、聞いた理由を説明する宵越くん。それを聞いて合点がいったのか2人も自分の意見を言っていく。

 

「畦道君は(かば)ったり誘導したりしてくれるから…その分、畦道君の失点は多くなっちゃってるけど…」

 

「今回の練習じゃ止められてるけど姫沢君もよく指導してくれるよね。1個1個のプレイごとに攻撃手(レイダー)の狙いがこの時はこう動くとか言ってくれるから、練習1つ1つがとても有意義なものになってるって実感できるっていうか」

 

まさか関から褒められるとは思って無かったから思わず照れてしまう。

えへへ…よせやい…。

 

宵越くんはその2人のコメントを聞いてもあまりいい顔をしていない。

畦道のやり方は甘いだとか、ボクのやり方はカバディ経験者だからこそできることだとかそんなことを考えているのかな?

 

「あの…思ってたんだけど…宵越君て優しすぎるよね」

 

ボクがほぼいつも考えていることを関が伝えていると宵越くんは意外すぎたのか「はぁ!?」と身体を震わせながら返事する。

そんな宵越くんの反応を余所に関は続けた。

 

「だってさ、結構自分で背負い込むでしょ?負けた時…自分がもっとできてればって」

 

「それは…」

 

「カバディ経験者の姫沢君はともかく、意外と畦道君の方が要求してきたりするよね。

練習中でも、どうすればいいか常に見てるっていうか…

宵越君は人に全く頼らないから…」

 

「すごいよね!」

 

畦道が伴たち3人にそういうことをしている事は知っていた。ボクが口だしを止められたあの練習が開始されてからは特に。

2人の称賛に最初は異議を唱えようとした宵越くんだけど、途中から黙りこくってしまった。確かに宵越くんが優しいことはその通りだ。でも()()()()()()()()()()だけだ。

 

 

 

天才は何でも1人で解決したがる

 

 

 

誤解が生まれそうな言葉だけれども、この言葉は決して間違いなんかじゃないだろう。

 

天才と言ってもいろいろなタイプがいる。やれ感覚派で自分のセンスで行動する人もいればやれ理論派で自分の中で筋道を立てて時にはその理論によって周りの人を動かす人もいる。

 

だけど、効率を求めて動くにあたって天才がまず何を省略するかといったら「周りへの伝達」だろう。

 

この仕事は自分1人の方が早く片付けられる

周りへ教えるヒマがあるのならその時間で多くの仕事を解決した方が合理的。

 

得てしてそういった理屈は正しかったりするのだろう。

 

なまじ成功体験があるからこそ、それを越える反証を凡人がこさえることは天才に劣っていることもあるからか難しい。

 

 

 

宵越くんが優しいのは周りに期待していなかったからだというのは、カバディの練習を一緒にし始めた時から常に感じていたことだ。

 

確かに強い人間(マーくん)を見る事が強さに繋がるならそれを参考にするのだろう。ボクや慶さんの注意を色々言いながら最後には受け入れるのも、ボクや慶さんがそれについて宵越くん以上に詳しいからだろう。

 

逆に言えばそれ以外…、伴たち3人については特に。実力や経験で劣る彼らに教わることは無いと見切りをつけていた。

 

それが一概に悪いとは言わない。強者は敗者の意見を参考にこそすれど浸食などされたらそれこそ大問題だ。

 

だけど実際宵越くんのいる伊達チームは得点で水澄チームに負け続けているし、目標のマーくんを倒すということも1回も達成していない。

 

だからこそ、カチカチだったけれども宵越くんから呼びかけて話をもちかけて自らの悪い所を聞くことを始めた宵越くんはようやく一歩を踏み出したんだなと思った。

これを受けて自分だけじゃなく周りを見ることを覚えた宵越くんは今以上に大きな存在になるんだろうなということを感じる。

 

ボクが中立の立場として周りへの指導と口だしを止められたのもこれを引き出す為だったのかな?ボクがこれまで通りにしていると畦道も伴たちに指導する回数も増えないだろうし。少し出番を減らされたようで憤慨する気持ちもあるけれども、チームの成長の為だ。甘んじて受け入れることにしよう。

 

(チェイン)禁止の理由はこれが半分なんだということも理解している。もう半分は…

 

「メシ(ひか)えろ太っちょ」

 

「ええっ!」

 

「人見が食え。お前細いんだから」

 

「僕もうお腹いっぱい…。姫沢君は?」

 

「既にポテトを宵越くんに食べてもらってるボクが食べれるとでも?」

 

「ハッ○ーセットすら食べきれねぇのかよお前は…大人しくハンバーガーだけ頼んどけよ」

 

「しょうがないじゃん、このオマケ可愛いかったんだから」

 

「やっぱりお前が1番ガキっぽいだろ」

 

 

 

 

 

6月 VS王城戦 10日目

 

【王城side】

 

「休憩上がったらまた試合形式でやるぞー」

 

『うす!!』

 

慶の号令に皆が反応する。6月に入って梅雨に入ったからか旧体育館内も湿気の影響もあって蒸し暑い。こればっかりはスポーツをやっている以上つきまとうことだ。だんだん身体を慣らしていかないと。

 

この試合形式の練習を始めて早10日だ。未だに僕が倒されたことはない。ましてや叶以外には掴まれすらしていない。慶からはやり過ぎだと言われたけれども、僕1人にやられるぐらいなら日本一は夢のまた夢だからね。厳しくしていかないと。

 

「いつも通り俺が引き付ける。序盤の部長は倒せると思わない方がいい」

 

『う…うん』

 

「無理に掴みに行くな」

 

宵越君が同じチームの関と両チーム所属の人見に指示を出すのをチラッと見る。

…変化ナシか?

先日1年生同士で交流するように言ってみたけれども、その甲斐なく特に作戦は変わらないみたいだ。

 

「おれも…」

 

「あ?」

 

「バンもヨイゴシと飯行きたかったって!」

 

「聞こえねんだよ!!」

 

でも前までと比べたら1年生間にあった壁が良い感じに砕けてるのを感じる。

始めた時期もあってか宵越君たち3人と伴君たち3人で壁があった。その都度叶と相馬が率先して交流して間を取り持ってたみたいだけど、この間の交流を経てから伴君たちからも積極性が生まれたように見える。

アドバイスは成功したと思っていいかな?

 

「…じゃあそろそろ始めるよ!」

 

『うす!!』

 

「前回負けた真司チームから攻めるね」

 

『はい!!』

 

宵越                  井浦

    関           人見

       伊達   姫沢

 

真司チームのフォーメーションは先日から変わらない。フォーメーションの変更もなしか。(チェーン)禁止を言われている叶を(コーナー)に置くことも禁止してるから叶は以前からやりずらそうにしてるけどこれも練習だ。

 

叶に(チェーン)を組ませないようにしたのは真司や伴といった連携相手自身のスキルアップの為がメインだが叶の為でもある。守備人数によっては(チェーン)を組まないで守備をせざるをえないことがある。叶も当然そういった経験は積んでるとは思うけど、叶は最近(チェーン)を重視しすぎるきらいがある。その癖を抜く為でもあった。

 

「カバディ…」

 

変化を見るために前までと同じ行動を取る。って思っていたら彼の方から来てくれた。

 

宵越くんがボクに近づいて来た後僕のタッチを至近距離で回避していく。

これまでの練習で僕の動きに慣れてきてるね。避けるだけじゃ勝てないけど…

 

 

 

関君の特攻(タックル)を確認する。ん…?序盤は来ないんじゃ…

 

「カバディ…」

 

カウンターで関君の体勢を崩す。関君のタックル自体は全く問題ない。問題は何故関君が序盤にタックルしたのかだ。

 

関君の独断か?それとも宵越くんたちが僕の意表を突く為にわざと作戦を聞かせた?

 

僕の身体が関君への対処のカウンターの為にわずかに浮く。着地するまで僕がカウンターすることはできない。宵越くんが近づいてくるのを確認する。

 

なるほど…、僕のカウンターの隙についてもう知ってるんだね。彼には上の人間や敵を見る力がある。これが分かったのもそのためだろう。

 

 

 

 

 

だけど、それについてはこの練習が始まる前から知ってる。

 

 

 

 

 

宵越くんのタッチを右腕を払うことで避ける。来てることさえ感知できたら避ける方法なんて幾らでもある。攻撃手(レイダー)として守備(アンティ)を警戒するのは当然だけどこのチームの場合真司と慶、叶は特に警戒している。

 

あ、叶が突撃してきた。予想通りだ。隣の真司と(チェーン)を組んでいないからかまだ真司に動きは無い。叶1人での特攻か。ここも前までと変わらない。叶自身にパワーはない。振り払わずとも帰陣することはできるだろうけど念のためだ。宵越君同様タックルを回避して帰陣するとしよう。

 

ちょっと予想外の事(関君の序盤タックル)はあったけど、他はいつも通り。その先を期待していたけど、それを見れるのはまだみたいだね

 

まず3点…

 

 

 

 

 

ドッ

 

 

 

 

叶の脚へのタックルを回避しようと身構えていると左から衝撃が来た。そちらに少し気を取られるのと同時に叶が僕の右足首をキャッチする。

 

人見君?人見君の動きはよく見てきた。伴君みたいにリーチがある訳でも関君みたいにスピードパワーに優れたわけでもない。何なら遅いくらいだ。(チェーン)も無いから叶に誘導された訳でもない。それなら何故叶と連携して動けた?

 

理解できないことは山ほどあるが今は攻撃(レイド)中だ。慶と真司が突っ込んでくるのを確認。位置的にも真司が先に届くかな。流石に真司に掴まれたら僕もひとたまりもない。

 

腰に巻き付いてくる人見をくるっと回転させて伊達へのタックルを防ぐ盾にする。真司と慶への対応はこれで間に合う。後は叶だな。

 

叶は右足首だけでは飽き足らず僕の左足首も狙ってくる。叶の目は特別だ。僕の脚がどこにどう動くか、それを目で把握できる。このまま両足首を掴まれたら僕も帰陣できないだろう。

 

宙に浮く僕の左足を狙って叶の右腕が伸びてくる。叶をカウンターで剥がそうかとも思ったがその隙をついて今度こそ他の守備(アンティ)が僕を止めに来るだろう事は明白だ。

 

だからこそ、ここは強引に。叶の目と僕の足の回転数の勝負だ。

 

バッ

 

叶の右腕を足で振り払う。なんとか間に合ったみたいだ。叶に右足首を掴まれたままだが叶1人なら引きずれる。そのままの体勢というわけにはいかなかったが、最後倒れ込む形でなんとか帰陣に成功する。

 

5点獲得。本当なら6人以上の守備はボーナスも設けられているんだけど、今回は複雑になるだけだからカウントしない。どこをどう見ても攻撃手(レイダー)側である僕の勝利だ。

 

「ああ…せっかく掴んだのに…」

 

「ああーっ!マーくんに目で負けた!!ちくしょぉ!」

 

関君と叶がそれぞれ先程のプレイを悔やんでいる。叶は先程までの無表情が嘘のように顔を歪ませながらじたんだを踏んでいる。よっぽど悔しかったみたいだ。

 

「すまん」

 

「い…いえ。こちらこそ…」

 

真司がまだ倒れ込んだままの人見君の両肩を掴んで抱き起こす。2人は接触する形になったけどケガはないみたいだ。よかった。

 

「ご…ごめんなさいせっかくの作戦が…」

 

「…できれば、腰じゃなく脚を狙え。姫沢が右足首を掴んでたんだ。左をお前が掴めてたらそれで終わってた」

 

宵越君が謝りに来た人見君に特に励ましの声をかけないまま先程のプレイの修正点を示す。

 

「目を閉じるな。力むのは掴んでから。あとは…

まぁ、悪くなかった

 

「え?何?」

 

「伴かお前は!」

 

「笑わせてキャント止める作戦は卑怯だぞ?」

 

「あははっ!宵越くんすごい顔!!」

 

「くっ!」

 

ぎこちない笑顔を浮かべて人見君を褒める宵越君。それは先日までの宵越君からは考えられない行動だった。

先程の人見君の台詞から考えても発案者は宵越君なのかな。だとしたら宵越君から関君や人見君を活かした作戦を発案したということか?

 

「慶、叶、何か指示出した?」

 

「いや、今回は中立の立場だからな」

 

「フフッ…あ、ごめんなさい。ボクも出してないよ。今の作戦もボクがいない時に話すようにしてもらってたし」

 

「そういえば叶、お前どうして人見と同時にタックル行けたんだ?(チェーン)は組んでなかっただろ?」

 

「あぁ、それなら人見の動き出しを見て、どのタイミングでマーくんに接触するのかが分かった後に()()()()()()()()()()()()()()()()見計らってタックルしたんです。

まぁ今まで以上に疲れるんですけどね」

 

…ふぅん、成る程ね。

 

「そうか…いや…部長としては嬉しいけど…

やだなぁ…今日なんか久しぶりに…倒される気がしてきたよ…」

 




どうでもいい話
オリ主は最後の曲げる技の習得の為に宵越チームの1投を無駄にしました。それでもそれに触れることなくアイスを奢った宵越くんと関は良い人です

オリ主はハッ○ーセットの可愛いグッズ等小物を集めることこそすれど、定期的にお気に入り以外のそれらを処分しています。
また、それらを処分する前に写真を撮って拾得日と手に入れた理由、処分日を裏に書いてアルバムに1つ1つ忘れないように保管しています。
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